東京都の環境行政はどんな風に分かれている?(2)

省エネや地球温暖化対策といった部署のほかに、いわゆる公害防止の分野もあります。環境改善部では、大気汚染や悪臭、騒音、振動、土壌汚染対策を統括し、規制や指導、監視測定をおこなっています。アスベスト対策や光化学スモッグ情報などもこちらで扱います。

化学物質の適正管理や土壌汚染対策、有害大気汚染物質(ダイオキシン含む)の監視、地下水の水質汚濁や土壌汚染に関する業務もあります。

 

火薬取り扱い、電気工事士、高圧ガスなどの危険物を取り扱う業務や、自動車環境対策として低公害車や低燃費車の普及促進やディーゼル車の排気ガスの規制指導といった自動車に関わる環境を統括する部署もあります。

自然環境部では、自然環境保全、野生動植物の保護、森林再生、鳥獣保護や、緑地保全、自然公園に関する計画や調整をおこないます。東京都は実は広く、小笠原諸島などの世界自然遺産もあれば、多摩地域でも豊かな自然が残っていて、自然保護教育やエコツーリズムにも力を入れています。

水環境や水辺、東京湾の環境保全、河川等水質に関する業務もあり、中にはゴルフ場の農薬対策といった項目もあります。

東京都の環境行政はどんな風に分かれている?(1)

東京都環境局の組織図を見てみると、環境局がどんな政策を担当しているのかがよくわかります。

環境に関する法規の調査、企画や政策の策定、審議会や環境評価、国際協力など、制度的なものを整備する仕事があります。

また、具体的なものとしては、地球環境エネルギー部があります。

気候変動対策、スマートエネルギー都市の実現に向けた施策をおこなうこと、再生可能エネルギーの普及促進、大規模事業所からの温室効果ガス排出量の削減、地域エネルギーの推進など、地球環境とエネルギーに特化した部署や、建築物の環境計画書やマンション環境性能表示、省エネルギー性能評価、ヒートアイランド対策、地域の環境交通といった環境都市づくりや、次世代エネルギーの推進のために水素エネルギーや地産地消型の再生可能エネルギー導入などの部署もあります。

東京都の環境に関する条例

東京都の環境局は、世界の大都市の中でも環境対策にたいへん力を入れています。

 

環境局の所管する条例は、

・東京都環境基本条例

・都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)・施行規則

・自然保護条例・施行規則(東京における自然の保護と回復に関する条例)

・東京都廃棄物条例・施行規則

・環境アセスメント条例・施行規則(東京都環境影響評価条例)

となります。

環境基本条例は平成12年度より、環境確保条例も平成12年より、自然保護条例は平成13年度より、廃棄物条例は平成4年度より、環境アセスメント条例は昭和55年度より施行されています。

特に地球温暖化問題が顕著になった平成10年以降、環境確保条例や環境基本条例が制定し、特に環境確保条例は大規模建築物のCO2排出削減を義務化したことで大きな話題になりました。

東京都の環境に関する条例をみてみよう

大丸建設の本社所在地は東京都稲城市。東京都の多摩地域に属しています。稲城市は小さな市なので、大丸建設の営業範囲は稲城市のみならず、多摩地域全域、神奈川県の北部にまたがります。

 

住宅の建築に関わる法律や条例は、建築基準法や省エネ法など、多岐にわたりますが、地域特性としては東京都の条例、それから各市の条例に準じて実働することになります。大丸建設では耐震診断などは本社所在地の稲城市の条例に準拠して動いています。

今月は東京都の環境に関する条例のうち、特に住宅建築に関わるものについてチェックしてみます。東京都は温暖化対策や環境保護にとても力を入れており、世界の環境政策をリードしているという面もあります。

性能だけでない住宅の価値

2020年に改正省エネ基準(2013年基準)が義務化されることは、これまで世界に比べて遅きに失した感のある日本の住宅の省エネ性能を高めていくうえで、大変に意味のある施策だと思います。

 

一方で、私たち大丸建設が大切にしている自然素材やシックハウス対策についての関心が薄れることも懸念されます。シックハウス法が制定された2003年ごろは、住宅建材に含まれる化学物質に対する関心が高まりましたが、その後創エネや高断熱のブームがきてからは、自然素材が話題にのぼることが少なくなりました。自然素材自体が持つ断熱性能や調湿機能について、もっと研究や評価が進むことを願っています。

住宅は一つの性能や機能だけではかるものではなく、空気の心地良さや住んでいる人の快適性など、総合的に考え、感じるものです。法令順守と基準適合はきっちりおこないつつも、それだけで評価されない住まい手の思いや心地良さを伝えていくべく、大丸建設では誠実に住まいづくりをおこなっていきます。

時代に先駆けて知識と技術を習得

こうした国の動きを受け、大手ハウスメーカーではZEHや改正省エネ基準への対応を進めています。一方で、中小の工務店の場合、国の動きへの対応が遅れる傾向にあり、現時点でも1999年次世代省エネ基準に適合した住宅を建てられる技術を持たないところもあると危ぶまれています。2020年には新築住宅への改正省エネ基準の適合が義務化されるので、断熱や省エネについての知識と技術を持たない地域工務店は淘汰されてしまいます。

私たち大丸建設は、全国的な地域工務店組織に複数加盟しているため、こうした国の情報についてはいち早く取得でき、基準に対応できるよう研修や資格取得などを先行して進めています。改正省エネ基準では、建物の断熱性能だけでなく、設備機器のエネルギー性能を含めて設計することが求められているため、暮らし全体的に対する総合的な技術と知識が求められます。

2020年にはZEH(ゼッチ)が標準に

また、政府は住宅の省エネ化を進めるにあたり、2013年改正省エネ基準の2020年における義務化と、「ZEH」の標準化を進めようとしています。ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略で、建物で生産するエネルギー量と消費するエネルギー量が差し引きで概ねゼロになる住宅のことで、省エネ性能が高く、さらに太陽光発電などで創エネしており、エネルギーを需給自足できる家と言い換えることもできます。

政府は、2020年の標準的な新築住宅でのZEHを実現することを目標にしています。ただし新築住宅での省エネは義務化されますが、創エネについては義務ではないので、ZEHの標準化に向けては住宅を建てる方の創エネへの意欲が重要になってきます。

二つの基準の算出方法

住宅の一次エネルギー消費量を計算するには、建物の冷暖房や給湯、設備機器にかかるエネルギーの消費量の合計を算出し、そこから床面積に応じて設定された標準的な一次エネルギー消費量を計算します。新築住宅の設計時の一次エネルギー消費量が、国の改正省エネ基準による一次エネルギー量より低いことが、2020年より義務化されます。

 

また、日本全国を8つの地域区分に分け、地域ごとに建物外皮の断熱方法も算出しなければなりません。これまでQ値(熱損失係数)で示されてきたものは、UA値(外皮平均熱貫流率)に変わり、建物が損失する熱量を外皮等の面積で割って計算します。μ値(夏季日射取得係数)は(冷房機平均日射熱取得率)となり、建物が取得する日射量を外皮等面積で割って計算します。

この「一次エネルギー消費量」と「外皮の省エネ性能」の二つの基準を守ることが、2020年より義務化されるのです。

一次エネルギー消費量とは

改正省エネ基準では、建物外皮の断熱性能に加え、一次エネルギー消費量についても評価されます。

そもそも、一次エネルギー消費量とは、どのようなものでしょう。

まず、一次エネルギーとは、水力、風力、太陽光など、自然エネルギーと、石炭や石油など、自然から得られるエネルギーそのもののことを指します。一方で、ガソリンや電気として使いやすく加工されたものを二次エネルギーと言います。

一次エネルギー消費量とは、建物で使われる冷暖房、給湯、照明、換気設備、家電などの設備機器に使われるエネルギーを、一次エネルギーの熱量に換算したものを言います。ガソリンや電気のような二次エネルギーの場合、m3やkWといったそれぞれのエネルギーによって単位が異なりますが、一次エネルギー消費量の場合は「熱量(GJ(ギガジュール)」という単位で表現します。

 

建物の外皮だけでなく一次エネルギー消費量も判断軸に

1999年に定められた次世代省エネ基準は、建物の開口部(窓やドア)や壁などの断熱性能で判断していました。日本を北海道、東北や長野などの寒冷地、南東北や北関東地方、首都圏などのやや温暖な地域、東海・近畿などの温暖な地域、九州や沖縄などの暑い地域と6区分にわけて、地域ごとに目安にすべき建物の外皮性能が示されていました。

次世代省エネ基準では、延床面積に対して建物(外皮)から逃げる熱量を「Q値(熱損失係数)」、同じく延床面積に対して建物に侵入する日射量を「μ値(夏季日射取得係数)」として評価します。

 

2013年の改正省エネ基準では、計算方式を変え、建物外皮の断熱性能に加えて、「一次エネルギー消費量」も判断の基準に加えられることになりました。