社会の化学物質(6)  「香害」はアレルギー反応の一つ

柔軟剤や洗剤、化粧品等の香り成分が由来となって、周囲の人々に健康影響を与えてしまう「香害」(こうがい)。香害は化学物質過敏症の一つで、誰もが被害者になる可能性があります。人によって化学物質の許容量が異なり、まるでコップから水があふれ出るように、体内で許容できる化学物質があふれた時に、健康被害という形で現れます。コップの容量が小さい子どもほどリスクが高くなるので、特に小さなお子様がいるご家庭では注意が必要です。

花粉症を例にするとわかりやすいですよね。私が子どもの頃は、花粉症はそれほど多くの人に現れるアレルギー反応ではありませんでした。ところが今は、春先になると、実に多くの人がくしゃみをしたり、目をこするシーンを目にします。スギ花粉由来の花粉症が多いですが、最近ではヒノキ、ブタクサ、イネなども……。花粉だけの問題ではなく、道路のアスファルトやクルマの排気ガス、そして香害も含めたさまざまな化学物質が複合的に絡み合って、国民病と言われるほどに広がりました。

香害は、新しい公害とも言える社会課題です。誰もが被害者にも、加害者にもなりうるものなのです。

社会の化学物質(5)  「香害」は化学物質由来だけではない

「香害」(こうがい)の原因となる物質は、主に、柔軟剤等の香りを長く持続させるためのマイクロカプセルに包まれた合成科学物質に由来します。マイクロカプセルには香り成分だけでなく、合成海面活性剤などさまざまな人工化学物質が含まれており、これらが空気中に揮発して鼻や喉から吸い込むことにより、化学物質が肺をはじめ内臓にたまり、さまざまな健康被害を引き起こします。

いったん化学物質過敏症を発症すると、人工的な合成化学物質だけでなく、自然由来の香料にも反応してしまうケースがあります。自然由来のアロマオイルなども香りが強いため、過敏症の方は体調に影響する場合もあります。

住宅の化学物質も同様で、合成化学物質だけでなく、自然由来の木材に含まれる香り成分への反応がある方もいます。たとえば、ヒバに含まれるヒノキチオールについては、私自身も反応してしまうため、自然由来だから大丈夫、というわけではありません。

社会の化学物質(4)  「香害」はどこで発生するのか?

「香害」(こうがい)は、香りに由来する新しい「公害」ともいえる現象で、香料に含まれる合成化学物質による化学物質過敏症の一種です。

香害をなくす連絡会が2019年から2020年に行った「香りの被害についてのアンケート」では、香害被害を受けた場所として、乗り物の中、店舗、公共施設、自宅(隣家からの洗濯物のにおい)が上位で、職場・病院・学校と続きます。

乗り物、特に電車のように人との距離が近いところでは、隣に座った人の洋服から香る柔軟剤の香料や、化粧品・整髪料の香りが、香害の原因になることがあります。喫煙者の衣服に染み付いたタバコのにおいも同様です。

店舗では、柔軟剤や化粧品のサンプル、アロマディフューザーの香りなど、さまざまな香りで満ちていますので、それが苦手な人には影響が大きいです。

店舗のように、「香害の原因物質がありそうだ」と想定される場合は自衛が可能ですが、たまたま隣り合わせたりすれ違う「人」に染み付いた香りを避けることはできず、それを避けようとすると社会生活に大きな影響を及ぼします。

 

社会の化学物質(3)  「香害」の症状

「香害」(こうがい)は、読んで字のごとく「香り」に含まれる化学物質が原因となって発症する化学物質過敏症のことを指します。その原因物質は香料に含まれる合成化学物質です。合成洗剤、柔軟剤、化粧品、香水、整髪料、芳香剤、石けんやシャンプー、入浴剤など、生活必需品の多くに合成化学物質が使われています。特に「香り」は揮発性があるものなので、鼻から吸い込み、目や鼻の粘膜にも刺激を与え、五感のうち特に嗅覚に影響して、体全体に影響を及ぼします。

健康被害の症状としては「頭痛」、ついで「吐き気」がダントツで多いです。思考力低下や疲労感、めまいなどが続き、症状としても化学物質過敏症に近く、対策としては香害の原因物質を極力身の回りにおかないことが大切になります。

しかし、香害の場合は、自分や家族が意識をしていても、気付かぬうちに香りの被害に直面することがあります。

 

社会の化学物質(2)  「香害」とは何か

近年、柔軟剤や化粧品等に含まれる化学物質によって、頭痛やアレルギー、不快感などの健康影響を生じる人が増え、その状況は「香害」(こうがい)として広く社会に知られるようになりました。

「香害」という言葉が使われるようになったのは2000年代に入ってから。それ以前にも言葉がないだけで、化粧品や香水等の香りによって体調不良を訴える人は一定数いたとされます。農薬や合成洗剤等による化学物質過敏症は1960年代からありましたが、特に香害が広がったのは、洗濯物に入れる柔軟仕上げ剤が広く普及してからとされます。香りを持続させるために、目に見えない微細なマイクロカプセルに香料を包み込み、そのカプセルが衣類や肌等に付着して長時間人体の近くに存在することで、肺などの臓器に吸い込まれて体内に蓄積してしまいます。これが、従来よりもひどい「香害」をもたらすようになったのです。

 

 

社会の化学物質(1)  ここ数年話題になっている「香害」

昨年12月のブログで「化学物質過敏症」について紹介したところ、「人によってこんなに症状が違うんだ」「反応する物質も違うことがわかった」「自分は大丈夫でも人にとっては苦しいこともあるんだ」といった反響が寄せられました。

化学物質過敏症は、広義でいえばアレルギー反応の一種ですが、花粉症で苦しむ人もいれば、建築物に含まれる接着剤の物質に反応する人もいますし、タバコの副流煙がどうしても苦手という方もいます。

ここ数年話題になっているのが「香害(こうがい)」です。洗濯物の仕上げに使われる柔軟剤の匂いが強烈で、その芳香性の化学物質にアレルギー反応を起こす人が一定数増えています。アレルギー症状がひどくなると、学校の給食着についた香りに反応してしまう、マンションの隣の家の洗濯物から風にのって香りが漂うことで頭痛がするなどの反応で苦しむ人も出てきています。それが社会問題となって新聞やテレビなどのメディアで紹介されることも増えてきました。

今月は「香害」を中心とした、社会に広がる化学物質についての話題をお届けします。

8) 止まっていた本社1Fリノベを今年こそ!

大丸建設の本社1Fを、地域にひらかれたスペースにしたい。

そう掲げ、3年ほど前から少しずつ1Fの清掃や、社員とリノベプランを話し合ってきたのですが、気づいたらコロナ禍や代替わりなどで、あっという間に時が過ぎてしまいました。現場が忙しい、大工さんが足りないなど、お客様優先の嬉しい悲鳴のなかで、どうしても「自分のこと」は後回しになってしまう傾向があります。

本社リノベはこれまでにもURA(地域主義建築家連合)とのコラボイベントの中で建築家の皆さんに相談していた案件でもありました。ウィズコロナ時代に本格的に突入するなかで、地域に根ざした工務店の存在は今後ますます必要になってくると考えられ、地域の方が家の相談にふらりと訪れられるような、そんな場をつくっていきたいと考えます。

本社1Fリノベが2022年の大丸建設のトップニュースを飾れるよう、今年こそはその目標を社長ブログで掲げたいと思います。

 

日常生活でも化学物質対策を

ここまで見てきたように、化学物質過敏症と言っても反応も軽度なものから寝込んでしまうくらいのもの、精神的にも不安や不調をきたしてしまう場合など、本当に人それぞれです。私にも花粉症がありますし、ヒバの香りをかぐと喉が痛くなります。誰がなってもおかしくないし、今は平気でもある時突然かかってしまう可能性もあります。

建材だけでなく、例えばホームセンターの家具売り場や、車のディーラーでの新車の匂いなども、人によっては反応が出やすい場所の一つです。何か違和感を覚えたら、なるべくその場から立ち去る方がいいと言えます。現在社会問題にもなっている「香害」では、洗濯用の柔軟剤への反応が多いです。近隣の洗濯物の香りや、学校で使い回す給食着、あるいは電車で隣に座った人の香料でも、人によっては反応が出ることもあるんだ、という認識を持つことが大切です。

誰もが異なる「化学物質を許容するコップ」を持っていて、その水があふれた瞬間につらい症状に悩まされる可能性がある、ということに想像力を持つことで、思いやりをもった選択ができるようになることが望まれます。

 

化学物質過敏症のお客様に接する時に気をつけていること

化学物質過敏症の方は、精神的なストレスを抱えることが多くあります。現代はさまざまな化学物質に囲まれ、ご自身がどんなに気をつけていても、思いがけずに化学物質にふれざるをえず、反応してしまうことがあります。例えば、ご家庭では香料のない洗剤で洗濯をしていても、ご近所の方が使った柔軟剤の香りが風にのってきてそれに反応してしまう、というように、ご本人の責任ではないのに苦しみを抱えてしまうことがあります。

大丸建設で化学物質過敏症のお客様と接する時に大切にしているのは、その方が症状に悩み苦しんできた方であるということを理解し、尊重しながらヒアリングを進めていくことです。一人ひとりが異なる症状や悩みをお持ちなので、「素直に、率直に、思ったことを言ってください」とお伝えします。建材のテストでは、ちょっとでも無理をすると後から困ったことになるので、起きた症状を素直に教えていただくようにします。「決して無理をしないこと」「ゆとりをもってテストを行っていくこと」。これを大切にし、双方ともに心にゆとりを持って向き合えるように心がけています。

 

化学物質過敏症対策のコスト

化学物質過敏症対応の住宅の場合、コストはどれくらい変わるのでしょうか。これは一概には言えず、どういう材料を使うのかによって大幅に変わります。一つ言えるのは、すべてオーダーメイドで対応しなければならない、ということです。

大丸建設の場合、杉材が大丈夫であれば、それほど金額は大きく変わらないという実績があります。例えば床材でベニヤ(合板)がダメな方でも、根太や捨て張りといった施工の対策によって、自然素材だけでも対応できますので、若干割高になってもそこまで大幅なコストアップにならずに済むこともあります。しかし一度施工した後に、やっぱりダメで、また施工をし直すとなると、コストがかさんでしまいます。

杉材やヒノキ材を使えない方の場合は、材料探しが大変になります。今まで手がけたケースでは、モミの木ならば大丈夫ということで対応したことがありますが、一般的な住宅用材ではないため高いコストがかかってしまいました。

人によっては、機械乾燥の材はダメで自然乾燥ならば大丈夫、同じ木を二つに割って片方は大丈夫で片方はダメ、ということもあり、ていねいに根気よく確認、テストしていくことが大切です。