耐震グレーゾーン住宅を解消したい(4)大震災後に見直される耐震基準

1978年に起こった宮城沖地震で7400戸の住宅が倒壊したことを受けて、建築基準法が見直されました。当時は震度5程度の揺れで「倒壊しない、損傷しても修繕できる」というレベルの耐震基準でした。宮城沖地震では建物やブロック塀の倒壊によって亡くなった方がいたからです。これによって、1981年に新耐震基準が適用されることになりました。

一方で、新耐震以降に「2000年基準」ができたのは、1995年の阪神・淡路大震災の検証を受けてのことです。新耐震によって耐力壁の量や倍率が強化されたものの、阪神・淡路大震災で倒壊した建物の中に、柱や梁、土台などの連結部が抜けてしまうものや、耐力壁の配置バランスが悪く倒壊してしまった建物があったことから、接合部や基礎と構造物を金物で連結することや、耐力壁をバランスよく配置することが定められていきました。

木造住宅の耐震性においては、2000年基準を満たしたものであれば、現時点での耐震性は十分と言えます。1981年以前の旧耐震の建物は、残念ながら住宅ローン控除の対象にはなりません。新耐震ではあるものの2000年基準に満たない1981年6月1日〜2000年5月31日までに建築確認を受けた建物は、一般的に「グレーゾーン住宅」とされます。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい(3)新耐震基準と2000年基準

新耐震基準は1981年6月1日以降に建築確認が行われた住宅のことで、それ以前の木造住宅よりも耐力壁の量や倍率を確保するなどして、震度6〜7程度の地震でも倒壊しないレベルまで耐震性能が引き上げられました。

しかし、1995年に発生した阪神・淡路大震災によって多くの木造建物が倒壊し、このことによってさらに新耐震基準が見直されることになりました。阪神・淡路大震災で倒壊した建物の98%は旧耐震の建物でしたが、一方で新耐震の建物でも倒壊したものがありました。新耐震基準で倒壊している建物は、柱や梁の接合部、基礎との連結部分などに問題があることがわかったから基準の見直しに至ったのです。

2000年6月1日以降に建築確認が行われた建物は「2000年基準」を満たした建物、ということができます。柱、梁、筋交、土台等の各接合部に金具を使って固定し、大きな横揺れが起こった際に柱が抜けて倒壊するようなことが起こらないようにします。また、耐力壁の配置バランスに対する基準を設け、部分によって偏りが出ないような設計が求められます。

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_2 新耐震と旧耐震の違い

みなさんは「旧耐震」「新耐震」という言葉を聞いたことはありますか?

1981年(昭和56年)6月1日に施行された改正建築基準法によって、耐震基準が改定されました。旧耐震基準とは、1950年から1981年5月31日までの間に建築確認が行われた建物に適用された耐震基準のことで、震度5程度の地震で「建物が倒壊しない、建物が損傷しても補修することで生活が可能なレベル」の建物を指します。

一方、新耐震基準は1981年6月以降に建築確認が行われた建物で、震度6〜7程度の揺れが生じても建物が崩壊しない(多少の損傷は許容)、震度5程度の揺れでは家屋がほとんど損傷しないための基準を満たした建物です。

注意しなければならないのは「1981年築」と書かれた建物が全て新耐震基準かというとそうではなく、竣工日が6月1日以降であっても、「確認申請が行われた日」が6月1日より前の場合は旧耐震が適用されているかもしれない、ということです。そもそもの建物の耐震性や、住宅ローン控除に影響するため、その建物が「旧耐震」か「新耐震」かは念入りに確認する必要があります。

 

 

耐震グレーゾーン住宅を解消したい_1 関東大震災から100年

2011年3月11日に起きた東日本大震災から12年が経とうとしています。2023年は関東大震災からちょうど100年にあたる年でもあり、あらためて木造住宅の耐震性について考えてみたいと思います。

関東大震災は1923年9月1日、11時58分に起こりました。マグニチュード7.9の巨大地震で、津波や土砂災害なども発生。死者は10万5000人以上、30万棟以上の建物が全壊、消失し、近代日本で最大の被害をもたらしました。

特に住宅地が密集している東京での被害が甚大だったため、東京での地震と思われがちですが、震源は神奈川県西部で、静岡県熱海市で最大高さ12mの津波を観測、神奈川県や千葉県にも大きな被害がありました。

関東大震災の教訓をもとに、毎年9月1日を「防災の日」と定めています。この100年で、阪神・淡路大震災や中越地震、東日本大震災など、日本では数多くの震災を経験しています。今後30年以内に首都圏直下地震のリスクが予測されている東京で、どのような耐震対策が進んでいるのか、ひもときます。

2023年の抱負(6) 日本の森を支える仲間を増やしていきたい。

自然素材や無垢材を使った、美しい日本の住まいを作ること。それは森林大国・日本の環境を持続可能にすることにつながり、自然と共存した伝統的な技術を未来に伝えることに直結します。日本は世界でも有数の森林大国で、木を使った住まいづくりの分野では世界でも最も古く、また最新の技術があります。

住宅で使う木を育む森林は、使うことによって維持されていきます。人工林は計画的に植樹され、維持管理され、伐採と利用を繰り返していくことで、森林の持つ公益的機能が維持されます。適切に管理された森林には水源を涵養して洪水を防ぐ機能があります。また、成長期の植物の葉は光合成して二酸化炭素を固定し、酸素を放出します。地球温暖化の原因物質の一つとされる二酸化炭素の吸収源となるため、日本の木を使うこと=日本の森林を維持し、地球温暖化防止に貢献することにつながります。

日本の木を使い、森を守るには、多くの人がその機能を知って、使っていく機運を高めていくことです。そんな仲間を日本中に増やしていきたいと思います。

 

2023年の抱負(5) 省エネを推進する仲間を増やしたい。

「一般社団法人Forward to 1985 energy life」は、賢く楽しく省エネライフを送り、家庭での消費エネルギー量を1985年レベルにすることを目指した団体です。大丸建設は設立時から関わり、私は昨年11月に「第10回全国省エネミーティングin東京」の実行委員長を務めました。

全国省エネミーティングでは、東京都を始め、埼玉県所沢市や川口市など、省エネに力を入れている自治体の取り組みを聞くことができました。特に、東京都はエネルギーを「減らす、つくる、ためる」を推進していくために、「東京ゼロエミ住宅」を発表しました。断熱性の高い窓や断熱材の推奨、省エネ性の高いエアコンや照明などを用い、「断熱性の確保」と「設備の効率化」を目指した東京都独自の基準で、今後は住宅展示場やキャンペーンなどでその名やロゴを多く目にすることになるでしょう。

大丸建設でも、仲間と一緒に最新の知見を取り入れながら、高断熱、省エネ性能の高い住宅づくりに励んでいきます。

一般社団法人Forward to 1985 energy life

https://to1985.net/

 

東京ゼロエミ住宅

https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/tokyo_zeroemission_house/index.html

気候危機の時代(8) 気象情報を正しく読み解く

集中的に大量の雨が降る線状降水帯や、毎年巨大化する台風など、水の災害が増加、激化している昨今、私たちは自分や家族の命を守るために、的確な情報を得て判断していく必要があります。

ニュースサイトや気象情報アプリでは、わかりやすく情報を伝えてくれます。気象庁が発表している「キキクル(大雨・洪水警報の危険度分布)」は、お住まいの地域で雨による災害リスクが高まる場合、危険度の高まりをプッシュ型で通知するサービスです。アプリや通知によって、危険が身に迫った場合に適切に対応できるよう、常日頃から気象情報に関心を持っておきましょう。

災害時は、まずは自分で自分の身を守る「自助」、近隣の方々と助け合う「共助」、そして最後に自治体などの助けを得られる「公助」という順番です。自分の命が助かってこその、支え合いです。災害が多い時代、備えを万全にしておきましょう。

 

気候危機の時代(7) 河川の氾濫が身に迫る時

気象情報のウェブサイトでは、河川水位情報を調べることができます。河川洪水では、注意、警戒、危険、氾濫発生の5段階が表示されます。河川の氾濫や高潮などから身を守るための防災を「水防」といいます。

自分が住む地域でどのような水害のリスクがあるのかを事前に知っておくには、自治体が発行している「水害ハザードマップ」を入手しておくとよいでしょう。河川の近くでは早期の避難が必要になる場合や、木造住宅の倒壊が危険視される地域もあります。大雨の際は土砂崩れも心配です。高台に住んでいるから一概に安心とは言えず、排水溝から水があふれて周辺が浸水するようなリスクすらある時代です。

何度も書きますが、台風は事前に備えることができる災害です。特に、排水溝や雨樋などを清掃して水の流れをよくしていくことは、地域防災の観点からも重要です。

家庭でできることは、氾濫の危険が身に迫る時には、浴槽にためた水を流さないこと。家庭の排水も河川に流れるので、豪雨の際には雨水以外の水で川をあふれさせないことが大切です。

気候危機の時代(6) 避難場所や経路を確認しておく

土砂災害や浸水などの大水害が発生する恐れがある時には、気象庁から警戒レベルに応じた避難情報が発表されます。現在の警戒レベルは5段階。警戒レベル1〜2の段階から注意を払い、警戒レベル3以上の時にはいつでも避難できるように準備をしておきましょう。特にご家庭に乳幼児や高齢者がいる場合は早めの準備が必要です。

警戒レベル1:早期注意報

警戒レベル2:大雨・洪水・高潮注意報

警戒レベル3:高齢者等避難

警戒レベル4:避難指示

警戒レベル5:緊急安全確保

このうち、避難指示は、高齢や障害の有無に関わらず、全員が安全な場所に避難する必要があります。いざという時に慌てないよう、自分の居住地の避難場所や避難経路について、事前に確認しておきましょう。

警戒レベル5の緊急安全確保は、命を脅かすおそれのある災害が既に発生しているか、身近に迫っている緊迫した状況を指します。この段階ではすでに避難には間に合わないと判断されるため、避難ではなく自宅の中で少しでも高いところに身柄を移すなどして、命を守ることを優先します。

気候危機の時代(4) 台風は豪雨に加えて暴風対策も必要

今年の夏は「豪雨」の印象が強いですが、これからは「台風」に対する備えも大切です。我々も記憶に新しいのが、2019年の台風15号と台風19号です。

台風15号は房総半島を中心に、暴風で長時間の停電が発生し、住宅の屋根瓦が飛んだり、暴風によって家が傾くなど、局所的に甚大な被害をもたらしました。台風19号は東日本の広大な範囲で河川が氾濫し、100人以上の死者と行方不明者を出し、さらに住宅の全壊・半壊をあわせると3万を優に越す、史上稀に見る大災害となりました。

台風の場合は、豪雨だけでなく、暴風を伴うこともあります。豪雨災害がもたらす影響は、床下浸水・床上浸水といった深刻なものから、雨漏りなどがありますが、暴風が伴う場合はさらに、屋根や窓ガラスの破損が加わり、そこから水の被害につながります。

台風が迫っている時には、建築途中の現場の対策は非常に慎重を要し、かつ緊急性高いものとなります。足場の安全確保や建築資材の飛散防止、現場の浸水対策など、念には念をおして、台風の被害から建築現場と、近隣の環境を守る必要があります。