2025年の抱負_4 東京一極集中時代に工務店はどうあるべきか

口減少が止まりません。2023年10月1日現在の人口動態を見ていくと、総人口は1億2435万2千人で、前年に比べ59万5千人(-0.48%)の減少となり、13年連続で減少しています。特に若者(15歳未満)の割合は11.4%と過去最低になり、一方で高齢者(65歳以上)の割合は29.1%となり過去最高を更新し続けています。今後少子高齢化の傾向はますます顕著になり、若者が高齢者を社会的に支えていく構造もいずれ立ち行かなくなる可能性があります。

ただ、この人口減少のトレンドは、東京だけで言うと状況が異なっており、全国47都道府県のうち、東京都のみ2年連続で人口の増加となっています。東京への一極集中の状況は明らかで、地方都市と東京の課題は同じ尺度で考えるのは難しいと思います。

ただ、東京でもさらに都心に近い方と、大丸建設がある多摩地方では、暮らし方や働き方は多少異なります。郊外では土地を取得して家を建てることはまだ可能ですし、若い世帯でも一戸建てを新築できる価格帯の土地はあると言えます。

大丸建設では、建物を建てるだけではなく、お客様の暮らしを提案できる会社でありたいと思っています。隣近所と仲良くなれるような暮らし方を大丸ニュースやこのブログでも折にふれ発信していきます。

 

空き家を考える_10 地域コミュニティが空き家に対してできること

空き家問題は全国的な課題で、今後ますます深刻化していくことが考えられます。自分の家の隣に放置空き家があって、衛生面や防犯上のリスクが高まれば、安心して生活できる居住環境が保たれなくなります。住宅の所有者や相続人の問題なので、地域住民が介入できることではないですが、こうした問題を未然に防ぐためにも、地域コミュニティの中で声をかけ合う、挨拶をし合う、高齢者世帯や独居の方に日頃から目を配るといった日常的な関係性がとても大切になります。

 

工務店としては、基本的に世帯単位のお客様への情報提供や、相続によって引き継いだ土地や家屋を適切に管理していく方法をお伝えすることくらいしかできませんが、大切な家族の思い出や、ご先祖様から受け継いだ歴史などもあるので、ご家族の思いに寄り添い、予算的にも労力的にも現実的な解決策を提供していくことでお役に立ちたいと考えています。

例えば、現代はITが発達していますので、センサーなどを設置することで近隣への悪影響を及ぼす環境を未然に防ぐ手立てを構築することや、不法侵入を監視して抑止力につなげることもできるはずです。

また、倒壊や害虫・害獣のリスクを防ぐために最低限行うべきメンテナンスも、引き継いだ住宅の状態を見れば判断できます。台風や地震等で屋根が飛ばない、倒壊しないようにするため、耐震診断等の補助制度を使うこともできますので、ご相談ください。

 

思い入れのある土地や家屋であっても、人が住まない建物は劣化し、傷みます。それがご自身にとって負の資産になると、楽しい思い出も辛いものになってしまう可能性があります。資産価値があるうちに早めに売却するのも一つの手です。リノベーションなどで新たな居住者を得て新しい思い出が生まれる家として価値が受け継がれていくこともあります。

 

大丸建設では相続で受け継いだ建物の維持管理のご相談も承ります。お客さま本意で現実的な解決策をご提案していきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

空き家を考える_9 普及啓発も重要

地方自治体では、空き家特措法による「特定空家等」の選定による指導・勧告や代執行ができるようになっただけでなく、普及啓発も重要視しています。

 

所有者への啓発活動としては、空き家の適切な管理や活用の重要性を所有者に知らせるため、セミナーやパンフレット配布を行ったり、空き家の改修やリノベーションに対し、補助金や低金利融資を提供することで、空き家の利活用を促すことも始まっています。

さらに、空き家を売却、貸出、もしくは活用した場合に、譲渡所得税や住民税を減免する仕組みを導入した自治体もあります。相続人が放棄した空き家の管理を、行政や専門機関が引き継ぐ仕組みを構築することの検討も始まっています。

 

さらに、地域内の空き家の状況をデジタル化し、所有者、状態、立地などの情報を一元管理して空き家データベースの構築に取り組んだり、空き家を活用したい人と提供したい所有者をマッチングする「空き家バンク」を設置・運営が進んでいます。

例えば、空き家を活用してコミュニティスペースやシェアハウス、観光施設などに再利用するプロジェクトを支援することで、移住希望者や起業家が新築で住戸やオフィスを取得するよりも安価で入居できるようになるなどして、移住・定住促進につなげることができます。

空き家問題は大きな課題ではありますが、逆に空き家を地域の資源ととらえ、新たな仕組みを構築することで、地域の活性化につなげることもできます。行政と民間企業による空き家管理のサービスやリノベーション活用事例も増えてきていますので、空き家に困っている方は調べてみてはいかがでしょうか。

 

空き家を考える_8 空き家に対して自治体ができること

国の法律を実際に執行して運用するのは、地方自治体となります。自治体独自でも空き家対策計画を策定することが求められます。例えば、空き家の調査、管理、活用、所有者への啓発活動などです。

 

自治体では空き家の調査・実態把握を行います。現地調査の実施し、空き家の状態や所有者を特定します。この情報をもとに、「特定空家等」に該当する物件を選定します。「特定空家等」に該当する場合、まず所有者に対し改善の指導や勧告を行います。改善がなされない場合、命令を出すことで法的な強制力を持たせます。

周辺住民に悪影響を及ぼす可能性のある危険な空き家に対しては、所有者が指導や勧告に従わない場合、自治体が建物を代わりに解体・撤去することができます。その費用は後日、所有者に請求されます。解体費用が回収できない場合、滞納処分として財産の差し押さえなどを行うこともあります。

このように、空き家特措法によって、空き家問題に対処するために行政が積極的に介入できるようになりました。一方で、所有者不明の空き家や、所有者が対応に消極的なケースでは、実効性に限界があるとの指摘もあります。今後は、所有者不明土地問題への対応や、空き家活用のさらなる促進が課題となっています。

 

空き家を考える_7 「空家等対策特別措置法」とは

これらの空き家の問題に対処するため、政府は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、特定空家等に対する指導や勧告を行っています。

空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空き家特措法」)は、2015年に施行された法律で、日本国内における増加する空き家問題に対処するために制定されました。この法律の目的は、空き家やその敷地が周辺の生活環境に与える悪影響を防ぎ、適切な管理と利活用を促進することです。

空き家特措法では、危険性が高い空き家を「特定空家等」に指定できるようにしています。先に述べたような、倒壊や災害時の危険性がある、衛生上の問題を引き起こす、景観を著しく損なう、近隣の生活環境に悪影響を及ぼすといった、特定空家等に指定された建物に対しては、行政が所有者に対して修繕や撤去、管理の改善を指導・勧告・命令できるようになっています。

特定空家等に指定された場合、住宅用地に適用される固定資産税の減免措置が解除され、税負担が増加します。これにより、放置された空き家の管理や利活用を所有者に促す効果があります。

さらに、所有者が行政の指導や勧告に従わない場合、行政が建物を強制的に解体・撤去する権限を持ちます。この場合、解体にかかる費用は所有者に請求されます。

 

 

 

空き家を考える_6 景観や環境への影響

空き家が多い地域は、地域の防犯・防災に影響を及ぼすだけではなく、景観や住環境にも悪影響を与えると言えます。

 

老朽化した空き家では、害虫や害獣の発生源となり、衛生環境の悪化を招く可能性があります。空き家の中や周辺でゴミが放置されることで、害虫(ゴキブリ、シロアリなど)や害獣(ネズミ、ハクビシンなど)の繁殖が進みます。こうした害虫や害獣が周辺住宅に移動したり、繁殖が拡大することで、放置された空き家だけではなく、人が住んでいる家にも悪影響を及ぼしてしまいます。

住宅街の景観への影響も深刻です。多くの空き家では雑草が生い茂り、樹木の枝が伸び、隣家の敷地にかかってしまったり、果実が落ちてそのまま朽ちて衛生上の問題を引き起こします。木の枝が電線にかかると、発火して火災や停電につながることもあります。

空き家の敷地が放置されている場合、ゴミや廃棄物の不法投棄場所として利用される可能性があります。悪臭の発生源になることも考えられるため、近隣の住民にとっては迷惑な状態になってしまいます。

 

また、先にも述べたように、老朽化した空き家は、地震や台風などの災害時に倒壊の危険性が高まり、周辺住民やインフラに被害を及ぼす可能性もあります。

こうしたことから、空き家が多い地域では住民が安心して暮らせなくなり、結果的に地域全体の人口減少や衰退が進む可能性がある、深刻な課題と言えます。

 

 

空き家を考える(5) 防犯上の問題

空き家はまた、防犯上の問題を引き起こします。

その第一は不法侵入のリスクです。空き家は留守であることが明白で、防犯対策が十分ではありません。万が一解錠されてしまっても気付く人がいないため、空き巣のターゲットになりやすいと言えます。無施錠や壊れた窓から侵入され、放火の対象となる場合もあります。

長期間放置されている空き家は、不法占拠される可能性があります。不法占拠者が住み着くと、退去させるのに法律上の手続きが必要になり、所有者が大きな負担を抱える場合ことはあまり知られていません。また、犯罪の拠点化とされてしまうリスクもあります。

空き家が増えることで、人目が届きにくいエリアが生まれ、地域全体の治安低下を引き起こし、防犯環境が悪化することが懸念されます。例えば子どもたちが空き家を遊び場にしてしまい、犯罪に巻き込まれたり、建物の崩壊や転落などの事故に遭ってしまうことも心配されます。

 

このように、空き家は不法侵入や犯罪の拠点化、放火、地域の治安悪化など、防犯上多くのリスクを引き起こします。また、空き家が放置されることで事故や衛生問題、地域コミュニティの弱体化につながります。これらのリスクを軽減するためには、住宅の所有者が空き家の管理をしっかり行っていくことが不可欠ですが、同時に地域住民や行政、警察が連携して対策を講じることが重要です。

 

空き家を考える_3 土地や家屋の所有の課題

日本で空き家が増え続けるのは、土地や家屋の所有や相続、維持管理コストの課題も大きいと言えます。

例えば高齢者だけで暮らしていた世帯で、高齢者が亡くなり、その子世帯が親から家を相続したものの、相続人が遠方に住んでいる、または家の管理に興味や資金がない場合、空き家として放置されることがよくあります。相続した人が、その家を「先祖代々の土地」や「思い出の場所」として大切に思うがために、手放すことに抵抗を感じる人が多いことも考えられます。

相続については、法律や税制の影響も大きいと言えます。固定資産税の住宅用地特例措置により、建物を取り壊さずに残しておく方が税負担が軽減されるため、老朽化した建物が放置されることがあります。

一方で、空き家を維持管理するには修繕費や固定資産税などの費用がかかります。特に古い家は修理費が高額になり、相続した人の負担を避けるため放置されることが多いです。特に、地方や郊外など、不動産市場の価格が低迷する地域では、管理にコストをかけても売却利益が出にくくなると考えられます。

また、相続人がいない、見つからない、家族関係の問題などで、相続登記が行われず、所有者が不明になる「所有者不明土地問題」もあります。

こうした空き家課題に対して、「空家等対策特別措置法」という法律があり、行政による強制執行が可能な「特定空家指定」という制度がありますが、土地や家屋は個人の私有財産であるという点から、執行範囲が限定的で、強制的な対応が行いにくい点も課題です。

 

空き家を考える_2 10年後に空き家率は25%に

2023年現在、日本の空き家率は13.8%と、過去最高を記録しましたが、10年後の2043年には約25%に達するだろうと見込まれています(参考:野村総合研究所)。

空き家が増えていく原因に、社会的な問題と、土地や家屋の所有や相続の問題、維持管理の課題など、さまざまな課題がありますが、今回は社会的要因を見ていきたいと思います。

 

日本では今後、ますます少子高齢化が進み、人口は減少していきます。また、都市部への人口集中も空き家増加の一因です。若年層が進学や仕事のために都市部へ移住することで、地方の住宅が空き家化します。また、都市部では地方に比べて賃貸住宅を選ぶ人が多く、購入された家が結果的に空き家になることがあります。

世帯環境の変化も大きく、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯、独居世帯が増加し、核家族化が進む中で、大きな住宅を維持する必要性が薄れるケースがあります。子どもたちが親と別居し、実家が空き家となる例も増えています。

中古住宅市場が未発達なことも空き家の増加に拍車をかけています。日本では新築志向が強く、中古住宅が売れにくい状況があります。最近ではリノベーションという選択肢に一定のニーズがあり、中古住宅市場も少しずつ動き始めてはいますが、それでもまだまだ少数派と言えるでしょう。また、日本は高温多湿で、豪雨や台風などの気象災害や、地震が多いことなどから、住宅の質が劣化しやすい環境と言え、それも日本人が新築を優先する理由の一つと考えられます。

 

空き家を考える_1 深刻化する空き家問題

日本における空き家問題は深刻化しています。総務省統計局によると、2023年10月1日時点での総住宅数は6,502万戸であり、前回調査(2018年)から4.2%(261万戸)増加しました。 このうち、空き家数は899万戸で、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。

空き家問題の背景には、少子高齢化や人口減少、都市部への人口集中、相続問題など、複合的な要因がからみあっています。高齢者が施設や子どもの家に移ることで元の住居が空き家となり、子どもが遠方に居住しているとその家の手入れが行き届かなくなることが原因の一つとなります。またその家の持ち主が死去するなど住まい手がいなくなることで、家が空いたままの状態になります。

放置された空き家は、景観の悪化、衛生問題、防犯上のリスク、災害時の危険性など、多くの社会課題を引き起こします。老朽化した建物は倒壊の危険があり、放火や不法侵入の温床となる可能性があります。さらに、害虫の発生源となり、地域の衛生環境を悪化させる要因ともなります。

今後、空き家はますます増えると予測され、この大きな社会課題に我々建築関係者はどう向き合っていくべきかについて考えてみたいと思います。