(8) できるだけ「本物」の合板を

かつて「合板」は、有害化学物質を含む「新建材」として、自然派のハウスビルダーには目の敵にされていた時期もありましたが、今は、地場産業としての地域活性化や、間伐材などの有効活用といった資源活用という意味で、国産の合板を使う社会的意義もあるように思います。

大丸建設は、できれば無垢材で家を建てたいと思っています。家の耐力を保つために合板の必要性は理解しているので、地震や台風などの自然災害から住まいと家族を守るために必要な素材として、化学物質を極力含まない合板を使います。合板を使う際も、使われている樹種や、その産地、製造者、製造方法、使われている接着剤などに目を配り、なるべく環境負荷の少ないもの、地域を活性化することにつながるものを選ぶようにしています。

(7) 国産の合板、あれこれ

国産の杉材を使った合板として有名なのは、Jパネルです。Jパネルとは、12mm厚の杉材3枚をサネ加工して貼り付けたもので、面面の2枚は垂直方向に、真ん中の1枚は水平方向に接着しています。厚さは36mm厚に規格化されていて、大きさはさまざま。無垢材を3層に重ねたシンプルな構造で、化粧材としても構造用合板としても使えます。3層重ねただけなので接着剤の使用量が少ないのも特徴。無垢材と合板のよさを兼ね備えた素材と言えます。

全国を見渡すと、檜材のインテリア合板や、杉を柱に加工する時に廃棄する樹皮に近い部分を固めて根太材に使える合板など、多様な国産材合板が生まれています。2019年の日経新聞の記事によると、2018年度までの10年間で国産材の合板の生産量は1.5倍に増加し、壁に使う構造用合板の9割は国産材の合板に切り替わっていると言います。

(6) 地場産業としての合板

この20年ほどで、合板を地場産業の切り札と目して、積極的に加工、開発する地域があります。

無垢材は木材をそのまま使うのに対し、合板は木の板を張り合わせてつくる工業製品なので、「本物の質感」という意味では、無垢材に勝るものはありません。ただ、無垢材を使うには、無垢材自体の質がよくなければなりません。ある程度の樹齢の木でないと、大きさや木目の美しさを担保できず、価格も比較的高価になります。1本の立派な木材を育てるには長い時間がかかり、木材を育てるために間引きした間伐材や、小さくて柱や梁などに使えない小径木も、なるべく有効活用したいものです。

そうした間伐材や小径木を合板として加工できれば、資源の有効活用にもつながります。

(5) 合板と接着剤

構造用合板の表面に印字されている、「F☆☆☆☆」という記号を見たことはありませんか? 「F☆☆☆☆」は「フォースター」と読みます。シックハウスの症状を及ぼす可能性のある化学物質として知られるホルムアルデヒド(Formaldehyde)の頭文字をとって「F」、発散する量が少ないほど☆が少なくなる、という基準です。

1時間に発散するホルムアルデヒドの放散速度が5μg/m2/h以下の場合は「F☆☆☆☆」として認定され、「F☆☆☆☆」のついている構造用合板であれば、使用面積に制限なく使うことができます。逆に、「F☆☆☆☆」でなければ、使う空間の換気量に応じて使う量が制限されます。

2003年のシックハウス法の施行以来、「F☆☆☆☆」を取得した構造用合板が増えています。大丸建設でも合板を使う場合は、「F☆☆☆☆」のもののみです。

 

(4) 合板に使われる樹種

合板は木材でできています。木材は大きく、広葉樹と針葉樹にわけられ、広葉樹は硬く堅牢で比較的高価、針葉樹はやわらかく加工しやすく大量生産に向いているという特徴があります。

日本は、杉や檜などの針葉樹の生産が盛んで、国産で安定した木材供給が可能です。

かつて合板といえば、フィリピンやマレーシアからラワン材を輸入してつくるのが主流でした。やわらかく加工しやすいのが特徴です。今は、日本に多く自生するシナ合板がよく使われます。シナは色が明るく、曲げに強く軽いという特徴があります。

最近では、杉や檜など、日本で大量に植林している針葉樹を使った合板も出てきており、合板の生産が地場産業になっている地域もあります。

(3) 合板の使用用途

合板は加工しやすく安価で手に入るので、多様な用途で使われます。

最もよく使われているのは「コンパネ(コンクリートパネル)」と言われる用途で、建物の基礎を作るときにコンクリートを流し込む型枠として使われます。耐水加工をしてあるので、洗って繰り返して使うことができます。

構造用合板は、住宅の壁、床、天井の下地材かつ耐力壁をかねて使われます。住宅の構造を補強し、かつ大量に使われるものなので、耐力や接着剤などで厳しい基準が設けられています。

家具や建具にも使われます。シナ合板やラワン合板は、軽くて加工しやすい、大きな面材としても使われるので、建具でご覧になったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

(2) なぜ合板を使うのか

住宅建築で合板を使う理由は、2つあります。

一つは、押入れの内部など、外からは見えないところの仕上げを安価に済ませるため。合板は一応「木材」なので仕上げ材として使うこともできます。

もう一つは耐震性を担保するという意味合いです。合板は木材を積層して接着し、熱で圧着しているため、地震の揺れに対する耐力があります。耐震改修では構造用の合板を使い、壁の耐力を補強します。

合板は木材を原料として工業製品で、規格を統一することができ、変形しない、軽い、広い面積を得られるといったメリットもあります。何より無垢材よりも価格が安いです。デメリットは、直接仕上げをする時に接着剤のヤニが出たり、接着剤自体の化学物質に反応したり、無垢材ならではのやわらかさや質感を得られないということがあります。

(1) 「合板ゼロの家」の今。

建築用材として重要な役割を担う「合板」。

大丸建設では、合板は有害化学物質を含むとして、一時期、極力使わない方向に切り替えていた時があります。大丸建設が所属する「チルチンびと『地域主義工務店』の会」では、「合板ゼロの家」を推奨していました。なぜ、合板を使わないほうがいいのでしょうか?

合板は、薄くスライスした木材を接着剤で貼り合わせて、機械で圧着した板材で、木材ではあるのですが接着剤の要素も多く、まさに工業製品と言えます。以前、合板に使われている接着剤に有害な化学物質が含まれており、それがシックハウスの原因物質の一つになっているとして、大丸建設では極力使わないようにしていました。

今は、接着剤の有害化学物質を極力減らす法律ができているため、有害な合板はだいぶ減ってきています。

 

(8) 材を生かすのも「人」です

これまで、大丸建設でお付き合いのある産地の材木ごとに「県民性」をみていきましたが、いかがでしたでしょうか?

一般的に、寒いところの材木は、目が詰まっていて、時に、雪に押しつぶされて曲がるなどして、表情が豊かだと言われています。温かい地方は杉が早く育って大きくなるので、目が粗いという印象がありましたが、林業家の努力によってとても良質な材ができるようになっています。

気候風土による材の特質は確かにありますが、植林から育林や製材・乾燥の技術といった、一貫生産による質の向上と、林業に関わる人々の努力、それこそ「100年の計」での材木づくりこそが、材の質を左右します。

志のある産地とのお付き合いで、確かな材を取り寄せ、いい住まいをつくっていきたい。それが大丸建設の、住まいづくりの志と言えます。

(7) 今後、高知の土佐材もとっていきたい。

大丸建設では、紀州『山長商店』の杉材をメインに、栃木県の『益子林業』、宮城県の『くりこまくんえん』と、全国各地から直接木材を取り寄せています。大丸建設のような自然素材と日本の伝統的な工法を大切にしている工務店では、どのような材を使うのかが「命」とも言えます。

一方で、会社としては、さまざまな産地と提携することでリスクを分散し、確実に良質な材を確保するとともに、お客様の要望に合わせて、材の「県民性」ならぬ「適材適所」でよりよい家づくりをしたいと考えています。

土佐檜のブランドで有名な高知県産材も今後取り寄せていく予定です。土佐の山林は急傾斜のイメージがありますが、行ってみたところ林地は意外にも平らで、木材は素直に育っていると感じました。目が詰まっていて、いい材だなと思い、ぜひ大丸の住まいに使ってみたい、と。そんなふうに思わせてくれる山地との出会いは、楽しいものです。

*大丸建設は、「一般社団法人 高知県木材協会」の東京都土佐材パートナー企業になっております。

[参照:http://www.k-kenmoku.com/untitled177.html]