この10年で最も大きな出来事の一つとして、2011年3月11日に起こった東日本大震災があります。私は震災後のゴールデンウィークに工務店仲間と岩手県の大槌町へ入り、建築士として耐震診断をおこないました。地震自体はとても大きなものでしたが、それ以上に津波の威力の大きさを感じました。そして、建築士として被災地の皆さんのお役に少しでも立つことができたのなら、本望です。
会社としては、震災を経て、何か変えたかといえば、実はそれほどありません。というのも、大丸建設は日本で長く伝わってきた在来軸組工法で住まいを建て、耐震性能についてもしっかりと設計をおこなってきており、震災の際もすべてのお客様のお住まいでトラブルはありませんでした。これからも、誠意を持って、地震に強い家をつくり続けていこうと感じました。
月別: 2015年11月
住宅産業を大きく変えた品確法
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が制定されたのは平成12年のことです。通称:品確法の要点は次の2つです。
・ 住宅の性能の表示基準と評価制度
・ 新築住宅の性能に関する10年間の瑕疵担保責任についての規定
特に瑕疵担保責任については、住宅を新築する際の雨漏りや構造の担保としてトラブルがあった際は、施工側が保証をするという規定で、住宅を建てるお客様にとっては安全と安心の担保につながります。1年に2回、地方自治体と都道府県知事に新築の報告をしなければならず、瑕疵担保責任のための保険に入ることも義務付けられました。
行政へ提出する書類は増えましたが、工務店の責任範囲が明確になり、お客様の安心安全を担保するうえでは、とても大切な契機となりました。
省エネや環境対応は今後の重点ポイント
この10年で、極端な豪雨や竜巻、猛暑など、地球温暖化の進行は顕著になってきていると感じています。
大丸建設では住宅の環境対応としては、自然素材への特化など、積極的に取り組んできましたが、いわゆる省エネ分野に関しては今後強化していかなければならないと感じています。
今後は、省エネ法が代わり、家全体の断熱性能をU値という数値で表していかねばならず、2020年に向け、統一した基準で数値化することが義務付けられます。
先進国の中でも、住宅の断熱化が最も遅れていると言われる日本。今後、大丸建設もしっかり対応していきたいと思います。
ロングライフ住宅もトレンドに
2009年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の制定を受け、長く住み継げる良質な住宅を建設するための建設費の一部を国が補助し、定期的なメンテナンスをおこない適切に維持管理をしていくための制度がスタートしました。いわゆる長期優良住宅です。その根本には、環境問題とからめて、建物の寿命が極端に短い日本でスクラップアンドビルドをやめ、良質な住まいをつくり長く住み継ぐ社会を目指す姿勢があります。
大丸建設ではこれまで、長期優良住宅の住まいを10軒ほど建設しています。私は、長期優良住宅はとてもよい制度だと思っており、古い家をすぐ建て替えるよりも、大事に使ってきた家の維持管理の計画を建て、長く住み継いでいくのは、大丸建設のコンセプトそのものとも共通しています。
自然素材がスタンダードになりつつある
10年前はまた、「チルチンびと『地域主義工務店』の会」の立ち上げメンバーとして、忙しく活動していた時期でもあります。2003年の建築基準法の改正、いわゆる「シックハウス法」ができたことで、建材に使われる化学物質で人の健康に影響をあたえる可能性のある化学物質が規制されるようになりました。
『チルチンびと』では、化学物質の安全データをとり、自然素材を使い自然な住まいをつくるための技術的な勉強会を定期的に開催しました。内装材だけ無垢材や左官壁で仕上げる「外側の自然素材」ではなく、構造材も、床下も、天井裏も、壁の中も、住まい全体の自然を追求し、なおかつ断熱性能や調湿性能、耐震性を確保した住まいをつくりあげるために、理論的にも研究を重ねました。
こうして、大丸建設は、外側も、中身も、すべて自然素材の住まいを基本仕様として住まいを建てており、今につながっています。
耐震の学びにも力を入れました
先日、横浜のマンションの大型マンションで、杭が地盤の支持層に届いていないことが発覚した「横浜マンション傾斜問題」。ちょうど10年前はいわゆる姉歯事件と呼ばれる「耐震偽装問題」が明らかになり、世間を震撼させた時期でもあります。
私は一級建築士の資格取得後、耐震の勉強にも力を入れました。国や地方自治体が住宅の耐震診断に対して助成金を出すようになり、大丸建設も東京都木造住宅耐震診断登録事務所協議会の登録機関になるべく、耐震診断技術者の資格取得をしました。
建築に携わる人間として、お客様の命を守るのは道義的な使命であり、耐震偽装などはあってはならないことです。建築士の資格などについて3年に1度の定期講習を受ける義務が生じたのも、根本的な対策というよりは、ある意味現場での倫理観を問い直すきっかけのような気もしています。
大丸建設、この10年。
私は今年の12月で40歳になります。この10年間、大丸建設で働いてきた30代を振り返り、飛躍の40代に向けて、整理をしていきたいと思います。
10年前は、ちょうど30歳になろうというところ。平成16年に私は一級建築士の試験に受かりました。平成17年に登録をしたので、今年は一級建築士としてちょうど10年経ったことになります。当時は、現場監督として、建築現場の仕事を肌身で覚えながら、試験勉強を重ねていました。そして、ようやく合格して、新たなスタートを切ることができました。
合格後は3年間、日建学院の講師の仕事もしていたので、質問されたら答えられるよう、常に勉強していました。
木造建築の工務店にとっては、一級建築士の資格は必須ではないのですが、社会的信用度も上がりますし、難関の試験に合格することで、仕事への自信にもつながっているのを感じています。