ウッドデッキ(4) 針葉樹を使う時には塗料で保護する

大丸建設でウッドデッキに杉材を使うときには、腐食防止の塗料を使います。大丸建設で使っているのは「ウッドロングエコ」という商品です。ウッドロングエコを販売しているのは、三重県尾鷲市の小川耕太郎♾百合子社。同社は「未晒し蜜ロウワックス」の製造を20年以上続け、自然素材の家づくりに取り組む工務店から絶大な支持を得ています。無垢材のフローリングに自然な艶を与え、メンテナンスする楽しさを教えてくれる蜜ロウワックスは同社の主力製品で、屋外用にはカナダの製造元から取り寄せているウッドロングエコを販売しています。ハーブ、樹皮、鉱物などが原料の粉を水で溶いて、屋外用の材木に塗布する「木材防護保持材」で、塗り直しが不要とされています。

ウッドロングエコは防腐剤ではないので、水びたしになったり、風が通らない設計だと、木材腐朽菌が増殖してしまいます。ウッドデッキには、通風と水はけをよくする設計・施工が欠かせません。塗料だけに頼るのではなく、設計・施工とセットで考えていく必要があるのです。

 

ウッドデッキ(2)  室内空間と一体化できるメリット

大丸建設で一戸建ての住宅を新築する際は、敷地条件にもよりますが、お庭がとれる場合は、室内と屋外の中間領域でもあるウッドデッキを作ることをお勧めしています。室内の床のレベル(高さ)とほぼ同じくらいの高さにウッドデッキを設けることで、掃き出し窓を開ければまるでリビングの延長のように空間が広がります。さらに庭にも目線が広がり、空間の奥行きが出てきます。

首都圏で家を建てる場合、土地の価格が高くどうしても敷地に対して目一杯家を建ててしまいがちで、さらに駐車場も確保しなければならないため、庭やデッキなどの中間領域を確保するのが難しくなります。それでも、プランによっては2階のベランダ部分を少しでも広めにとってデッキをつくったり、デッキ部分を1階の庇(ひさし)のように有効活用したりと、限られた土地・空間で、家の中外を一体化できるメリットがあります。

家づくりは屋内だけでなく、敷地全体、あるいは地域の風景とも一体で考えていくのがおもしろいのです。

社会の化学物質(8)  化学物質過敏症の方にやさしい家づくり

大丸建設では、化学物質過敏症の方でも安心して住むことのできる家づくりに対応しています。建築事務所のご紹介や、『チルチンびと』をみて、お客様が藁にもすがるような気持ちで頼ってくださるので、私たちも誠心誠意、できる限りの対応をしていきたいと思っています。

化学物質過敏症で苦しまれているあるお客様は、「柔軟剤の香りがダメです、汗くさいのは大丈夫」とおっしゃっていました。現場で働く職人さんには、汗くさくてもいいから、柔軟剤を使わないようにしようと、声をかけました。10数年前に化学物質を極力使わず自然素材と無垢材で家づくり手がけたお客様は、その後化学物質過敏症の症状が軽減され、「悩んでいる人がいっぱいいるから、こういう家づくりに出会ってほしい」とのお言葉をいただきました。

何事もバランスが大切だと思います。お客様と建材や香りのテストをしながら、率直にお話しいただくことで、私たちも現場や使う建材について、できる限りの提案ができます。化学物質過敏症だからといって、何かを諦めない、安心して快適に過ごせる家づくりを、これからも目指していきたいと思います。

社会の化学物質(7)  「香害」の加害者にならないために

前回、香害(こうがい)は、誰もが被害者にも、加害者にもなりうるものなのだと書きました。現代社会は多様な化学物質に囲まれ、何かしらの化学物質が含まれた製品を使うことは誰にも避けられないことです。また、化学物質があるからこその利便性を享受できていることも事実です。ものごとは全てプラスの面と、マイナスの面があるので、ゼロリスクにすることは現代社会を否定することにもなりますし、それは現実的ではありません。

一方で、香害についての知識があれば、自分が加害者になることを防ぐことはできます。「長時間香りが持続する」という効果をうたった柔軟剤や合成洗剤を使わないこと、化粧品や整髪料等を購入する時には、香り成分ができる限り自然由来のものを選ぶことならば、誰にでもできることです。自分にとっては心地よい香りであっても、他の誰かを苦しめる可能性がある、ということを知っておくだけで、自ずと選択や行動が変わってくるのではないでしょうか。
 

社会の化学物質(6)  「香害」はアレルギー反応の一つ

柔軟剤や洗剤、化粧品等の香り成分が由来となって、周囲の人々に健康影響を与えてしまう「香害」(こうがい)。香害は化学物質過敏症の一つで、誰もが被害者になる可能性があります。人によって化学物質の許容量が異なり、まるでコップから水があふれ出るように、体内で許容できる化学物質があふれた時に、健康被害という形で現れます。コップの容量が小さい子どもほどリスクが高くなるので、特に小さなお子様がいるご家庭では注意が必要です。

花粉症を例にするとわかりやすいですよね。私が子どもの頃は、花粉症はそれほど多くの人に現れるアレルギー反応ではありませんでした。ところが今は、春先になると、実に多くの人がくしゃみをしたり、目をこするシーンを目にします。スギ花粉由来の花粉症が多いですが、最近ではヒノキ、ブタクサ、イネなども……。花粉だけの問題ではなく、道路のアスファルトやクルマの排気ガス、そして香害も含めたさまざまな化学物質が複合的に絡み合って、国民病と言われるほどに広がりました。

香害は、新しい公害とも言える社会課題です。誰もが被害者にも、加害者にもなりうるものなのです。

社会の化学物質(5)  「香害」は化学物質由来だけではない

「香害」(こうがい)の原因となる物質は、主に、柔軟剤等の香りを長く持続させるためのマイクロカプセルに包まれた合成科学物質に由来します。マイクロカプセルには香り成分だけでなく、合成海面活性剤などさまざまな人工化学物質が含まれており、これらが空気中に揮発して鼻や喉から吸い込むことにより、化学物質が肺をはじめ内臓にたまり、さまざまな健康被害を引き起こします。

いったん化学物質過敏症を発症すると、人工的な合成化学物質だけでなく、自然由来の香料にも反応してしまうケースがあります。自然由来のアロマオイルなども香りが強いため、過敏症の方は体調に影響する場合もあります。

住宅の化学物質も同様で、合成化学物質だけでなく、自然由来の木材に含まれる香り成分への反応がある方もいます。たとえば、ヒバに含まれるヒノキチオールについては、私自身も反応してしまうため、自然由来だから大丈夫、というわけではありません。

社会の化学物質(4)  「香害」はどこで発生するのか?

「香害」(こうがい)は、香りに由来する新しい「公害」ともいえる現象で、香料に含まれる合成化学物質による化学物質過敏症の一種です。

香害をなくす連絡会が2019年から2020年に行った「香りの被害についてのアンケート」では、香害被害を受けた場所として、乗り物の中、店舗、公共施設、自宅(隣家からの洗濯物のにおい)が上位で、職場・病院・学校と続きます。

乗り物、特に電車のように人との距離が近いところでは、隣に座った人の洋服から香る柔軟剤の香料や、化粧品・整髪料の香りが、香害の原因になることがあります。喫煙者の衣服に染み付いたタバコのにおいも同様です。

店舗では、柔軟剤や化粧品のサンプル、アロマディフューザーの香りなど、さまざまな香りで満ちていますので、それが苦手な人には影響が大きいです。

店舗のように、「香害の原因物質がありそうだ」と想定される場合は自衛が可能ですが、たまたま隣り合わせたりすれ違う「人」に染み付いた香りを避けることはできず、それを避けようとすると社会生活に大きな影響を及ぼします。

 

社会の化学物質(3)  「香害」の症状

「香害」(こうがい)は、読んで字のごとく「香り」に含まれる化学物質が原因となって発症する化学物質過敏症のことを指します。その原因物質は香料に含まれる合成化学物質です。合成洗剤、柔軟剤、化粧品、香水、整髪料、芳香剤、石けんやシャンプー、入浴剤など、生活必需品の多くに合成化学物質が使われています。特に「香り」は揮発性があるものなので、鼻から吸い込み、目や鼻の粘膜にも刺激を与え、五感のうち特に嗅覚に影響して、体全体に影響を及ぼします。

健康被害の症状としては「頭痛」、ついで「吐き気」がダントツで多いです。思考力低下や疲労感、めまいなどが続き、症状としても化学物質過敏症に近く、対策としては香害の原因物質を極力身の回りにおかないことが大切になります。

しかし、香害の場合は、自分や家族が意識をしていても、気付かぬうちに香りの被害に直面することがあります。

 

社会の化学物質(2)  「香害」とは何か

近年、柔軟剤や化粧品等に含まれる化学物質によって、頭痛やアレルギー、不快感などの健康影響を生じる人が増え、その状況は「香害」(こうがい)として広く社会に知られるようになりました。

「香害」という言葉が使われるようになったのは2000年代に入ってから。それ以前にも言葉がないだけで、化粧品や香水等の香りによって体調不良を訴える人は一定数いたとされます。農薬や合成洗剤等による化学物質過敏症は1960年代からありましたが、特に香害が広がったのは、洗濯物に入れる柔軟仕上げ剤が広く普及してからとされます。香りを持続させるために、目に見えない微細なマイクロカプセルに香料を包み込み、そのカプセルが衣類や肌等に付着して長時間人体の近くに存在することで、肺などの臓器に吸い込まれて体内に蓄積してしまいます。これが、従来よりもひどい「香害」をもたらすようになったのです。

 

 

社会の化学物質(1)  ここ数年話題になっている「香害」

昨年12月のブログで「化学物質過敏症」について紹介したところ、「人によってこんなに症状が違うんだ」「反応する物質も違うことがわかった」「自分は大丈夫でも人にとっては苦しいこともあるんだ」といった反響が寄せられました。

化学物質過敏症は、広義でいえばアレルギー反応の一種ですが、花粉症で苦しむ人もいれば、建築物に含まれる接着剤の物質に反応する人もいますし、タバコの副流煙がどうしても苦手という方もいます。

ここ数年話題になっているのが「香害(こうがい)」です。洗濯物の仕上げに使われる柔軟剤の匂いが強烈で、その芳香性の化学物質にアレルギー反応を起こす人が一定数増えています。アレルギー症状がひどくなると、学校の給食着についた香りに反応してしまう、マンションの隣の家の洗濯物から風にのって香りが漂うことで頭痛がするなどの反応で苦しむ人も出てきています。それが社会問題となって新聞やテレビなどのメディアで紹介されることも増えてきました。

今月は「香害」を中心とした、社会に広がる化学物質についての話題をお届けします。