省エネ最新事情(7) 家電だけでなく家全体で見ていく

今月は家電の省エネについてお話していますが、家の省エネは家電だけ見るのではなく、住まい全体で考えることが最も賢い方法と言えます。工務店は住まいづくりに関わる仕事なので、お客様と直接お話しするなかで、ここ10年ほど、省エネについての意識が大きく変わっているのを感じます。昔は「断熱」の重要性を認識しているお客様はそれほど多くはありませんでした。しかし今は断熱についての知識を得て、積極的に断熱性能の高い住まいを求める方が増えているように思います。

いくらエアコンのエネルギー効率がよくても、家の断熱性が不十分で、室内を暖めるそばから隙間風が入ってしまうような家だと、いくら暖房をしても「空焚き」の状態になってしまいます。暖めた(冷やした)室内の空気は逃さない、保温・保冷効果が高い家は、省エネ性能が高い家、と言えます。さらに、快適かつエネルギーコストも低い。省エネ、断熱、快適性は連動しています。

省エネ最新事情(6) 使用時間が長いものから省エネ型に切り替える

家電の中で省エネ対策をすると効果が高いのは、「冷蔵庫」「エアコン」「照明」です。冷蔵庫は24時間365日使うものなので、消費電力量が少ないものを選ぶと、家の電気代が目に見えて変わってきます。今から15年前に製造されたものを使い続けるよりも、最新の冷蔵庫に買い換える方が、かかる電気代は半額ぐらいで済むからです。

エアコンは猛暑を乗り切るには欠かせないアイテムで、これを省エネ性能の高いものに買い換えることで、真夏や真冬の電力需給のひっ迫を回避することに直結するほど省エネのインパクトが大きくなります。

照明器具も家庭には必須、かつLEDに買い換えることで消費電力量が大幅に減るため、いち早く買い換える必要がある家電の一つと言えます。

ほかにもテレビや温水暖房便座なども一年中通電しているものなので、エネルギー消費効率がよいものを選んでいくと、省エネ効果が高まります。

省エネ最新事情(5) 家電の省エネ性能は進化している

日本の家電は、新しいほど省エネ性能に優れています。省エネ法によって、家電製品や自動車などエネルギーを使用する機器に対して、省エネ性能を向上させるために、製造時点で国内トップレベルの省エネ性能を持つ機器をさらに上回るように決められているからです。これを「トップランナー制度」といいます。

家電量販店にいくと、「e」のマークとともに、省エネ基準の達成率と、エネルギー消費効率や年間消費電力量が表示されたラベルが貼られています。これを「省エネルギーラベル」といいます。

年間消費電力量が少ないほど、その家電は省エネに優れていると言え、それだけ電気代が安くて済みます。電気代が少ない=家計にもやさしい、地球環境への負荷も減らすことができると、いいことづくめ。買い替えのコストはかかりますが、長い目で見るとむしろお得で、健康にもよい(我慢の省エネをしなくて済む)というわけです。

省エネ最新事情(4) 我慢の省エネは限界

今夏に限らず、今後の日本はずっと、夏になれば猛暑。しかも最高気温を記録する地域は広がり、猛暑日も増えると予想されています。夏になると電力の余力が足りなくなるのは、猛暑の時期にエアコンで冷房を使うタイミングが全国的に重なるからです。1日の最高気温はだいたい12〜14時ごろに記録します。その時に全国で一斉にエアコンを使うため、電力量のピークを迎えます。このピークをいかに下げていくかが、電力の需給調整に必要です。

しかし、猛暑の時期にエアコンを使えないのは、命に関わる危険性があります。近年は熱中症での緊急搬送や、命を落とす人が急増しています。我慢の省エネで命を落とすことがないようにするには、我慢しない賢い省エネに切り替えていく必要があります。

「エアコンを使わずに我慢する」、という選択肢ではなく、「電力消費量の少ないエアコンに買い換える」という発想の転換が、これからの省エネに必要です。

省エネ最新事情(3) 電気の計画停電を防ぐために

電力ひっ迫注意報/警報の発令は、今夏に限ったことではなく、今冬も続くことが予想されています。エネルギー源の化石燃料の輸入は世界情勢に左右され、エネルギー資源の枯渇といった問題が身に迫っているのと同時に、日本での電力需要はますます高まり、「電力の余裕がない」状態が続いています。3.11の時に起こったような「計画停電」を防ぐために私たちがやるべきことは、ただ一つ。省エネしかありません。

省エネというと、暑い時にもエアコンをつけない、家の照明を消して暗くして過ごす……といった、「我慢」のイメージがつきまとっていましたが、この猛暑の中で「我慢」してしまうことは命取りになりかねません。我慢ではなく、賢く、スマートに省エネに取り組む。そのためには、電気を使う製品や住まいとの関わりについて、総合的に理解していくのが得策です。

省エネ最新事情(2) 「でんき予報」に注目

今年の夏にたびたび耳にするようになった「電力ひっ迫注意報/警報」。ここ数年で、地震や台風での大規模停電や、3月に起きた電力不足による停電といった、電気が使えなくなる事態が起こり、生活に不便をした方もいたのではないでしょうか。2011年の東日本大震災後に発生した大規模停電、計画停電で、電気を使えない暮らしの不便さをあらためて思い出したのと同時に、これだけIT化が進み、電気なしでは暮らせないことも痛感しました。それだけに、「電気が使えなくなる」ことを回避するためには、日本全体で使用するエネルギー量を減らしていく必要性を痛感しています。

電力ひっ迫注意報/警報は、翌日の電力供給のために必要な電力の余力が一定規模を下回る場合に発令されます(3〜5%の時は注意報、3%以下の時には警報)。企業や工場などの産業・業務部門はもとより、家庭での省エネを広く呼びかけ、節電効果によって解除されます。今夏は「てんき予報」とともに「でんき予報」にも注目した夏になりました。

省エネ最新事情(1) 電力が足りない夏

2022年6月末、観測史上最速の梅雨明けという報道に、驚いた方も多いのではないでしょうか。梅雨入りからわずか20日ほどの梅雨明け、しかもその日から連日猛暑日という状況に、「この夏はどうなってしまうのだろう……」と不安を抱いた方も少なくないはずです。天気予報では連日「猛暑」を警告するのと同時に、「電力ひっ迫注意報/警報」が発令され、「猛暑なのに、エアコンをつけるのがはばかられる」といった、暑さに命を脅かされる状況が訪れていたと言わざるをえません。

この電力ひっ迫がなぜ起こったのか。それは、石油や天然ガスといった化石燃料が高騰して輸入しづらくなっていること、ウクライナ戦争の影響で世界的にエネルギー危機に陥っているなど、複数の要因があります。いずれにせよ日本はエネルギー自給率が低い国なので、エネルギー源を輸入に頼るだけでは限界で、再生可能エネルギーと省エネルギーの両輪で脱炭素化を進めていかなければならないのは明白です。

伝統的建築物の美 (8)建築探訪で「見る目」を養う

今月は、福岡県の大濠公園能楽堂や、私の好きな京都・清水寺本堂舞台を引き合いに、伝統的建築物の美しさについて語りました。日本には数多くの社寺建築が残っており、その土地ならではの構造や屋根の形状が見られます。雪深い地域かどうか、湿度や台風の襲来回数、宗派などによっても特徴があり、一つの建築物を見るだけでも歴史や文化の様々な側面を学ぶことができます。

ぜひ、伝統的な建築物を見にいくときには、拝観時にいただくパンフレットをよく読み、できれば事前にホームページなどで予習していくと、建築に関するより深い知識が身につくのではないかと思います。一度勉強したことは、折にふれて思い出すことができるので、他の場所を見たときにも「あ、これは檜皮葺だな」とか、「伝統構法は釘を使っていないと聞いたな」などと、共通の目をもって見ることができるようになります。

大丸建設の創設者は、伝統構法を得意とする宮大工でした。私は、その血を受け継ぐ者として、日本の伝統的な家づくりを後世に伝えていきたいと思います。

 

 

伝統的建築物の美 (7)上品な檜の木肌

大丸建設では日常的には杉材を用いた家づくりをしています。杉は建築材の中では早く成長し(約50年)、素直でまっすぐ、やわらかいので加工しやすく、国内でも大量に生産されているので比較的安価に入手することができます。日本の杉材の乾燥・加工技術は高く、建築用材として使いやすい材です。

一方、檜は杉と同じく針葉樹でまっすぐ、加工しやすい性質は共通していますが、杉よりも成長に時間がかかることから高級材として知られ、「総檜造の家」となれば建築費用もかなり高くなります。そのため、一般の住宅では床柱などの家の顔となる部分や、土台や浴室まわりなどの耐水性を求められる一部分に使用するのにとどまります。

伝統的建築物では総檜造を感じることができます。檜の木肌は杉の健康的な明るい色合いよりも、一段階落ち着いたグレーやシルバーの光沢が感じられ、しっとりとした上品な雰囲気です。木目の流れも穏やかで緻密さを感じられます。

杉のよさ、檜のよさ、それぞれなので、ぜひみなさんも「木肌」について観察してみてはいかがでしょうか。