2026年08月04日(火)

第8回 資材高騰⑧家づくりを止めない

最後に、家づくりの外側で起きていることにも、少し触れておきたいと思います。

最近、公共工事の世界では、「契約不調」という言葉を耳にする機会が増えてきました。資材も人件費も上がるなかで、定められた予算では現実的に工事を引き受けられず、入札が成立しない、ということが起きはじめています。公共施設や、地域のインフラの維持にも、影響が及ばないか心配です。

住まいの世界も無関係ではありません。家を建てるためのコストは、おそらくこの先しばらく、高い水準にとどまります。逆に、下がるという見通しを、現段階では誰も立てづらい状況です。住宅ローンの金利もじわりと動いており、今後は「現在の高止まり水準」を基準に家づくりを判断していく時代になることでしょう。

そういう意味では、私は常に「今が建てどき」だと考えています。これまでも、待っていて家が安くなった時代は、そう多くはありませんでした。この資材高騰が落ち着いた状況になっても、人件費の上昇は続くでしょうし、その分、賃金上昇や物価上昇など、別のかたちで経済は動いていくからです。

私たちの務めは、まずは「材料がないために工期が遅れる」という、おかしな状況をなくしていくことです。仕入れ先と力を合わせ、企業努力を重ねながら、家づくりを止めない。それが、いま私たちが果たすべきいちばんの役割だと感じています。

 

 

2026年07月31日(金)

第7回 資材高騰⑦材料の値上げの影響と説明責任

これからしばらくは、住宅設備や建材メーカーから出てくる製品の価格が、軒並み上がっていくことが見込まれます。価格上昇が一割で済むのか、二割を超えるのか。いま現場の感覚では、10%から20%ほどの値上げは覚悟しておかなくてはならない、という感触です。

大丸建設では今のところ、お客さまへの価格転嫁は、できる限りおさえていこうと努力しています。ただ、メーカーから上がってきた分を、すべて当社のなかで吸収するのは、現実的には難しい部分があります。仮に2割の値上げをそのまま受け止めれば、私たちの利益はほぼ残らない、ということになり、会社の存続に直結します。

それでも、闇雲に値段を上げるつもりは、まったくありません。一棟一棟の見積もりのなかで、一つひとつの工程に対して、誠実に整理していきたいと考えています。お客さまにご負担をお願いする場合には、その背景までできる限り丁寧にお伝えしていきます。

企業努力を続けるのは、もちろん私たちの仕事です。仕入れ先と粘り強く相談し、無駄のない発注を心がけ、現場の段取りを工夫していく。そうした地道な積み重ねを、これからも続けていきます。同時に、起きていることを正直にお伝えしていくこともまた、地域工務店としての私たちの責任だと感じています。お客様の住まいを長くメンテナンスして暮らしを支え続けるために、私たち自身も企業として長く続いていくことは一つの責任でもあるからです。

2026年07月28日(火)

第6回 資材高騰⑥自然素材を熟知する強み

ここまで書いてきた塗料、防水材、ベニヤ、断熱材、釘やビス。どれも住まいをつくるうえで欠かせないものですが、今、何がスムーズに入り、何が止まっているのか、その全体像を把握することは難しくなっています。

ひと月前まで普通に入っていた部材が、ある日突然「次回の入荷は未定です」という状況になると、工期に大きく影響してきます。逆に、しばらく止まっていたものが、ふと流通に戻ってくることも同様にあります。私たちのような小さな工務店は、流通全体をコントロールできるわけではありませんから、問屋や仕入れ先、メーカーとの関係性の中で情報を得て、日々の現場に対応させる、というのが精一杯です。

こうした状況のなかで私たちにできるのは、現場ごとに必要な部材を早めに洗い出し、確保できるものから手を打っておくことです。代替がきくものは、あらかじめ選択肢を持っておく。規格が決まっているものは、少し余裕を見て発注しておく。当たり前の段取りを、これまで以上に丁寧に積み重ねるしかありません。

そして、私たちの強みは、手仕事に強いということです。自然素材の持つ断熱性能や調湿性能を熟知しているため、いざとなれば木材で代替できる、自然素材の性能を生かしきる家づくりを提案できることです。こうした「現場力」と現実的な提案でお客様の不安を少しでも取り除いていきたいと思っています。

 

 

2026年07月24日(金)

第5回 資材高騰⑤ナフサショックと買い占め

最近、テレビや建築業界で耳にする言葉に「ナフサショック」があります。ナフサとは、原油から精製される石油化学製品の基礎原料で、そこからさまざまな樹脂系の素材がつくられていきます。住宅で言えば、断熱材や接着剤、配管の樹脂部材など、思いのほか広い範囲がここにつながっています。

中東情勢によって大きく影響を受けたのが断熱材です。一部の高性能断熱材は、入荷の見通しが立たない時期がありました。石油化学製品由来の断熱材の影響が大きく、比較的木質や自然素材由来のものは影響がゆるやかという傾向でした。原料と素材の相関関係を痛感することになりました。

それに加えて気になっているのが、買い占めの動きです。テレビ等でよく見る現象ですが、ホームセンターの棚が空き、釘やビスといった、ふだんは目立たない日用に近い部材まで、品薄の傾向にあるといいます。実際に、何が足りないのか、なぜ足りないのか、はっきりした理由が見えないまま、不安が連鎖して買い占めが起きていくのは、ナフサに限った話ではないように思います。

私たちはひとまず、必要なものを必要な分だけ、誠実に確保していくしかありません。焦って動けば、流通の不安をさらに広げてしまうこともあります。落ち着いて状況を見ていくことが、地域の現場の役目だと考えています。

2026年07月21日(火)

第4回 資材高騰④合板に使われる糊も影響

家の構造や下地に欠かせない部材に、合板、いわゆるベニヤがあります。こちらも縁の下の力持ち的な地味で目立たない存在ですが、耐震性を担保するために必要な構造用合板は、特にリフォームでは欠かせない部材になります。

そのベニヤの価格が、じわじわと上がってきています。木そのものの値段だけでなく、貼り合わせに使う糊、工場から現場までの流通、そしてトラックの運搬。さまざまな段階の値上がりが、最終的なベニヤ板の価格に積み重なってきます。原油の影響が樹脂系の糊にも響き、ガソリン価格の上昇が運搬にものしかかります。

ふだん私たちが「材料費が上がった」というときに、実はこうした見えにくいコストが連動しています。一つの部材の価格に連なるコストを理解しておくことが、無理のない見積もりや、無駄のない発注にもつながっていきます。

ベニヤと同じように、釘やビス、接合金物といった細かな部材も、影響を受けつつあります。一棟の家には、こうした目立たない材料が無数に使われていて、その一つひとつが工程を支えています。

私たちは、長年お付き合いのある仕入れ先と相談しながら、無理のない範囲で資材の手配を進めています。値段の上下に一喜一憂するのではなく、「家づくりを止めない」ことを重視しながら、判断を重ねていきたいと考えています。

2026年07月17日(金)

第3回 資材高騰③大切な「確かめる」こと

家づくりに使う材料は、その種類によって、調達のルートが少しずつ違います。木材は、長くお付き合いをしている産地や材木屋さんから。それ以外の建材や住宅設備、金物類は、多くの場合、メーカーや問屋さん経由で仕入れています。

以前は、必要な部材を発注すれば、ほぼ予定通りに揃ってくるのが当たり前でした。しかし今は、その問屋さんに「これ、いま入りますか」と一つひとつ確認しなければ、あるかないかさえ見えてこない場面が増えています。

特に手こずっているのが、ユニットバスやトイレをはじめとした住宅設備の納期です。納期そのものが出てこないことも、もはや珍しくありません。大丸建設で今進めている現場は、早い段階で発注をかけて確保できていますが、この先の現場については、その都度仕入れ先と相談しながら、見通しを立てるしかないのが実情です。

家づくりの中で、当たり前に流れていた仕入れの仕組みが、うまく成り立たない。中東情勢や大きな災害などによって、当たり前は簡単にひっくり返ってしまいます。私たちはそんな状況を何度か経験しているので、今回も「またか」という感覚で、日々、仕入れ先とのやり取りを重ねています。

一見遠回りに見える「聞く」「確かめる」という地味な作業が、今のような時期には、現場を支えるいちばん確かな手段になっていると感じます。

2026年07月14日(火)

第2回 資材高騰②防水関係は絶対に妥協しない

家づくりに使う塗料は、ふだんあまり話題にのぼらない部材かもしれません。けれども、外壁、木部、室内の建具、屋根材まで、住まいの仕上がりを最後に決めていく大切な役割を担っています。色合いや艶のひと刷毛で、家全体の印象は大きく変わります。

その塗料が、ここに来て少しずつ入りにくくなってきています。今のところ、進行中の現場には支障なく回せていますが、頼みにしている材料問屋さんがいつ動けなくなるかは、正直なところ見通せていません。日々状況が変わるなかで、手探りで仕入れの段取りを組んでいる、というのが現場の実感です。「次に入れたいときに入る保証がない」という前提で動かざるをえません。

塗料が止まれば、最後の仕上げ工程が止まります。住まいの引渡しは、内装や設備が整い、最後の塗装まで終わってはじめて、ご家族の暮らしが始まります。

最近ニュースでよく見る、お菓子のパッケージが無色になったりデザインが変わったりする状況は、よその業界の話ではありません。建築業界ほど深刻とも言えます。

先月のブログでもお伝えしましたが、資材の状況は、ひと月の間にも変わっていきます。今月は、現場のもう少し奥のほうで起きていることや、メーカー品の値上げなど、少し話題を広げてお伝えしていきたいと考えています。

 

2026年07月11日(土)

第1回 資材高騰①「塗料」問題は他人事ではない

家づくりに使う塗料は、ふだんあまり話題にのぼらない部材かもしれません。けれども、外壁、木部、室内の建具、屋根材まで、住まいの仕上がりを最後に決めていく大切な役割を担っています。色合いや艶のひと刷毛で、家全体の印象は大きく変わります。

その塗料が、ここに来て少しずつ入りにくくなってきています。今のところ、進行中の現場には支障なく回せていますが、頼みにしている材料問屋さんがいつ動けなくなるかは、正直なところ見通せていません。日々状況が変わるなかで、手探りで仕入れの段取りを組んでいる、というのが現場の実感です。「次に入れたいときに入る保証がない」という前提で動かざるをえません。

塗料が止まれば、最後の仕上げ工程が止まります。住まいの引渡しは、内装や設備が整い、最後の塗装まで終わってはじめて、ご家族の暮らしが始まります。

最近ニュースでよく見る、お菓子のパッケージが無色になったりデザインが変わったりする状況は、よその業界の話ではありません。建築業界ほど深刻とも言えます。

先月のブログでもお伝えしましたが、資材の状況は、ひと月の間にも変わっていきます。今月は、現場のもう少し奥のほうで起きていることや、メーカー品の値上げなど、少し話題を広げてお伝えしていきたいと考えています。

2026年06月21日(日)

第8回 価格転嫁と、会社を続けていく務め

最後に、お客さまにいちばんお伝えしておきたいことを書きたいと思います。

 

資材や物流のコストが上がり続けるなかで、住宅価格への影響をどう考えるか。私たちの率直な気持ちとしては、お客さまへの価格転嫁は、できる限り最後まで避けたいと考えています。家は人生の大きな買い物ですから、その負担をできる範囲で会社側で吸収するのが、地域工務店としての立場だと感じてきました。

ただ、会社が立ち行かなくなってしまっては、結局はお客さまにご迷惑をかけてしまいます。お引き渡し後のメンテナンスや、住まいの主治医としての長いお付き合いは、私たちが事業を続けていてこそ成り立つものです。そのため、どうしても致し方ない部分については、最小限の見直しをお願いせざるをえない場面も、これから出てくるかもしれません。

 

そうしたお願いをする際には、何が起きていて、どこまで吸収し、どこから見直しになるのか、できる限り丁寧にご説明していきたいと考えています。状況を共有し、ご理解をいただきながら一緒に進めていくことが、地域工務店にできる誠実なやり方だと思っています。

 

160年続いてきた家業を、これからも淡々と続けていく。それが、いま私たちが果たすべき、いちばんの務めだと感じています。

2026年06月18日(木)

第7回 長年の業者さんに、支えられて

資材不足や工期の遅れに直面するなかで、改めて感じているのが、業者さんとの長いお付き合いに支えられている、ということです。

 

材木屋さん、建材店、設備工事の職人さん、基礎工事屋さん、左官屋さん。家を一棟つくるためには、本当に多くの方の力が必要です。大丸建設はその多くと、何十年単位でお付き合いをしてきました。中には、先代の頃から関わってくださっている方もいらっしゃいます。

ふだんの現場では、あまり表に出てこない関係ですが、今のように資材が思うように入らないとき、その積み重ねが大きな意味を持ちます。「いつもの大丸さんなら、なんとかしたい」。そう言って動いてくださる方が、私たちの現場をいくつも支えてくれています。

 

商売としてのやり取りだけでは、こうした関係はつくれません。お互いに無理を言わない、約束を守る、現場の苦労を分かち合う。そういった当たり前のことを、長い時間積み重ねてきた結果なのだと思います。

 

地域に根ざした工務店として、家族のような信頼でつながった業者さんと一緒に、なんとかこの時期を乗り越えていきたい。一棟一棟の家は、こうした方々の力が重なってはじめて形になるものだということを、改めて噛みしめながら、日々の現場に向き合っています。