東日本大震災の記憶をたぐり寄せると、時々、胸が痛むことがあります。震災直後の東京は、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどからあっという間にモノが消えてなくなり、買い占めの長蛇の列の凄まじい状況に、言葉を失いました。
4月下旬には宮城県・岩手県に入り、ボランティアをしてきましたが、東北の人たちは支援物資などを分かち合い、誰もが大変な状況なのにも関わらず、周囲の人のことを思いやり、助け合っていました。
震災直後の東京と、東北で、こんなにも違う光景を目にして、もし東京で大地震が起こったら、私たちは助け合えるのだろうかと、心配に思っています。
東京では今後4年以内に直下型の大地震が起こる可能性が70%以上と言われています。防災備品を蓄えることも大切ですが、いざという時に隣近所の方や、その時同じ場所に居合わせた人と助け合えるような、やさしい人間関係を育んでいくことも同じくらいに大切なのではないかと、私は思います。
月別: 2013年3月
常に防災用品を携行するのか、身軽に動くのか。
備えあれば憂いなし、とは言うものの、ご家庭にストックしてある防災備品すべてを持って移動したり、避難することは難しいのではないかと私は思います。特にご高齢の方や小さなお子さんを抱えている方は、無理して大きな荷物を持つよりも、まずは守るべき存在を最優先にしてほしいと思います。
私は、防災袋には食料品や水などを大量に入れておくよりも、救急用品をコンパクトにまとめておいて、サッとそれを持って身軽に動く方がいいと思います。地震で餓死者が出ることは、まずありません。数時間から1-2日のうちに救援物資が届きます。それよりも、怪我をしたら逃げることも動くことも難しくなってしまうので、絆創膏、包帯、消毒薬、はさみ、カッター、脱脂綿などをすぐに取り出せる位置に置いておくようにして、万が一自宅で篭城するようなことがあれば防災備品の食料や水を活用するのがよいと思います。
また、携帯電話などがつながらない状況のなかで、1本マジックがあれば、自分の居場所や安否だけを近くにある紙でも壁にでも書いておけるので、マジックの携行をおすすめします。
揺れが収まってから、次の動きを考えよう。
揺れが収まったら、冷静に、周囲の状況を見渡しましょう。地震が起きた時にどこにいるかによって次の行動が変わってきます。自宅にいるのであれば、その建物が安全かそうでないのか判断する。明らかに平衡感覚がおかしくなるくらいに傾いていたら危険なので、すぐに扉を開け出口を確保し、外に出るようにします。安全が確保できていると感じたら、家にとどまるのが安心です。
仕事先や外出先で地震に遭遇したら、周囲を見渡し、何を優先すべきか考えます。仕事が継続できる状況なのか、仕事のケアをしなければならないのか、周囲にケガ等をしている人がいないかなど……。周囲の人たちと相談し、すぐにできることをやります。帰宅する選択肢があっても、自宅があまりに遠い場合は、無理して帰らずに安全な場所に身を寄せるのも一つです。
大地震が起こったら、数分から数時間内に余震が起こります。余震で二次被害を被らないよう、冷静に対策していきましょう。
止まらない地震はない。
地震が起こる仕組みや、初期微動、緊急地震速報のメカニズムを少しでも理解していると、いざという時に慌てずに、素早い対応ができるようになるかもしれません。私は建築や耐震の専門家でもあるので、できるだけお客様やこのブログの読者の皆さんに、防災についてわかりやすい言葉でお伝えしていきたいと思っています。
地震が起こったら、まずは慌てず、身の安全を確保すること。私が最も伝えたいのは、このことです。
地震は、必ず止まります。揺れの状況を冷静に判断し、長くても数分、身の安全だけ守り、生き延びることを最優先します。
もしかしたら、台所の火が心配かもしれない。大丈夫、マイコンメーターが地震を感知すれば火は止まります。逃げることを考えて鞄などを探すかもしれない。でも、それよりも、命を守ることが最優先。だから、すぐに机やテーブルなどの下にもぐって、建物や家具の倒壊、上に置いてあるもの等の飛散から身を守るようにしてください。
地震の波にはP波とS波がある。
皆さん、中学校や高校の理科の授業で、P波とS波という言葉を聞いたことがあるかと思います。地震が発生すると、震源から波紋のように地震波が伝わり、最初にP波(初期微動)、続いてS波(本震)がやってきます。
P波は縦に揺れる波で、先にやってくる地震の波動です。P波は速度が速く、続いてやってくるのがS波です。S波は主要動とも言われ、大きな横揺れをもたらします。地震の被害は主にS波の横揺れによるものです。
緊急地震速報の仕組みは、地震発生の際に地震計がP波を感知し、そのデータを即気象庁に転送します。P波のデータからマグニチュードや震源を解析し、緊急地震速報として発表します。
家が倒壊したり被害を受けるのは、主にS波による横揺れが原因です。建築物は重力に耐えうるようにできているので、縦揺れには強いのですが、横にかかる力に対しては弱く、耐震性の高い建物とは、横からの力に対する耐力が強い建物と言えます。
地震はなぜ起こるのか?
地震が発生するメカニズムは、大きく2つあると考えられています。
一つは、海溝型(プレート境界型)で、地中深くの岩盤(プレート)に巨大なエネルギー負荷がかかり、衝撃を吸収しきれなくなった時に、プレートのずれ、ひずみなどが起こり、それが地震につながります。プレート型の地震は陸から離れた海底で起こることが多く、津波を引き起こすこともあります。震源も深く、揺れが広範囲に広がりやすいと言われています。東日本大震災はプレート型の地震でした。地震による死者よりも、津波の方の被害が大きかったと考えられています。
もう一つは内陸型(直下型)地震です。こちらは断層のずれによって起こり、震源は浅いです。揺れの範囲はプレート型に比べると局地的ですが、直下型の地震ということもあり被害が大きくなりやすいのが特徴です。阪神・淡路大震災は直下型の地震で、建物の倒壊による圧死が死者の多数を占めたと言われています。
マグニチュードは地震のエネルギーの大きさ
震度は、ほんの20年くらい前までは、感覚的に決められていました。揺れを体感した人たちの感性で、「だいたいこのくらい」で震度が決まっていたのです。阪神・淡路大震災が起きたころには、県庁所在地などの大都市で幾つか震度計が設けられ、感覚的なものから、より精度の高い震度が得られるようになりました。
1つの地震に対し、震度は各地で違い、幾つもの震度がありますが、地震のエネルギーの規模を示すマグニチュードは、1つの地震で1つだけです。東日本大震災はマグニチュード9.0。世界中で観測史上4番目に大きい地震だそうです。
震度は全部で10段階
東日本大震災から2年が経ちました。3月11日の記憶は生々しく、私は当時、竣工間近の建築現場で震度5強の揺れを体感しました。その時のことは、詳しくは昨年3月のブログでご紹介しています。
http://kkdaimaruy.blog101.fc2.com/blog-date-201203.html
震度5強は、私もこれまで体感したことのないほどの揺れで、一般には「立っていられない状態。かなりの恐怖を覚える」レベルだと言われています。
いま、日本で「震度」と呼ばれる揺れの体感を表す強さは、全部で10段階あります。
震度0、震度1、震度2、震度3、震度4、震度5弱、震度5、震度5強、震度6弱、震度6、震度6強、震度7で、東日本大震災で最も揺れた宮城県北部の栗原市築館エリアでは最大震度7まで揺れました。