2023年12月08日(金)

脱炭素な住まい_4 住宅を長寿命にしていくには

住宅を新築するときには、建築時の費用(イニシャルコスト)だけでなく、住んでいる時の光熱費(ランニングコスト)や、メンテナンス・リフォームなどにかかる費用(メンテナンスコスト)を考慮した住まいづくりが大切です。住宅が建築されてから解体・廃棄されるまでのライフサイクルコストをシミュレーションし、トータルでコストが下がる住宅の方が、地球環境への負荷も少ない住まいと言えるでしょう。

断熱性能が高い住宅は光熱費をメインとしたランニングコストを低減することができます。住宅のメンテナンスで最も頻度が高いのは外壁の塗り直しや屋根の修繕といった、屋外空間に関わる部分です。この資材を堅牢なものにすることで、メンテナンスコストを抑えることができます。堅牢で耐震性の高い住宅は、地震や豪雨災害などによる住宅の破損リスクを減らすことができます。

ライフサイクルコストの低い住宅は、結果的に温室効果ガスの排出量が低い住宅ということができます。ライフサイクルカーボンゼロ、カーボンマイナス住宅の補助制度もあります。

2023年12月05日(火)

脱炭素な住まい_3 住宅のライフサイクルコストとは

住宅の建築時から廃棄・解体に至るまでの総費用のことをライフサイクルコスト(LLC=Life Cycle Cost)といいます。人の一生の中で、住宅を建築することは最も高価な買い物と言えるほど、取得費用(イニシャルコスト、ここでは建築費用に相当する)をいかに抑えるかに着目されがちです。しかし、本来住宅に払う費用とは、そこに住んでいる期間の光熱費やメンテナンス費用、大規模な修繕費用等も含めたランニングコストも踏まえて検討することが大切です。

建築費を安く抑えるために、断熱材を薄くしたり、部材も安価なものにして、窓サッシも最低限のシングルガラスにするなど、最低限の装備で低品質な住まいになると、結果的に断熱効果が低く冷暖房コストがかかってしまう、接合金物などが劣化して住まいの耐久性が低下するなどの悪影響が予想されます。結果的に快適な住まいとはほど遠いものになり、修繕費や冷暖房費が高額になってしまうなど、その家に住んでいる際のトータルコストが割高になってしまうこともあります。

結果、環境への負荷もかかり、個人の財産にも、地球環境にも負荷のかかる住まいになってしまわないよう、最初の段階で検討することが大切です。

2023年12月01日(金)

脱炭素な住まい_2 ロングライフな住宅づくり

日本は、住宅の寿命で世界の先進国の中でも最も短い国の一つです。日本の住宅の平均利用期間(新築してから取り壊されるまでの期間)は約30年。アメリカが55年、イギリスが77年という寿命に比べると、いかに短いかがわかります。

日本の気候風土や地震の発生頻度といった地理的な条件に左右されていることが大きいのですが、日本が諸外国に比べて「新しいものの方が価値がある」という価値観による新築志向が偏重していることにもあるように思えます。

日本は1981年以降に建てられた住宅が約6割を占めるのに対し(1981年は住宅の建築基準が変わり、耐震基準が厳しくなった年です)、1950年以前に建てられた住宅は5%以下です。欧米、特にイギリスでは1950年以前に建てられた住宅が4割を超えていることから、欧米では古いものを大切に使って長持ちさせる価値観が根付いていると言えるでしょう。

(日本は1945年に終結した第二次世界大戦で住宅にも大きな被害を受けたこともあり、1950年以前の建物が少ないとも言えます)

 

 

2023年11月28日(火)

脱炭素な住まい_1 ライフスタイルを脱炭素思考に

今年の夏の暑さから、気候危機の問題についてしばらく述べてきましたが、今後、日本で期待されているのが住宅の脱炭素化です。日本の住宅は欧米に比べて寿命が短く(約30年と言われています)、かつ断熱性能が低いため、住宅の脱炭素化は日本全体の脱炭素化に大きく寄与するはずです。

日本ではなぜ住宅の脱炭素化が遅れているかというと、住宅は個人の私有財産であり、これまで低炭素・脱炭素が十分に進んでこなかった住宅を脱炭素化していくには、たいへんなコストがかかるため、その負担を各家庭で負うことは難しいと考えられるからです。もちろん、住宅の脱炭素政策の遅れや、日本の歴史的な環境が大きく由来していることもあります。

ただ、気候危機の影響で、猛暑や豪雨などの災害が頻発し、私たちの生活基盤が脅かされているのは事実なので、個々人の意識変容が重要であることは間違いありません。

 

 

2023年11月21日(火)

気候変動から気候危機に_8 目に見えないカーボンを意識するには

ここまで大きな気候の変化をもたらしている温室効果ガス。特に私たちの生活と密接に関係している二酸化炭素(CO2)=カーボンをいかに減らしていくかが、今後の人類の存亡に関わる重要課題かがわかります。地球温暖化という言葉を耳にするようになって20年ほどですが、この20年の環境の変化たるやすさまじいもので、「環境」を守ると「経済」が疲弊するという論は既に破綻し、もはや環境対策抜きには経済的基盤すら守れないような事態に陥っています。

ただ、CO2は目に見えず、排出していてもなかなか意識しにくいものです。しかし、実際には、エアコンの排熱や車の排気ガスなど、まさに「温室効果ガス」として大気に漏れ出ているものなのですよね。こうした「排熱」「排ガス」を出さない選択をするだけでも、だいぶ変わってくるものなのです。

また、あらゆる製品やサービスのライフサイクルにはカーボンが関わっています。一度その仕組みを学べば、何がどれくらいのCO2を排出するのかがわかるはずです。

気候危機の時代、大丸建設スタッフ一同も日々学んでいきますので、その学びをお客様方に共有できればと思います。

2023年11月17日(金)

気候変動から気候危機に_7 「カーボンフットプリント」とは?

みなさんは「カーボンフットプリント」という言葉を聞いたことはありますか?

直訳すると炭素の足跡、となり、商品やサービスの原料調達から生産、流通、使用・維持管理、廃棄・リサイクルに至るまでのCO2排出量を数字でわかりやすく見える化した指標のことです。

例えば、缶飲料であれば、原材料調達時点で、アルミ缶の製造やサトウキビなどの原料にかかるCO2排出量が約20%、生産時はジュース製造やパッケージングで15%、流通・販売時は配送や冷蔵にかかるCO2が約30%、使用や維持管理などの冷蔵で25%、廃棄・リサイクル時の空き缶収集やリサイクル処理で約10%という割合が算出され、缶飲料1本あたりのCO2層排出量は123gと仮定されています(環境省データより)。

あらゆる製品にカーボンフットプリントがあるわけではないのですが、全ての製品やサービスのライフサイクル全体において、なんらかのCO2が発生していること、製品やサービスによってCO2排出量が異なることを意識するだけでも、消費行動に変化が生まれるはずです。「カーボンフットプリント」で検索すると、いろいろな商品のデータが出てきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

2023年11月14日(火)

気候変動から気候危機に_6 「カーボンオフセット」とは?

前回はカーボンニュートラルという考え方を説明しましたが、それと似た言葉に「カーボンオフセット」があります。

私たちは日々の生活や経済活動、ものづくりなどにおいて、どうしても燃料やエネルギーを使わざるをえなく、CO2排出量をゼロにすることは難しいと言えます。一方で、CO2を排出した量の分を、CO2を吸収することに対して投資することもできます。例えば適切な森林管理への投資や、再生可能エネルギーの導入などです。

政府が信頼に足るCO2の吸収活動を認証したものを「J-クレジット」といい、日本では2023年3月現在69の方法があると言われています。実際にCO2を排出する事業者が、吸収する活動に対して、政府を通して「J-クレジット=お金」でカーボンを売買し、自社が排出した分のカーボンをオフセットすることができます。

2023年11月10日(金)

気候変動から気候危機に_5 カーボンニュートラルって何?

私たちの生活は、化石燃料によって生み出されるガソリンや電気によって一気に便利になりました。今のITに支えられた暮らしは、電気なしには成り立ちません。脱炭素は大切ですが、一方で完全にCO2を排出しない生活は難しいと言えます。

CO2は人間の努力によって、排出を減らすだけでなく、吸収することができます。植物は光合成によってCO2を吸収し、酸素を生み出します。植林や森林管理により、CO2を吸収して樹木に固定することができるのです。

発電や工場の排熱、ガソリンの排気等によって排出されるCO2の量と、森林によるCO2吸収の量が同等になれば、CO2の量はプラスマイナスゼロ=ニュートラルになります。

これが一般に言われる「カーボンニュートラル」という状態です。

CO2の排出量を減らして、CO2の吸収量を増やしていく、その努力や意識が、今後求められるでしょう。

 

2023年11月07日(火)

気候変動から気候危機に_4 温室効果ガスを理解する

地球温暖化の原因と言われている「温室効果ガス」は、大気中に含まれる二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロン類を総称します。

このうち二酸化炭素(CO2)の割合が76.0%と最も高く、石油や石炭などの化石燃料由来の温室効果ガスの排出量を減らすことが重要です。人間生活や経済活動に直結しているのが二酸化炭素なので、温暖化対策といえば二酸化炭素、脱炭素と言われるゆえんです。

続いてメタンが15.8%。実はメタンは同じ量のCO2に対して25倍以上の温室効果があるとされ、対策が急務な温室効果ガスの一つです。よく話題になるのは畜産業で「牛のゲップ」がメタンガスの発生源になると言われ、肉食を減らす運動の根拠にもなっています。他にも水田やごみの埋立処分場から出てくると言われています。

一酸化二窒素は6.2%、フロン類は2.0%で、大気中の残存期間が長く、成層圏のオゾン層の破壊物質でもあります。いずれの温室効果ガスも対策が必須であることには違いありません。

 

2023年11月03日(金)

気候変動から気候危機に(3) 住宅産業の気候危機対策

気候危機は住宅産業にも大きな影響を与えています。これまでの温暖な気候のなかでは、日当たりのよさが住まいでは重視されてきましたが、現在は強烈な日差しをいかに遮り、室内の温度上昇を防いでいくかという視点が大切になってきました。また、豪雨や台風などの災害に対して、いかに命を守っていくかについては、住まいの立地の選び方(川沿いや斜面などを避ける)、風雨に強い住宅にしていくための改修などを検討しなければなりません。

一方で、住まい=暮らし自体も、気候危機の原因物質である温室効果ガスを排出しています。いかに温室効果ガスの排出を減らすかを考えた住まいの設計は、現代社会での必須の姿勢と言えます。建物自体で使うエネルギー量を少なくし、かつ住まいの快適性を向上させるために断熱性を高めることや、エネルギー効率のよい冷暖房や給湯設備を取り入れていくことで、エネルギーのランニングコストを下げることもできます。

環境と経済性を両立させることができるのは、住宅産業でも同じことと言えそうです。