耐震グレーゾーン住宅を解消したい(8)まずは耐震診断から

耐震診断を行う場合、お客様には何らかの不安があり、その不安には原因があります。耐震診断の結果、耐震性能を満たしている基準が「1」とすると、だいたい「0.2」とか「0.3」という数字が出てきてしまいます。数字の結果だけ見ると「この家、壊れてしまうんですか?」とますます不安に陥ってしまいますが、現時点でその家は建っているので、すぐに命に直結するわけではありません。首都圏に大震災が起こった時に、その家の中にいた場合に倒壊してしまう危険性があるということで、それも可能性の話なのです。

事前に診断を申し出てくださったことで、その不安は解消できる可能性が高いのです。壁量が足りなければ、目立たない押し入れ等に耐力壁を入れ、それだけで足りない場合は居住性を損なわないよう工夫しながら筋交を入れる、金物で補強するなどの対策をとります。

人一人ひとりが異なるように、家の耐震性能もその家によってまったく異なります。「旧耐震」「新耐震」「2000年基準」という言葉だけで判断せず、専門家に依頼して正確な状態を把握しましょう。そのうえで、その家にあったオーダーメイドの耐震診断、そして必要な改修をしていくことで、必要以上に不安にならず、的確な耐震対策をしていくべきです。

ご不安なこと、ご不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(7) 耐震診断のプロとして不安の原因を究明する

私は東京都建築士事務所協会に所属しており、耐震診断のプロとして、これまで数々の木造戸建て住宅の耐震診断に関わってきました。私が耐震診断をする時に心がけているのは、淡々と事実をお伝えして、過度に地震に対する不安を煽らないようにする、ということです。

旧耐震の建物であっても、「震度5程度の揺れでは倒壊しない」ことが前提に建てられているため、今住んでいる家の耐震性が十分でなくても、今すぐに命を落とすわけではない、という前提に立ちます。まずは正確な状況の判断に努め、何をどうすれば耐震性能を確保できるのかを的確に判断していきます。耐震診断を依頼される、という時点で、そのお客さまは何らかの不安をもって我々に問い合わせてくださいます。何が心配なのかを明らかにして、その原因を確実に解消していく。旧耐震で壁量自体が足りないのか、雨漏りしていて構造体が劣化しているのか、グレーゾーン住宅で壁の配置のバランスが悪いのか、その原因を究明することによって、適切な対処ができるようになるからです。

 

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(6) 東京都建築士事務所協会の提言

私が所属している「一般社団法人東京都建築士事務所協会」では、昨年11月に「新耐震グレーゾーン木造住宅耐震化促進についての提案」を行いました。熊本地震の現地調査や、事務所協会でのこれまで行ってきた数々の調査分析をもとに、東京都内の木造住宅の耐震診断実績等を交えて、細かく検証を行っています。私も数多くの住宅の耐震診断をしてきましたが、グレーゾーン住宅では耐力壁の壁量は基準を満たしていても、開口部の大きな南側と北側での壁量のバランスが悪い、柱と梁の接合部の金物の仕様が異なるなどの課題が見つかっています。

事務所協会の調査結果から、グレーゾーン住宅の耐震性能は旧耐震と2000年基準の中間に位置しており、本来必要とされる耐震性能を下回るものが多いことがわかりました。温暖化対策やエネルギー対策から屋根への太陽光発電パネルの搭載が増え、屋根荷重が増大してさらなる耐震性の向上が求められています。こうしたことを踏まえ、事務所協会ではグレーゾーン住宅の耐震化に関わり、都内自治体での耐震化補助への提言を進めていくこととしています。

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(5)グレーゾーン住宅耐震改修への補助が必要

東京都は「東京都耐震改修促進計画」において、令和元年度末までに都内の86%の住宅が耐震基準を満たしているとされており、令和7年度末までに耐震性が不足する住宅をおおむね解消する目標を掲げています。ここでいう耐震基準とは「新耐震」のことで、「2000年基準」ではないため、1981年〜2000年のいわゆる「グレーゾーン住宅」も含まれることになります。

東京都内ではグレーゾーン住宅に対して耐震リフォームの補助を実施しているのは、港区、杉並区、江戸川区、三鷹市の4自治体です。首都圏直下地震のリスクがある現状では、新耐震基準を満たしていれば十分という認識から、今後は2000年基準を目指した耐震助成が増えていくべきだと私は考えています。1981年以前の旧耐震基準の住宅は今後築年数の経過に伴って淘汰されていくことでしょう。今後はグレーゾーン住宅自体が耐震診断の対象となり、2000年基準の耐震改修への補助が広がっていくことを期待します。

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(4)大震災後に見直される耐震基準

1978年に起こった宮城沖地震で7400戸の住宅が倒壊したことを受けて、建築基準法が見直されました。当時は震度5程度の揺れで「倒壊しない、損傷しても修繕できる」というレベルの耐震基準でした。宮城沖地震では建物やブロック塀の倒壊によって亡くなった方がいたからです。これによって、1981年に新耐震基準が適用されることになりました。

一方で、新耐震以降に「2000年基準」ができたのは、1995年の阪神・淡路大震災の検証を受けてのことです。新耐震によって耐力壁の量や倍率が強化されたものの、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の中に、柱や梁、土台などの連結部が抜けてしまうものや、耐力壁の配置バランスが悪く倒壊してしまった建物があったことから、接合部や基礎と構造物を金物で連結することや、耐力壁をバランスよく配置することが定められていきました。

木造住宅の耐震性においては、2000年基準を満たしたものであれば、現時点での耐震性は十分と言えます。1981年以前の旧耐震の建物は、残念ながら住宅ローン控除の対象にはなりません。新耐震ではあるものの2000年基準に満たない1981年6月1日〜2000年5月31日までに建築確認を受けた建物は、一般的に「グレーゾーン住宅」とされます。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(3)新耐震基準と2000年基準

新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認が行われた住宅のことで、それ以前の木造住宅よりも耐力壁の量や倍率を確保するなどして、震度6〜7程度の地震でも倒壊しないレベルまで耐震性能が引き上げられました。

しかし、1995年に発生した阪神・淡路大震災によって多くの木造建物が倒壊し、このことによってさらに新耐震基準が見直されることになりました。阪神・淡路大震災で倒壊した建物の98%は旧耐震の建物でしたが、一方で新耐震の建物でも倒壊したものがありました。新耐震基準で倒壊している建物は、柱や梁の接合部、基礎との連結部分などに問題があることがわかったから基準の見直しに至ったのです。

2000年6月1日以降に建築確認が行われた建物は「2000年基準」を満たした建物、ということができます。柱、梁、筋交、土台等の各接合部に金具を使って固定し、大きな横揺れが起こった際に柱が抜けて倒壊するようなことが起こらないようにします。また、耐力壁の配置バランスに対する基準を設け、部分によって偏りが出ないような設計が求められます。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_2 新耐震と旧耐震の違い

みなさんは「旧耐震」「新耐震」という言葉を聞いたことはありますか?

1981年(昭和56年)6月1日に施行された改正建築基準法によって、耐震基準が改定されました。旧耐震基準とは、1950年から1981年5月31日までの間に建築確認が行われた建物に適用された耐震基準のことで、震度5程度の地震で「建物が倒壊しない、建物が損傷しても補修することで生活が可能なレベル」の建物を指します。

一方、新耐震基準は1981年6月以降に建築確認が行われた建物で、震度6〜7程度の揺れが生じても建物が崩壊しない(多少の損傷は許容)、震度5程度の揺れでは家屋がほとんど損傷しないための基準を満たした建物です。

注意しなければならないのは「1981年築」と書かれた建物が全て新耐震基準かというとそうではなく、竣工日が6月1日以降であっても、「確認申請が行われた日」が6月1日より前の場合は旧耐震が適用されているかもしれない、ということです。そもそもの建物の耐震性や、住宅ローン控除に影響するため、その建物が「旧耐震」か「新耐震」かは念入りに確認する必要があります。

 

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_1 関東大震災から100年

2011年3月11日に起きた東日本大震災から12年が経とうとしています。2023年は関東大震災からちょうど100年にあたる年でもあり、あらためて木造住宅の耐震性について考えてみたいと思います。

関東大震災は1923年9月1日、11時58分に起こりました。マグニチュード7.9の巨大地震で、津波や土砂災害なども発生。死者は10万5000人以上、30万棟以上の建物が全壊、消失し、近代日本で最大の被害をもたらしました。

特に住宅地が密集している東京での被害が甚大だったため、東京での地震と思われがちですが、震源は神奈川県西部で、静岡県熱海市で最大高さ12mの津波を観測、神奈川県や千葉県にも大きな被害がありました。

関東大震災の教訓をもとに、毎年9月1日を「防災の日」と定めています。この100年で、阪神・淡路大震災や中越地震、東日本大震災など、日本では数多くの震災を経験しています。今後30年以内に首都圏直下地震のリスクが予測されている東京で、どのような耐震対策が進んでいるのか、ひもときます。