温度のバリアフリー_5 持続可能な住まいづくりのために

住宅の断熱性能を高め、温度のバリアフリーを実現することが、ヒートショックやアレルギーなどの健康リスクから家族の健康を守るために、とても重要であることがわかりました。

家族にとって快適な住まいは、長期的な視点で見れば、家そのものの耐久性が高く、使用するエネルギー量が極めて少なく、環境負荷も少ないと言えます。自然素材を活用することで、シックハウス症候群のリスクを減らし、家の中の空気をきれいに保つ効果も期待できます。何より、素材の心地よさは、快適な暮らしに欠かせないものです。オープンで可変性のある間取りはライフステージの変化に対応できます。家の中でのブラックボックスが少ないため、経年劣化を防ぐためのメンテナンスがしやすいとも言えます。

これからの家づくりで重視すべきポイントをまとめると、「健康 × 省エネ × 持続可能性」がキーになるのではないでしょうか。

家づくりは、一生に一度の大きな決断です。「価格」や「デザイン」だけでなく、健康を守り、快適に暮らせる家であるかどうかをしっかり考えることが大切です。

これから家を建てる方は、ぜひ「温度のバリアフリー」「省エネ性能」「長期的な快適性」を意識した住まいづくりを検討してみてください。大丸建設が皆さんの心地よい住まいを実現します。

温度のバリアフリー_4 高効率の設備機器で光熱費を低減

温度のバリアフリーを実現するには、家全体の断熱化が必要です。それに高効率の設備機器を導入することで、ランニングコストを大幅に低減、あるいはゼロにすることも可能になる時代がやってきました。

特に、ゼロエネルギー住宅(ZEH)は、1年間に消費するエネルギーを、太陽光発電などで「実質ゼロ」にする住宅のことで、国が普及に力を入れています。

ゼロエネルギー住宅は、「高断熱・高気密」が前提としてあり、さらに「省エネ」と「創エネ」を組み合わせることで、エネルギーの消費量を実質ゼロにする=光熱費も実質ゼロになるという仕組みです。

 

「省エネ」はいうまでもなく、省エネ性能の高いエアコンや給湯器、LED照明を使用することで、エネルギー消費を抑えることができ、電化製品による放熱も防ぐため、快適な室温で暮らすことができるようになります。

太陽光発電などを組み合わせた創エネルギーは、蓄電池を導入することで実質的に電力の自給自足も可能になってきています。災害時にもエネルギーインフラを維持することができるため、今後大震災が起こるリスクのある首都圏では、資金に余裕があれば太陽光発電と蓄電池の併用は検討したいところです。

温度のバリアフリー_3 高断熱+開放的な間取りが心地よい空間を実現

間取りの工夫によっても、温度のバリアフリー化は可能です。特に、家全体の空気の流れを意識した設計をすると、冷暖房の効率が大幅にアップします。

まずは、家全体がすっぽりと断熱されていることが大切です。特に窓や玄関などの開口部から熱が進入したり逃げたりするので、外気にふれる開口部断熱をしっかりすることが大切なポイントです。

そのうえで、家全体が大きなワンルームになるような設計が、温度のバリアフリーを実現する肝になります。リビング+ダイニングと個室、廊下を区切らず、1階と2階も吹き抜けや高窓を活用することでひとつなぎにするような住まいの設計です。

リビングとダイニング、キッチンが一体化した住宅は増えていますが、浴室や脱衣所は廊下で区切られているのが一般的な中で、あえて廊下を設けずにリビングから直接脱衣所や浴室に行けるような設計にすると、温度差を限りなく減らすことができます。また、玄関近くに断熱ドアや風除室を設け、外気の影響を受けにくくすることができるので、玄関の断熱性を高めていくことがとても重要になります。

また、個室が必要な時にも、引き戸にすることで区切る必要がない時には大空間にできますし、断熱性が高い住まいであれば一度部屋を温めた後でも引き戸で区切ることで快適な室温が逃げずに済みます。高窓をスライドすることで暖かい空気を循環させることもできます。

温度のバリアフリー_2 全館暖房は高断熱でこそ実現可能

温度のバリアフリーを実現するためには、家全体の温度を均一に保つ設計が重要です。

まずは何より、断熱性能を高めることです。これまでもヒートショック対策で何度もお話ししてきましたが、壁・床・天井に断熱材を入れるだけでなく、窓や玄関ドアの断熱性能も重要なポイントになります。窓断熱に対する意識は上がってきていまが、実は玄関の断熱性を高めることは家全体の断熱性を高め、特に寒くなりがちな廊下などリビング以外の温度低下を防ぐ意味で大切です。金属ドアやガラスが入った玄関ドアは、それ自体が熱を通しやすく冷蓄熱することもありますし、玄関の隙間から冷気が入り込むことで廊下の底冷えの原因になります。

家全体の断熱性が高まれば、「全館暖房」も実質的に可能になります。一般的な住宅では、リビングだけ暖房が効いていて、廊下やトイレ、浴室が寒いというケースがほとんどです。しかし、家全体が高断熱であり、かつ間取りもオープンで細かく区切られていないような家の場合は、エアコン1台で家全体を暖房することもできます。また、小屋裏や床下などに送風機能を持たせることで、冬は小屋裏で暖められた空気をおろす、夏は床下から相対的に低い温度の空気を送風するといった空気循環で冷暖房することもできるようになります。

 

 

温度のバリアフリー_1 温度のバリアフリーの考え方

これまで、ヒートショックが人々の健康と暮らしに及ぼす影響について考えてきましたが、住まいについては今後、「温度のバリアフリー」という考え方がとても重要になってくると考えます。

一般的に「バリアフリー」というと、段差をなくしたり、手すりを設置したりすることで、高齢者や障がいのある方が住みやすい家をつくることを指します。

しかし、温度のバリアフリーとは、「家の中の温度差をなくし、どの部屋でも快適に過ごせる環境をつくること」を意味します。

・リビングと廊下の温度差がない家

・お風呂場やトイレが寒くない家

・部屋ごとの暖房を必要としない家

このような住宅であれば、ヒートショックのリスクを抑え、快適で健康的な暮らしが可能になります。

1月末に竣工した町田市の住宅は、まさに「温度のバリアフリー住宅」を実現したような住まいです。これまで大丸建設が手がけた住宅の中で最も断熱性能が高く、エアコン1台で家中の冷暖房を賄うことができます。

ヒートショック最前線_10 浴室リフォームも念頭に

新築住宅の場合は、国の基準も変わっているため、設計時から高断熱にすることができますが、既存住宅の場合はリフォームで対応するしかありません。窓断熱に加えて、高齢者がいる家庭では特に浴室リフォームが重要です。

脱衣所に暖房を設置するのが最も安価で有効な対策方法です。小型の壁掛けヒーターを取り付ければ、スペースを取らずに脱衣所を温めることができます。「お風呂に入る前に暖房のスイッチをオンにする」生活習慣が必要になりますので、意識的にヒートショック予防をしていくことが大切ですね。

浴室自体をリフォームする際には、お風呂を沸かす際に暖房もできるよう、オートメーション化した機能を搭載するとよいでしょう。

本質的には、浴室や脱衣所の床や壁の内側に断熱材を入れることが大切なのですが、そもそも脱衣所は設計上日当たりがいい場所には配置されないことが多いので、補助暖房と組み合わせることが大切です。床下の断熱をする際には、床暖房を導入するのが効果的です。足元からじんわり暖めることで、脱衣所全体が快適になり、ヒートショックを防ぐことができるようになるでしょう。

 

ヒートショック最前線_9 窓断熱の有効性

日本の家は歴史的に断熱性能が低く、ようやく法整備が進んで断熱基準が見直されるようになりました。一方で、「すでに家を建ててしまったけど、対策はできるの?」と気になる方もいるかもしれません。

もちろん、リフォームでも断熱性能を向上させ、ヒートショックのリスクを減らすことができます! 最も有効で簡単にできるのが、窓の断熱性能を上げるリフォームです。

窓は家の中でもっとも熱が出入りしやすい部分です。特に冬場は、家の中の暖かい空気の50〜60%が窓から逃げてしまうと言われています。そのため、窓の断熱性能を向上させることで、室内の温度を安定させることができます。いくつか方法をご紹介します。

内窓(二重窓)を設置するのが最も簡単な方法です。既存の窓の内側に新しい窓をつけることで、断熱効果が大幅に向上します。ただ、窓を開ける際に二度開ける必要があるので、若干不便を感じる場合には、窓ガラスやサッシ自体を交換するのをおすすめします。窓ガラスをLow-Eガラスに交換したり、窓のサッシを樹脂製や木製にすることを組み合わせれば、大幅に断熱性能が向上し、窓から外へのアクセスも変わらないので、利便性を損なうことなく住まいの性能を上げることができます。

意外と盲点なのが玄関扉の断熱です。窓断熱への理解は進んできたものの、玄関まで気が回らない……というケースも多いです。玄関の寒さは廊下の寒さにも直結しますので、特にお風呂場での事故を防ぐ優先度が高い場合は、真っ先に検討する場所です。

ヒートショック最前線_8 高断熱の家は健康面でのメリットも

高気密・高断熱の家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、冷えや結露による健康被害も防げるのが大きなメリットです。

結露が起こる原因は、室内の暖かい空気と外の冷えた空気の気温差によって飽和水蒸気量を超え、余分な水蒸気が水に変わります。これが窓や壁を濡らすことで、室内にカビやダニなどのアレルギーを引き起こす原因を発生させます。高断熱の家では結露が少ないため、アレルギーや喘息のリスクを減らすことができます。小さなお子さんがいる家庭や、アレルゲンをお持ちの方は、特に注意したいポイントです。

また、冷えは万病の元と言います。寒さによる血圧の急上昇は、ヒートショック以外にも、高血圧や脳卒中のリスクを高めます。高断熱の家なら、血圧の変動を少なくし、家族、特に高齢者の健康を守ることができます。

断熱性の高い家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、光熱費の削減や家族の健康維持にもつながります。特に戸建て住宅の場合は、マンションに比べると寒さへの対応は十分にしておくべきで、しっかりとした断熱対策をすることで、健康的に快適な暮らしが実現できます。

ヒートショック最前線_7 高断熱の家は冷暖房コストが低い

高断熱の家は、ヒートショックを防ぐだけでなく、ほかにも多くのメリットがあります。具体的にみていきましょう。

まずは、光熱費の削減が挙げられます。高断熱の家では、暖房の効率が上がり、少ないエネルギーで家全体を暖めることができます。そのため、冬場の光熱費を大幅に削減することができます。例えば、一般的な住宅と高断熱住宅を比較すると、暖房の使用量が30〜50%程度削減できるケースもあります。つまり、毎月の電気代・ガス代を節約できるのです。

続いて、一年中快適な室内環境で、快適に過ごすことができるという点も大きなメリットです。冬は暖かく、夏は涼しいのが高断熱住宅の特徴です。夏場も外の暑さを家の中に入れにくいため、エアコンの効率がよくなり、涼しく過ごすことができます。夏場は家の外の植栽や庇(ひさし)の力も借りて影をつくり、直射日光が入らない工夫をすることで、より冷房効率を高めることが可能です。

逆に、冬は陽の光を取り込んで室内を温め、その熱を高断熱の窓から逃さないようにすることで、室内の温度を温かくキープすることができます。トイレやお風呂場、脱衣所などの寒暖差も少なくなるので、補助暖房も必要に応じてつければよく、無駄な暖房コストを削減することができます。

 

ヒートショック最前線_6 高断熱の家がヒートショックを防ぐ

日本の住まいは欧米に比べて断熱性能において遅れをとっていましたが、近年、ヒートショックが社会問題になり、「高気密・高断熱」の住まいづくりへの関心が高まっています。

高断熱の家は、外気の影響を受けにくく、家全体の温度が均一になりやすいという特徴があります。

具体的には、壁や床、天井に高性能の断熱材を使うことで、冬でも室内の温度を一定に保つことができます。また、窓を高断熱仕様にする(Low-Eガラスなどを採用)ことで、窓から熱が逃げるのを防ぎ、室内の温度を安定させます。

最近では、「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」のように、高断熱・高気密に加えて太陽光発電設備や蓄電池を搭載するなど、エネルギー効率の良い家が注目されています。ZEH住宅なら、光熱費をほぼゼロにおさえながらヒートショックのリスクも減らすことができ、一石二鳥どころか多大なメリットがあります。

最近、大丸建設が松本直子さんの設計によって手掛けさせていただいた住宅では、断熱性能を高め、エアコン1台で住まい全体の冷暖房を賄えるようにしました。家全体を均一に暖めることで、脱衣所やトイレなどの温度差をなくすことができ、家族が快適に過ごすことができます。近々ホームページでも事例紹介をする予定ですので、お楽しみに。