脱炭素な住まい_8 近くの工務店を選ぶということ

今年の後半は、気候危機から脱炭素まで、環境問題と住まいを結びつけた発信をしてきました。これからの時代、持続可能性について考えることなしに、快適な住まいも、暮らしも、実現することはますます難しくなってくるでしょう。私たちが生活の中で排出するCO2が、猛暑や豪雨などの自然災害に直結している。ここまで進んでしまった異常気象は、すぐに戻ることはないけれど、取り返しのつかないことになる前に、できることはたくさんあります。

なるべく近くで採れたものを食べる。近くの材木で家を建てる。そうした選択の一つひとつが、持続可能なライフスタイルにつながります。

そして、近くの工務店を選ぶということも、実は脱炭素な住まいづくりで重要なポイントになると思います。経済圏をなるべく身近なところで回していく。工務店のスタッフだけでなく、職人の技術も、地産地消であることで、未来に受け継いでいくことができます。脱炭素な住まいは、人から始まるのです。

今年も私のブログをお読みくださいまして、ありがとうございました。この先も、地域の方々に有益な情報をお届けできるように精進していきます。よいお年をお迎えください。

脱炭素な住まい_7 国産材利用の意味

LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナス住宅)は、国産材を使った住まいづくりで優位になります。国産材を使うことは、材木そのものがCO2を吸収した結果炭素を固定しているものであるので、CO2の削減に寄与しています。また、外国産材を使うよりも木材を輸送するコストや運搬時のCO2を大幅に削減することができます。日本の木材自給率は40%程度ですので、まだ半分以上を外国産材の輸入でまかなっている現状から、国産材を使う家づくりは脱炭素な建築と言えるでしょう。

LCCMという考え方は、住まいだけでなく、ライフスタイル全般に有益です。例えば料理のために野菜を買う時。自宅の近くで採れた地産地消の野菜であれば、新鮮でみずみずしく、一方で運搬コストや冷蔵コストも最小限で済むという両方のメリットがあります。洋服を買うときも、環境配慮だけでなく児童労働がないなど人権問題にも配慮したフェアトレードのものを選ぶという選択もできます。今なら大手衣料品メーカーでは、店頭に古着の回収ボックスを設置し、リサイクルやリユースを進めています。

脱炭素な住まいを選ぶということは、生活も脱炭素に近づいていくことになるのではないでしょうか。

脱炭素な住まい_6 LCCM住宅とは

LCCM住宅とは、ライフサイクルカーボンマイナス住宅を意味します。国交相の定義では、「建設時、運用時、廃棄時において出来るだけ省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含めライフサイクルを通じてのCO2の収支をマイナスにする住宅」となっています。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)をさらに高性能にしたもので、省エネ+創エネでエネルギー収支がゼロの住宅より、さらにCO2排出量の収支をマイナスにした住宅のことを指します。ここでポイントなのは、ZEHがその住宅に暮らしている時のゼロエネルギーであるのに対し、LCCM住宅は建築時+住んでいる時+住宅を解体して廃棄する時のライフサイクル全体でカーボンをマイナスにする、という考え方のことです。

そのため、たとえば建材を製造する時の工場で創エネしているとか、国産の木材を使うことでCO2を吸収しているなどの要素も加味されることになります。住宅がつくられ、廃棄されるまでのライフサイクル全体でカーボンを減らしていくという考え方が採用されています。

脱炭素な住まい_5 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)=ゼッチとは

ライフサイクルコストの低い住宅として、2010年ごろからZEH(ゼッチ)=ゼロエネルギーハウスが提唱されるようになりました。これは、読んで字の如く、エネルギーがゼロの住宅を指しますが、ここに「ネット」とつくのは、エネルギー消費量がゼロなのではなく、太陽光発電等によってエネルギーを生産することで、年間のエネルギー収支がゼロになることです。ネットには「正味」という意味があります。エネルギーが正味ゼロということは、エネルギーの消費量と生産量を差し引いてゼロになる、という意味です。

国交相のZEHの定義は、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」です。つまり、ZEHには断熱が欠かせず、室内環境の向上と省エネ、そして創エネがセットになった住宅のことを指します。

脱炭素な住まい_4 住宅を長寿命にしていくには

住宅を新築するときには、建築時の費用(イニシャルコスト)だけでなく、住んでいる時の光熱費(ランニングコスト)や、メンテナンス・リフォームなどにかかる費用(メンテナンスコスト)を考慮した住まいづくりが大切です。住宅が建築されてから解体・廃棄されるまでのライフサイクルコストをシミュレーションし、トータルでコストが下がる住宅の方が、地球環境への負荷も少ない住まいと言えるでしょう。

断熱性能が高い住宅は光熱費をメインとしたランニングコストを低減することができます。住宅のメンテナンスで最も頻度が高いのは外壁の塗り直しや屋根の修繕といった、屋外空間に関わる部分です。この資材を堅牢なものにすることで、メンテナンスコストを抑えることができます。堅牢で耐震性の高い住宅は、地震や豪雨災害などによる住宅の破損リスクを減らすことができます。

ライフサイクルコストの低い住宅は、結果的に温室効果ガスの排出量が低い住宅ということができます。ライフサイクルカーボンゼロ、カーボンマイナス住宅の補助制度もあります。

脱炭素な住まい_3 住宅のライフサイクルコストとは

住宅の建築時から廃棄・解体に至るまでの総費用のことをライフサイクルコスト(LLC=Life Cycle Cost)といいます。人の一生の中で、住宅を建築することは最も高価な買い物と言えるほど、取得費用(イニシャルコスト、ここでは建築費用に相当する)をいかに抑えるかに着目されがちです。しかし、本来住宅に払う費用とは、そこに住んでいる期間の光熱費やメンテナンス費用、大規模な修繕費用等も含めたランニングコストも踏まえて検討することが大切です。

建築費を安く抑えるために、断熱材を薄くしたり、部材も安価なものにして、窓サッシも最低限のシングルガラスにするなど、最低限の装備で低品質な住まいになると、結果的に断熱効果が低く冷暖房コストがかかってしまう、接合金物などが劣化して住まいの耐久性が低下するなどの悪影響が予想されます。結果的に快適な住まいとはほど遠いものになり、修繕費や冷暖房費が高額になってしまうなど、その家に住んでいる際のトータルコストが割高になってしまうこともあります。

結果、環境への負荷もかかり、個人の財産にも、地球環境にも負荷のかかる住まいになってしまわないよう、最初の段階で検討することが大切です。

脱炭素な住まい_2 ロングライフな住宅づくり

日本は、住宅の寿命で世界の先進国の中でも最も短い国の一つです。日本の住宅の平均利用期間(新築してから取り壊されるまでの期間)は約30年。アメリカが55年、イギリスが77年という寿命に比べると、いかに短いかがわかります。

日本の気候風土や地震の発生頻度といった地理的な条件に左右されていることが大きいのですが、日本が諸外国に比べて「新しいものの方が価値がある」という価値観による新築志向が偏重していることにもあるように思えます。

日本は1981年以降に建てられた住宅が約6割を占めるのに対し(1981年は住宅の建築基準が変わり、耐震基準が厳しくなった年です)、1950年以前に建てられた住宅は5%以下です。欧米、特にイギリスでは1950年以前に建てられた住宅が4割を超えていることから、欧米では古いものを大切に使って長持ちさせる価値観が根付いていると言えるでしょう。

(日本は1945年に終結した第二次世界大戦で住宅にも大きな被害を受けたこともあり、1950年以前の建物が少ないとも言えます)