(6) 基礎工事にかかる費用 その1

基礎工事は文字通り住宅の「基礎」にあたる部分なので、ボリュームの大きなところです。使う材料(コンクリートやパッキンなど)の量によって値段が変わるので、大きな家であればそれだけ単価は上がります。大丸建設の建てる家では、160万円〜200万円程度になることが多いです。

基礎工事には、遣り方、掘削・砕石・転圧、捨てコンクリート、配筋工事、型枠工事、アンカー取り付け、基礎コンクリート、天端均し、玄関内外土間コンクリート、埋め戻し、残土処分、コンクリート強度試験、基礎仕上げ、基礎パッキン、ポンプ車といった項目が並びます。基礎ならではの独特の言葉が並びますよね。

「遣り方」とは、基礎工事前につくる仮設物のことで、建物の位置や基礎の高さ、基礎の中心線を出すことです。「掘削・砕石・転圧」は基礎工事のために地面を掘削したり、石を砕いたり、乱れた土を転圧して強度を保つことです。「捨てコンクリート」は地面を掘って地盤を固めた後に、水平面をつくるために打つ無筋のコンクリートのこと。こうして家を建てる地面がしっかりと固まったら、さらにその上に基礎が立ち上がっていきます。

 

↑「遣り方」・・・敷地内に建物の位置を出す作業のこと。

↑ 捨てコンクリートの上に組んだ鉄筋。

[写真:大丸建設のホームページ「施工レポートブログ」より]

 

(5) 仮設工事にかかる費用

それでは、新築の際にどんな費用がかかるのか、具体的に見ていきましょう。

仮設工事は、仮設トイレや仮設水道といった、住宅建築の際に一時的に必要となる設備をつくることで、これらは、工事が終わったら撤去されるものです。

足場づくり、仮説のトイレを工事期間分リースする費用や、仮設の水道、電気を引いてくる費用、また工事期間分の水道代・電気代、養生費がかかります。

最初に書く「墨出し」とは、いかにも大工工務店らしい項目ですが、これは家を建てる現場の地面などに、工事に関わるさまざまな「線」や「寸法」を書き出すことです。大工は以前、「墨つぼ」に入った墨を使って水平や垂直の位置を書いていました。今はレーザーを使って水平や垂直を出すため、「墨つぼ」はあまり使われませんが、大丸建設の社屋にはかつての名残を残す「墨つぼ」があるので、興味のある方はぜひ見にきてください。

仮設工事費用の中で最もボリュームの大きいのが「仮設足場」です。外壁や屋根工事など、高所で作業する時に、職人さんが安全に作業できるために単管や金属板をくさびで組み合わせたものです。また、「発生残材処分費用」も金額は大きくなります。

なお、お見積もりの注意点として、仮設工事にかかる費用を見積もり総額に入れない業者もあるため、ちゃんと仮設工事費用も見積もりに含まれているかどうかの確認が必要です。

家の大きさにもよりますが、仮設工事費用は70万円〜100万円程度みておきます。

 

[写真:大丸建設のホームページ「施工レポートブログ」より]

(4) 工務店の労力にもコストがかかっている。

お見積書の内訳を細かくみていくと、材料、養生、工事の実働、各工事の解体、運搬や電気・ガス代などの費用がかかっていることがわかります(各項目は別途詳述します)。それぞれの工事に、どんな材料が必要で、それを取り付けるのにどんな職人さんがいて、取り付けのための工具に何があって、つくるだけではなく処分にもお金がかかるということが、金額で示されています。

概要内訳書にある「諸経費」が、おおまかにいえば、工務店の取り分になります。工務店は、住宅の建築工事に関わる職人さんや材料を発注し、無駄なくスケジュールを立て、お客様と打ち合わせをしたり、図面を修正するなど、すべてのコーディネートとマネジメントをしていきます。工務店の実労働分の取り分がなければ、お客様がすべて自分で材料の発注から工事材料の廃棄、職人のコーディネートまでしていかなければなりません。労力、知識、産地やメーカーとのネットワークのある専門家が必要な分野です。私たち工務店は総合的に知識や経験をたくわえていかなければならず、そのための投資にかける費用も会社として持っていなければなりません。あまりに安い金額で契約してしまうと、現場を回すだけでそれよりもよい提案をする余力がなくなり、工務店としての先行きも厳しくなります。健全な経営のためには、工務店としての利益もきちんとおさえていかなければ、成り立たなくなるのです。

 

 

(3) お見積書の概要に示されているのが工事の内容

工務店の「お見積書」に書かれていることは、その工事にかかる「金額」だけではなく、実は工事の工程そのもの、ともいえます。大丸建設の場合、新築工事のお見積書の概要には、次の順番で書かれています。

・仮設工事

・基礎工事

・木工事

・屋根・板金工事

・断熱工事

・防蟻工事

・塗装工事

・外壁サイディング工事

・内装工事

・鋼製建具工事

・木製建具工事

・住宅設備機器

・給排水設備工事

・ガス工事

・電気設備工事

・冷暖房設備工事

・外溝工事

・諸経費

 

おおまかには、お見積書の概要内訳に書かれている順番が、工事の順番であり、一つひとつのプロセスにそれぞれ材料があり、運搬や廃棄があり、職人さんの工数がかかり……という流れになっているわけです。

 

 

(2)「お見積書」にすべての情報がのっている!

家を建てる時に、お施主さんが最も真剣に見る書類が2種類あります。一つは設計図です。どの部屋がどんな大きさで、窓の位置や高さ、電球の位置や配線図などが部屋ごとに、事細かに記されています。

もう一つが「お見積書」ではないでしょうか。お見積書は、家を建てる時にかかるお金をまとめたもので、総額、概要内訳、項目ごとの明細内訳、さらに細かな個別明細内訳が一式でまとまり、お渡しする時にはそれなりに分厚い書類になります。

ここに、どんな材料がいくらかかり、面積や使用個数を掛け算します。また、人工といって、どの職人さんが何日働くのかの計算も必要です。パネルなどの梱包材を廃棄する処分費もかかりますし、大きな材木を運ぶトラックの運搬費や、駐車場が足りない時には駐車場代も必要です。それから、消費税もかかります。

これらをすべて足し合わせたものが「お見積もり書」となります。新築の場合、床面積や使用する材料、工期によってお見積もりは大きく変わりますが、2500万円〜4000万円という大きなお金が動くので、契約時、上棟時、中間時、竣工時など、だいたい4回にわけてお支払いいただくことが多いです。

 

 

(1) 工務店に家づくりを頼む時の「お金」の話

今年前半のブログでは、住宅業界を揺るがす「ウッドショック」についてお伝えしました。大丸建設のような家族経営の小さな工務店は、住宅業界の末端にあるため、市場の影響を大きく受ける部分と、小さいからこそ産地やお客様と直接つながることでの「信頼関係」があり揺るがない部分と、両方あることを痛感しました。

いずれにしても、お客様の「家を建てる」ということは、その後のアフターメンテナンスも含めて、一生涯のお付き合いになるということ。そのため、会社をつぶさないことが、私にとって何より大切なのです。経営が健全にまわっていかずに廃業や倒産という憂き目にあえば、社員も、大工さんも、職人さんも仕事を失い、誠実で真面目な「木の家」をつくる技術も人も途絶えてしまいます。

木の家は、建った後も生きています。木は呼吸し、空気を調湿し、時に歪みや割れが発生した時には、その家のことをよく知る職人や技術者が適切に対処していきます。お客様の家のことを、お客様と同じくらいよく知る私たち工務店は、かかりつけ医のように、家の不調や不具合を整えていく「ハウスドクター」なのです。

お客様の家に対して責任のある、私たちのような地域工務店が次の世代まで残っていくためには、健全な経営が大切です。今月から10月にかけて、地域工務店にまつわる「お金の話」をしていきます。

 

(8)社会での健全なお金のまわりかた

ウッドショックによって木材価格が高騰したことによって、住宅の建築コストに対してよりシビアに、真剣に考えることになったこの数カ月。大丸建設でもお客様に対して、よりていねいに住宅建築のコストについて説明し、納得していただき、お見積もりを出しています。

材を育てるのには一朝一夕ではなく、それこそ50年以上の長い年月が必要です。植林、下草刈り、間伐・除伐、伐採まで、1本の木が植えられてから私たちの手元に届くまで、林業者の一生涯がそのまま込められているような熟練の技術と、材の見極めの眼力があって、初めて私たちの手元に届きます。

もちろん住宅を建てる側としてはコストが安くなるのに越したことはありませんが、山林の環境維持や林業家の技術継承を、ただコストだけで切り捨てていいのでしょうか。住宅を建てる人、そしてそこに一番近い工務店が、木材が届くまでにどのような時間や技術が必要で、それを次の世代に伝えていくために、健全な価格で購入し、産業を回していくサイクルの一つとしてうまく機能していくよう、私たちもあらゆる機会を通してお客様に伝えていきたいと思っています。

 

(7) ウッドショックをきっかけに国産材の価値を高めたい

2カ月にわたりウッドショックについて考えてきましたが、そもそも木材の原材料費がどのように決まるのか、日本の住宅建築における国産材の重要性、ひいては産地を守り育てることの大切さを突きつけられる、大きなきっかけになったのではないかと思います。

大丸建設のように、日本で古くから伝わる木造建築を主とする工務店は、木材がなければ家を建てることはできません。もちろん、輸入材も木材なので私たちは家を建てることはできますが、大丸建設の大工・職人は、国産材(スギ・ヒノキ)を扱うことに長けていて、木目のくせ、やわらかさ、強度、材質など、同じ種類の材であっても、部位によって適材適所を使い分けるやり方で、木を無駄なく大切に安全に使う技術を持っています。日本の高温多湿な気候風土に適した材は、なんといっても国産材(スギ・ヒノキ)だと私は思っています。そして、国産材を安全に美しく使い尽くす技術、つまり「匠の技」を伝え、その価値を残し高めていくことが大切だと私は考えています。

 

(6) 木材の値段はどのように決まるのか

木材価格がそもそも適正かどうか、それを考えるのには、木材がどのように流通しているかを知ることが大切です。

木材は山から搬出され、原木(丸太)がストックヤード(貯木場)に置かれたあと、市場に売りに出される、合板工場・集成材工場・製材工場に送って加工され、ハウスメーカーや工務店などの住宅市場に売りに出されます。

木材価格は、原木市場でのセリによって価格変動し、また合板・製材工場のストック量が増えれば価格下落、在庫が減れば価格上昇となります。国産材市場は材のストックの量で変わるのですが、もちろんその価格は海外からの輸入材にも影響され、輸入材の量や円高ドル高などの為替相場によっても大きく変動します。

今回のウッドショックは、輸入材の減少と価格高騰が引き金になって、国産材の需要過多、在庫減少が連鎖的に起こり、結果的に国産材の価格も大幅上昇となりました。

(5) ウッドショックで国産材価格はむしろ適正に?

林野庁の統計データを見ると、国産材の価格はそもそも安すぎたのではないか、という指摘があります。統計データをとり始めた1960年(昭和35年)はスギの丸太1流米(m2)あたり10,000円ほどで、1980年(昭和55年)までは上昇を続け、40,000円ほどになりました。その後、価格が下落を続け、2020年は13,000円ほど。結果的に、ウッドショックで国産スギ材の価格が20,000円ほどに上がったとしても、そもそもウッドショック前の値段が適正だったのかどうかを考え直さなければなりません。

もちろん、お客様にとっては、素材の価格は安いに越したことはないですし、国産材が高いから国産材を使えない、という選択になるのは、工務店として避けたいのが本音です。しかし、木材価格があまりに安いと、林業そのものが持続可能ではなくなるので、今後数十年先を見越した時に、日本の木材加工の技術や日本独自の建築工法が廃れてしまうのは残念極まりないです。

何をもって適正価格というのか、ウッドショックをきっかけに、私たち工務店も、お客様も、一緒に考えていくことができればと思います。