空き家を考える_2 10年後に空き家率は25%に

2023年現在、日本の空き家率は13.8%と、過去最高を記録しましたが、10年後の2043年には約25%に達するだろうと見込まれています(参考:野村総合研究所)。

空き家が増えていく原因に、社会的な問題と、土地や家屋の所有や相続の問題、維持管理の課題など、さまざまな課題がありますが、今回は社会的要因を見ていきたいと思います。

 

日本では今後、ますます少子高齢化が進み、人口は減少していきます。また、都市部への人口集中も空き家増加の一因です。若年層が進学や仕事のために都市部へ移住することで、地方の住宅が空き家化します。また、都市部では地方に比べて賃貸住宅を選ぶ人が多く、購入された家が結果的に空き家になることがあります。

世帯環境の変化も大きく、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯、独居世帯が増加し、核家族化が進む中で、大きな住宅を維持する必要性が薄れるケースがあります。子どもたちが親と別居し、実家が空き家となる例も増えています。

中古住宅市場が未発達なことも空き家の増加に拍車をかけています。日本では新築志向が強く、中古住宅が売れにくい状況があります。最近ではリノベーションという選択肢に一定のニーズがあり、中古住宅市場も少しずつ動き始めてはいますが、それでもまだまだ少数派と言えるでしょう。また、日本は高温多湿で、豪雨や台風などの気象災害や、地震が多いことなどから、住宅の質が劣化しやすい環境と言え、それも日本人が新築を優先する理由の一つと考えられます。

 

空き家を考える_1 深刻化する空き家問題

日本における空き家問題は深刻化しています。総務省統計局によると、2023年10月1日時点での総住宅数は6,502万戸であり、前回調査(2018年)から4.2%(261万戸)増加しました。 このうち、空き家数は899万戸で、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。

空き家問題の背景には、少子高齢化や人口減少、都市部への人口集中、相続問題など、複合的な要因がからみあっています。高齢者が施設や子どもの家に移ることで元の住居が空き家となり、子どもが遠方に居住しているとその家の手入れが行き届かなくなることが原因の一つとなります。またその家の持ち主が死去するなど住まい手がいなくなることで、家が空いたままの状態になります。

放置された空き家は、景観の悪化、衛生問題、防犯上のリスク、災害時の危険性など、多くの社会課題を引き起こします。老朽化した建物は倒壊の危険があり、放火や不法侵入の温床となる可能性があります。さらに、害虫の発生源となり、地域の衛生環境を悪化させる要因ともなります。

今後、空き家はますます増えると予測され、この大きな社会課題に我々建築関係者はどう向き合っていくべきかについて考えてみたいと思います。

酷暑と建築現場_8 建築業界全体で考える必要性

酷暑の中での建築現場作業の負担が高まっていることについては、我々いち工務店の努力だけでは限界があり、建築業界全体で声をあげ、またお客さま方への理解を促していくことも必要になってきます。

住宅建築の場合は、隣戸が近くに迫っているため、気温が比較的低い早朝や夜間に作業をすることが難しく、どうしても日中の暑い時間に作業をせざるを得ない状況です。しかし、酷暑の中での屋外作業は、時に命や大怪我の危険を生じることもあり、作業時間を短くして工期を長くとったり、職人さんたちの夏場の工賃を上げるなどの仕組みも必要になってくるのではないでしょうか。

実際に今年の夏、長期間過酷な暑さを経験し、職人さんたちに強い負担を強いることになってしまったことや、暑さが原因で予定通りの作業が進まなかった経験から、現場努力だけでは解決し得ない問題が生じていると感じます。命を守る観点から、作業環境についてのお客さまのご理解とご協力も必要となってきます。大切な社員や職人さんたちを守れるよう、私もできる限り現場の状況を発信していきたいと考えます。

 

酷暑と建築現場_7 作業環境と健康管理

酷暑の中での建築現場の作業は、肉体的な疲労が激しくなります。長時間の作業や高温下での体力消耗により、判断力が低下しやすくなり、どうしてもミスや事故が発生しやすくなります。特に、屋根の上での作業は高所作業であり、疲労によるふらつきやミスが直接、墜落やケガにつながる危険性が高まります。そのため、現場監督の仕事としては、職人さんが十分な休憩時間を確保できるよう、無理のない作業スケジュールを組むことが重要です​。

どうしても忙しい現場では、作業効率を優先するあまり、十分な休憩時間が取れないことや、水分補給が不十分な場合があります。特に夏場はこまめな休憩や水分補給が必須ですが、暑さによって作業が遅れがちになることから、現場の環境や作業状況によっては休憩を犠牲にしてしまうことも生じてしまいます。そうならないよう、命優先の判断をできるようにしたいものですし、職人さんたちにもしっかりと呼びかけていきたいと思います。

 

酷暑と建築現場_6 暑さと湿度対策の重要性

日本の夏は、暑さばかりでなく、湿度の高さも問題です。湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなります。汗が蒸発しないと、体温が下がりにくく、体内に熱がこもりやすくなります。

建築現場では動き回る作業が多いため、体力を消耗しやすくなります。湿度が高いと体温調節が難しくなり、熱中症の危険性がさらに高まります。

建築現場では安全を確保するために、作業員は長袖、長ズボン、ヘルメット、安全ベストなどを着用します。これらの装備は体を保護する役割があるのに相反して、酷暑にはどうしても体力を奪います。最近は空調服なども増えてきていますが、私からすると「ないよりはマシ」くらいの感覚で、抜本的な対策にはなっていません。通気性があり汗を蒸散しやすい素材が使われるようになってきていますが、機械や埃から体を保護するという目的とどうしても相反してしまいます。

酷暑と建築現場_5 素材による熱リスクの違い

酷暑による現場作業は、暑さを遮るものが非常に少ないので、素材を守ることにも腐心します。

例えば金属の屋根材は高温になると熱膨張を引き起こし、サイズがわずかに変形することがあります。金属はキッチンなどの内装に使うこともあり、こうした素材が膨張と収縮を繰り返すことで、固定具が緩んだり、素材が歪んだりする可能性があります。その結果、仕上がりに問題が生じたり、後日修正が必要になる場合があります。特に酷暑の時期には、素材の変形を考慮する必要が出てきます。

一方で、無垢材は金属に比べて熱伝導率が低く、日光に直接さらされても急激に高温になることは少ないです。金属屋根や鉄骨に比べると、触った際の温度上昇が緩やかで、火傷のリスクも低くなります。

金属を扱う作業は特に夏場の暑さを考慮し、比較的気温が低い時間帯に作業するなどの工夫も必要になってきます。