シロアリの好物

 シロアリが好む条件は、ずばり「湿気」と「木」です。じめじめした床下はまさに好物ですよね。
 家の回りに木があって、湿気の多い庭だったり、水はけの悪い土地では、シロアリは飛んできやすくなります。木製のベランダや濡れ縁があったら、そこから喰い始めてだんだん床下をねらう……ということも。
 通説では、シロアリはヒノキの成分があまり好きではないと言いますが、もし周囲にヒノキしかなければ、彼らは苦手なものでも食べます。杉も好物とは言わないまでも、やはり周りにある材木が杉であればよく食べます。樹種では、ツガなどが好きなようです。

シロアリは基礎から入ってくる

 私がこれまでに見たシロアリ被害に遭った住宅では、土台がないという家もありました。シロアリは湿気のあるじめじめしたところを好むので、最初に土台を喰ってしまう傾向にあります。
 シロアリは土から基礎を伝って床下に侵入します。昔の住宅は、布基礎と言って土の上にコンクリートを立ち上げた基礎であることが多く、布基礎の場合はシロアリの被害を受けやすいと言われています。現在でも布基礎の家はありますが、最近では土の表面を防湿コンクリートで覆うので、直接土からシロアリが侵入することは考えにくくなっています。
 大丸建設では耐震性の確保の観点から、ベタ基礎を標準で採用しています。ベタ基礎は床下を全て厚いコンクリートで覆うため、シロアリの侵入を防ぎやすい構造になっています。

これまでに私が見たシロアリの恐怖

 私はこれまで20年近くに渡り木造建築の現場監督として働いていたので、床下、天井裏など、建築現場のさまざまな場所を見てきています。シロアリとの付き合いも長いです(笑)。 
 長年の経験で、シロアリに侵されたさまざまな建物を見てきました。
 酷いのは、「柱がない」住宅。表から見ると、柱が立っているようには見えるのです。しかし近づいてみると……柱の表面の薄皮だけが残っていて、中の辺材(木のやわらかい部分)が見事に喰い尽くされていて、指を入れるとズブズブと刺さってしまうほどだったのです。
 柱がなくても家は建っているのか……と言うと、何とか、別の壁や柱が過重を支えていたので家は残っていますが、バランスが偏っているのでもし大地震が起こったらひとたまりもありません。その住宅では結果的に柱を取り替えることになりました。

シロアリ対策は木造住宅の重要項目

 風薫るさわやかな季節になりましたね。気候変動などで異常気象が続くなかで、新緑がまぶしい今時分は、1年の中でも数少ない心地よい季節かもしれません。
 もう少しすると、じめじめした梅雨がやってきます。この時季、気になるのがカビやダニ、シロアリ対策です。普段の生活の中で、みなさんがシロアリの存在を意識することはあまりないかもしれませんが、私たち木造建築に携わる者にとって、シロアリ対策はとても重要なファクターの一つと言えます。
 シロアリは「サイレントキラー」とも呼ばれ、人知れず土台や柱を喰っては家を支える大切な構造体をダメにしてしまいます。表面はしっかりした柱のように見えても、よく中を見てみるとシロアリに喰われてスカスカになっていた……ということもよくあります。

専門家による「応急危険度判定」を頼りに

 今月は、「大震災が起こった時にその家にとどまるか逃げるかの判断基準」についてお伝えしてきました。ただ、これについては、素人判断は危険ですので、建築のプロの判断を仰ぐのがよいでしょう。明らかに傾いているようなら「逃げる」ことをお勧めします。
 大震災が発生すると、発災後一週間以内に「応急危険度判定員」が派遣され、住める建物、そうでない建物の判断がおこなわれます。「赤」の紙が張られたら「危険」、「黄」の紙は「要注意」、「緑」なら「大丈夫」というのが大まかな目安です。
 大丸建設でも、私と社長が東京都の応急危険度判定員の資格を有しています。
 
 私たちは、住まいの専門家、ハウスドクターとして、少しでもお客様や地域の皆様のお役に立ちたいと思っています。特に首都圏では数年以内に大きな地震が起こると予想されていますので、不安や疑問がある方は、お気軽にご相談ください。

地震で床が抜ける心配はしなくてもいい。

 今月何度かお伝えしているように、建物は重力に耐えうるようにつくられているので、基本的に「床が抜ける」という心配はありません。
 時々、荷物の重量を心配される方もおられますが、私がこれまで建築士をしているなかで、床が抜けることによる損害例は聞いたことがありません。直接的原因は、床が抜けるのではなく、柱や梁が折れて(座屈)、壁や床が崩れ落ちるということです。
 ただし、1階の床が抜けることはあるかもしれません。シロアリや木材腐朽菌によって土台となる木が劣化している場合です。床下は湿気がこもりやすく、シロアリやカビ、木材腐朽菌の大好物なので、床下の通風や清潔を保てるような設計を最初からします。

外壁のクラックにも注意しよう

 外壁は屋根と同様に、住まいを雨や風から守る大切な役割を果たします。強い雨風にも耐えうるような素材が用いられており、大丸建設では火山灰シラスが主原料の「そとん壁」を採用することが多いです。
 近年は気候が激化していて、都内でも暴風雨にさらされることが増えています。そんななかで、大震災が起こったら、外壁モルタルにひび割れ(クラック)が生じることもあるかもしれません。外壁にクラックが生じても、ただちにその住まいに住めなくなるというわけではありませんが、余震などでモルタルの壁が崩れ落ちることもあり得ますので、あまりに大きなひび割れがある際は注意しましょう。
 外壁が崩れても、きちんと補修をすればそのまま住めることもありますので、専門家にきちんとご相談ください。

コンクリートも実は劣化する

 前項で「基礎も割れる」と書きましたが、「コンクリートって割れるの?」と、疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。一見強そうなコンクリートも、強力な力を受けると、実は割れるのです。
 コンクリートは水とセメントの量、空気の量、粗骨材(砂利など)、細骨材(砂など)の配合が細かく定められています。しかし、昔につくられたコンクリートはそこまで精度高く配合がなされていないものもあり、スカスカで密度の粗いコンクリートもあります。
 また、密度が高くてもコンクリートの打ち方が悪いと、空気が入り込んでいたり、発泡スチロールのようにもろいものもあります。密度が低くてスカスカだったりすると、水や雨の酸を受けてアルカリ性が中性化することがあります。
 空気と接する面から徐々にコンクリートが中性化して、鉄筋に雨の酸がふれることで、鉄筋がさびることがあります。そうすると、コンクリートがもろくなって、地震による大きな力がかかった時に、基礎が割れたりヒビが入ったりすることがあります。
 古いコンクリートは比較的質がよくないと言われており、また建物自体の耐震性能も心配なので、1981年以前の木造住宅にお住まいの方は、一度耐震検査を受けられることをお勧めします。

基礎も割れる

 住まいを支えるのは、基礎です。基礎は地震の際に最も大きな力を受けます。地震は、空気が揺れるわけではなく、地盤が揺れることによって起こります。地盤に接している基礎は、最も影響を受けやすい場所でもあります。
 地震の際、地盤は隆起したり沈下したりすることで、本来は設置面で耐圧盤の役割を果たす基礎が、割れることがあります。
 古い住宅であれば、基礎に鉄筋が入っていないこともあるので、より割れやすくなると言えます。
 ただし、基礎の割れなどについては、専門家が床下にもぐって確認をしないと発見できないこともあります。

家の傾きは、ヤバい。

 地震で柱や梁に損傷があったり、接合部にヒビが入っても、家が垂直かつ平行にバランスを保っていれば、家はすぐに崩れはしません。しかし、明らかに傾いているようでしたら、注意が必要です。
 本来、住まいは重力に耐えうるようにつくられていますが、傾斜ができることで常に横の力が働くので、構造体に負担がかかります。それが、いずれ住まいの倒壊につながってきます。
 構造体の損傷については、素人にはわかりにくいことも多いのですが、素人目に見て明らかに傾いているような住まいには、留まるべきではなりません。
 地震による死亡や大けがは、住まいや家具の倒壊によるところが大きいのです。すぐにその場から立ち去るようにしましょう。