一軒の家が建つまで_2 設計者の意図を汲む現場監督

家づくりに関わる職人はたくさんいますが、最初の職人といえば「設計者」かもしれません。設計者、建築家、デザイナー……言い方はさまざまで、また現場で常に体を動かすわけではないので、職人っぽくないかもしれませんが、設計者は家の設計図書をまとめ設計思想をそこに込めるわけですから、ある種の素晴らしい職能の持ち主と言えます。

この設計図書を読み解き、現場をスムーズに動かしていくのが現場監督の役目です。設計図書に書いてある指示通りに家を建てると、実際にどのくらいのコストが必要なのかの計算は、工務店がやります。建築材料、職人手間、工数、工期などによってコストが大幅に変わります。お客さんにとってはコストが少ない方がいいわけですが、一方でコストを下げることによって品質が低下することは避けたい。そのために、何を省いて何を重視するのかの見極めも大切になります。

設計者とお客さんとの間に立ちながら、現実の住まいをより良く、適切な価格にしていくための調整も現場監督の務めになります。

一軒の家が建つまで_1 たくさんの職人の手によって家はつくられる

大丸建設は、元々は大工からスタートした住宅建築の会社です。

家をつくる職人はさまざまいて、その中でも大工はもっとも花形の職人といえます。家づくりの最初から最後まで関わるからです。

でも、家づくりに関わる職人は大工だけではありません。電気屋さん、設備屋さん、基礎屋さん、左官屋さん、建具屋さん……本当にたくさんの職種の職人さんたちがいて、それぞれが連携しながら家をつくっています。

そうした職人さんを束ねるのが工務店の役目です。いつ、どの工程で、どの職人さんが現場に入るのがスムーズなのか、無理なく無駄なく職人を采配していくのが現場監督で、まさに文字通り「監督」なのですね。こうした現場監督も、ある意味職能の一つなので、職人と言えるでしょう。

今月は家づくりの職人の仕事についてお話しします。

物価高騰_ 8 正直に、誠実に

今月は住宅建築にかかる価格の話を、物価高騰の側面からお伝えしてきました。

大丸建設の社員も一人ひとりが生活をしており、食品、ガソリン、運賃、教育費等、暮らしにかかるあらゆるコストの増大の影響を受けています。建築の価格上昇について、なるべくお客さまの負担を軽減できるような提案をしたいとも考えていますが、価格ばかりに目が向いて品質が低下してしまうようなことは避けたく、必要なコストには相応の価格で対応しないと、結果的にそれを支える全ての産業の人や環境に影響してしまうのも事実です。

長い目で見て、日本の住宅産業やものづくりの技術が受け継がれ、また技術革新していくためには、働く人も幸せである必要があります。こうした中長期的な視野を持ちながら、工務店側もお客さま側も相互に理解し、価格に対する納得感を持って工事を進められるよう、正直に、誠実に、コストの現状についてお伝えしていかなければならないと考えています。

 

物価高騰_7 間接経費の圧縮には限界

建築にかかるコストについては、一つひとつに根拠があります。材料、輸送、人件費等の直接経費と、全体をコーディネートする工務店の施工管理費や営業費等を含む間接経費です。価格を圧縮する時には、工務店側の利益である施工管理費を調整して見積もりをご提示しますが、これがなくなると、工務店はつぶれてしまいます。工務店は事務所を構え、お客様の建築図面の膨大な資料を保管し、資材や建材の置き場を確保し、経理・事務や、営業・接客等を担当するスタッフも必要です。

こうしたバックオフィス機能が必要になるのは、私たちは新築のお客さまだけに対応しているわけではなく、家を建てて5年、10年、何十年と経ったOBのお客さまのハウスドクターとして、家の修繕が必要になった際のメンテナンスやリフォーム等に対応していく必要があるからです。新築のお客様に対しても、過去に対応したお客さまの事例等からデザインや価格調整のアドバイスをしていくこともあり、過去のデータベースを保管しておくことは大切です。

こうした間接経費の必要性にもご理解をいただきたく、お願いします。

物価高騰_6 物価高騰は建築価格に反映する

ここまで見てきたように、住宅建築にかかるコストは増大しています。

◇エネルギー価格の高騰→輸送コストや建築時にかかるエネルギーコスト、あらゆる建材の製造コストに影響

◇木材価格の上昇→住宅建設の基礎材料価格の上昇

◇輸送コストの上昇→建築資材の配送や、建築時の移動にかかるコストの上昇

◇人件費の上昇→職人等への外注工賃、雇用スタッフの給与の上昇

すべてが20%〜50%ほどの値上げ幅で動いているため、建築価格が据え置きのままですと、工務店は破綻してしまいます。そのため、見積もりで価格が上昇することが心苦しくありながらも、建築後の数十年間メンテナンスを続けていくことを考えると、我々が破綻するわけにはいきませんので、お客様にご理解いただけるよう、説明を尽くしていきたいと考えます。

 

物価高騰_5 人件費の上昇

もう一つ、建築費の高騰の背景には、人件費の上昇があります。時間当たりの最低賃金の上昇は、労働者の権利向上のうえでは大切なことではありますが、一方で価格転嫁に直結するので、お客さまへの影響が出てしまう部分でもあります。

東京都の2013年の最低賃金は時給にして869円でした。2019年に1,013円になり1,000円超えしたと思ったら、2023年には1,113円と、毎年2%以上の伸び率です。人件費はこの10年間で3割アップしています。

また、職人さんの工賃は「外注工賃」となり、会社で抱える直接人件費ではありませんが、大工や左官、とび職、鉄筋コンクリートや基礎の型枠職人などの人的工数も職種によって異なれども、10〜30%ほどの幅で上昇しています。

人に関わるコストが2〜3割は上昇していることを考えると、建築に関わるコストもそれに追随していかざる得ないのは、致し方ないことなのです。

 

物価高騰_4 輸送コストの上昇

輸送コストも大幅上昇したうちの一つです。レギュラーガソリンの価格は現在、1リットル160円台だと安く感じるくらいで、一時期には180円台に突入したこともあります。

ガソリンの価格は国際情勢に大きく影響されるため、乱高下がありますが、10年前と比較すると上昇ケースにあると言えます。総務省の統計によると、レギュラーガソリン1リットルあたりの価格は1年間(12カ月)価格の平均で、2013年は153円だったのが2023年には170円となっています。ただし、この間、2016年は118円と大きく下がっている時期もあります。

ガソリン代が変動する原因は、原油価格や為替の動きなど、各国の税制や禁輸措置など国際情勢の変動要素が大きいことで、コロコロと値段が変わってしまいます。国内情勢では、需要と供給バランスの崩れ、平日とホリデーシーズンなどの利用シーンの変化なども原因の一つになります。

ただし、工務店経営の視点でいけば、日々の価格変動よりも、中長期的な変化を見て影響を予測する必要があります。

物価高騰_3 10年で2割ほどの物価上昇

実際に建築工事費の物価高騰はどのくらいの割合なのでしょうか。この10年ほど、東京オリンピックの影響で建築資材不足、人手不足などがささやかれていましたが、国交相の発表資料によると、建設工事費用は2013年以降の10年間で1.2倍ほどに膨れ上がっているとのことです。

コロナ禍が追い打ちをかけ、ウッドショックやアイアンショックなどが続いて建築資材費が高騰したのと同時に、建築にかかる人件費や輸送コストも大幅に上昇しています。

輸送コストの影響も大きいです。工務店の仕事は車がなければ成り立たないので、ガソリン価格の変動は、日々の営業や打ち合わせ、現場監督業務での移動コストに直結します。また、木材の配送や建材の配送にも影響は大きく、特に細々とした資材は宅配業者の価格設定の影響を受けるので、「運送業の2024年問題」の影響は深刻になるのではないかと今から心配しています。

2024年の抱負_8 会社の体制も持続可能に

大丸建設の家は、すべてオーダーメイドです。大工さんや職人さんの力を合わせて、お客様の理想を形にするコーディネーターが、現場監督です。

私自身、長く現場監督を務め、一級建築士として数多くの現場を見てきました。現場監督の仕事は、スケジュール管理や見積りの積算、材料の発注や職人の調整など、多岐にわたります。現在は私と山崎で監督を務めていますが、ありがたいことに近年、建築家との仕事や、お客さまからのお問い合わせが増えているため、それに応えていくにはもう一人、現場監督ができるスタッフが必要です。

「現場監督募集」の記事に、大丸建設で働くおもしろさや醍醐味について、私の思いを述べました。大丸建設に加わって、一緒に働いていただける人を募集しています。

木の家づくりはとても面白いです。そして大丸建設では素敵なお客様に出会えます。今年も、お客様や職人さんと一緒に、いい家づくりを進めていきます。

2024年の抱負_7 今後ますます価値が高まる職人の技術

大丸建設で使うのは、国産の無垢材と、自然素材です。これらを生かす家づくりは、設計段階からどのように使いこなすのかの詳細を詰め、現場で職人の知識や経験を活かしながら調整し、木の個性や表情を見極めておさめていく、高度な技術が求められます。

今の住まいは、新建材を組み合わせることでもできます。安く、早く、確実な施工ができますが、決まったモジュール、寸法通りのものしかできず、自由度がありません。決まったパターンの商品を選んで買う、という作り方なので、そこに職人の技術はあまり求められません。AIやロボットが発達した時代において、職人技術が生かされる現場の価値は、ますます高まっていくことでしょう。

お客様自身もますます目利きになり、ご自身でライフスタイルをデザインすることができる方が増えていきます。そんな時代だからこそ、自由度高く、経験を持ってお客様に最適な住まいを提案できる工務店でありたいと思います。