2023年03月16日(木)

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(4)大震災後に見直される耐震基準

1978年に起こった宮城沖地震で7400戸の住宅が倒壊したことを受けて、建築基準法が見直されました。当時は震度5程度の揺れで「倒壊しない、損傷しても修繕できる」というレベルの耐震基準でした。宮城沖地震では建物やブロック塀の倒壊によって亡くなった方がいたからです。これによって、1981年に新耐震基準が適用されることになりました。

一方で、新耐震以降に「2000年基準」ができたのは、1995年の阪神・淡路大震災の検証を受けてのことです。新耐震によって耐力壁の量や倍率が強化されたものの、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の中に、柱や梁、土台などの連結部が抜けてしまうものや、耐力壁の配置バランスが悪く倒壊してしまった建物があったことから、接合部や基礎と構造物を金物で連結することや、耐力壁をバランスよく配置することが定められていきました。

木造住宅の耐震性においては、2000年基準を満たしたものであれば、現時点での耐震性は十分と言えます。1981年以前の旧耐震の建物は、残念ながら住宅ローン控除の対象にはなりません。新耐震ではあるものの2000年基準に満たない1981年6月1日〜2000年5月31日までに建築確認を受けた建物は、一般的に「グレーゾーン住宅」とされます。

 

2023年03月13日(月)

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(3)新耐震基準と2000年基準

新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認が行われた住宅のことで、それ以前の木造住宅よりも耐力壁の量や倍率を確保するなどして、震度6〜7程度の地震でも倒壊しないレベルまで耐震性能が引き上げられました。

しかし、1995年に発生した阪神・淡路大震災によって多くの木造建物が倒壊し、このことによってさらに新耐震基準が見直されることになりました。阪神・淡路大震災で倒壊した建物の98%は旧耐震の建物でしたが、一方で新耐震の建物でも倒壊したものがありました。新耐震基準で倒壊している建物は、柱や梁の接合部、基礎との連結部分などに問題があることがわかったから基準の見直しに至ったのです。

2000年6月1日以降に建築確認が行われた建物は「2000年基準」を満たした建物、ということができます。柱、梁、筋交、土台等の各接合部に金具を使って固定し、大きな横揺れが起こった際に柱が抜けて倒壊するようなことが起こらないようにします。また、耐力壁の配置バランスに対する基準を設け、部分によって偏りが出ないような設計が求められます。

 

2023年03月09日(木)

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_2 新耐震と旧耐震の違い

みなさんは「旧耐震」「新耐震」という言葉を聞いたことはありますか?

1981年(昭和56年)6月1日に施行された改正建築基準法によって、耐震基準が改定されました。旧耐震基準とは、1950年から1981年5月31日までの間に建築確認が行われた建物に適用された耐震基準のことで、震度5程度の地震で「建物が倒壊しない、建物が損傷しても補修することで生活が可能なレベル」の建物を指します。

一方、新耐震基準は1981年6月以降に建築確認が行われた建物で、震度6〜7程度の揺れが生じても建物が崩壊しない(多少の損傷は許容)、震度5程度の揺れでは家屋がほとんど損傷しないための基準を満たした建物です。

注意しなければならないのは「1981年築」と書かれた建物が全て新耐震基準かというとそうではなく、竣工日が6月1日以降であっても、「確認申請が行われた日」が6月1日より前の場合は旧耐震が適用されているかもしれない、ということです。そもそもの建物の耐震性や、住宅ローン控除に影響するため、その建物が「旧耐震」か「新耐震」かは念入りに確認する必要があります。

 

 

2023年03月06日(月)

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_1 関東大震災から100年

2011年3月11日に起きた東日本大震災から12年が経とうとしています。2023年は関東大震災からちょうど100年にあたる年でもあり、あらためて木造住宅の耐震性について考えてみたいと思います。

関東大震災は1923年9月1日、11時58分に起こりました。マグニチュード7.9の巨大地震で、津波や土砂災害なども発生。死者は10万5000人以上、30万棟以上の建物が全壊、消失し、近代日本で最大の被害をもたらしました。

特に住宅地が密集している東京での被害が甚大だったため、東京での地震と思われがちですが、震源は神奈川県西部で、静岡県熱海市で最大高さ12mの津波を観測、神奈川県や千葉県にも大きな被害がありました。

関東大震災の教訓をもとに、毎年9月1日を「防災の日」と定めています。この100年で、阪神・淡路大震災や中越地震、東日本大震災など、日本では数多くの震災を経験しています。今後30年以内に首都圏直下地震のリスクが予測されている東京で、どのような耐震対策が進んでいるのか、ひもときます。

2023年02月28日(火)

建築家との仕事_8 工務店との相乗効果

建築家との仕事は難しいのか? そう問われると、私は「難しくはない」と答えます。大丸建設に仕事を依頼してくださる建築家は、自然素材や無垢材の力を大切にし、素直でやさしい住まいを設計します。私たちはその設計意図を正しく読み解き、図面に描かれていることを形にしていきます。設計する、施工するという役割の違いであって、求めている完成図は一緒なのだと思います。

設計―施工を自社で一括してやる場合、どうしても、現場での現実(予算、スケジュール、物の置き場、職人さんの調整、納期など)をいかに調整するかということがメインの仕事になります。一方で、設計やデザインを手掛ける方が、現場の現実に引きずられてしまうと、現場寄りの考えになって、デザインのためのプラスひと手間とのせめぎ合いになってしまう可能性もあります。

設計:木下治仁氏

それぞれの専門性を持って、限界を決めずに、よりよい住まいのために力を発揮していくためには、建築家と工務店がコラボして住まいをつくることが、最適解の一つなのかもしれません。

 

2023年02月24日(金)

建築家との仕事_7 シンプルな形に宿る本質的な美しさ

大丸建設が手掛ける住まいは、基本的に国産の無垢材を使った、自然素材の住宅です。規格品の建材を組み立てるという形ではないので、一つひとつがオーダーメイドです。木の特性を見て素材の力を引き出す施工ができるのは、技術力がある職人がいるからです。決して簡単な仕事ではありませんが、木が好きで大工や職人になっている人たちは、素材をよりよく使うことに喜びを感じます。

設計:小林敏也氏(ことこと設計室)

雑誌『チルチンびと』に掲載されるような建築家も、きっと同じ思いを持っていると思います。無垢材や自然素材を使った、周囲の環境に調和した住まいを設計する方だからこそ、私たちの素材に対する知識や技術力を求めているのではないかと思います。大丸建設とご一緒する建築家が設計する住まいは、直線の美を感じるシンプルさで、住まう人への細やかな気づかい、安心感に包まれるやさしさがあります。デザインの力や可能性を感じ、その意図を汲み取った施工を心がけたいと常に感じています。

 

2023年02月21日(火)

建築家との仕事_6 多くの人と仕事をともにする意義

美的感覚や技術力を高めていくには、もちろん、個々の学びや研鑽が重要なのはいうまでもありません。会社組織の中で、社員や職人一人ひとりが己の技術や知識を磨いていく機会もチャンスもありますが、ただ、どうしても日々現場や納期に追われて、目の前の仕事を優先せざるを得ないのはどこでも同じことではないでしょうか。

一方で、ネットワーク組織に入ることによって新たな技術や時代の流れ、新しい制度を知り、それに向けて会社の体制を整えていくことも大切です。

つまり、己の意志の力だけ自己研鑽していくのはどうしても難しくても、他者と一緒に仕事をすることで、結果的に仕事を通して技術力や知識の向上につながっていくのです。建築家との仕事では、デザイン性や設計意図を読み解いていくことで、現場の技術力を高めることにつながっていると実感しています。

2023年02月17日(金)

建築家との仕事_5 現場力が磨かれる

建築家と仕事をするようになって感じるのは、「多くの人の目が入る住まいは、よりよいものになる」ということです。大丸建設では自社設計ができるので、大丸建設だけで設計―施工まで完結することができます。私が入社してから25年以上、ほとんどの住宅は自社でつくってきていましたが、この3年、建築家との仕事が増えて感じることは、自分たちのやり方だけではできないデザイン手法や、収まりを追求することで、より美しい住まいとなり、結果的に現場力が磨かれていく、ということです。

文章での表現が難しいのですが、例えば、現場で木枠をつくる時に、ミリ単位で枠を薄くシャープに見せていくデザイン指示が出ることがあります。縦格子のスリットを入れてルーバーをつくるような際にも、細くシャープに1本1本の格子を見せていくことで、とてもすっきりとした見た目になります。

「美は細部に宿る」といいますが、建築家の仕事を通して、まさにそれを実感しています。

 

設計:小林敏也氏(ことこと設計室)

 

2023年02月14日(火)

建築家との仕事_4 自然素材に特化した工務店の強み

2020年ごろから、建築家の松本直子さんの仕事が毎年数件、コンスタントに入るようになりました。きっかけは2019年に大丸建設の社屋で開催した「オープンカフェ」のゲストで松本さんをお招きし、その際にいろいろお話しして、お互いのことを深く知り合うようになったことが大きいです。松本さんは、首都圏で特に東京都内の住宅の設計を手掛けることが多く、また自然素材を使った住まいをコンセプトにされているため、大丸建設との相性がよかったのかもしれません。

化学物質過敏症(CS)のお客様の住まいを一緒につくった際には、松本さんと何度も話し合いをしながら、お客様の症状を深く理解して丁寧に進めました。大丸建設ではCSに対応した住まいづくりができ、私自身も素材のテストや施工時に起こるご不安の解消などを冷静に対処してきた経験があったので、お互いに相談をして現場を進めていくのにあたり、信頼関係を築くことができたように思います。

設計:松本直子氏
2023年02月10日(金)

建築家との仕事_3 刺激と成長

チルチンびと地域主義建築家連合(URA)」の建築家が毎月大丸建設に訪れてくださるようになったことで、私たちにとっては、たいへん大きな刺激になりました。コロナ前だったので「オープンカフェ」という形で、地域のお客様が大丸建設の本社に気軽に立ち寄り、住まいの相談をしていただく、というコンセプトで実施していました。お客様がいらっしゃらない時間帯には、大丸建設のスタッフとゲストの建築家で歓談し、本社1階のリノベーション計画にアドバイスをいただいたり、デザインで大切にしているポイントを伺うなど、学ぶことがとても多かったです。

設計:木下治仁氏

それまでは雑誌『チルチンびと』でその作品を見て憧れる存在だった建築家を、大丸建設にお招きすることによって、個別に語り合う時間を持ち、結果的にそれがきっかけとなって建築家の仕事が増えてくるようになった意味で、とても有意義なチャレンジだったと思っています。