気候変動から気候危機に_2 気候危機による影響

気候危機によって、私たちの生活は大きな影響を受けています。今年の日本は、暑く長い夏になりました。東京の真夏日の期間は90日に及び、夏の間は外出したり、外でのスポーツが命の危険に直結するような事態に。熱中症による緊急搬送や死亡事例も後を絶ちません。

極端な豪雨や台風の激化も増えています。気象予報で「緊急安全確保」「避難指示」といった、命を守るための行動を呼びかけられるようになりました。河川の氾濫や土砂災害などで、生活基盤を奪われる人も増えています。

農作物への影響も甚大で、豪雨被害などによる作物の被害だけでなく、気温が上がることによりコメの品質低下や、作付の適地が北上する、畜産や酪農で家畜が暑さにやられる、魚の生息域が変わるなど、第一次産業は大打撃を受けています。

環境より経済が優先と言われていた時代はとうに過ぎ、環境に対してきちんと対策をしなければ経済基盤も奪われてしまうことになりかねないのが気候危機時代の特徴です。

 

 

気候変動から気候危機に_1 生ぬるくない危機感

2023年の長く厳しい猛暑を思い起こすと、地球温暖化という言葉が生ぬるいと思えるほどの状況でした。メディアは「地球沸騰化」という言葉を使うようになり、私たちを取り巻く環境が大きく変化していることを感じます。

地球温暖化は、世界をとりまく「気候変動」の一つのトレンドであり、地球の平均気温が少しずつ右肩上がりになるなかで、さまざまな環境変化が起こっていることを表しています。環境省が毎年発表している「環境・循環型社会・生物多様性白書(環境白書)」では、気候変動の影響と見られる災害が激化していることを受け、人類だけでなく、すべての生物にとって生活基盤が脅かされる状態にあるとし、「気候危機」という表現を打ち出しました。

気候が「変動している」から「危機に陥っている」と表現が変わることによって、今起こっている状況が変わるわけではありません。危機的状況を正しく理解し、行動を変えることにより、初めて状況が変わるのではないでしょうか。

史上最も暑い夏_8 この先の気候はどうなるのか

2023年、史上最も暑かった夏をデータで振り返ると、日本の気候の変化の階段を一足飛びに駆け上がったような感覚があります。これまで「異常気象」ととらえられていた気候が常態化し、今後もその傾向が続くとなると、これから私たちは、「東京の夏は暑く、長くなる」と思って備えていく方がよさそうです。

それには、ライフスタイルの変化が欠かせません。これまでと同じように温室効果ガスをたくさん排出する生活をしていては、ますます地球温暖化は進み、暑さでしんどさを感じる夏が長期化し、生活しづらくなってしまいます。マイボトルやエコバッグを使うといった小さな心がけも大切ですが、温暖化対策として有効なのは住まいの断熱をしっかり進めることや、移動の低炭素化といった、抜本的な対策が必要になってきます。特に断熱については、熱中症予防や健康維持にも直結するので、ぜひとも検討していただきたいテーマです。

今夏の猛暑は、今後のライフスタイルに大きな影響を与えたと思います。今こそ、本気で変わる時なのではないでしょうか。

史上最も暑い夏_7 1年の4分の1が真夏日

10月になってようやく「秋らしい」気候になってきました。9月末までの推移で、東京の真夏日(最高気温が30度以上)は年間90日ほどになり、1年365日のうち、実に4分の1が真夏日という気象になりました。地方部でも暑さがひどかったというデータが残っていますが、東京の場合はアスファルトの照り返しや、車の排気・エアコンの排熱などで、よけいに暑さを感じることも多かったのではないかと思います。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、9月は秋のお彼岸(秋分の日、2023年は9月23日)を過ぎても東京では真夏日が続きました(9月28日に33.2度)。10月に入ってようやく最高気温が29,9度(10月1日)となり、それ以降は秋らしいさわやかな気候が続いています。

2023年の猛暑は、気温が高かったことと、それが長期化したことが特徴です。この傾向は今後も続くのか注意が必要ですが、21世紀に入ってからの気候変動の傾向は、徐々に気温が上がっていく方にグラフが傾いていますので、「夏が長く、暑くなる」という心構えをしておく方がよさそうです。

史上最も暑い夏_6 今年の冬はどうなる?

2023年はエルニーニョ現象が起こったため、ここまでの猛暑が続いたと言われています。エルニーニョとはスペイン語で「神の子」を意味し、南米のペルー沖から赤道付近までの海水温が高くなる現象が1年ほど続くこと。2023年のエルニーニョ現象は、過去最大と言われ「スーパーエルニーニョ」とも言われています。

実はエルニーニョ現象によって、海水温による風の向きに変化が起こるため、日本にとっては「冷夏をもたらす」と言われているのですが、実際には史上最高の猛暑となりました。これは、2023年春まで続いた「ラニーニャ現象」の影響が残っているためと言われています。ラニーニャ現象はエルニーニョと反対で、インドネシアなど太平洋西部の海水温度が高くなる現象で、その影響で今夏は暑かったという予想がされています。

夏はエルニーニョ現象が起こっていたので、今年の冬は暖冬の予想もあります。夏暑く、冬も暖かいとなると、年間平均気温はますます上昇しそうな見込みです。

 

史上最も暑い夏_5 暑さの中での現場作業

今年の大丸建設の建築現場では、大工さんが「この暑さは本当に大変」とつぶやいていました。私が大丸建設に入社してからの25年ほどの間で、最も暑かったと言い切っていいと思います。職人さんの言葉にもあるように、これから先、どのように建築現場での安全性を確保していくか、会社としても重要課題だと感じています。

最近では暑さ対策のためのさまざまなグッズが出ています。首にまく保冷剤や空調ベスト、塩分タブレットなど、個々の暑さ対策と工夫はとても大切です。

少しでも涼しいうちに現場に出て作業を進めるとか、日中長めに休みをとって体力を温存するなどの対策も進めたいのですが、それには建築現場での近隣のご理解が必要となります。最近では中高生の部活でも、練習時間を早めたり、熱中症の危険性が高い時には屋外でのスポーツを控えるなどの対策も進んできています。数十年前には水筒を持ち歩くことがあまりなかったのが、今では水分補給が当たり前の時代です。社会全体で「暑さから命を守る」ことへの関心と理解を高めていくことが必要になってきます。

 

史上最も暑い夏_4 本社での暑さ対策

大丸建設の本社では、今年、業者に入ってもらい、エアコンのクリーニングを行いました。業者さんが室外機まで本当にていねいに掃除をしてくださったので、冷気が心地よく循環し、快適性が高まりました。私自身が実際に執務をする中で、明らかに空気がきれいになったのを感じ、実感をもってエアコンクリーニングの効果をお客さまに説明できるようになりました。実際に電気代の節約効果もあるため、「我慢の省エネ」ではなく「効果的な省エネ」につながります。

また、パートタイムスタッフが2階の断熱対策をしてくれました。直射日光が当たる窓に遮光カーテンをつけてくれたことで、エアコンの効きが高まり、執務環境がよくなりました。「夏の窓はストーブ」とはよく言ったもので、窓の断熱・遮熱対策をすることが、そのまま暑さ対策や省エネ対策につながり、ひいては健康維持、環境保全にもつながります。

身近にできることをおろそかにせず、一人ひとりの行動が、環境と調和していく大きな一歩になるのだと感じます。