気候危機の時代(3) 激甚豪雨が日常になる夏

「100年に一回の大雨」は、日降水量にして「おおよそ北日本で100~200mm、西日本太平洋側で200~400mm」というのが気象庁の定義ですが、2022年8月の日降水量最高地点のデータを見ると、8月3日には新潟県で395.5ミリ、8月4日には石川県で392.0ミリ、8月9日には青森県で312.0ミリ、8月13日は静岡県で349.0ミリと、300ミリを超える日が4日もあったことがわかります。200ミリ以上となるとその数は大幅に増え、8月のうちに10日間は全国各所で「100年に一回の大雨」が降っていたことになる、と言えます。

気候危機の時代、雨の降り方や量は、我々が子どもの頃とは全く変わり、「これまでの常識」での降雨対策では、住まいや家財、そして命を守れなくなる可能性があります。これからの工務店は、こうした気候危機に備えた具体的な提案を住まいに織り込むことが必要になってきていると言えます。

気候危機の時代(2) 「100年に一回の大雨」が毎年やってくる

気象庁が発表したように、2022年夏(6〜8月)の降雨量は、「北日本日本海側と北日本太平洋側でかなり多くなった」とのことでした。特に、8月3日から全国各地に甚大な被害をもたらした「令和4年8月豪雨」では、青森県、山形県、新潟県、石川県、福井県の5県35市町村に災害救助法が適用され、住宅の損壊も数多くありました。

「100年に一回の大雨」という表現が、気象予報でも頻繁に言われるようになり、何を基準に100年に一回と言うんだろうと疑問に思う方もいるかもしれません。実は、気象庁では「100年に一回の大雨」について定義を持っています。

気象庁HPより

気象庁のHPによると、「◯年に一回の大雨」は、「全国51地点における1901~2006年の年最大日降水量のデータから推定した、再現期間30年・50年・100年・200年に1回降る可能性のある日降水量の分布図」をもとに、たとえば1日あたりの降水量では、「100年の1回の確率降水量は、おおよそ北日本で100~200mm、西日本太平洋側で200~400mmなどとなっています」とされています。

気候危機の時代(1) 気候変動から気候危機へ

地球温暖化が原因の一つとされる猛暑や大雨などの異常気象は、2000年代から顕著に現れるようになりました。「気候変動」という言葉は1980年代からあったとされますが、地球温暖化の影響が叫ばれるようになった2000年代からは認知が広がりました。

しかし最近は「気候変動」から「気候危機」に言葉を変えて語られるようになりました。日本では2020年、環境省が発行する『環境白書』で政府として初めてこの言葉を定義しました。気候変動の影響と見られる自然災害が激甚化し、また人間を含めた生物の生存基盤が脅かされている状況から、当時の環境大臣が「環境省として気候危機宣言をする」と発表するに至ったのです。

気象庁が9月1日に発表した「夏(6〜8月)の天候」によると、夏の平均気温は東日本・西日本・沖縄・奄美でかなり高くなり、夏の降水量は北日本日本海側と北日本太平洋側でかなり多くなったとのことです。また、東北北部・南部と北陸地方では梅雨明けが特定できなかったのも2022年の特徴と言えそうです。

気象庁HPより

住まいの水対策 (1) 梅雨時こそ、配管周りを見直そう

6月6日、気象庁は関東甲信地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表しました。先週から天気がぐずつき、天気予報を見ると雨マークと雲マークが入り混じる日々。今年は台風の発生時期も早まっているようです。雨の季節が始まると、室内もジメジメして、カビやサビなどが気になりますね。

今月は雨の季節らしく、雨漏り、配管のメンテナンスなど、水回りを支える大切な配管についてお話しします。住宅に必ずある水道管やガス管ですが、その姿は目に見えないので、普段生活しているとなかなか気にかけないところですよね。しかし、水道管にトラブルがあると、家全体に大きく影響してしまうことも。壁の中が濡れてしまうと、家を支える柱や梁、土台が濡れて、カビや木材普及金の発生につながります。

屋根からの雨漏りも心配の一つ。トラブルがあったら早めに気付いてメンテナンスに結びつけられるようにしましょう。

アスベストと法規

2021年4月に施工された「改正大気汚染防止法」によって、建築物のアスベスト含有の有無を事前調査することが所有者に義務付けられました。建築物の所有者は、不動産取引時にアスベスト調査が必要となります。また、日常使用期間においても前回掲げたアスベストの飛散対策が必要となり、解体・改修時にもアスベスト仕様の事前調査と、労働安全衛生法関連の事前調査、建築リサイクル法における建築資材の付着物調査なども必要になります。アスベストの除去工事の際は、施工業者は作業の実施状況についての写真の記録、保存が義務付けられます。

2022年4月より、解体工事部分の床面積が80平米以上の建物や、100万円以上の予算の改修工事では、事前調査結果を労働基準監督署に届け出る必要が出てきます。

自治体によっては解体工事のアスベスト調査のための補助金を設けているところもあります。大丸建設はアスベスト調査の資格を取得しましたので、気になる方はお気軽にご相談ください。

アスベスト対策の工法

国土交通省では、吹き付けアスベスト等の使用が疑わしい建物では、アスベスト含有の有無の調査を行い、もしアスベストが含まれている場合は早急に対応工事が必要であるとしています(2021年より調査が義務化されました)。

アスベスト対策の工法は主に3つ。除去工法は吹き付けアスベスト等をした時から取り除く方法です。完全に除去することで、大地震などが発生して建物が損傷した際もアスベストが飛散する恐れがなくなります。

封じ込め工法は、吹き付けアスベスト等の層を残したまま薬剤を含ませるなどして吹き付けアスベスト等を固定し、飛散を防止する工法です。また、囲い込み工法は吹き付けアスベスト等を板状の材料で囲い込むことで、粉じんの飛散を防止する工法です。封じ込め工法も囲い込み工法も比較的安価に施工できますが、建物の取り壊し時には除去工事が必要になり、大地震などで建物が剥落、あるいは倒壊した時には、アスベスト飛散のリスクが残ります。

アスベストが使われてきた場所

アスベストは建築材料として防音性、防火性、耐熱性、摩擦や腐食に強いなど、多くのメリットがあり、かつ安価で加工しやすいという特性から、建築のさまざまな場面で使用されてきました。

例えば、間仕切り壁、スレート屋根、外装や外壁に使われるセメント板、サイディングボードなど、建築物のかなりの箇所に使われていることがわかります。

建材だけでなく、断熱材用の接着剤や、配電盤や配管のジョイント部分の耐熱や電気絶縁版として、機器の接続部分のシール材、煙突や排気管など、とにかく多用途に使われてきたアスベスト。学校や病院、オフィスビル、商業施設、公共施設など、昭和40年代に建てられた建築物の多くにアスベストが使われ、それらの耐用年数が近づき、リノベーションや解体工事が進むにつれ、新たなアスベスト対策が必要になってきているのです。

 

2006年よりアスベスト使用は原則中止に

アスベストによる健康被害は世界中の多くの現場で報告されていましたが、日本で全面的に使用禁止になったのは2004年からです。昭和30年代から使われ始め、昭和40年代の高度経済成長期に幅広く大量に使用され、昭和50年になって最初の規制が行われました。昭和55年まではアスベストが含有された吹き付けロックウールが使われていました。平成に入りアスベスト重量に応じて段階的に使用が制限され、全面的に使用中止になったのは2006年からです。

2006年9月に改正された「労働安全衛生法施行令」では、「石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべてのものの製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止される」と記載され、それ以前に製造・輸入された在庫品についても規制が行われました。

このように、石綿に関する健康被害例や使用制限はかなり昔から行われていたにもかかわらず、全面使用禁止になってから日が浅く、さらにすでに建築されている建物の解体等で発生するアスベストの除去対策が必要になっています。アスベストによる健康被害は今なお大きなリスクとして日本に存在するのです。

アスベストによる健康被害の特徴

アスベストによる健康被害としては、肺がんや悪性中皮腫が多く報告されています。実は、アスベストの成分自体に毒性があるというよりも、石綿の微細な粒子を吸い込むことで肺にたまり、10〜40年の潜伏期間を経て肺がんや中皮腫を発症することがわかってきました。アスベストは超微細な繊維で、吸い込んでも気付きにくく、丈夫で変化しにくい物質であるため、人間の体内でも長く蓄積し、それが長い期間を経て発症に至ります。いったん発症すると多くの方が1、2年で亡くなるという実態がわかり、国が「石綿健康被害救済制度」を設けて医療費や療養手当の給付や、遺族への給付を行っています。

日本では昭和40年代に幅広く大量にアスベストが使用されてきたので、アスベスト施工の現場作業員といった対象者を特定することが困難な状況であるのが実態です。

アスベストはどういうものなのか

アスベストは「石綿」とも呼ばれます。天然の鉱物繊維の総称で、蛇紋石属、角閃石属に大別されます。蛇紋石属のクリソタイル(白石綿)が世界で使われている石綿の9割を占めるとされます。角閃石属のアモサイト (茶石綿)、クロシドライト(青石綿)、アンソフィライト(直閃石)、トレモライト(透角閃石)、アクチノライト(緑閃石)を含めた6種類が、いわゆるアスベストとして知られています。

厚生労働省【石綿総合情報ポータルサイト】より

アスベストは超微細な繊維で構成され、熱に強い、摩擦に強い、酸やアルカリに強い、防音性が高い、耐腐食性が高いといった特性があります。さらに、繊維が微細で吹き付けしやすく、安価で加工しやすいため、断熱材や耐火壁、天井材などに使われてきました。昭和30年ごろから使用が始まり、昭和40年代の高度成長期に建てられた建築物に多く使用されていると言われています。