木の表情(5) 節は木の生きてきた証

木材には「節」があります。枝があった証として残るこの模様を、木の長所と捉えるか、それとも欠点と捉えるかは、使い方次第です。

節は、木が自然の中で枝を伸ばし、風雪や日照といった環境に耐えてきた証拠です。つまり、節を見れば、その木がどんな環境で生長したか――ある種の“履歴書”とも言える存在です。

しかし建材として節が多いと、かつては「木としての均質性に欠ける」「強度や加工性にばらつきが出る」として、敬遠されることが多くありました。

確かに、節の周囲は繊維が乱れがちで、材としての安定性が劣る場合があります。伝統的な構造材や規格材では、無節材を選ぶことで品質の均一性と安全性を担保してきた歴史があります。

それでも、現代の木造住宅では、材の等級管理や構造計算、乾燥・含水率の管理が進み、節を含んだ木材でも十分に安全かつ安定した建材として使えるようになりました。つまり、「節=ダメ」ではなく、「節あり材をどう使うか」が問われるようになったのです。

そして、節には“味わい”があります。木の個性や自然の営みを感じさせ、和の空間や古民家風の家にはとても似合います。節の存在を恐れず、むしろ「この木は、こんなところで育ったんだな」と想像を膨らませることができます。節が、木の家の個性と深みを生むのです。

構造材として重要な部分には無節や高等級材を使い、内装や仕上げには節あり材で表情をつける。そんな使い分けとバランスこそ、木の家づくりの奥深さであり、つくり手としての腕の見せどころです。

 

 

木の表情(4) 柾目と板目、年輪の切り方で変わる木の表情

年輪の重なりは、木材の表情にも大きな影響を与えます。材木の「切り方」の違いによって、木目も大きく変わります。

丸太から板を切り出すとき、年輪に対して直角に切る「柾目(まさめ)」、あるいは丸太に沿って切る「板目(いため)」という切り方があります。これにより、同じ木でも木目の表情や性質に明確な違いが出ます。

柾目は、年輪が直線的にきれいに並ぶため、見た目が安定し、狂いや反りが起きにくくなります。収縮や膨張による木の動きが少なく、寸法安定性に優れています。古くから建具や造作、床柱など、狂いが致命的になりやすい部分に重宝されてきました。 その反面、丸太の中心近くからしか板が取れず量が限られるため、希少で価格も高くなりやすくなります。

一方で 板目は、年輪が波打ったり山形になったり、木らしい豊かな模様を見せてくれます。これは空間に温かみや自然の息吹をもたらす表情になります。リビングや天井、内装の羽目板、家具などに使われます。ただし、年輪の幅や密度のばらつきから、乾燥・湿気変化による木の動きが大きく、反りや割れなどのリスクは柾目より高くなります。

だからこそ、木の家づくりでは「用途」と「目的」に応じて木目を選ぶことがとても重要。

 

和室の落ち着きある空気感をつくるなら柾目。木の風合いや自然のぬくもりを感じたいリビングや天井なら板目。同じ一本の丸太からでも、切り方ひとつで家全体の印象や性能が変わってきます。まさに、木と木目を“読み切る”目が、家づくりの質を左右します。

 

 

木の表情(3) 木には表と裏がある?年輪が刻む木の記憶

木の家をつくるというのは、木と対話することだ、と私たちは考えています。木には「表と裏」があるということをご存知でしたか?

木は育ちながら年輪を重ねます。幹の中心から外へ、年ごとに厚みを加えながら成長していきます。そのため、丸太の外側に近いほど“若い年輪”、中心に近いほど“古い年輪”が重なっています。この構造が、製材後の板に「木表(きおもて)」と「木裏(きうら)」という性質の違いをもたらします。

一般に、丸太の中心に近い側(木裏)は年輪が密に、繊維も詰まっていて、乾燥後の収縮が比較的安定するため、寸法変化が少なく狂いにくい傾向があります。一方、木表側は外周に近く、年輪が若く間隔が広めの年輪も混じることがあり、乾燥・湿気の変動に対して敏感で、反りや割れが出やすくなります。つまり、「木表・木裏」というのは、見た目の話ではなく、木が生きてきた時間の痕跡であり、材の“性格”そのものなのです。

この性格を理解せずに木材を使うと、たとえば床板や羽目板で「張ってから数年後に隙間ができた」「板が反って床鳴りがする」といった不具合につながります。だからこそ、私たち大工は「木表の向き」「木裏の向き」を見極め、どちらを表にするか、裏にするかを判断して板を張ります。

ただし、どちらが良い悪いではありません。大切なのは、どこに、どのように使うかです。構造材、下地、仕上げ、それぞれに応じて使い分けるからこそ、木の家は長持ちし、味わい深くなるのです。木の成長の履歴を読み取り、その木の性格を尊重して扱う——それが本当の「木づかい」だと、私は考えています。

木の表情(2) 杉の白身と赤身が生む表情の違い

杉材をよく見ると、淡く明るい部分と、赤みを帯びた部分が混在しています。これは仕上げの違いでも、経年変化でもなく、杉という木が持っている本来の性質によるものです。

杉の外側に近い部分を「白身(しろみ、または白太)」、幹の中心に近い部分を「赤身(あかみ、または赤太)」と呼びます。
白身は比較的若い年輪で構成され、色味が明るく、やわらかな印象です。一方、赤身は長い時間をかけて形成された部分で、油分を多く含み、耐久性や耐水性に優れています。赤身は水をはじきやすく、腐りにくく虫に強い性質があるため、昔から土台や柱など、構造的に重要な部分に多く使われてきました。
反対に、白身は加工性がよく、明るい表情を持つため、床や壁、天井といった内装材として使われることが多くあります。

木が生きてきた時間の違いが、そのまま性能と表情の違いとして現れている。そこに、自然素材ならではの奥深さがあります。

大工は、一本の材を見たとき、「この部分は赤身が多いから構造に使おう」「この白身の表情は、室内に使うときれいだな」と、自然に判断します。これは経験だけでなく、木の性質を理解しているからこそできる判断です。

住まいの中で、白身のやさしい色合いが目に入り、目立たないところで赤身が家を支えている。そんな関係性を知ると、木の家の見え方が少し変わってくるかもしれません。

木の表情(1) 建築用材としての杉にも個性や表情がある

気がつけば、もう師走です。一年を振り返りながら、住まいのことを考える方も多い時期ではないでしょうか。私たち大丸建設が日々向き合っている「木」について、実はすべて同じではなく、一つひとつに個性や表情があることをお話ししてみたいと思います。

日本の木造住宅で、最も身近な存在といえるのが杉です。古くから柱や梁、床材として使われてきましたが、それにはきちんとした理由があります。

杉の特長は、まずその軽さです。木材の中でも比重が小さく、建物全体を軽くつくることができます。これは地震の多い日本において、大きな利点になります。建物が軽いほど、地震時に建物へかかる力は小さくなるからです。

また、杉は加工性に優れています。鋸や鉋が素直に入り、大工の手仕事に応えてくれる木です。仕口や継手といった、日本の木造建築に欠かせない技術を成立させてきたのも、杉という素材の性質があってこそだと思います。

さらに、断熱性や調湿性にも優れています。冬は冷えにくく、夏は熱を溜め込みにくい。触れたときのやわらかさや、どこかほっとする感触も、数値には表れにくい大切な性能です。湿気がある時には空気中の水分を吸収し、乾燥している時には放出する。そんなふうに、室内空間を快適にする役割も果たしています。

見た目がやさしいだけでなく、構造的にも、暮らしの面でも理にかなった素材。それが、建築用材としての杉なのです。

 

 

2025年の酷暑_8 高温の影響での熱中症患者の増加

東京都消防庁によると、2025年6月から8月にかけての東京では、熱中症による救急搬送が8,341人と、過去最多を更新しました。2024年は6〜9月で7,996人だったので、9月のデータも足されると、さらに多い人数が熱中症に倒れたといえます。

東京では、都市部ならではの環境、つまり建物が蓄積して熱がたまりやすく、最低気温が下がらずに夜も室温が下がりにくいことなど、複合的な要因が熱中症リスクの底上げにつながったと考えられます。

もはや熱中症が避けられないリスクとなっているため、ライフスタイルにおいては、日中だけでなく夜間も冷房を活用して「暑さの残り」を軽減することが大切です。また、室内にいても水分補給をしっかりして、喉乾いてからではなくこまめに水分を取るように心がける必要があります。また、熱中症による救急搬送者の半数以上は高齢者であることから、高齢のご家族やお子さまが特にリスクが高いことを意識して、「我慢をしない」対策を家族で今一度確認をしていくことをお勧めします。

 

2025年の酷暑_7 9月にも続いた猛暑

気象庁の定義する「夏」は6〜8月で、9月は「秋」というのが一般的です。しかし、2025年の東京では、9月にも猛暑が続きました。

9月1日から3日にかけて、最高気温は36.4℃、37.0℃、37.0℃と3日続けて猛暑日を記録し、9月8日の35.0℃まで、合計4日間の猛暑日がありました。ただ、それ以降も9月全体で真夏日が14日あり、9月18日ごろまで最高気温が33℃〜34℃台の日が続きました。

いわゆる「秋のお彼岸」と呼ばれる時期の9月19日から最高気温が30℃を下回り、過ごしやすい日が増えてきました。

10月に入ってからは最高気温が30℃以上の真夏日はなく、過ごしやすい日々が続いています。ようやくホッと一息つけた実感があります。

今年の最高気温の推移を見ていますと、「夏」の定義そのものが変化しているのを実感します。少なくとも9月は「秋」というにはあまりに暑く、真夏、猛暑の9月の傾向は今後も続くのではないかと感じています。

 

2025年の酷暑_6 1日中暑くて休む間がなかった

この夏(6〜8月)の最低気温の最小は6月1日の15.0℃でした。昼は灼熱、朝晩の涼しさは短く、体が休まる時間が少なかったことが数字にもにじみます。

夏の熱帯夜(日最低気温25℃以上)は、6月は1日、7月は20日間、8月は24日間の合計45夜。エアコンなし、扇風機だけでは眠りにくい、そんな夜がほぼ半分以上の夏の夜にやってきた計算になります。「夜が暑い」はやはり決定的で、一日中暑く、日中の疲れがとれない、体を休める時間すらなかったように思います。

日中の危険な暑さも、例年以上でした。猛暑日(35℃以上)は、6月は0日、7月は7日、8月は18日で、合計25日でした。30℃以上の真夏日は6月が13日、7月が27日、8月29日で、合計69日でした。7月と8月はほとんどが30度以上だったと言えます。

特に東京では、街なかのアスファルト舗装と建物の蓄熱が重なるため、日が傾いても温度が下がりにくく、夕方以降の熱負荷も高止まりした印象です。

2025年の酷暑_5 東京の気温の傾向

“史上いちばん暑かった”と言われる2025年の夏。気象庁の東京(東京気象台)の実測から、東京ならではの様子を振り返ってみます。

この夏、東京の最高気温が最も高かったのは、8月30日の38.5℃でした。

6月では、最高気温が30℃以上になった日は6月16日で、翌17日には34.8℃となったのをピークに8日間、真夏日が続きました。6月24日・25日を除く13日間が最高気温30℃以上の真夏日だったのです。

7月はさらに気温が高い傾向が続きます。31日間のうち、最高気温が30℃以上の日が21日、35℃以上の猛暑日が6日ありました。30℃を下回る日はわずか4日。1日の平均気温が30℃を超える日が6日あり、一日中暑いという実感がありました。

8月は猛暑の記録を塗り替えるような日々でした。最高気温が30℃以下は2日のみ。猛暑日は18日、真夏日は11日でした。日平均気温が30℃以上の日が15日あり、うだるような暑さといえる日々だったと思います。

2025年の酷暑_4 猛暑日の地点数が歴代最多

 日本で最初に最高気温が40度以上を記録したのは、実は1927年7月22日、愛媛県宇和島市で、その記録は40.2度。その後、1933年7月25日に山形県山形市で40.8度を記録し、その記録は2007年8月16日に埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で40.9度を記録するまで、74年間破られることはありませんでした。

2007年以降、猛暑日の回数は増えてきます。2013年8月には高知県四万十市で41.0度を記録、この年40度以上を記録した地点は8地点と増え、その後、2018年7月には埼玉県熊谷市で41.1度を記録しました。この年に40度以上を記録したのは17地点となりました。2018年以降、毎年40度以上の地点が全国で1〜9カ所あったのですが、2025年はそのレベルがあがり、全国30地点で40度以上を記録することになったのです。

なお、猛暑日は最高気温が35度以上のことをいうのですが、2018年に6479地点を記録して以降、「史上最高に暑い夏」が始まった2023年は6692地点、2024年には8821地点となり、2025年にはついに9385地点となりました。

これらの数字からも、今年の夏がいかに暑かったのかがわかります。