引き戸というと、和のイメージを強く抱く方も多いのではないでしょうか。
芯と枠があって両面に襖紙を貼る「襖(ふすま)」は、花鳥風月などが描かれたものが多く、和の雰囲気を醸し出します。一方で、和風建築の粋を集めた桂離宮などでは、市松模様の襖や月など、今見てもモダンなデザインの襖も多く、やりようによっては、とてもスタイリッシュに表現できるのも襖の魅力です。
障子も和風建築の美を競う「顔」的存在です。一般的には長方形の「荒間」が主流ですが、横桟に細い縦ラインが入った「引き寄せ」や、障子を上下に開閉できる「雪見」、「猫間」や、それらの合わせ技などで、通風や採光、そして庭を楽しむといった使い方ができます。
日本の住宅は、雨戸、板戸など、昔はガラスで外と区切られていないことも多く、縁側や回り廊下をはさんで、障子や襖で仕切られる簡素なつくりでした。障子や襖で空気の層をつくり、それで断熱効果を得ていました。昔の住まいの知恵にはいまも驚かされ、学びになることが多いです。
月別: 2013年9月
引き戸が好きです。
私は、日本で昔ながらに使われている「引き戸」が好きです。洋風のドアは、ドアノブがついてそれを押したり引いたりすることで、蝶番を軸に90度回転するのですが、引き戸は回転せず横に広がるように開きます。
引き戸は、戸の幅と同じだけの収まる場が必要です。壁に収納する引き込み戸、左右どちらかに開く片引き戸、両方に引くことができる両引き戸などがあります。
大丸建設のこれまでの歴史の中で、開き戸を使うこともありましたが、最近ではお客様から「引き戸にしてほしい」と要望をいただくことが増えています。引き戸のよさは、大きな開口がとれて、異なる部屋同士が一体化できること。障子や襖は引き違いにすることができますし、襖は外してそれこそ大きなワンルームにすることもできます。
互い違いに開けることで、通風を確保することもできます。ドアと異なり、風でバタンと閉じたり、風圧がかかって大きな音がすることもありません。
大丸の建具は、すべて特注・手づくりです。
住まいにとって、なくてはならない「建具」について。
建具とは、建物の開口部や、部屋と部屋、部屋と物入れなどを仕切るもので、種類は多岐にわたります。
一つは、玄関の扉や戸、さらに窓枠(サッシ、ガラス戸、網戸、シャッター、雨戸)など、住まいの外と内を隔てるもの。
室内では、板戸、格子戸、障子、襖、欄間など。
窓サッシや網戸などは、既成のもので省エネ性能の高いものを採用しています。一方、玄関扉や、住まいの中で使う木製建具は、すべて宮城県の建具屋さんに1本ずつ特注してつくってもらっています。
特に、玄関扉や、部屋の入り口の引き戸は、住まいの「顔」にもなるので、柾目の美しい杉や、框をつくって格式を高めています。
自然循環の考えで住まいを設計する
私たち大丸建設がお世話になっている、エコ住宅の設計で知られる野池政宏先生。野池先生は「自立循環型住宅研究会」など様々な団体・活動を主宰しており、私たちも勉強しているまっただ中です。
自立循環型住宅では、住まいの省エネやCO2削減を考えるうえで、住まいの温熱環境やエネルギーに関する基礎的知識を学びます。できるだけエアコンなどの機械に頼らず、自然の恵みを活用した住まいづくりを考えています。
例えば、庭に落葉樹を植えます。夏は青々と葉が生い茂り、日陰をつくってくれます。日陰を通った風は涼しく住まいを流れ、また葉による水分の蒸散効果で周囲の温度も下がります。冬は落葉して日光を住まいの奥まで届けます。
また、私の体感ですが、大丸の住まいはいわゆるハウスメーカーの住宅よりも格段に涼しく感じます。たとえ室温が同じであっても、湿度が低く抑えられているのは、調湿性のある材料(=無垢の杉材)を使っているからです。
こうした、自然の恵みを活用することも、エネルギーデータとして的確にお答えできるよう、私たちは研究を重ねています。
住まいと自然環境を総合的にデザインする
私は一級建築士で、住まいの設計をすることもあります。また、匠の会やチルチンびと地域主義工務店の会などでの学びの中から、環境と調和した住まいの設計のあり方について、よく考えます。
家を設計する時に誰もが重視する「日当り」と「通風」。東京のような住宅密集地では、想い通りの採光と通風が確保できないこともありますが、それでも何とか効率よく光と風を取り込むために、住まいの近隣だけでなく、その地域全体の風況や日射時間などをデータからしぼりこみ、設計に活かします。
風であれば、気象庁のホームページを見ると、その地域の風の抜け方がよく分かります。山の方から吹き下ろす風なのか、川下から吹き上げる風なのか。現場に立って風を感じる力と、地域の気候風土を読む目、どちらも必要です。
小さな単位での対策より、山、森、川を見よ
家庭での温暖化対策として、特に新築住宅での高断熱化や、気密性の高い窓サッシの採用、太陽光発電システムや家庭用燃料電池などの創エネ設備の導入などが挙げられます。もちろん、これら一つひとつの方策は有効で大切なのは言うまでもありませんが、この夏を振り返ってもわかるように、地球温暖化に伴う気候変動はグローバルに進んでおり、もっと大きな視点での対策に市民が参加するのも大切だと思います。
具体的には、山林や身近な里山、そして川など自然を大切にすること、都市に緑を増やすことです。森林はCO2の吸収源になりますし、適切に管理されれば大雨の時も水がめになり、河川の急激な増水を防ぎます。都市の中の緑は、葉による水分の蒸散効果でヒートアイランド現象をやわらげます。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、住まい単体ではなく、都市計画全体のなかで、温暖化対策、環境保全を考えていきたいと思います。
小さな単位での対策より、山、森、川を見よ
台風一過でようやく秋らしい空気にほっと一息ついた方も多いのではないでしょうか。先月に引き続き、住まいの温暖化対策や猛暑対策について考えてみたいと思います。
みなさん、この夏エアコンで冷房をつけた際、窓は閉めていましたか? ほとんどの方は「当然!窓を閉めました」とお答えになるかと思います。
では、カーテンや閉めましたか? カーテンを閉めると部屋が暗くなる……とおもい増すが、実は、真夏の直射日光を室内に入れ放題で冷房をつけても、効果は半減してしまうのです。日中、家を留守にする時は、なるべくカーテンを閉めて暗くして、日射を入れず、帰宅後に窓を開けて風を通してから冷房をつけるだけで、冷房効率は10%以上あがるという実験結果もあるくらいです。
実は、日本の昔ながらのすだれは夏の暑さ対策には大変効果的な素材です。細かい桟で日射と目線を防ぎ、風は通す。来年の暑さ対策には、早めにご用意するのがおすすめです。
100ミリの雨のすごさ
ニュースの気象情報で「1時間に◎ミリの雨」という表現をよく見かけます。これはいったいどのような体感なのか、気になって調べてみました。
1時間に100ミリの雨というのは、例えば、11時から12時までの1時間の間に観測された降水量の合計値です。1時間に100ミリの雨の場合は、雨水が別の場所に流れず、蒸発せず、地面や土の中にしみこまない状態で留まった時に、100ミリメートル、つまり10センチの深さになるということです。これほどの雨水が側溝や河川にたまったら、どうなるでしょうか。1時間に100ミリの雨が3時間降り続いたら……。
こうした降水量を測る実験は、家庭でカンタンにできます。1平方メートルあたりに100ミリの雨が降った場合、水の量は100リットルになります。重さでいうと約100キログラムです。例えばたらいなどを外に置いて雨水を直接受けることで、雨水の容量を量ることができます。たらいの底面積×高さで、降雨量が計算できます。
ちなみに、大きめの傘がだいたい1平方メートルくらいだと考えると、1時間に100ミリの雨は、傘に100キロの重さがのっかるようなものなので、とてもではないですが立ってはいられない、と言えます。
とっさの雷雨に対応するには
突然のゲリラ豪雨、雷雨に見舞われたら、まずはすぐに屋内に避難するようにしましょう。最寄りの駅まで走ろう、自宅まですぐだから家に帰ろうと走っている間に、雷に打たれる可能性も否定できません。今年は雷の被害も起こっています。命に関わることなので、たとえ他人の住まいの軒先でも、頼み込んで雨宿りさせてもらう方が懸命です。
私のようにクルマでの移動が多い場合は、クルマに逃げ込むのも手です。クルマは避雷できる構造です。
また、屋外での移動中、雷が鳴ったら、特に手にもっている金属などには注意が必要です。腕時計、クルマや家の鍵などは、手に持たずに鞄の中に移すのが無難です。また、根拠ははっきりしていませんが、私は携帯電話も手に持たないようにしています。電波の発生するものと雷が反応するような気がして……。
猛暑よりも豪雨のほうが心配
ゲリラ豪雨・雷雨の特徴の一つとして、ものすごく局所的な被害をもたらすということです。例えば、一駅違えばまるでウソのように路面が濡れていない、ということもざらです。私が住んでいる喜多見では雨が降っていたのに、会社に着くと晴れている……たった30分の距離でこれだけ気象が変わる、こんなことは私が子どものころにはなかった現象です。
今年は35℃以上の猛暑日が多く、非常に暑かったのですが、私はこの猛暑よりもゲリラ豪雨の方が、命を脅かす心配があると思います。猛暑に関しては、予想気温が出ており、数分で急激に気温が変わることがないので、事前に対策を講じることができます。しかし、ゲリラ豪雨や雷雨に関しては、天気予報で確認はできても、それがやってくるのは急速です。特に雷に関しては、命に関わるので、危険を感じたらすぐに対応ができる判断力が重要になってきます。