2024年の抱負_2 変わらぬ社是

2021年に私が先代社長から大丸建設を引き継ぎ3年、160年におよぶ会社の歴史の重みを感じながら、「木の家づくり」の伝統を途絶えさせまいと日々、邁進してきました。会社として変えてきたこともありますが、変わらぬことも多々あります。その中の一つが社是でもある「ハウスドクター」です。

ハウスドクターとは、「住まいの主治医」のことで、その家のことをよく知っているのは、住まい手であるお客さまとともに、住まいを建てた工務店である、ということを意味しています。

住まいを人の体に例えるならば、骨格(柱や梁、土台など)、筋肉(断熱材や窓など)、血液や内臓(電気配線や配管、空気層など)、皮膚(内装材、クロスなど)、そして髪型やお化粧やアクセサリー(インテリア、装飾など)。住まいも人と同じで、長年暮らしていれば老化することも、具合が悪くなることもあります。そんなときに、すぐに相談していただければ、適切に状態を診て、困ったところをメンテナンスし、ときにはお化粧直しもいたします。

困ったときには、すぐに相談! いつでも駆けつけますので、遠慮なくご連絡ください。

気候変動から気候危機に_8 目に見えないカーボンを意識するには

ここまで大きな気候の変化をもたらしている温室効果ガス。特に私たちの生活と密接に関係している二酸化炭素(CO2)=カーボンをいかに減らしていくかが、今後の人類の存亡に関わる重要課題かがわかります。地球温暖化という言葉を耳にするようになって20年ほどですが、この20年の環境の変化たるやすさまじいもので、「環境」を守ると「経済」が疲弊するという論は既に破綻し、もはや環境対策抜きには経済的基盤すら守れないような事態に陥っています。

ただ、CO2は目に見えず、排出していてもなかなか意識しにくいものです。しかし、実際には、エアコンの排熱や車の排気ガスなど、まさに「温室効果ガス」として大気に漏れ出ているものなのですよね。こうした「排熱」「排ガス」を出さない選択をするだけでも、だいぶ変わってくるものなのです。

また、あらゆる製品やサービスのライフサイクルにはカーボンが関わっています。一度その仕組みを学べば、何がどれくらいのCO2を排出するのかがわかるはずです。

気候危機の時代、大丸建設スタッフ一同も日々学んでいきますので、その学びをお客様方に共有できればと思います。

気候変動から気候危機に_7 「カーボンフットプリント」とは?

みなさんは「カーボンフットプリント」という言葉を聞いたことはありますか?

直訳すると炭素の足跡、となり、商品やサービスの原料調達から生産、流通、使用・維持管理、廃棄・リサイクルに至るまでのCO2排出量を数字でわかりやすく見える化した指標のことです。

例えば、缶飲料であれば、原材料調達時点で、アルミ缶の製造やサトウキビなどの原料にかかるCO2排出量が約20%、生産時はジュース製造やパッケージングで15%、流通・販売時は配送や冷蔵にかかるCO2が約30%、使用や維持管理などの冷蔵で25%、廃棄・リサイクル時の空き缶収集やリサイクル処理で約10%という割合が算出され、缶飲料1本あたりのCO2層排出量は123gと仮定されています(環境省データより)。

あらゆる製品にカーボンフットプリントがあるわけではないのですが、全ての製品やサービスのライフサイクル全体において、なんらかのCO2が発生していること、製品やサービスによってCO2排出量が異なることを意識するだけでも、消費行動に変化が生まれるはずです。「カーボンフットプリント」で検索すると、いろいろな商品のデータが出てきますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

気候変動から気候危機に_6 「カーボンオフセット」とは?

前回はカーボンニュートラルという考え方を説明しましたが、それと似た言葉に「カーボンオフセット」があります。

私たちは日々の生活や経済活動、ものづくりなどにおいて、どうしても燃料やエネルギーを使わざるをえなく、CO2排出量をゼロにすることは難しいと言えます。一方で、CO2を排出した量の分を、CO2を吸収することに対して投資することもできます。例えば適切な森林管理への投資や、再生可能エネルギーの導入などです。

政府が信頼に足るCO2の吸収活動を認証したものを「J-クレジット」といい、日本では2023年3月現在69の方法があると言われています。実際にCO2を排出する事業者が、吸収する活動に対して、政府を通して「J-クレジット=お金」でカーボンを売買し、自社が排出した分のカーボンをオフセットすることができます。

気候変動から気候危機に_5 カーボンニュートラルって何?

私たちの生活は、化石燃料によって生み出されるガソリンや電気によって一気に便利になりました。今のITに支えられた暮らしは、電気なしには成り立ちません。脱炭素は大切ですが、一方で完全にCO2を排出しない生活は難しいと言えます。

CO2は人間の努力によって、排出を減らすだけでなく、吸収することができます。植物は光合成によってCO2を吸収し、酸素を生み出します。植林や森林管理により、CO2を吸収して樹木に固定することができるのです。

発電や工場の排熱、ガソリンの排気等によって排出されるCO2の量と、森林によるCO2吸収の量が同等になれば、CO2の量はプラスマイナスゼロ=ニュートラルになります。

これが一般に言われる「カーボンニュートラル」という状態です。

CO2の排出量を減らして、CO2の吸収量を増やしていく、その努力や意識が、今後求められるでしょう。

 

気候変動から気候危機に_4 温室効果ガスを理解する

地球温暖化の原因と言われている「温室効果ガス」は、大気中に含まれる二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロン類を総称します。

このうち二酸化炭素(CO2)の割合が76.0%と最も高く、石油や石炭などの化石燃料由来の温室効果ガスの排出量を減らすことが重要です。人間生活や経済活動に直結しているのが二酸化炭素なので、温暖化対策といえば二酸化炭素、脱炭素と言われるゆえんです。

続いてメタンが15.8%。実はメタンは同じ量のCO2に対して25倍以上の温室効果があるとされ、対策が急務な温室効果ガスの一つです。よく話題になるのは畜産業で「牛のゲップ」がメタンガスの発生源になると言われ、肉食を減らす運動の根拠にもなっています。他にも水田やごみの埋立処分場から出てくると言われています。

一酸化二窒素は6.2%、フロン類は2.0%で、大気中の残存期間が長く、成層圏のオゾン層の破壊物質でもあります。いずれの温室効果ガスも対策が必須であることには違いありません。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(8)まずは耐震診断から

耐震診断を行う場合、お客様には何らかの不安があり、その不安には原因があります。耐震診断の結果、耐震性能を満たしている基準が「1」とすると、だいたい「0.2」とか「0.3」という数字が出てきてしまいます。数字の結果だけ見ると「この家、壊れてしまうんですか?」とますます不安に陥ってしまいますが、現時点でその家は建っているので、すぐに命に直結するわけではありません。首都圏に大震災が起こった時に、その家の中にいた場合に倒壊してしまう危険性があるということで、それも可能性の話なのです。

事前に診断を申し出てくださったことで、その不安は解消できる可能性が高いのです。壁量が足りなければ、目立たない押し入れ等に耐力壁を入れ、それだけで足りない場合は居住性を損なわないよう工夫しながら筋交を入れる、金物で補強するなどの対策をとります。

人一人ひとりが異なるように、家の耐震性能もその家によってまったく異なります。「旧耐震」「新耐震」「2000年基準」という言葉だけで判断せず、専門家に依頼して正確な状態を把握しましょう。そのうえで、その家にあったオーダーメイドの耐震診断、そして必要な改修をしていくことで、必要以上に不安にならず、的確な耐震対策をしていくべきです。

ご不安なこと、ご不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(7) 耐震診断のプロとして不安の原因を究明する

私は東京都建築士事務所協会に所属しており、耐震診断のプロとして、これまで数々の木造戸建て住宅の耐震診断に関わってきました。私が耐震診断をする時に心がけているのは、淡々と事実をお伝えして、過度に地震に対する不安を煽らないようにする、ということです。

旧耐震の建物であっても、「震度5程度の揺れでは倒壊しない」ことが前提に建てられているため、今住んでいる家の耐震性が十分でなくても、今すぐに命を落とすわけではない、という前提に立ちます。まずは正確な状況の判断に努め、何をどうすれば耐震性能を確保できるのかを的確に判断していきます。耐震診断を依頼される、という時点で、そのお客さまは何らかの不安をもって我々に問い合わせてくださいます。何が心配なのかを明らかにして、その原因を確実に解消していく。旧耐震で壁量自体が足りないのか、雨漏りしていて構造体が劣化しているのか、グレーゾーン住宅で壁の配置のバランスが悪いのか、その原因を究明することによって、適切な対処ができるようになるからです。

 

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(6) 東京都建築士事務所協会の提言

私が所属している「一般社団法人東京都建築士事務所協会」では、昨年11月に「新耐震グレーゾーン木造住宅耐震化促進についての提案」を行いました。熊本地震の現地調査や、事務所協会でのこれまで行ってきた数々の調査分析をもとに、東京都内の木造住宅の耐震診断実績等を交えて、細かく検証を行っています。私も数多くの住宅の耐震診断をしてきましたが、グレーゾーン住宅では耐力壁の壁量は基準を満たしていても、開口部の大きな南側と北側での壁量のバランスが悪い、柱と梁の接合部の金物の仕様が異なるなどの課題が見つかっています。

事務所協会の調査結果から、グレーゾーン住宅の耐震性能は旧耐震と2000年基準の中間に位置しており、本来必要とされる耐震性能を下回るものが多いことがわかりました。温暖化対策やエネルギー対策から屋根への太陽光発電パネルの搭載が増え、屋根荷重が増大してさらなる耐震性の向上が求められています。こうしたことを踏まえ、事務所協会ではグレーゾーン住宅の耐震化に関わり、都内自治体での耐震化補助への提言を進めていくこととしています。

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(5)グレーゾーン住宅耐震改修への補助が必要

東京都は「東京都耐震改修促進計画」において、令和元年度末までに都内の86%の住宅が耐震基準を満たしているとされており、令和7年度末までに耐震性が不足する住宅をおおむね解消する目標を掲げています。ここでいう耐震基準とは「新耐震」のことで、「2000年基準」ではないため、1981年〜2000年のいわゆる「グレーゾーン住宅」も含まれることになります。

東京都内ではグレーゾーン住宅に対して耐震リフォームの補助を実施しているのは、港区、杉並区、江戸川区、三鷹市の4自治体です。首都圏直下地震のリスクがある現状では、新耐震基準を満たしていれば十分という認識から、今後は2000年基準を目指した耐震助成が増えていくべきだと私は考えています。1981年以前の旧耐震基準の住宅は今後築年数の経過に伴って淘汰されていくことでしょう。今後はグレーゾーン住宅自体が耐震診断の対象となり、2000年基準の耐震改修への補助が広がっていくことを期待します。