森を守り、木造文化を伝えるために、伝統構法にこだわっていく

木造とRC、耐震性においてはどちらがいいという議論は、結論が出ないものです。それぞれに長所と短所があります。
大丸建設としては、木造にこだわり、伝統構法を大切にしていきたいと考えています。木造住宅は、木の一本一本に性質があって、その個性をみる楽しさがあります。私は、基本は木が好きです。日本で育った木を日本で使いたい。
そして、長年の歴史と風雪、大地震に耐えてきた実績ある歴史的建造物が、日本にはたくさん残っています。ご先祖様が残してくれたものを大事に生かしていき、そこから現代に通じる新たな技術を見出していきたいと考えています。
大丸建設は、これからも木造にこだわってやり続けていきます。環境も考えたうえでも、森を守るうえでも、木造の文化を未来に伝え、業として成り立たせていきます。

木造とRCの耐震性の違いを、相撲に例えると……

RCなどと木造住宅の耐震性の違いで、よく例えられるのは、お相撲です。私は、「小錦型」と「若乃花型」で覚えていました。20年くらい、古い時代の例えですね。今で言えばどの力士が当てはまるのでしょうか。
RCは小錦型に例えられます。体重が重く、体も大きくて、どしっとしていて、その大きさで力に耐えるスタイルです。耐えて耐えて耐えて、けれども我慢した分、限界を超えた時にぽろっと倒れてしまいます。強いんだけれども、壊れる時に一気に壊れちゃう。膝がダメになったり、がんばったぶん、故障も多くなってしまいます。
若乃花型は、木造住宅です。ちっちゃいんだけどやわらかく耐えて、大きな力をうまく受けながら粘り強く耐える。
私は、そのようにRCと木造の耐震性の違いを教わりましたが、今の人には果たして伝わるのでしょうか……(笑)。

やわらかく「ねばる」木造

伝統構法の耐震性については、構造設計に詳しい山辺豊彦先生がよく実験していて、建築業界の中でも見直されてきています。
木造の耐震性の特徴は、やわらかさを生かした構造です。
耐震性の考え方に、「剛(ごう)」と「ピン」というものがあります。「剛」は完全に固定されていて動かないものという考え方。コンクリートの柱と梁が緊密に結ばれている結合を「剛」といいます。
木造は「ピン」という構造で、小さく動く特性があります。木造は本来やわらかい構造です。だから、大きな地震や台風などで揺れるのは当たり前、という考え方です。木造は地震に対して揺れながらやわらかく「ねばる」特性があります。これを靭性(じんせい)といいます。

伝統構法を伝えていくために

今では、木造建築に釘はなくてはならない素材です。大丸建設の建築現場でも、当たり前のように使っています。大丸建設は「在来工法」で家づくりをしており、釘を使わない「伝統構法」ではありません。ただ、伝統構法を伝えられるよう、継手・仕口をつくれるように、大工さんは研鑽を重ねています。いろいろな伝統建築物を研究しながら、プレカット材に頼るのではなく、手加工できるような大工さんに育てています。
今時の工務店では、リフォームやちょっとした増築でさえ、材をプレカットに出してしまうけれども、リフォームのように制約条件のあるものこそ、手刻みの技術が生きるのです。
私は、伝統構法を残していきたいと考えています。手刻みをやることで、若い大工さんの育成も兼ねている。正直、プレカットにすれば早いし安い場合もあるけれど、それをやることによって建物の構造を大工さん自身が木使いについて考える機会がなくなってしまう。木造建築の理屈を理解するのは、現場の経験を踏んでこそ、なのです。

いつから木造建築に釘を使うようになったの?

大丸建設は今江も木造伝統構法の技術を受け継いげいます。大丸建設の初代、二代目までは、明治の天才宮大工とうたわれた職人で、数々の有名建築を手がけていました。だから、伝統構法が私たちのルーツなのです。
今の大丸建設の形になったのは、昭和に入ってから。戦後、工務店として会社を創業してからは、効率化や合理性を追求するようになり、今の在来工法のスタイルになっています。
今では、在来工法の中でも、伝統構法の要素を入れながら、住宅を建築しています。
私たちの技術の担い手は、ひとえに大工さんです。大丸建設には、伝統構法の継手や仕口の模型があります。これも、大丸建設のお抱えの棟梁につくってもらいました。来社いただくお客様には、実際にそれらにさわり、伝統構法を体感していただくこともできます。