2023年05月25日(木)

高齢社会の住宅_5 介護が必要になったら

国の制度によって広がったサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)。健康なシニアが自立した生活を送りながら、いざという時の安否確認や生活相談(買い物や介護相談など)を受けられる安心感を両立でき、さらに一般の賃貸住宅と金銭的に大きな差がなく暮らせることから、人気を集めています。

一般型のサ高住は、健康な方、もしくは介護度が低い方を対象としているため、介護が必要になった時には外部の介護サービスを利用します。介護度が高まってくる、あるいは認知症になった場合は、介護型サ高住に住み替えるようになります。

介護型サ高住では、介護の専門職員が定期的に居室を巡回して安否確認を行います。一般型サ高住と同様に、買い物や病院の付き添いといった生活相談も行います。介護型の場合は、介護職員や看護職員、作業療法士等の機能訓練指導員や、ケアワーカーなどの配置要件が決められています。介護を必要とする生活になった時でも、安心して暮らすことができるのがサ高住です。

2023年05月22日(月)

高齢社会の住宅_4 サ高住って何?

みなさん、「サコウジュウ」という言葉を聞いたことはありますか?「サービス付き高齢者向け住宅」を略した言い方で、介護・医療と連携し、ケアの専門家による安否確認や生活相談などの提供とともに、バリアフリーで住宅としても十分な居室の広さを確保した住宅のことを言います。

サービス付き高齢者向け住宅は、平成23年の高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)の改正によって一気に広がってきました。サ高住には介護を必要としない元気な高齢者向けの「一般型」と、介護が必要な方向けの「介護型」があります。

一般型サ高住では、一般的な賃貸物件と同様に、賃貸借契約を結びます。ハード面はバリアフリーで、専用部分の床面積が25平米以上、キッチンやトイレ、浴室、洗面など、生活に必要な設備が全て揃っています。サービス面では、家賃のほか、管理費や共益費がかかり、生活相談を受けることができます。一般型サ高住の中には、施設内に食堂を有しているところもあり、実費を支払って食事をすることもできます。

2023年05月18日(木)

高齢社会の住宅_3 立地も考えたい

高齢者向けの住宅を探す際に検討したいのは、立地です。ご自身がある程度元気で、自分で移動をできるようであれば、駅やバス停に近い、買い物の利便性が高いなど、便利な方が圧倒的に人生を楽しめるのではないでしょうか。現代はアクティブシニアが多い時代です。スポーツクラブで体を動かしたり、趣味のダンスや絵画、音楽などを楽しむ方もいます。仲間と一緒にイキイキと好きなことに没頭できる時間は、とても幸せな余生ではないかと思います。もちろんご自身で運転ができる場合は、郊外であってもそれほど不便はないかもしれません。しかし最近は高齢者による自動車事故が増加しており、運転にはそれなりのリスクがあることでもあります。郊外住宅地でのライフスタイルから高齢者向けの住宅を探すタイミングというのは、免許返納を検討する時とリンクしているのかもしれませんね。

買い物に関して言えば、重いものを持ち運ぶのが辛くなってくる可能性があります。現在はスーパーマーケット等でも自宅まで買ったものを運んでくれるサービスも増えていますので、賢く利用するのがいいでしょう。

 

2023年05月15日(月)

高齢社会の住宅_2 転倒防止が重要なポイント

高齢者向けの住宅は、集合住宅であることの方が多いです。転倒を防ぐために、階段の上り下りがあるかないかが大きく、エレベーターや手すりの充実、スロープなどによって段差が少ないことが重要ですまた寒暖差によるヒートショックなどの事故を防止するために断熱性が十分であることも大切なポイントになります。

家事の負担を減らしていくために、住まい自体をコンパクトにしていく必要もあるでしょう。大きな戸建て住宅を維持していくには、それなりの体力が必要になります。認知症などによる火の不始末も心配です。家事負担が軽減できるような間取りや設備が望ましいですね。

これまでに住み慣れた一戸建てで長く暮らすことをご本人が望んでいるようでしたら、生活の張り合いになりますし、家事や庭の手入れといった日々のていねいな暮らしもシニア世代の楽しみになるでしょう。あくまでもご本人の希望に寄り添いながら、ベターな住宅を選んでいけるとよいですね。

 

2023年05月12日(金)

高齢社会の住宅_1 高齢者向け住宅とは

先月のブログでは、「日本の人口と住宅産業のこれから」をテーマに、少子高齢化の時代に住宅産業にどのような変化が訪れているのかについてお話ししました。今月は、高齢者向けの住宅のトレンドや、高齢になっても安心して暮らせる住宅についてお伝えしたいと思います。

高齢者向けの住宅と言っても、元気な高齢者向けの住まいと、介護が必要な方向けの住まいでは、必要な支援は異なります。「高齢者向け」と括らなくても、ご自身や同居のご家族が健康である場合は、従来の住まいで暮らし続けることも可能です。

一人暮らしになったり、階段の上り下りがつらくなる、介護が必要な状態になるなど、年齢を重ねたことに起因する生活不安があるなどの理由から、高齢者向けの住宅に転居する方も増えてきています。高齢者向けの住宅には、設備などのハード面だけでなく、介護サービスや生活支援などのソフト面の両面から、高齢者が安心して暮らすための支援があります。

2023年05月04日(木)

日本の人口と住宅産業のこれから_8 地域コミュニティの大切さ

人口減少と高齢化がますます進む社会の中で、これから大切になってくるのは、地域コミュニティです。どの駅に住むのか、駅からの距離はどれくらいか、周辺環境は? といった立地的なことだけでなく、地域で助け合える関係があるのか、いざという時に頼れる先があるのか、福祉は充実しているのかなどが、立地以上に大切ではないでしょうか。

単身世帯や高齢世帯が増えるにつれて、誰ともつながりのない「孤立無縁」の人も増えています。その家で、一人倒れても、誰も気づいてくれない……となる前に、「あの家のおじいちゃん、最近見ないね」「ポストにチラシがたくさん挟まっているけれど大丈夫かしら」などと、異変に気づいてくれる目があるだけで、救われる命もあるのではないかと思います。公的な福祉施設のケアマネージャーや民生委員さんなど、地域の福祉を支える存在とつながることで、一人でも生きていける安心感を得られるはずです。

新たな住まいを求める場合に、「家=これからの暮らし」をつくるものとして、ぜひ地域に目を向けていただきたいと思います。

 

2023年05月01日(月)

日本の人口と住宅産業のこれから_7 リノベーションによる空き家対策

日本の新築住宅の着工棟数が100万戸を下回る一方、空き家が800万戸となり加速度的に増加しつつある今、日本の住宅産業は大きな変化の途上にあります。新築を増やすことよりも、むしろ空き家をどう減らしていくか、利活用していく視点が大切です。

大丸建設でも最近はリノベーションのご相談が増えています。リフォームとリノベーションの違いは、リフォームは機能を変えずに補修や美化をしていくことで、リノベーションは機能を変えて価値向上を目指すものです。間取りや設備の変更にとどまらず、断熱性能を高めたり、バリアフリーなどの機能向上を行うことで、建物の躯体を生かしながらも価値を高めていくことで、住宅産業の「新たな市場」を形成しつつあります。

中古住宅を買い取ってリノベーションをして再販するような新たな販売形態に特化した会社もあり、住まい手にとっては新築よりも安価で利便性の高い立地での住宅を取得できるようになります。

地方では空き家バンクなどもあり、移住してセルフリノベーションで理想の暮らしを手に入れようとする若い世代も増えています。

2023年04月27日(木)

日本の人口と住宅産業のこれから_6 孤独死対策

「2025年問題」という言葉を聞いたことはありますか? 戦後に生まれたいわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者になるのが2025年なのです。認知症高齢者や年間死亡者数の増加、高齢者単身世帯の増加などによって、社会構造が大きく変わり、必要とされる福祉サービスも大きな変化を余儀なくされます。

介護・医療難民が増え、介護施設に入れない高齢者が自宅で暮らすことを余儀なくされ、徘徊や孤独死が増えることが予想されており、すでに墓地や葬儀場、火葬場が足りないという実態もあります。

特に孤独死は近隣住民にとっても大きな影響があります。死後の発見が遅くなるほど、悪臭や衛生面などの具体的影響が出てしまい、特に集合住宅の場合は物件価値にも影響します。

高齢者の独居は家族関係の変化など、どうすることもできない面もありますが、例えば地域の見守りあいがあるだけで福祉サービスとの適切な連携が可能になりますし、IoTによる見守りシステムなどによっても高齢者の孤立を防ぐことができます。

いずれにしてもこうした高齢者福祉を支えるには財源が必要です。自治体の税収が減るなかで、どのような対策が最も有効なのか、これは個人の問題ではなく社会全体で考えていく必要があります。

2023年04月24日(月)

日本の人口と住宅産業のこれから_5 住宅への影響

少子高齢化は経済や社会保障への影響が甚大であることは前回述べた通りですが、住宅問題としても大きくクローズアップされています。直近の課題は「空き家」問題です。

地方に行くと朽ち果てた空き家が点在している姿を目にすると思います。実は首都圏でも例外ではなく、郊外住宅地での空き家は確実に増えています。現在、日本では800万戸以上の空き家があるとされ、民間シンクタンクの調査によると、今から10年後の2033年には30%もの住宅が空き家になると予測されています。

空き家が増えるのは、住民の高齢化によって老人施設への転居や、死去に伴い住まい手がいなくなるからです。家族が同居していれば空き家になることを回避できますが、多くの場合は他の地域に移動して、その家を維持するために戻ることはないため、そのまま放置してしまうといったケースが見られます。

空き家の問題は、日常的な管理が行き届かずにその土地や建物が荒廃してしまい、景観への影響や、防犯の不安などが挙げられます。盗難や犯罪の温床になることもあり、自治体の中には空き家対策を優先課題とうるところもあります。

2023年04月20日(木)

日本の人口と住宅産業のこれから_4 少子高齢化の何が問題なのか

実際に、少子高齢化は何が問題なのでしょうか。いくつかの影響があるので、簡単に説明しましょう。

人口を大きく分けると、年少人口(0〜15歳未満)、生産年齢人口(15〜64歳)、老年人口(65歳以上)の3つがあります。まず挙げられるのが、経済への影響です。生産年齢人口が減少すると、日本の経済を牽引する力が弱体化します。また、少ない生産年齢人口が労働不足を補うために長時間労働を強いられ、ますます少子化が進行してしまう負のスパイラルが起こっています。

生産年齢人口が減ると、自治体にとっては住民税の税収が減り、医療や介護、教育、保育などの社会的なサービスを満足に提供できなくなる恐れがあります。高齢者福祉に不可欠な医療や介護の施設が足りなくなり、そこで働く人が十分に確保できなくなる可能性も指摘されています。高齢化による社会保障費の増大は避けられず、必要な社会保障の維持のために、社会保険料の値上げや医療費負担増、また現役世代の得られる年金額の低下などが待っています。