2017年06月19日(月)

日本の木造建築の伝統美

日本が誇る寺社建築や数寄屋造りの建物など、直線で区切られた精緻な日本の美を感じる新国立競技場。私も実物をこの目で見るのが楽しみです。

私は、日本の建物は特別に美しいと感じています。法隆寺に代表される寺社建築は、1400年を超えてなお新しく、非常に合理的で、かつ堅牢です。桂離宮のような数寄屋建築も、木材の繊細な表情や直線で構成された空間の絶妙な緊張感のなかに、どこか曲線の要素も入った洒脱さがたいそう美しいと感じます。

ログハウスなども温かみがあって好きですが、日本らしさという意味では、直線美を追求し、そのまま木を生かしていく面白みがあると思います。

寺社建築や伝統建築のみならず、一般の住宅建築でも、柱や梁を見せることによって「直線」を感じる日本の建物が、私はとても好きです。

2017年06月16日(金)

木材はメンテナンスしやすい

新国立競技場はメンテナンスのしやすさも大きなポイントです。主要な構造体は100年間大規模な修繕を必要としない計画とし、高耐久性の材料・仕様の仕上げ材を用いています。大屋根トラス部材の集成材、軒裏の縦格子といった外装に使われる木材は、加圧注入処理を施した高耐久性木材です。雨がかりのところは国産木材の中でも比較的雨に強いカラマツ材とし、杉材は雨のかかりにくい軒裏に仕様するなど、「適材適所」であるのも特徴です。

7万人以上を収容する超巨大な建築物である新国立競技場、しかも2020年には世界中の注目を集めるスポーツの祭典が開かれるこの場所で、日本の木造建築、木材加工技術の粋を集め発信できることは、非常に価値のあることと思います。

2017年06月14日(水)

低環境負荷のスタジアム

新国立競技場では、国産木材を多用した「木のスタジアム」という特長のほかにも、太陽光発電や雨水利用、自然エネルギーを積極的に活用した低環境負荷が売りになっています。

トラスの先端部には薄膜太陽電池を採用し、トラスの勾配を利用して雨水を地下の貯水槽にため、周囲の外構・植栽の灌水に利用したり、緊急時の水源としても利用できるようです。

また、高効率機器の導入や、次世代BEMS(Building Energy Management System)の採用により、空調や照明等の最適な運転、効率利用を実現し、無駄なエネルギー消費をおさえます。こうした様々な環境技術を採用し、建築物総合環境性能評価システム「CASBEE」の最高ランクの達成を目指します。

2017年06月12日(月)

世界が「木のぬくもり」に注目する

新国立競技場では国産木材の高度利用のみならず、日本の「和の意匠」「線の美」を世界に発信する素晴らしい機会であると思います。

技術提案書には「日本の伝統文化を、現代の技術によって、新しい形として表現」「日本の気候・風土・伝統を踏まえた木材利用」と書かれています。内装イメージは、「木に包まれるスタジアム」で、直線のトラスが中心に向かって包み込む内装は、世界に日本の直線美感じてもらえるに違いありません。トラスの木材には国産杉材とカラマツ材を利用します。外装の軒の庇は、木製の縦格子ユニットを採用。やわらかな陰影を作り出し、神宮外苑の森と調和した、またとないデザインになりそうです。

ちなみに、照明は「ぼんぼり」をイメージした和のあかりになるそうで、夜景時も和の趣がある、やわらかな光の演出が期待できそうです。

2017年06月09日(金)

2020年に日本の木造建築文化を世界に発信

2020年に向けて建設が急ピッチで進められている新国立競技場。座席数が約7万という国内有数の大規模建築物であるため、基本構造は鉄骨造ですが、国産材を積極的に活用することで注目を集めています。設計したのは建築家の隈研吾氏。「木に包まれたスタジアム」がコンセプトで、大屋根を構成するトラスは、鉄骨を木の集成材ではさんだハイブリッド構造ということです。

新国立競技場は、日本の木材自給率の向上を明確に謳い、日本の林業の活性化、森林の適正な管理と保全を目的に掲げています。新国立競技場はコストの問題で再設計となったため、調達がしやすく加工も容易な中断面集成材を採用してコストの低減をはかっています。また、トラス面の木材は加圧注入処理をほどこした高耐久性木材を使用。新国立競技場では、日本の木材利用技術の集積としても見所が大きいのが特長です。

2017年06月08日(木)

仮設住宅の木造化に期待

2011年に起こった東日本大震災、そして昨年の熊本地震。巨大台風や水害等の異常気象。世界屈指の災害大国である日本では、暮らしの備えとして「仮設住宅」の産業も重要です。

仮設住宅はその多くが簡易的につくられるプレハブ住宅ですが、東日本大震災直後からいち早く仮設住宅で木造建築を実現したのが岩手県住田町です。住田町では震災以前から町の基幹産業として林業活性化を掲げ、木材の販路拡大のために木造仮設住宅の設計図を描いていたそうです。その経験が、震災後いち早く木造、しかも多くが住田町内の材を使った仮設住宅の建設に動きました。

熊本地震でも、全国の工務店や建築業の組織でつくる「全国木造建設事業協会」と熊本県が提携して、熊本県産の木材を使った仮設住宅を建設して復興支援をおこなう締結が結ばれました。

木造仮設住宅では木材を再利用できるため、今後の普及が期待されます。

2017年06月07日(水)

今後国産材の需要を増やしていくには

これまで、国産材が主に使われてきたのは、住宅の建築用材が主流でした。しかし、今後は人口減少にともない、住宅の新築需要は減ってきます。その時に、住宅だけではなく、公共建築にも国産材が使われていくことが重要になってくると考えられます。

林野庁では「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を平成23年に定めました。国が公共建築物に対して、「可能な限り、木造化、木質化」を進めるという方向性を明確に示したものです。

木造率が低い(平成20年度の床面積ベースで7.5%)低層の公共建築での木造化・木質化に力を入れていこうという法律で、木造化率を平成20年度での7.5%から年間25%程度に向上していこうとしています。

2017年05月22日(月)

産地と一緒に「命のリレー」を続けたい

匠の会では活動のなかで、これまで、主に構造材を仕入れている産地の和歌山県・山長商店さんと一緒に、都会の小学校で種から杉・檜の苗を育てて、それを林産地で植えようという取り組みをしてきました。その時に驚いたのが、地元の和歌山の小学生と一緒に植樹したのですが、現地の子どもも山に苗木を植える体験は初めての子が多かった、ということです。

杉や檜の苗はとても小さくて、植えても必ず芽が出るとは限りません。苗木を育てるのも大変ですが、それを1本の木に育てるまでは50年、60年とかかり、途中で間引きや枝打ちなどをしなくてはならず、とても手間がかかる作業です。苗木を育てることで、木の一生に思いを馳せ、それが住宅として長く住み継がれていく様子を伝えていけたら……。

ここのところ忙しくて途切れていましたが、またこの「命のリレー」を復活したいと考えています

2017年05月19日(金)

日本は世界屈指の「森林国」

日本の森林は約2500万平米あり、国土の面積が3779万平米なので、国土の約66%、つまり3分の2が森林に覆われている、世界でも屈指の森林国です(1位がフィンランド、2位がスウェーデン)。日本の森林のうち5割が天然林、4割が人工林(杉や檜など建築用材として植えられた林)で、その他が残り1割です。

日 本の森林面積はこの40年、ほどんど変わっていませんが、森林蓄積(木の幹の体積)は年々増え続け、過去40年間で2.3倍に増えているそうです(http://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/koutai.php)。こうした数字から、増え続ける資源を有効に活用していくことが大切であり、それが国内産業を活性化することにもつながります。

一方で、林業に関わる人の高齢化、担い手不足の問題は深刻です。使うべき資 源があるにも関わらず、担い手がいなければ、林業を持続可能にしていくことは不可能です。林業で食べられる人を増やしていくことが、これから急務になるのではないでしょうか。

2017年05月16日(火)

お客様に引っ張ってもらっている

日本で木材自給率が向上し、住宅建築で国産材を使うことが再び一般的になってきたのには、消費者の意識が変わってきたことにもあるのではないか、と思います。『チルチンびと』のような雑誌が、木の家づくり、木のあるライフスタイルをリードしてきたことには間違いありませんが、お客様自身が「無垢材の家をつくりたい」という要望を持っていなければ、いくら工務店側がそう思っていたところで、実現できません。

昔は「柱は檜でなくてはならない」という意識が根強く、杉を構造材に使うことに、建て主も工務店も抵抗があったことも否めません。しかし、今では杉が構造強度に優れていることが科学的に明らかになり、また乾燥の仕方によってより強度が高まるなど、技術面が向上して、杉を構造材に使うことが当たり前になってきました。

こうした社会的な状況と消費者ニーズが、国産材を使うことを後押ししてくれるようになったと言えましょう。