2025年04月01日(火)

温度のバリアフリー_1 温度のバリアフリーの考え方

これまで、ヒートショックが人々の健康と暮らしに及ぼす影響について考えてきましたが、住まいについては今後、「温度のバリアフリー」という考え方がとても重要になってくると考えます。

一般的に「バリアフリー」というと、段差をなくしたり、手すりを設置したりすることで、高齢者や障がいのある方が住みやすい家をつくることを指します。

しかし、温度のバリアフリーとは、「家の中の温度差をなくし、どの部屋でも快適に過ごせる環境をつくること」を意味します。

・リビングと廊下の温度差がない家

・お風呂場やトイレが寒くない家

・部屋ごとの暖房を必要としない家

このような住宅であれば、ヒートショックのリスクを抑え、快適で健康的な暮らしが可能になります。

1月末に竣工した町田市の住宅は、まさに「温度のバリアフリー住宅」を実現したような住まいです。これまで大丸建設が手がけた住宅の中で最も断熱性能が高く、エアコン1台で家中の冷暖房を賄うことができます。

2025年03月29日(土)

ヒートショック最前線_10 浴室リフォームも念頭に

新築住宅の場合は、国の基準も変わっているため、設計時から高断熱にすることができますが、既存住宅の場合はリフォームで対応するしかありません。窓断熱に加えて、高齢者がいる家庭では特に浴室リフォームが重要です。

脱衣所に暖房を設置するのが最も安価で有効な対策方法です。小型の壁掛けヒーターを取り付ければ、スペースを取らずに脱衣所を温めることができます。「お風呂に入る前に暖房のスイッチをオンにする」生活習慣が必要になりますので、意識的にヒートショック予防をしていくことが大切ですね。

浴室自体をリフォームする際には、お風呂を沸かす際に暖房もできるよう、オートメーション化した機能を搭載するとよいでしょう。

本質的には、浴室や脱衣所の床や壁の内側に断熱材を入れることが大切なのですが、そもそも脱衣所は設計上日当たりがいい場所には配置されないことが多いので、補助暖房と組み合わせることが大切です。床下の断熱をする際には、床暖房を導入するのが効果的です。足元からじんわり暖めることで、脱衣所全体が快適になり、ヒートショックを防ぐことができるようになるでしょう。

 

2025年03月27日(木)

ヒートショック最前線_9 窓断熱の有効性

日本の家は歴史的に断熱性能が低く、ようやく法整備が進んで断熱基準が見直されるようになりました。一方で、「すでに家を建ててしまったけど、対策はできるの?」と気になる方もいるかもしれません。

もちろん、リフォームでも断熱性能を向上させ、ヒートショックのリスクを減らすことができます! 最も有効で簡単にできるのが、窓の断熱性能を上げるリフォームです。

窓は家の中でもっとも熱が出入りしやすい部分です。特に冬場は、家の中の暖かい空気の50〜60%が窓から逃げてしまうと言われています。そのため、窓の断熱性能を向上させることで、室内の温度を安定させることができます。いくつか方法をご紹介します。

内窓(二重窓)を設置するのが最も簡単な方法です。既存の窓の内側に新しい窓をつけることで、断熱効果が大幅に向上します。ただ、窓を開ける際に二度開ける必要があるので、若干不便を感じる場合には、窓ガラスやサッシ自体を交換するのをおすすめします。窓ガラスをLow-Eガラスに交換したり、窓のサッシを樹脂製や木製にすることを組み合わせれば、大幅に断熱性能が向上し、窓から外へのアクセスも変わらないので、利便性を損なうことなく住まいの性能を上げることができます。

意外と盲点なのが玄関扉の断熱です。窓断熱への理解は進んできたものの、玄関まで気が回らない……というケースも多いです。玄関の寒さは廊下の寒さにも直結しますので、特にお風呂場での事故を防ぐ優先度が高い場合は、真っ先に検討する場所です。

2025年03月08日(土)

ヒートショック最前線_8 高断熱の家は健康面でのメリットも

高気密・高断熱の家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、冷えや結露による健康被害も防げるのが大きなメリットです。

結露が起こる原因は、室内の暖かい空気と外の冷えた空気の気温差によって飽和水蒸気量を超え、余分な水蒸気が水に変わります。これが窓や壁を濡らすことで、室内にカビやダニなどのアレルギーを引き起こす原因を発生させます。高断熱の家では結露が少ないため、アレルギーや喘息のリスクを減らすことができます。小さなお子さんがいる家庭や、アレルゲンをお持ちの方は、特に注意したいポイントです。

また、冷えは万病の元と言います。寒さによる血圧の急上昇は、ヒートショック以外にも、高血圧や脳卒中のリスクを高めます。高断熱の家なら、血圧の変動を少なくし、家族、特に高齢者の健康を守ることができます。

断熱性の高い家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、光熱費の削減や家族の健康維持にもつながります。特に戸建て住宅の場合は、マンションに比べると寒さへの対応は十分にしておくべきで、しっかりとした断熱対策をすることで、健康的に快適な暮らしが実現できます。

2025年03月06日(木)

ヒートショック最前線_7 高断熱の家は冷暖房コストが低い

高断熱の家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、ほかにも多くのメリットがあります。具体的にみていきましょう。

まずは、光熱費の削減が挙げられます。高断熱の家では、暖房の効率が上がり、少ないエネルギーで家全体を暖めることができます。そのため、冬場の光熱費を大幅に削減することができます。例えば、一般的な住宅と高断熱住宅を比較すると、暖房の使用量が30〜50%程度削減できるケースもあります。つまり、毎月の電気代・ガス代を節約できるのです。

続いて、一年中快適な室内環境で、快適に過ごすことができるという点も大きなメリットです。冬は暖かく、夏は涼しいのが高断熱住宅の特徴です。夏場も外の暑さを家の中に入れにくいため、エアコンの効率がよくなり、涼しく過ごすことができます。夏場は家の外の植栽や庇(ひさし)の力も借りて影をつくり、直射日光が入らない工夫をすることで、より冷房効率を高めることが可能です。

逆に、冬は陽の光を取り込んで室内を温め、その熱を高断熱の窓から逃さないようにすることで、室内の温度を温かくキープすることができます。トイレやお風呂場、脱衣所などの寒暖差も少なくなるので、補助暖房も必要に応じてつければよく、無駄な暖房コストを削減することができます。

 

2025年03月04日(火)

ヒートショック最前線_6 高断熱の家がヒートショックを防ぐ

日本の住まいは欧米に比べて断熱性能において遅れをとっていましたが、近年、ヒートショックが社会問題になり、「高気密・高断熱」の住まいづくりへの関心が高まっています。

高断熱の家は、外気の影響を受けにくく、家全体の温度が均一になりやすいという特徴があります。

具体的には、壁や床、天井に高性能の断熱材を使うことで、冬でも室内の温度を一定に保つことができます。また、窓を高断熱仕様にする(Low-Eガラスなどを採用)ことで、窓から熱が逃げるのを防ぎ、室内の温度を安定させます。

最近では、「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」のように、高断熱・高気密に加えて太陽光発電設備や蓄電池を搭載するなど、エネルギー効率の良い家が注目されています。ZEH住宅なら、光熱費をほぼゼロにおさえながらヒートショックのリスクも減らすことができ、一石二鳥どころか多大なメリットがあります。

最近、大丸建設が松本直子さんの設計によって手掛けさせていただいた住宅では、断熱性能を高め、エアコン1台で住まい全体の冷暖房を賄えるようにしました。家全体を均一に暖めることで、脱衣所やトイレなどの温度差をなくすことができ、家族が快適に過ごすことができます。近々ホームページでも事例紹介をする予定ですので、お楽しみに。

2025年03月01日(土)

ヒートショック最前線_5 日本の家はなぜ寒い?

日本の住宅は、欧米に比べて断熱性能が低く、ヒートショックを起こしやすいと言われています。歴史的な背景があり、現在、急ピッチで断熱性の向上のための政策が進んでいます。大丸建設のお客さまの断熱に対する意識も大きく変化していると感じます。

そもそも、日本の家はなぜ寒いのでしょうか?

日本の家は、もともと「夏を快適に過ごす」ことを重視した設計が多く採用されてきました。吉田兼好が『徒然草』で「住まいは夏を旨とすべし」と書いたように、日本の高温多湿な気候に合わせて、風通しを良くするために断熱をあまり考慮しない造りが一般的だったのです。昔の家は、畳や障子などを活用して調湿性を高める一方で、冬の寒さへの対策はあまりされていませんでした。

その後、戦後の高度経済成長期には、大量の住宅を迅速に供給する必要がありました。その結果、住宅の断熱性よりも、コストを抑えて早く建てることが優先されるようになりました。その流れが長く続いたため、日本の住宅は欧米と比べて断熱性能が低いものが多いのです。日本では本格的な断熱基準が設けられたのは1999年(平成11年)で、それ以前の家には十分な断熱が施されていないことが多いのです。さらに、現在の断熱基準も欧米と比べると緩く、世界の住宅と比較して日本の家が寒く、断熱性が低いと言われるゆえんです。

 

 

2025年02月27日(木)

ヒートショック最前線_4 ヒートショックを防ぐためにできること

ヒートショックを防ぐためには、できるだけ家の中の温度差を小さくすることが重要です。以下のポイントを意識すると、リスクを大幅に減らすことができます。

①脱衣所やトイレに暖房を設置する:
脱衣所が寒いと血圧が急上昇するため、ヒーターなどで適度に暖めておくのが効果的です。

②お風呂の温度は適度にする(38~40℃が理想):
熱すぎるお湯は血圧の急激な変動を引き起こすため、ぬるめのお湯でゆっくり入るのが安全です。

③浴室を温めてから入る:
シャワーを数分間流して浴室内を温めると、温度差を少なくできます。

④家全体の断熱性を高める:
根本的な解決策として、住宅の断熱性能を向上させ、家全体の温度差をなくすことが重要です。高断熱の家では、暖房が効率よく働き、浴室やトイレなどの温度差を少なくすることができます。

 

ヒートショックを防ぐには、一時的な対策だけでは根本的な解決にはなりません。家そのものの断熱性を高めることで、室温のバリアフリー化を実現し、家族全員が安全に暮らせる環境をつくることができます。

 

2025年02月25日(火)

ヒートショック最前線_3 ヒートショックが起こる仕組み

ヒートショックは高齢者だけでなく若い世代にも起こるリスクがあります。では、そもそもヒートショックはどのようにして発生するのでしょうか?

ヒートショックが起こる主な原因は、寒暖差による血圧の急激な変動です。人の体は、外の気温に適応するために自律神経が働き、血管の収縮や拡張をコントロールしています。しかし、急な温度変化があると、体がその変化についていけず、血圧が大きく乱れるのです。

例えば、暖かいリビング(22℃)から、寒い脱衣所(10℃)へ移動し、体が急な冷気にさらされると、血管が縮まり、血圧が一気に上昇します。その後、急に熱いお風呂(42℃)に浸かると、今度は血管が広がり、血圧が急降下します。

この血圧の急激な上下動が、心臓や脳に大きな負担をかけ、失神・心筋梗塞・脳卒中などの深刻な健康被害を引き起こす原因になるのです。

特に注意が必要なのは、冬場の入浴や深夜・早朝のトイレです。

2022年の厚生労働省の調査によると、日本では年間約19,000人が入浴中に急死しており、その多くがヒートショックによるものと考えられています。

また、寒いトイレに行った際に、血圧が急上昇し、心臓や血管に負担がかかるケースもあります。特に夜間や早朝は家の中の温度が下がるため、よりリスクが高まります。

2025年02月22日(土)

ヒートショック最前線_2 全世代が意識すべきヒートショック対策

ヒートショックは高齢者がかかるもの、「自分はまだ若いし大丈夫」と思う方もいるかもしれません。しかし、ヒートショックのリスクは年齢に関係ないのが実情。現役世代でも、運動不足やストレス、睡眠不足などで血圧が不安定になりやすい人は、特に注意が必要です。また、普段から冷え性の方や低血圧の方も、温度変化に弱いため、影響を受けやすいのです。

さらに、小さな子どもがいる家庭では、お風呂場での事故防止が重要です。温度差による急にのぼせてしまい、ふらついて転倒することもあります。家族全員の健康を守るためにも、住宅の断熱性を高めることがとても大切なのです。

ヒートショックを防ぐためには、室内の温度差をなくすことが最も有効です。高断熱の家では、家全体の温度が均一になりやすく、寒い脱衣所やトイレでも快適に過ごせるようになります。また、暖房の効率が上がるため、光熱費の節約にもつながります。

近年の住宅では、壁や床、窓に高性能の断熱材を使用し、家全体を暖かく保つ技術が発展しています。たとえば、断熱性の高い窓(Low-Eガラス)を採用したり、床下や天井にしっかりと断熱材を入れることで、冷たい空気が家の中に入るのを防ぐことができます。

ヒートショックは、年齢や体調に関係なく誰にでも起こるリスクがあります。だからこそ、「うちの家族には関係ない」と思わず、家の断熱性能を見直すことが大切です。家を建てるときに、快適さと安全性の両方を考えた住まいづくりを意識してみてください。