一級建築士と二級建築士の違いについて

住宅は、一級建築士でないと建てられないのでしょうか? いいえ、そんなことはありません。二級建築士でも住宅を建てることはできます。
一級建築士と二級建築士の違いは、一級建築士は国家資格で、二級は都道府県の資格ということです。
一級建築士は、建築物ならばなんでも建てることができます。マンション、工場、商業施設から、住宅に至るまで、なんでも設計できる資格です。また、これらすべての建物の工事監理もできます。
二級建築士は、木造の場合は高さが最大13m、軒の高さが9m以下、500m2以下の鉄骨の建物と、300m2以下のRC造の建物を建てられる資格です。大規模商業施設や工場などは建てることができず、中規模の建築物を建てられます。もちろん、一般的な住宅も可能です。これらの設計、工事監理をすることができます。

建築基準法関連法規の「建築士法」とは

建築基準法の関連法令には、建築士法など、さまざまな法令が定められています
「建築士法」は、建築士の仕事について定めた法律です。
一級建築士、二級建築士について、それらの資格を持っていなければ建てられない建物が定められています。その人のできる仕事の範囲と、業務の内容、範囲などについて書かれています。また、建築士事務所については、それを名乗るためには専任の建築士がいて登録をすること、専任の管理建築士がいることなどが定められています。

建築基準法と「関連法令」

私たち一級建築士のバイブル「赤本(オレンジ本)」には、『建築基準法 関係法令集』と書かれています。建築基準法には建築に関わる大きな枠組みでの条項が定められており、詳細については建築基準法施行令を読みます。
この施行令には、基準法で定められている条項の、詳しい内容が書かれています。
さらに「関連法令」でいうと、「関係告示」という記述がある。それは、施行令のなかのさらに特別な詳細についてです。例えば、石膏ボードの厚さとか、防火構造の外壁などの詳細までが書かれています。
こうした、大元の建築基準法、施行令、関連法令、関係告示の関係性、主従関係を覚えておくことも大切です。

建物単位ではなく、地域や場所によって変わる「集団規定」

建築基準法における「集団規定」とは、建物単位ではなく、敷地や道路、建ぺい率、容積率など、地域や場所によって変わるものです。具体的には、日影、日射取得や、用途地域別の建築物の建ぺい率、容積率、高さ制限などのことです。建築物それぞれが同じ基準や性能を満たせばよいというものではなく、例えば住宅地では極端に高い建物を配置しない、逆に商業施設が林立するエリアや、工業地域など、地域の「用途」に応じた規制をかけていくのです。
土地や建築物は個人が所有しているものですが、「地域」は公共のものであり、よりよい市街地をつくるなかでは、その土地の用途に合わせた建築物を建てなければなりません。集団規定は、都市計画法と密接な関係にあると言えます。

建築基準法には、単体規定と、集団規定がある。

建築基準法には、単体規定と、集団規定があります。この違いはいったいどのようなものなのでしょう。
建築基準法に示されている「単体規定」とは、建築物単位で、建物の個々に対してかけられる規定のことです。いわゆる技術的な基準のことで、例えば、住宅の構造や、防火、避難など、北海道から沖縄まで、全国みんな、一律で合わせなければいけない規定です。
法令は、基本的には全国のどこであっても、同じ基準であるべきものなのですが、建築物については、個々の建築物で守るべき単体規定と、例えば住宅地や工業地域、商業エリアなど、用途の異なる地域があります。それを「集団規定」をわけて表記しています。

「建築基準法」に書かれていること

「建築基準法」には、建築基準法とは何かという目的から始まっています。
建築基準法とは、建物を建てるための最低の基準で、国民の生命と健康、財産を守るための法律。建築にかかわるすべての元になるものです。
規模については、仮設、住宅から始まり、集合住宅、大規模ビルディング、工場に至るまで。そして、構造については、木造、鉄骨、RC、SRC、石造など、構造に応じて内容が変わってきます。
一級建築士であれば、木造住宅から、マンション、高層ビル、工場まで、あらゆる建造物を建てることができます。それだけ重要な国家資格なのです。

建築士の受験勉強のコツ:「順説と逆説を読み解くこと」

建築基準法に限らないことですが、法令の文章は「適用しない」「〜の限りではない」という文章が多く使われるので、正しいことを言っているのか逆説なのかを読み取るのが、結構難しいです。
有名なところでいけば、増築の確認申請についての一文。
「防火地域および準防火地域外において建築物を増築し、改築し、または移転しようとする場合で、その増築、改築、または移転にかかる部分の床面積の合計が10m2以内であるときについては適用しない」
と書かれています。
これは、一体、どちらなのでしょう?
答えは、増築をする際に、10m2以内だと確認申請を出さなくてよい、ということです。
法律の文章そのままを解釈すればいいのか、逆説なのか、法令独特の文章を理解することが、建築士合格への道の近道なのです。

建築士の受験勉強のコツ:「主語と述語を読み解くこと」

私が一級建築士の国家資格のために受験勉強をしていた際、どうやって勉強していたか? と考えると、特に意識していたのが、「主語と述語」の関係を考えることです。
例えば、住宅を建てる時の確認申請一つをとっても、誰が何をしなければいけないのか、それを押さえていくことが建築基準法の理解の近道です。
例えば、確認申請の際の主語は、次の3者になります。
・ 建築主(工務店)が、
・ 施主(お客様)が、
・ 役所(確認申請を受理する側)が、
それぞれどんな役割をもって、何をしているのかを読み解ければ、難解な法律用語の理解もすんなりいくかもしれません。

「赤本」「オレンジ本」「緑本」、あなたはどっち?

私が一級建築士になったのは平成17年で、今から10年前になります。その後3年間、平成18年から21年まで、週に1回日建学院で講師を務め、同じく一級建築士を目指す人たちに試験対策などを教えていました。受験生に質問をされて答えられないと恥ずかしいから、合格後も常に勉強をしていました。そんなわけで、「赤本」の中身は、長く、私の頭の中に定着しています。
ちなみに、最もよく読まれているものの一つが、国土交通省住宅局建築指導課が監修し建築資料研究社が出版している、『建築基準法関係法令集』です。通称「オレンジ本」と呼ばれています。いわゆる「赤本」は一般社団法人東京建築士会監修、東京建築士会法規委員会編集で、新日本法規出版が出している『建築基準法規集』です。そして、一級建築士の試験会場でよく見かけるのが通称「緑本」、総合資格学院出版の『建築関係法令集 法令編』です。
私は「オレンジ本」を使っています。何度も何度も読み直し、たくさん線を引いてある、私にとってのバイブルです。

一級建築士のバイブル『建築基準法 関連法令集』

私たち一級建築士にとってバイブルと言えるのが、建築基準法の「赤本(オレンジ本ともいいます)」こと『建築基準法 関連法令集』です。毎年、最新年度に更新されています。
赤本といえば、大学入試時代に誰もが手にしたことのある過去問題集で、座右に置いて研究した懐かしい思い出をお持ちではないでしょうか。
『建築基準法』も、一級建築士にとっては基本で必須の資料で、試験問題はすべてここから出てくる原点です。建築士として仕事を始めてからも、すべての業務はこの法や法令に基づいています。
私が一級建築士になったのは10年前。当時はこの条文をすべて諳んじることができるほど、頭の中に入っていました。ひたすら勉強したからこそ、今でも自信をもって業務を遂行することができています。