適正なお金がまわり、みんながハッピーに

住まいの現場のお金周りは、1棟につき決まった予算でおこなっていきますが、工務店にとっては、実際は実利を削って「泣く」ことが多いので、工務店の利益率を上げるためには、ある程度の棟数が効率よく回っていくことが必要です。
 実際の話でいうと、いろんな現場が動けば、いろんなお金が動いてくるので、現場が多いほど、毎月の請求額が多くなってきます。人工と請求のタイミングを合わせていかないと、支払いが追いつかなくなってしまいます。お客様からの「入り」がコンスタントにないと、職人さんに払う「出」が出せなくなり、債務超過になると、工務店は倒産します。そうならないために、現場とお金の動きをきちんと合わせていかなければならないのです。
 もちろん企業努力は必要だが、あまりに厳しい予算の仕事だと、いい家づくりは難しくなってきます。予算があって初めて家づくりが始まるのです。
 私たちは、なるべくお客さまの希望に添えるよう、努力をしていきたいのですが、工務店としてきちんと存続できる形でなければ、企業として持続できません。お客様と信頼関係を結び、お金の面でもきちんと納得していただけるようにしなければなりません。

常に現場が動けばお金も回っていく

そう考えると、工務店は、職人さんの仕事を回すためのコーディネート業務でもあり、工務店がコンスタントに仕事を取ってこないと、職人さんも仕事がなくなるため、責任は重大です。
 一方で、その工務店が機能しなくなったら、大変です。ある程度の利益率は確保していかなければ、工務店自体の存在が危ぶまれます。
 私たちが努力すべきところとしては、工期を縮めてうまく回転させていくこと。例えばこれまで5カ月かかっていた現場を4カ月で終われば、工期は縮まる。いかに段取りよくやるかというのも重要で、そこには現場監督の腕が問われます。
 現場監督は、ただ現場のスケジュールを監理するだけではなく、材工含めた原価管理をおこなえる経営感覚が必要です。
 職人さんをたたく工務店は、職人さんが気持ち良く仕事をできるはずもなく、仕事に現れる。職人さんとの関係を良好にし(つまり、きちんと対価を支払い)、スケジュール調整でどこまでお互いに協力できるのかが大切です。

最終的には工務店が「泣く」ことが多い

ここまでの例では、総工費が4000万円としてお支払いの例を話しましたが、長引く不況と、首都圏の土地代の高さから、総工費は減少傾向にあり、大丸建設で新築を建てるお客様では、総工費が3000万円を切るケースが少なくありません。
 総工費が4000万円でも、2500万円でも、工事にかかる工程は大きく変わりません(工事面積は明らかに違いますが)。つまり、4000万円の2割の800万円でも、2500万円の2割の500万円でも、工務店の仕事量は同じくらいあるのです。
 お客様のご予算が厳しいなかでやっていくと、最終的に工務店が泣かなければならなくなります。シビアな会社ですと、下職人をたたいてやってきますがが、そうすると明らかに職人さんの仕事の質が下がる。先にもお話したように、職人さんは日数×工賃で「人工(にんく)」が保証されているので、職人さんが赤字になることはないのですが、工務店は「決まった予算の中で仕事量を調整していく」ことが求められます。

工務店の利益率は20%以上が理想的だが……

ここまで、住まいに関わるお金のお話をしてきましたが、新築住宅を1棟建てるとなると、工務店の取り分はどのくらいになるか……理想的には1棟あたりにつき25%はいただきたいところです。しかし、現実的には、2割をきることがほとんどです。
 例えば、4000万円の総工費の2割だと、800万円です。新築住宅を建てる際は約半年、打ち合わせからするともっと長い時間を要します。営業、打ち合わせ、設計図をつくる、確認申請、大工さんや職人さんの手配、材料の発注、現場監理、すべてに関わるスケジュールの調整、そして会社を維持するための家賃や総務・経理費用など……工務店の仕事は多岐に渡ります。
 これらの仕事は人が動くわけですから、800万円の中に人件費が含まれるため、粗利でしかなく、実質的に純利益は出ないのが実情です。

大工さんへの支払いは毎月おこなう

住宅を新築する場合、基礎屋さん、屋根屋さん、水道屋さん、左官屋さん、設備屋さん、建具屋さん、電気屋さんなど、それぞれ専門的な職人さんが入り、それぞれに材料・工事費用の支払いを工務店がおこないます。
 大工さんだけは上棟から完成までずっと現場に関わり続けますので、大工さんには毎月、日当×日数で支払いをします。棟梁クラスと、新人の大工さんでは、日当が異なります。職人さんのキャリア、経験、技術で、金額が変わってきます。
 大工さんに限らず、施工業者さんは日当が決まっていて、動いたぶんだけ決まった報酬を得られます。

竣工時で最後の支払い

大工仕事、内装仕事がどんどん進んできて、いよいよ家も完成間近までに仕上がってきます。大丸建設では、お風呂、トイレ、キッチンなどの設備関係の発注をして、設備屋さんが材工込みで施工をしていきます。
 内装では、左官屋さんが壁の仕上げをしたり、壁に和紙を張ったりする施工が入ります。また、襖やドアなどの建具などが入る。
 最後の仕上げで、エアコンなど設備関係を取り付けます。照明器具、スイッチ、コンセントは電気屋さんが施工します。
 これでほぼ、工事は完了です。庭の植栽などの外構工事が最終的に入ります。すべての工事が完了したら、クリーニング屋さんが入って、工事現場をきれいに清掃します。
 工事完了時に、総工費の3割、4000万円だとしたら1200万円をご入金いただき、お客様のお支払いは終わりになります。

中間期に発生する工事とお金

家の骨組みを組み上げる上棟式を終えたあとは、いよいよ内部工事に入ります。屋根を葺き、サッシを入れて、あとはどんどん家の中身ができてきます。
 工務店はこのお金で、水道の配管を水道屋さんに依頼し、続いて防蟻業者さんに床下の防蟻施工をお願いします。水道の配管が終わると、大工作業が進みます。室内の造作材、つまりドア枠、窓枠をつくり、床材を張り、木の壁の場合も大工さんが施工します。ます。木を使った造作については、工務店が材木屋さんに材料を発注します。
 また、同時期に電気屋さんの配線工事が入り、外壁屋さんによる外壁塗装工事、左官屋さんによる内壁の工事が入ります。大丸建設は徹底的に吟味した自然素材を使っているので、大丸で素材を支給して、左官屋さんが施工をおこないます。
 このような工事をおこなう中間期に、総工費が4000万円だとしたら3割の1200万円をお支払いいただきます。

上棟式が家づくりの大きな区切り

6月から続く「建築とお金」のシリーズ、8月も続けていきます。
 大丸建設では、建築費のお支払いを4回に分けています。建物の総工費を4000万円とすると、契約時に1割の400万円、上棟時に3割の1200万円、中間期に3割の1200万円、竣工時に3割の1200万円をお支払いいただきます。
 上棟時にお預かりする1200万円は、材木代、サッシ代、屋根屋さんの工費として支払います。また、大工さんへの支払いもそこからです。
 大工さんが上棟式をおこなって骨組みが立ったら、屋根屋さんが屋根を葺く。屋根の素材により、ガルバリウムだったら板金屋さん、瓦だったら瓦屋さんに材料を発注し、工務店は屋根屋さんに材工(材料費・工賃)込みで支払います。
 また、上棟をするころに、サッシ(窓枠と窓ガラス)も工務店が発注し、上棟後一週間くらいで現場にサッシが届くようになります。