断熱についての意識の変化

私が大丸建設に入った20年以上前を振り返ると、お客様が自分自身で断熱材の性能やメーカーを調べる、ということは考えにくかったです。

インターネットの普及が大きいとは思いますが、一方でこの20年で夏が非常に暑くなり、冬のヒートショックへの懸念も理解され、断熱に対する意識が大きく変化しているように思います。

テレビのCMでも「断熱」というキーワードが当たり前に出てくるようになり、住宅エコポイントなどの制度の後押しもあって、家の断熱性能を向上させることで、夏涼しく、冬温かい家をつくることができるという意識が一般に浸透してきたようです。

外気温が変化しても、家の中では温度が一定というのが、今の時代の当たり前になりつつある。その「現代の常識」を、性能やデータでわかりやすくお客様に伝えていく姿勢が、私たち地域工務店に求められています。

お客様の学びの姿勢に変化

私が大丸建設に入って、学生時代のアルバイトから数えるとすでに25年が経とうとしていますが、その間、お客様の変化を大きく感じます。

家づくりについて非常に深く学んでこられる方が多く、知識や情報の量がものすごく増えています。

特に、耐震性や構造に関する関心の高さは、お客様のどなたにも通じるもので、地震のリスクに対する安全性の担保についてクリアしているのが前提で、さらに上の住まいの快適性向上についての話が進みます。

近年は、住まいの断熱性能に対する関心が特に高く、お客様自身が断熱材について調べてきたり、窓やサッシのレベルやランクについて直接メーカーに問い合わせて商品を指定するなど、こだわりを強く持って住まいに反映しようという姿勢を感じます。

素材のトレーサビリティへのこだわり

大丸建設で使っている構造材(柱・梁など)は、すべて産地直送で、林業とのつながりを大切にしています。

主要産地は和歌山県の山長商店や宮城県の栗駒山麓などで、主要材である構造材は、基本的には私自身が現地に行き製材所を見てきて、性能や材質などを確認して安心して使えるものを取り寄せています。

木だけではなく左官(塗り壁材)の材料も安全なものに限定し、シックハウスの原因となるような有害化学物質が入っていないものを使っています。

 

こうした自然素材を大切にする姿勢は、2003年に「チルチンびと『地域主義工務店』の会」に入会したことがきっかけです。当時は相当な時間をかけて自然素材のトレーサビリティ(原材料や製造や流通を含めた履歴)を追求し、志を同じくする工務店仲間と独自の基準をつくっていったことが大きいです。

「チルチン仕様の家づくり」というのは今でも大丸建設の家づくりの根本で、それが人にもやさしくて、地球にもやさしい家づくりなのです。

[写真提供:山長商店]

 

2021年、新年あけましておめでとうございます。

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

2020年は、新型コロナウイルスの世界的な流行により、人々の往来や会食の自粛が求められ、経済活動も停滞するなど、大きな変化にさらされた1年でした。

一方で、自宅で過ごす人が増え、いかに住まいを快適に心地よく過ごすかに目を向けた方も多かったのではないでしょうか。

大丸建設の近年のお客様を見ていると、素材のよさを求めるのはもちろんのこと、断熱や省エネといった住まいの性能面への関心も高く、住まいのリテラシーが高まっているのを感じています。

私たちはこれからも、断熱、省エネ、耐震、自然素材や匠の技術といった専門性を生かし、お客様の要望に対して誠実にお答えできるよう、時代時代にあった最新情報や技術を磨いていくよう、心がけます。

自然素材と床暖房

大丸建設は国産の無垢材と自然素材を主に使用しているので、床暖房の施工をする時には、木のよさを生かせるように工夫しています。床暖房をした時の床の表面温度は、温水式で35℃ほど、電気式だと最大で45℃ほどに上がります。一方、床暖房が必要な時期の外気温℃は5〜10℃(寒冷地だと零下になることも)なので、そこから一気に温度を上昇していくとなると、温度変化に耐えうる素材を使わなくてはならなくなります。

無垢材は温度や湿度の変化に敏感です。特に若い木ほど膨張と収縮を繰り返していくので、曲がりや反り、割れなどの変化もあります。大丸建設のお客様にはこうした自然素材の特性をお伝えしますが、知らない方だとびっくりするかもしれません。

床暖房をする場合は、割れや反りの起こりにくい、なるべく堅い木を選ぶようにしています。それだけ床材のコストが上がることにもなりますが、床暖房に使える材=良質な材、ということができますので、床暖房効果に加えて、良質な無垢材の心地よさも同時に実感できるはずです。

床暖房は新築向きだが、リノベーションなら検討可能

床暖房は設置の際に70〜100万円ほどの導入コストがかかります。特に温水式床暖房の場合は、床全体にパイプを通す大掛かりな工事になり、かつ給湯器も必要なため、設置を検討するならば新築が向いています。

住宅の構造材だけを残して間取りも含めて全て変えられるフルリノベーションならば、新築でなくても床暖房の設置は可能です。

リフォームでも床暖房の設置ができないことはありませんが、床暖房を入れる部屋は床の高さを上げることになるので、その部分に段差が生じます。また、既存床の解体処理費用が最大で10万円程度かかる場合もあります。

温水式は温水を通すパイプを入れるのでどうしても床の高さが必要になりますが、電気式は薄い熱源パネルのタイプならば高さもおさえられます。

家の形状によっても適した熱源があるので、床暖房設置工事を検討している際はぜひご相談ください。

空気がきれいな床暖房

床暖房のよさは、エアコンなどのように空気を対流させるタイプの暖房と違い、床全体をじんわり温める輻射熱型の暖房なので、ホコリが舞うことなく、室内の空気乾燥を防ぐことができます。足元からじんわりと温めるので、特に足元が冷えやすい女性にはうれしいもの。対流式の暖房は、暖かい空気が上にのぼるため、頭が暑く足元は寒いままになってしまいますが、床暖房はまさに「頭寒足熱」で、健康にもよいです。

エアコンの場合は、リビングや個室といった部屋ごとを温めますが、床暖房は廊下や洗面所といった場所にも設置ができます。特に冬場は、寒い脱衣所や廊下などでヒートショックが心配ですので、高齢者のいるお宅で床暖房を検討することは、命を守る意味でもいい選択だと思います。

ただ、床暖房は立ち上がりに時間がかかり、素早くオン/オフをするのには向いていません。共働きで不在がちな家庭よりも、家で過ごす時間が長い家庭の方が、床暖房を設置するのには向いていると言えるでしょう。

温水式床暖房のメリットとデメリット

温水式床暖房は昔から使われてきた方式で、床暖房と言えば温水式、というくらい定着しています。温水式は、給湯器で温めたお湯を、床に敷き詰めたパイプに循環させ、その熱を放熱することで部屋全体をじんわりと温める方式です。

電気式と違って熱がこもることが少ないので、低温やけどのリスクが少なく、スイッチをオフにしたあともじんわりと放熱を続けます。床全体がむらなく温まるのが特徴で、広い部屋を温めるのに適しています。

デメリットは、給湯器などの熱源を必要とするため、設置費用が割高なことと、リフォームでは導入しにくいことです。メンテナンスの際に不定期で不凍液を交換する必要も出てきます。

温水式床暖房は、熱源が電気のヒートポンプ型(エアコンのように、空気を熱交換することで温水をつくる)と、ガスでお湯をつくり温水を循環させるガス給湯器型の主に2種類に分かれます。ガスでお湯を沸かして温めるタイプの方が立ち上がりが早く、大きな部屋を温めるのに適しています。一方、ヒートポンプタイプの方がランニングコストが安く済む、という特徴があります。

 

[図:東京ガスのホームページより「温水システムTES」のしくみ]

電気式床暖房のメリットとデメリット

電気式床暖房は、電気で発熱体を温めるので、狭い面積を効率的に温めるのに向いています。温水式と違って、給湯器などの熱源が不要なため、設置コストが比較的安価です。小さな部屋にも対応できるのも魅力です。

一方で、デメリットもあります。熱源を電気で直接温める方式なので、ヒーターが熱くなってしまうこともあります。特に座布団や座椅子など、床に接している面に熱がこもって、それが原因で低温やけどを起こすリスクがあります。今は温度を自己制御できるタイプのものも増えてきていますが、それでも床の表面温度は最大で40℃以上になるので、温度管理には注意を払う必要があります。

また、スポット暖房と違い、熱源が部屋全体に行き渡り放熱するのでランニングコスト(電気代)が割高になります。電気の契約アンペア数も上げなければならないので、暖房を使用しない月でも電気の基本料金は高くなります。

今は、電気式床暖房でもPTC式と呼ばれるものがあり、床暖房自体がセンサーの役割を果たし、例えば日光が当たるなどして温度上昇した部分の熱だけを抑えるといった、省エネ性能の高いものも出てきています。

床暖房は、イニシャルコスト、ランニングコスト、暖まり方のメリット・デメリットを把握して導入するのがおすすめです。

足元から温める床暖房

今年の11月は暖かい日が続きましたが、12月になると冬らしく、朝晩冷え込む日が出てきましたね。暖房が恋しくなる今月は、「床暖房」について特集します。

エアコンやガスストーブなど、温風式の暖房は設置コストが安く簡便に利用できるメリットがあります。しかし、温められた空気は上に上がる性質があるので、足元は冷えたまま……ということがあります。床暖房の場合、冷えやすい足元が温まるのが特徴で、室内全体の気温を上げなくても体感温度としては快適な住環境を得られます。

床暖房は大きく分けて2つの種類があります。一つは電気式です。電熱線ストーブを見たことがある人は、まさにあの電熱パイプが床下を通っているイメージで、設置コストも比較的安価におさえることができます。

もう一つは温水式の床暖房です。温水式は温水が通ったパイプを床全体に通すことで床を温めます。

ほかにも、基礎部分に蓄熱層を設ける土間式の床暖房や、地中熱ヒートポンプ(熱交換装置)といった、空気の熱を蓄える床暖房もありますが、まだ少数派です。

[図:㈱コロナのホームページより参照]