建築家との仕事_5 現場力が磨かれる

建築家と仕事をするようになって感じるのは、「多くの人の目が入る住まいは、よりよいものになる」ということです。大丸建設では自社設計ができるので、大丸建設だけで設計―施工まで完結することができます。私が入社してから25年以上、ほとんどの住宅は自社でつくってきていましたが、この3年、建築家との仕事が増えて感じることは、自分たちのやり方だけではできないデザイン手法や、収まりを追求することで、より美しい住まいとなり、結果的に現場力が磨かれていく、ということです。

文章での表現が難しいのですが、例えば、現場で木枠をつくる時に、ミリ単位で枠を薄くシャープに見せていくデザイン指示が出ることがあります。縦格子のスリットを入れてルーバーをつくるような際にも、細くシャープに1本1本の格子を見せていくことで、とてもすっきりとした見た目になります。

「美は細部に宿る」といいますが、建築家の仕事を通して、まさにそれを実感しています。

 

設計:小林敏也氏(ことこと設計室)

 

建築家との仕事_4 自然素材に特化した工務店の強み

2020年ごろから、建築家の松本直子さんの仕事が毎年数件、コンスタントに入るようになりました。きっかけは2019年に大丸建設の社屋で開催した「オープンカフェ」のゲストで松本さんをお招きし、その際にいろいろお話しして、お互いのことを深く知り合うようになったことが大きいです。松本さんは、首都圏で特に東京都内の住宅の設計を手掛けることが多く、また自然素材を使った住まいをコンセプトにされているため、大丸建設との相性がよかったのかもしれません。

化学物質過敏症(CS)のお客様の住まいを一緒につくった際には、松本さんと何度も話し合いをしながら、お客様の症状を深く理解して丁寧に進めました。大丸建設ではCSに対応した住まいづくりができ、私自身も素材のテストや施工時に起こるご不安の解消などを冷静に対処してきた経験があったので、お互いに相談をして現場を進めていくのにあたり、信頼関係を築くことができたように思います。

設計:松本直子氏

建築家との仕事_3 刺激と成長

チルチンびと地域主義建築家連合(URA)」の建築家が毎月大丸建設に訪れてくださるようになったことで、私たちにとっては、たいへん大きな刺激になりました。コロナ前だったので「オープンカフェ」という形で、地域のお客様が大丸建設の本社に気軽に立ち寄り、住まいの相談をしていただく、というコンセプトで実施していました。お客様がいらっしゃらない時間帯には、大丸建設のスタッフとゲストの建築家で歓談し、本社1階のリノベーション計画にアドバイスをいただいたり、デザインで大切にしているポイントを伺うなど、学ぶことがとても多かったです。

設計:木下治仁氏

それまでは雑誌『チルチンびと』でその作品を見て憧れる存在だった建築家を、大丸建設にお招きすることによって、個別に語り合う時間を持ち、結果的にそれがきっかけとなって建築家の仕事が増えてくるようになった意味で、とても有意義なチャレンジだったと思っています。

 

 

 

建築家との仕事_2 建築家との仕事の始まり

大丸建設が建築家との仕事を意識し始めたのは、2019年のことです。これまでは工務店という立場で、「チルチンびと『地域主義工務店』の会」や「協同組合匠の会」というネットワーク組織の中で、建築家のデザインする物件の事例にふれることはありました。一方で、自社でも設計できるスタッフがいて、お客さまと直接やりとりすることを大切にしていたので、特に建築家とのコラボレーションを積極的に行なっていたわけではありませんでした。

2019年に定年を過ぎても長く大丸建設で勤め上げてくれた営業・設計のスタッフが退職するのを機に、本格的に建築家との仕事を検討し始めました。2019年5月に、「チルチンびと地域主義建築家連合(URA)」とのコラボイベントを発表し、毎月、URAの建築家を「だいまるけんせつオープンカフェ」にお招きすることになったのです。

URAとのコラボを発表するブログ

https://www.kk-daimaru.co.jp/blog01/2019/05/

 

8) 止まっていた本社1Fリノベを今年こそ!

大丸建設の本社1Fを、地域にひらかれたスペースにしたい。

そう掲げ、3年ほど前から少しずつ1Fの清掃や、社員とリノベプランを話し合ってきたのですが、気づいたらコロナ禍や代替わりなどで、あっという間に時が過ぎてしまいました。現場が忙しい、大工さんが足りないなど、お客様優先の嬉しい悲鳴のなかで、どうしても「自分のこと」は後回しになってしまう傾向があります。

本社リノベはこれまでにもURA(地域主義建築家連合)とのコラボイベントの中で建築家の皆さんに相談していた案件でもありました。ウィズコロナ時代に本格的に突入するなかで、地域に根ざした工務店の存在は今後ますます必要になってくると考えられ、地域の方が家の相談にふらりと訪れられるような、そんな場をつくっていきたいと考えます。

本社1Fリノベが2022年の大丸建設のトップニュースを飾れるよう、今年こそはその目標を社長ブログで掲げたいと思います。

 

7) ウィズコロナ時代のイベント運営について

2020年に始まった新型コロナウイルスの世界的流行は、収束の見通しの見えないまま2年が経とうとしています。ワクチン接種によって10月からはいったん小康状態になったものの、オミクロン株の広がりによって先行きは依然として不透明です。地域の方との交流を目的としたイベントも軒並み中止、大丸建設の社屋をひらいた木工イベントやオープンカフェも中止せざるを得ない日々が続きました。そんななかでも、現場見学会だけは完全予約制、少人数制で、感染症対策に気を配りながら実施してきました。

今後も感染症との付き合いが続いていくと考えると、イベントの自粛や中止でお客様との接点構築を諦めるのは持続可能ではないと思います。感染症対策のポイントも確実に浸透してきているので、対策を徹底しながら、感染状況を注視しながら、少しずつイベントも再開していきたいと思います。そして、本物の木の家のよさ、日本のものづくり技術の素晴らしさを、地域の方々に少しでも多く伝えていきたいと思います。

(8) 「適正」な見積もりとは何か

マンションリノベーションといっても、その価格はピンキリです。一般的な不動産価格で言うと、最低限のリフォームとして内装を安価な建材できれいにして、シンプルなシステムキッチン、洗面台、ユニットバス、トイレの設備を更新して、再販するようなケースがほとんどです。

一方で、工務店と一からつくるマンションリノベーションは、外壁や構造、窓、主要配管部はそのままにしなければなりませんが、逆に言えばそれ以外はすべて自分の好きな形でデザインすることができます。スイッチ、照明、建具など、一つひとつこだわり抜いて選ぶことで、全体が調和した心地よい住まいができます。言うまでもなく、スイッチプレートも市販の最安価なものよりも、おしゃれにデザインされたものは高価になります。しかし、それこそが「価値」「ブランド」なので、一概に価格だけでは比較できるものではありません。

見積もりを細かくみていくと、一つひとつの材料があり、工事の手間・人工があり、その積み重ねが見積もりに反映されていきます。

ただ値段が高い、安いだけではない、お客様が目指したい「価値」そのものが、適正な見積もりといえます。

 

[写真:大丸建設が手掛けたマンションのリノベーション]

↓ Before

↓ After

 

(7) フルリノベーションは若い世代にいい選択

大丸建設がある東京都は、23区外であっても土地の値段が非常に高く、駅に近い立地で新築住宅を建てるのには、かなりのコストがかかります。若い世帯ほどお金には余裕がない一方、電車を使って通勤をするため、駅から近い利便性の高い土地が必要になる場合があります。駅近の新築住宅は現実的でない場合は、マンションも一つの選択肢になります。

ライフスタイルにこだわりのある人も増えてきており、自分らしいセンスや趣味を反映させた住まいづくりの選択肢として、マンションリノベーションはとても有効だと思います。マンションであれば、駅に近い築古の物件をあえて選び、フルリノベーションで自分らしい住まいをつくることができます。リフォーム済み物件として、新建材とユニットバス、システムキッチンでピカピカな内装の物件も出回っていますが、せっかくだから家づくりの楽しみをマンションでも味わえるといいですよね。キッチンやトイレ、水回り、照明など、思い通りの設計で、自分たちらしい住まいづくりができます。

 

[写真:大丸建設が手掛けたマンションのリノベーション]

*ブログ(1)にリノベーションのBefore/Afterを掲載しているので、ご覧くださいませ。

(6) 配管・給湯・電気工事には気を使う

マンションのリノベーションで最も気を使うのは、水回りの工事です。水回りとは、キッチン、トイレ、風呂、洗面所、洗濯機のパンのことで、特に注意しなければいけないのは「排水」です。

マンションで最も恐いトラブルは、水漏れ事故です。排水管の結節部がゆるんでいたり、コンクリートやモルタルのひび割れから階下に水が漏れた場合、階下の住宅の家財の補償や、改修工事が必要になることもあります。その場合は上階の責任となるので、施工工務店としては、細心の注意を払って施工する部分です。

電気工事については、今は漏電等のトラブルはほとんどないですが、一度配線してしまうと、その後分岐したりコンセントやスイッチの増設には、壁に穴を開けなければいけないので、設計時点でしっかりと配線計画をしていく必要があります。お客様がどの部屋で、どういうライフスタイルで過ごすのか、具体的な生活のイメージまでして、配線図を設計図に落とし込んでいきます。

 

(5) マンションの性能向上には断熱対策

マンションは基本的に構造は丈夫という前提でつくられています(かつて耐震偽装事件もありましたが……)。また、リノベーションによって耐震性能をアップすることは難しいので、できることといえば家具の転倒防止や、家具を建具にしたり、ドアのラッチをしっかりしたものにすることくらいです。

断熱性能も基本的には躯体の性能に頼ることが多いのですが、実は、壁や天井に断熱材を付加する、性能のよい断熱材に変える、床暖房にするなどして、暑さ寒さを軽減することができます。

最も有効なのは窓のリフォームです。断熱性の高い窓(Low-Eガラスや真空断熱ガラスなど)に変えるだけで、窓周辺からの熱貫入や放出を大幅に軽減することができます。エネルギーコストが低減できることよりも、寒さ暑さの体感が大きく変わってくるので、価格以上のメリットを感じられるはずです。

ただし、マンションの窓をリフォームできるかどうかは、管理組合によって異なります。多くの場合は、窓は共有部とされているからです。その際は内窓という選択肢があります。内側に窓を設置するだけなので、共有部のルールに抵触せず、安価に効果が高い断熱工事となります。

 

[参照:会社HPブログ(全8回シリーズ)より]