空き家を考える_7 「空家等対策特別措置法」とは

これらの空き家の問題に対処するため、政府は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、特定空家等に対する指導や勧告を行っています。

空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空き家特措法」)は、2015年に施行された法律で、日本国内における増加する空き家問題に対処するために制定されました。この法律の目的は、空き家やその敷地が周辺の生活環境に与える悪影響を防ぎ、適切な管理と利活用を促進することです。

空き家特措法では、危険性が高い空き家を「特定空家等」に指定できるようにしています。先に述べたような、倒壊や災害時の危険性がある、衛生上の問題を引き起こす、景観を著しく損なう、近隣の生活環境に悪影響を及ぼすといった、特定空家等に指定された建物に対しては、行政が所有者に対して修繕や撤去、管理の改善を指導・勧告・命令できるようになっています。

特定空家等に指定された場合、住宅用地に適用される固定資産税の減免措置が解除され、税負担が増加します。これにより、放置された空き家の管理や利活用を所有者に促す効果があります。

さらに、所有者が行政の指導や勧告に従わない場合、行政が建物を強制的に解体・撤去する権限を持ちます。この場合、解体にかかる費用は所有者に請求されます。

 

 

 

空き家を考える_6 景観や環境への影響

空き家が多い地域は、地域の防犯・防災に影響を及ぼすだけではなく、景観や住環境にも悪影響を与えると言えます。

 

老朽化した空き家では、害虫や害獣の発生源となり、衛生環境の悪化を招く可能性があります。空き家の中や周辺でゴミが放置されることで、害虫(ゴキブリ、シロアリなど)や害獣(ネズミ、ハクビシンなど)の繁殖が進みます。こうした害虫や害獣が周辺住宅に移動したり、繁殖が拡大することで、放置された空き家だけではなく、人が住んでいる家にも悪影響を及ぼしてしまいます。

住宅街の景観への影響も深刻です。多くの空き家では雑草が生い茂り、樹木の枝が伸び、隣家の敷地にかかってしまったり、果実が落ちてそのまま朽ちて衛生上の問題を引き起こします。木の枝が電線にかかると、発火して火災や停電につながることもあります。

空き家の敷地が放置されている場合、ゴミや廃棄物の不法投棄場所として利用される可能性があります。悪臭の発生源になることも考えられるため、近隣の住民にとっては迷惑な状態になってしまいます。

 

また、先にも述べたように、老朽化した空き家は、地震や台風などの災害時に倒壊の危険性が高まり、周辺住民やインフラに被害を及ぼす可能性もあります。

こうしたことから、空き家が多い地域では住民が安心して暮らせなくなり、結果的に地域全体の人口減少や衰退が進む可能性がある、深刻な課題と言えます。

 

 

空き家を考える(5) 防犯上の問題

空き家はまた、防犯上の問題を引き起こします。

その第一は不法侵入のリスクです。空き家は留守であることが明白で、防犯対策が十分ではありません。万が一解錠されてしまっても気付く人がいないため、空き巣のターゲットになりやすいと言えます。無施錠や壊れた窓から侵入され、放火の対象となる場合もあります。

長期間放置されている空き家は、不法占拠される可能性があります。不法占拠者が住み着くと、退去させるのに法律上の手続きが必要になり、所有者が大きな負担を抱える場合ことはあまり知られていません。また、犯罪の拠点化とされてしまうリスクもあります。

空き家が増えることで、人目が届きにくいエリアが生まれ、地域全体の治安低下を引き起こし、防犯環境が悪化することが懸念されます。例えば子どもたちが空き家を遊び場にしてしまい、犯罪に巻き込まれたり、建物の崩壊や転落などの事故に遭ってしまうことも心配されます。

 

このように、空き家は不法侵入や犯罪の拠点化、放火、地域の治安悪化など、防犯上多くのリスクを引き起こします。また、空き家が放置されることで事故や衛生問題、地域コミュニティの弱体化につながります。これらのリスクを軽減するためには、住宅の所有者が空き家の管理をしっかり行っていくことが不可欠ですが、同時に地域住民や行政、警察が連携して対策を講じることが重要です。

 

空き家を考える_4 都市部ならではの課題

空き家問題は全国的な課題ですが、地方と都市部では起こりうるリスクの程度が異なります。地方の方がより深刻な状況ですが、東京や神奈川などの都市部では住宅も人口も密集しているがゆえの課題があると言えます。

都市部に限らないことですが、空き家となりやすいのは築年数の古い住宅です。老朽化した住宅が取り壊されず放置されることで、災害時の倒壊リスクが高まります。特に古い木造住宅が密集するエリアでは、地震や火災による倒壊・延焼リスクが高く、遠くない将来に大規模地震が起こると予想されている首都圏では、喫緊な対策が必要ですが、進んでいないのが現状です。

都心部は地価が高いため、所有者が土地の活用に消極的になりやすく、結果として土地が活用されずに塩漬け状態となって、放置されてしまうケースがあります。こうした状況は、都市部の限られた土地資源の有効活用を妨げるだけでなく、都市の魅力や住環境の質を低下させる一因となります。また、空き家が多い地域は防犯・防災上のリスクがあると考えられ、治安の悪化を招きやすく、地域の不動産市場への影響も懸念されます。空き家が増加する地域では、周辺の不動産価値が下落する傾向があり、地域全体の経済活動や住民の生活に影響を及ぼす可能性があります。

首都圏の郊外住宅地では再開発が必要とされている地域が点在していますが、空き家の所有者が複数存在する場合、合意形成が進まず、土地の再開発が進まないケースが少なくありません。このような状況は、都市計画の遅れや地域の魅力の低下を引き起こします。

空き家問題は、行政にとってもデベロッパーにとっても、頭の痛い課題なのです。

空き家を考える_3 土地や家屋の所有の課題

日本で空き家が増え続けるのは、土地や家屋の所有や相続、維持管理コストの課題も大きいと言えます。

例えば高齢者だけで暮らしていた世帯で、高齢者が亡くなり、その子世帯が親から家を相続したものの、相続人が遠方に住んでいる、または家の管理に興味や資金がない場合、空き家として放置されることがよくあります。相続した人が、その家を「先祖代々の土地」や「思い出の場所」として大切に思うがために、手放すことに抵抗を感じる人が多いことも考えられます。

相続については、法律や税制の影響も大きいと言えます。固定資産税の住宅用地特例措置により、建物を取り壊さずに残しておく方が税負担が軽減されるため、老朽化した建物が放置されることがあります。

一方で、空き家を維持管理するには修繕費や固定資産税などの費用がかかります。特に古い家は修理費が高額になり、相続した人の負担を避けるため放置されることが多いです。特に、地方や郊外など、不動産市場の価格が低迷する地域では、管理にコストをかけても売却利益が出にくくなると考えられます。

また、相続人がいない、見つからない、家族関係の問題などで、相続登記が行われず、所有者が不明になる「所有者不明土地問題」もあります。

こうした空き家課題に対して、「空家等対策特別措置法」という法律があり、行政による強制執行が可能な「特定空家指定」という制度がありますが、土地や家屋は個人の私有財産であるという点から、執行範囲が限定的で、強制的な対応が行いにくい点も課題です。

 

空き家を考える_2 10年後に空き家率は25%に

2023年現在、日本の空き家率は13.8%と、過去最高を記録しましたが、10年後の2043年には約25%に達するだろうと見込まれています(参考:野村総合研究所)。

空き家が増えていく原因に、社会的な問題と、土地や家屋の所有や相続の問題、維持管理の課題など、さまざまな課題がありますが、今回は社会的要因を見ていきたいと思います。

 

日本では今後、ますます少子高齢化が進み、人口は減少していきます。また、都市部への人口集中も空き家増加の一因です。若年層が進学や仕事のために都市部へ移住することで、地方の住宅が空き家化します。また、都市部では地方に比べて賃貸住宅を選ぶ人が多く、購入された家が結果的に空き家になることがあります。

世帯環境の変化も大きく、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯、独居世帯が増加し、核家族化が進む中で、大きな住宅を維持する必要性が薄れるケースがあります。子どもたちが親と別居し、実家が空き家となる例も増えています。

中古住宅市場が未発達なことも空き家の増加に拍車をかけています。日本では新築志向が強く、中古住宅が売れにくい状況があります。最近ではリノベーションという選択肢に一定のニーズがあり、中古住宅市場も少しずつ動き始めてはいますが、それでもまだまだ少数派と言えるでしょう。また、日本は高温多湿で、豪雨や台風などの気象災害や、地震が多いことなどから、住宅の質が劣化しやすい環境と言え、それも日本人が新築を優先する理由の一つと考えられます。

 

空き家を考える_1 深刻化する空き家問題

日本における空き家問題は深刻化しています。総務省統計局によると、2023年10月1日時点での総住宅数は6,502万戸であり、前回調査(2018年)から4.2%(261万戸)増加しました。 このうち、空き家数は899万戸で、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。

空き家問題の背景には、少子高齢化や人口減少、都市部への人口集中、相続問題など、複合的な要因がからみあっています。高齢者が施設や子どもの家に移ることで元の住居が空き家となり、子どもが遠方に居住しているとその家の手入れが行き届かなくなることが原因の一つとなります。またその家の持ち主が死去するなど住まい手がいなくなることで、家が空いたままの状態になります。

放置された空き家は、景観の悪化、衛生問題、防犯上のリスク、災害時の危険性など、多くの社会課題を引き起こします。老朽化した建物は倒壊の危険があり、放火や不法侵入の温床となる可能性があります。さらに、害虫の発生源となり、地域の衛生環境を悪化させる要因ともなります。

今後、空き家はますます増えると予測され、この大きな社会課題に我々建築関係者はどう向き合っていくべきかについて考えてみたいと思います。

酷暑と建築現場_8 建築業界全体で考える必要性

酷暑の中での建築現場作業の負担が高まっていることについては、我々いち工務店の努力だけでは限界があり、建築業界全体で声をあげ、またお客さま方への理解を促していくことも必要になってきます。

住宅建築の場合は、隣戸が近くに迫っているため、気温が比較的低い早朝や夜間に作業をすることが難しく、どうしても日中の暑い時間に作業をせざるを得ない状況です。しかし、酷暑の中での屋外作業は、時に命や大怪我の危険を生じることもあり、作業時間を短くして工期を長くとったり、職人さんたちの夏場の工賃を上げるなどの仕組みも必要になってくるのではないでしょうか。

実際に今年の夏、長期間過酷な暑さを経験し、職人さんたちに強い負担を強いることになってしまったことや、暑さが原因で予定通りの作業が進まなかった経験から、現場努力だけでは解決し得ない問題が生じていると感じます。命を守る観点から、作業環境についてのお客さまのご理解とご協力も必要となってきます。大切な社員や職人さんたちを守れるよう、私もできる限り現場の状況を発信していきたいと考えます。

 

酷暑と建築現場_7 作業環境と健康管理

酷暑の中での建築現場の作業は、肉体的な疲労が激しくなります。長時間の作業や高温下での体力消耗により、判断力が低下しやすくなり、どうしてもミスや事故が発生しやすくなります。特に、屋根の上での作業は高所作業であり、疲労によるふらつきやミスが直接、墜落やケガにつながる危険性が高まります。そのため、現場監督の仕事としては、職人さんが十分な休憩時間を確保できるよう、無理のない作業スケジュールを組むことが重要です​。

どうしても忙しい現場では、作業効率を優先するあまり、十分な休憩時間が取れないことや、水分補給が不十分な場合があります。特に夏場はこまめな休憩や水分補給が必須ですが、暑さによって作業が遅れがちになることから、現場の環境や作業状況によっては休憩を犠牲にしてしまうことも生じてしまいます。そうならないよう、命優先の判断をできるようにしたいものですし、職人さんたちにもしっかりと呼びかけていきたいと思います。

 

酷暑と建築現場_6 暑さと湿度対策の重要性

日本の夏は、暑さばかりでなく、湿度の高さも問題です。湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなります。汗が蒸発しないと、体温が下がりにくく、体内に熱がこもりやすくなります。

建築現場では動き回る作業が多いため、体力を消耗しやすくなります。湿度が高いと体温調節が難しくなり、熱中症の危険性がさらに高まります。

建築現場では安全を確保するために、作業員は長袖、長ズボン、ヘルメット、安全ベストなどを着用します。これらの装備は体を保護する役割があるのに相反して、酷暑にはどうしても体力を奪います。最近は空調服なども増えてきていますが、私からすると「ないよりはマシ」くらいの感覚で、抜本的な対策にはなっていません。通気性があり汗を蒸散しやすい素材が使われるようになってきていますが、機械や埃から体を保護するという目的とどうしても相反してしまいます。