アスベストと法規

2021年4月に施工された「改正大気汚染防止法」によって、建築物のアスベスト含有の有無を事前調査することが所有者に義務付けられました。建築物の所有者は、不動産取引時にアスベスト調査が必要となります。また、日常使用期間においても前回掲げたアスベストの飛散対策が必要となり、解体・改修時にもアスベスト仕様の事前調査と、労働安全衛生法関連の事前調査、建築リサイクル法における建築資材の付着物調査なども必要になります。アスベストの除去工事の際は、施工業者は作業の実施状況についての写真の記録、保存が義務付けられます。

2022年4月より、解体工事部分の床面積が80平米以上の建物や、100万円以上の予算の改修工事では、事前調査結果を労働基準監督署に届け出る必要が出てきます。

自治体によっては解体工事のアスベスト調査のための補助金を設けているところもあります。大丸建設はアスベスト調査の資格を取得しましたので、気になる方はお気軽にご相談ください。

アスベスト対策の工法

国土交通省では、吹き付けアスベスト等の使用が疑わしい建物では、アスベスト含有の有無の調査を行い、もしアスベストが含まれている場合は早急に対応工事が必要であるとしています(2021年より調査が義務化されました)。

アスベスト対策の工法は主に3つ。除去工法は吹き付けアスベスト等をした時から取り除く方法です。完全に除去することで、大地震などが発生して建物が損傷した際もアスベストが飛散する恐れがなくなります。

封じ込め工法は、吹き付けアスベスト等の層を残したまま薬剤を含ませるなどして吹き付けアスベスト等を固定し、飛散を防止する工法です。また、囲い込み工法は吹き付けアスベスト等を板状の材料で囲い込むことで、粉じんの飛散を防止する工法です。封じ込め工法も囲い込み工法も比較的安価に施工できますが、建物の取り壊し時には除去工事が必要になり、大地震などで建物が剥落、あるいは倒壊した時には、アスベスト飛散のリスクが残ります。

アスベストが使われてきた場所

アスベストは建築材料として防音性、防火性、耐熱性、摩擦や腐食に強いなど、多くのメリットがあり、かつ安価で加工しやすいという特性から、建築のさまざまな場面で使用されてきました。

例えば、間仕切り壁、スレート屋根、外装や外壁に使われるセメント板、サイディングボードなど、建築物のかなりの箇所に使われていることがわかります。

建材だけでなく、断熱材用の接着剤や、配電盤や配管のジョイント部分の耐熱や電気絶縁版として、機器の接続部分のシール材、煙突や排気管など、とにかく多用途に使われてきたアスベスト。学校や病院、オフィスビル、商業施設、公共施設など、昭和40年代に建てられた建築物の多くにアスベストが使われ、それらの耐用年数が近づき、リノベーションや解体工事が進むにつれ、新たなアスベスト対策が必要になってきているのです。

 

2006年よりアスベスト使用は原則中止に

アスベストによる健康被害は世界中の多くの現場で報告されていましたが、日本で全面的に使用禁止になったのは2004年からです。昭和30年代から使われ始め、昭和40年代の高度経済成長期に幅広く大量に使用され、昭和50年になって最初の規制が行われました。昭和55年まではアスベストが含有された吹き付けロックウールが使われていました。平成に入りアスベスト重量に応じて段階的に使用が制限され、全面的に使用中止になったのは2006年からです。

2006年9月に改正された「労働安全衛生法施行令」では、「石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべてのものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止される」と記載され、それ以前に製造・輸入された在庫品についても規制が行われました。

このように、石綿に関する健康被害例や使用制限はかなり昔から行われていたにもかかわらず、全面使用禁止になってから日が浅く、さらにすでに建築されている建物の解体等で発生するアスベストの除去対策が必要になっています。アスベストによる健康被害は今なお大きなリスクとして日本に存在するのです。

アスベストによる健康被害の特徴

アスベストによる健康被害としては、肺がんや悪性中皮腫が多く報告されています。実は、アスベストの成分自体に毒性があるというよりも、石綿の微細な粒子を吸い込むことで肺にたまり、10〜40年の潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症することがわかってきました。アスベストは超微細な繊維で、吸い込んでも気付きにくく、丈夫で変化しにくい物質であるため、人間の体内でも長く蓄積し、それが長い期間を経て発症に至ります。いったん発症すると多くの方が1、2年で亡くなるという実態がわかり、国が「石綿健康被害救済制度」を設けて医療費や療養手当の給付や、遺族への給付を行っています。

日本では昭和40年代に幅広く大量にアスベストが使用されてきたので、アスベスト施工の現場作業員といった対象者を特定することが困難な状況であるのが実態です。

アスベストはどういうものなのか

アスベストは「石綿」とも呼ばれます。天然の鉱物繊維の総称で、蛇紋石属、角閃石属に大別されます。蛇紋石属のクリソタイル(白石綿)が世界で使われている石綿の9割を占めるとされます。角閃石属のアモサイト (茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、アンソフィライト(直閃石)、トレモライト(透角閃石)、アクチノライト(緑閃石)を含めた6種類が、いわゆるアスベストとして知られています。

厚生労働省【石綿総合情報ポータルサイト】より

アスベストは超微細な繊維で構成され、熱に強い、摩擦に強い、酸やアルカリに強い、防音性が高い、耐腐食性が高いといった特性があります。さらに、繊維が微細で吹き付けしやすく、安価で加工しやすいため、断熱材や耐火壁、天井材などに使われてきました。昭和30年ごろから使用が始まり、昭和40年代の高度成長期に建てられた建築物に多く使用されていると言われています。

住宅のリフォーム時にアスベスト調査が義務付けられました

2021年4月に「大気汚染防止法」が改正されました。これは、アスベストによる健康被害を抑制することを目的とし、建築物のリフォームを行う前に、設計図などからアスベストの使用の有無を読み解き、また現場での目視確認を行い、アスベストの使用の有無を調査することが義務付けられました。

既存の建物にアスベストの吹き付けや、アスベストを含む断熱材が使用されている場合は、アスベストの除去や封じ込め作業を行う必要が出てきます。この際、労働者を守るために、労働基準監督署に工事の14日前までに工事計画届を出すことや、除去作業が終わった後にアスベストの取り残しがないことの確認など、細かい記録と確認作業が義務付けられます。

2023年10月以降は、厚生労働大臣が定める講習を修了したものが事前調査を行うことが義務付けられました。大丸建設では私・社長の安田佳正がこの講習を修了し、事前調査業務を行うことができるようになります。

建築物に使用されるアスベストによる健康被害

みなさん、「アスベスト」という言葉を聞いたことがありますか? アスベスト(石綿)は、耐熱性や耐久性、耐腐食性にすぐれているため、建築資材として長いこと使用されてきました。鉄筋コンクリート建造物の構造材に吹き付けて天井断熱としたり、鉄骨の耐火被覆などで使われていました。また、断熱材として使われる人造鉱物繊維のロックウールにもアスベストが含まれていることがあります。

このアスベストがむき出しになった建築物で、アスベストを吸い込むことによる健康被害が多発しました。アスベストは非常に軽く粒子が細かいので、空気中に浮遊しやすく、それを吸い込むことによって肺がんや中皮腫といった健康被害が発生、報告されるようになりました。

2006年以降に着工された建築物では原則的にアスベストの使用は禁止されていますが、今問題になっているのはそれ以前に建てられた建築物をリフォームする時に、建築業者がアスベストを吸い込むかもしれないリスクです。