高齢社会の住宅_6 多様な選択肢を選べるようにしておく

高齢者で、介護が必要になった時に暮らす住宅にはさまざまなタイプがあります。介護型のサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、グループホームなど、介護の度合いや認知症の有無、民間か公営かなど、住まう方や家族の置かれる状況によって選択肢が多様です。いずれも介護専門職員が常駐し、24時間体制でケアに対応します。また、終末期医療や看取りを踏まえて看護職員が常駐するような施設もあります。

こうした介護向けの高齢者住宅が充実してきたのは高齢化社会に向けた対策に政府が本腰を入れた2000年台に入ってから。介護保険制度の適用や「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の制定などによるところが大きいです。高齢者の医療や介護に関する公的なサポートが充実し、民間の手厚いサービスも選べるようになりました。ご自身やご両親が今後年齢を重ねた時に、どんなふうに暮らしていきたいのかを、あらかじめ考えていくことは大切だと思います。

高齢社会の住宅_5 介護が必要になったら

国の制度によって広がったサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。健康なシニアが自立した生活を送りながら、いざという時の安否確認や生活相談(買い物や介護相談など)を受けられる安心感を両立でき、さらに一般の賃貸住宅と金銭的に大きな差がなく暮らせることから、人気を集めています。

一般型のサ高住は、健康な方、もしくは介護度が低い方を対象としているため、介護が必要になった時には外部の介護サービスを利用します。介護度が高まってくる、あるいは認知症になった場合は、介護型サ高住に住み替えるようになります。

介護型サ高住では、介護の専門職員が定期的に居室を巡回して安否確認を行います。一般型サ高住と同様に、買い物や病院の付き添いといった生活相談も行います。介護型の場合は、介護職員や看護職員、作業療法士等の機能訓練指導員や、ケアワーカーなどの配置要件が決められています。介護を必要とする生活になった時でも、安心して暮らすことができるのがサ高住です。

高齢社会の住宅_4 サ高住って何?

みなさん、「サコウジュウ」という言葉を聞いたことはありますか?「サービス付き高齢者向け住宅」を略した言い方で、介護・医療と連携し、ケアの専門家による安否確認や生活相談などの提供とともに、バリアフリーで住宅としても十分な居室の広さを確保した住宅のことを言います。

サービス付き高齢者向け住宅は、平成23年の高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)の改正によって一気に広がってきました。サ高住には介護を必要としない元気な高齢者向けの「一般型」と、介護が必要な方向けの「介護型」があります。

一般型サ高住では、一般的な賃貸物件と同様に、賃貸借契約を結びます。ハード面はバリアフリーで、専用部分の床面積が25平米以上、キッチンやトイレ、浴室、洗面など、生活に必要な設備が全て揃っています。サービス面では、家賃のほか、管理費や共益費がかかり、生活相談を受けることができます。一般型サ高住の中には、施設内に食堂を有しているところもあり、実費を支払って食事をすることもできます。

高齢社会の住宅_3 立地も考えたい

高齢者向けの住宅を探す際に検討したいのは、立地です。ご自身がある程度元気で、自分で移動をできるようであれば、駅やバス停に近い、買い物の利便性が高いなど、便利な方が圧倒的に人生を楽しめるのではないでしょうか。現代はアクティブシニアが多い時代です。スポーツクラブで体を動かしたり、趣味のダンスや絵画、音楽などを楽しむ方もいます。仲間と一緒にイキイキと好きなことに没頭できる時間は、とても幸せな余生ではないかと思います。もちろんご自身で運転ができる場合は、郊外であってもそれほど不便はないかもしれません。しかし最近は高齢者による自動車事故が増加しており、運転にはそれなりのリスクがあることでもあります。郊外住宅地でのライフスタイルから高齢者向けの住宅を探すタイミングというのは、免許返納を検討する時とリンクしているのかもしれませんね。

買い物に関して言えば、重いものを持ち運ぶのが辛くなってくる可能性があります。現在はスーパーマーケット等でも自宅まで買ったものを運んでくれるサービスも増えていますので、賢く利用するのがいいでしょう。

 

高齢社会の住宅_2 転倒防止が重要なポイント

高齢者向けの住宅は、集合住宅であることの方が多いです。転倒を防ぐために、階段の上り下りがあるかないかが大きく、エレベーターや手すりの充実、スロープなどによって段差が少ないことが重要ですまた寒暖差によるヒートショックなどの事故を防止するために断熱性が十分であることも大切なポイントになります。

家事の負担を減らしていくために、住まい自体をコンパクトにしていく必要もあるでしょう。大きな戸建て住宅を維持していくには、それなりの体力が必要になります。認知症などによる火の不始末も心配です。家事負担が軽減できるような間取りや設備が望ましいですね。

これまでに住み慣れた一戸建てで長く暮らすことをご本人が望んでいるようでしたら、生活の張り合いになりますし、家事や庭の手入れといった日々のていねいな暮らしもシニア世代の楽しみになるでしょう。あくまでもご本人の希望に寄り添いながら、ベターな住宅を選んでいけるとよいですね。

 

高齢社会の住宅_1 高齢者向け住宅とは

先月のブログでは、「日本の人口と住宅産業のこれから」をテーマに、少子高齢化の時代に住宅産業にどのような変化が訪れているのかについてお話ししました。今月は、高齢者向けの住宅のトレンドや、高齢になっても安心して暮らせる住宅についてお伝えしたいと思います。

高齢者向けの住宅と言っても、元気な高齢者向けの住まいと、介護が必要な方向けの住まいでは、必要な支援は異なります。「高齢者向け」と括らなくても、ご自身や同居のご家族が健康である場合は、従来の住まいで暮らし続けることも可能です。

一人暮らしになったり、階段の上り下りがつらくなる、介護が必要な状態になるなど、年齢を重ねたことに起因する生活不安があるなどの理由から、高齢者向けの住宅に転居する方も増えてきています。高齢者向けの住宅には、設備などのハード面だけでなく、介護サービスや生活支援などのソフト面の両面から、高齢者が安心して暮らすための支援があります。

日本の人口と住宅産業のこれから_8 地域コミュニティの大切さ

人口減少と高齢化がますます進む社会の中で、これから大切になってくるのは、地域コミュニティです。どの駅に住むのか、駅からの距離はどれくらいか、周辺環境は? といった立地的なことだけでなく、地域で助け合える関係があるのか、いざという時に頼れる先があるのか、福祉は充実しているのかなどが、立地以上に大切ではないでしょうか。

単身世帯や高齢世帯が増えるにつれて、誰ともつながりのない「孤立無縁」の人も増えています。その家で、一人倒れても、誰も気づいてくれない……となる前に、「あの家のおじいちゃん、最近見ないね」「ポストにチラシがたくさん挟まっているけれど大丈夫かしら」などと、異変に気づいてくれる目があるだけで、救われる命もあるのではないかと思います。公的な福祉施設のケアマネージャーや民生委員さんなど、地域の福祉を支える存在とつながることで、一人でも生きていける安心感を得られるはずです。

新たな住まいを求める場合に、「家=これからの暮らし」をつくるものとして、ぜひ地域に目を向けていただきたいと思います。

 

日本の人口と住宅産業のこれから_7 リノベーションによる空き家対策

日本の新築住宅の着工棟数が100万戸を下回る一方、空き家が800万戸となり加速度的に増加しつつある今、日本の住宅産業は大きな変化の途上にあります。新築を増やすことよりも、むしろ空き家をどう減らしていくか、利活用していく視点が大切です。

大丸建設でも最近はリノベーションのご相談が増えています。リフォームとリノベーションの違いは、リフォームは機能を変えずに補修や美化をしていくことで、リノベーションは機能を変えて価値向上を目指すものです。間取りや設備の変更にとどまらず、断熱性能を高めたり、バリアフリーなどの機能向上を行うことで、建物の躯体を生かしながらも価値を高めていくことで、住宅産業の「新たな市場」を形成しつつあります。

中古住宅を買い取ってリノベーションをして再販するような新たな販売形態に特化した会社もあり、住まい手にとっては新築よりも安価で利便性の高い立地での住宅を取得できるようになります。

地方では空き家バンクなどもあり、移住してセルフリノベーションで理想の暮らしを手に入れようとする若い世代も増えています。