台風は「事前対策」ができる災害

10月12日に日本列島を襲った台風19号は、前月の台風15号の記憶が新しかったこともあり、日本政府も異例の事前対策をうったえ、首都圏の鉄道路線の運休や公共交通機関、道路の安全確保、会社・商業施設の臨時休業など、「日本全体が台風に備える」ことになりました。

台風の3日前くらいから、ガソリンスタンドで給油する車が目立ち始め、スーパーマーケットやホームセンターでは防災備品を買い求める人であふれました。コンビニエンスストアからはペットボトル水が消え、台風の前日には窓に養生テープを貼り付ける家も出てきました。

政府も「内閣府広報オンライン」で家屋の台風対策を呼びかけ、専門家もメディア等でさまざまなアドバイスをしたので、事前対策を実行する家庭が多かったのではないかと思います。

2019年10月、台風19号の被害

2019年10月12日、台風19号が日本列島を横断しました。9月9日の台風15号の爪痕が残るなか、再三にわたる台風、その後も10月25日に大雨が続き、たいへん大きな被害を日本にもたらしました。

台風15号は強風や竜巻による被害が大きかったのですが、台風19号は長時間にわたる大雨による浸水や土砂災害、河川の氾濫が相継ぎました。死者・行方不明者数は95人、浸水被害は300もの河川の流域に及んだといいます。

近年、台風の大型化と被害の深刻度が高まり、どのように防災対策をしていくべきか考えさせられます。

建築の専門家として、台風被害対策についてまとめてみました。

近隣への影響を最小限にしよう

今後、台風の大型化や、竜巻の発生など、極端な気象災害が増えることが予想されています。気象災害は予想できないため、それによる雨漏りなどは、住宅の保険ではカバーされないのです。また、瓦や屋根材の飛散などで、他の家の窓ガラスを割ってしまうなどのリスクも保険適用されません。自分の家の瓦で、隣家の窓ガラスを割ってしまったら、大変です。周辺への影響を最小限にするためにも、ぜひ、外装メンテナンスは、定期的に、しっかりとやっておくことをお勧めします。

外装メンテナンスだけでなく、植栽、植木鉢といった、装飾物についても、台風前には家のなかにしまうなどして、「飛ばない」ようにする対策が必要です。これくらい飛ばないだろう、という感覚は、もはや通用しないレベルの異常気象です。

サッシの強化は防音・省エネにも効果あり

「以前、窓をリフォームしたんですが、今回の台風に効果的でした」

このように語ってくださったお客様がいました。以前大丸建設でリフォームさせていただいたお客様は、集合住宅にお住まいで、窓のサッシを断熱性の高いものにリフォームしました。台風15号の時には、窓が揺れて眠れない思いをしたという方も多かったなかで、そのお客様の家では全員、朝までぐっすりと眠れたそうです。お聞きすると、サッシを変えたことで、窓が揺れず、外の音も防いでくれたので、睡眠を妨げるほどではなかった、とのこと。

窓リフォームは、家の断熱性を高めることにつながり、夏の日射と熱の侵入、冬には冷気が入ることを防いでくれます。省エネにもつながる防災対策として、ぜひ検討してください。

窓からの雨漏りもある

台風などの横風と強雨の対策には、サッシの補強も効果があります。日本の住宅では、サッシを取り替えないまま、アルミのフレームでシングルガラスの家もまだ見受けられます。大型の台風などで、周辺からの飛来物や倒木などで、窓ガラスを割ってしまう可能性もあります。シングルガラスだと、こうした影響を受けやすいです。

また、古いアルミサッシは気密性が弱く、共有の場合にサッシ自体が大きく揺れてしまいます。隙間風や、窓からの雨漏りの事例もあります。窓からの雨漏りとは、サッシの隙間から雨が入り、それがたまって、階下に水が漏れてしまう、という現象です。老朽化した団地などで、このような事例がたくさんあったようです。

外装メンテナンスの重要性

私が7-8月のブログで再三申し上げていた、外装メンテナンスの重要性を、台風15号の影響で再確認しました。台風15号は、千葉県や神奈川県の一部に大きな被害をもたらしましたが、進路が少しずれていたら、どこで同じようなことが起こっても不思議ではありません。我がこととして考え、そこから何を学び、どのような対策をしておくべきか、検討する必要があります。

特に、戸建て住宅で、築年数の古い家については、台風15号レベルの大型台風が直撃した場合、それなりの影響があることが考えられます。特に屋根については、金属板がめくれたり、瓦が飛んだりする可能性があるので、早めの対策が必要です。

屋根の損壊の影響とは

ちょうどこの夏のブログで、外装メンテナンスについて語っていました。外装は主に屋根、外壁を指しますが、台風では外装に大きな影響があることが、今回の実体験として大きな教訓になったのではないかと思います。

屋根瓦が飛んでしまったり、スレート屋根がめくれてしまうと、風雨から家財を守ることができなくなります。雨漏りがひどいと、暮らしが成り立たなくなります。家が傷み、湿気やカビなどで環境が悪化し、家財道具も水濡れしてしまうので、早急な修理が必要ですが、現状ではその手がまわらないようです。いったんはブルーシートで屋根を覆って、土嚢で止めている状態ですが、次の台風が接近すると、二次的な被害の心配があります。被災された方のお気持ちを思うと、心からお見舞いを申し上げるとともに、私自身も建築士として、何をすべきか考えさせられます。

古い家ほど被害が大きい

台風15号の復興支援ボランティアに行った友人によると、損壊した家のほとんどは、古い家だったそうです。屋根瓦が飛び、屋根の一部をブルーシートで覆う家が多く、ほかにも古いスレート(金属製)の屋根が飛んで、構造体がむき出しになっている家もあったそうです。電柱が倒れたり、商店の看板が折れ曲がって窓ガラスに直撃したり、飛散物があちこちに散らばっている家も多かったそうです。木造住宅だけでなく、商店や大型店舗のガラスが割れたり、看板が倒れたり、RC(鉄筋コンクリート)造の建物も鉄骨がむき出しになって壁がはがれるようなケースもあり、その被害の大きさに私も絶句しました。

一方で友人は、「新しい家にはあまり被害がないように見受けられた。瓦屋根の家でも瓦はしっかりと止まっており、窓ガラス自体も強化されているので、割れているケースは少ない」とも言っていました。

房総半島の住宅被害の特徴

台風15号は千葉県南部に上陸し、住宅に甚大な被害をもたらしました。特に、南房総市、館山市、鋸南町の被害が著しく、復興支援ボランティアの受け入れが進んでいます。県南部の被害が激しいため、あまり報道はされていませんが、千葉市や成田市などでも住宅の損壊や停電などで、日常生活に大きな影響を受けた方が多かったそうです。

館山市にボランティアに行った友人の話を聞きました。

「ブルーシートで覆われた家がとても多い。特に屋根瓦の被害が大きくて、瓦が飛んでしまったり、窓や壁が割れたりして、風雨にさられている家が多い。雨漏り防止のためにブルーシートで屋根や壁を覆って、土嚢で止めるしかない状態。屋根瓦を修理できる専門の職人が足りない。家財道具を守るすべのない高齢者が困っている状況。ボランティアの力でなんとか瓦礫の整理や、家財道具の移動などをおこなっているが、追いついていないようだ」とのことです。

2019年、台風被害に思うこと

2019年9月9日未明、関東地方に上陸した台風15号は、首都圏に甚大な被害をもたらしました。特に、千葉県南部の房総半島では、現在も停電が続く地域があるなど、住民の生活に今なお影響が残っています。被災された方には心からお見舞いを申し上げます。

千葉県の被害があまりに大きいので、報道は少ないのですが、神奈川県の南部にもかなり被害があったようです。匠の会の仲間で、鎌倉市の工務店さんは、住宅の修理に大忙しで、悲鳴をあげていました。

首都圏に少なからずの影響を残した台風15号。今後、台風の巨大化や上陸の多さが心配されるなかで、どのように住まいの対策をしていくべきなのか、工務店の視点から考えました。