物価高騰_6 物価高騰は建築価格に反映する

ここまで見てきたように、住宅建築にかかるコストは増大しています。

◇エネルギー価格の高騰→輸送コストや建築時にかかるエネルギーコスト、あらゆる建材の製造コストに影響

◇木材価格の上昇→住宅建設の基礎材料価格の上昇

◇輸送コストの上昇→建築資材の配送や、建築時の移動にかかるコストの上昇

◇人件費の上昇→職人等への外注工賃、雇用スタッフの給与の上昇

すべてが20%〜50%ほどの値上げ幅で動いているため、建築価格が据え置きのままですと、工務店は破綻してしまいます。そのため、見積もりで価格が上昇することが心苦しくありながらも、建築後の数十年間メンテナンスを続けていくことを考えると、我々が破綻するわけにはいきませんので、お客様にご理解いただけるよう、説明を尽くしていきたいと考えます。

 

物価高騰_5 人件費の上昇

もう一つ、建築費の高騰の背景には、人件費の上昇があります。時間当たりの最低賃金の上昇は、労働者の権利向上のうえでは大切なことではありますが、一方で価格転嫁に直結するので、お客さまへの影響が出てしまう部分でもあります。

東京都の2013年の最低賃金は時給にして869円でした。2019年に1,013円になり1,000円超えしたと思ったら、2023年には1,113円と、毎年2%以上の伸び率です。人件費はこの10年間で3割アップしています。

また、職人さんの工賃は「外注工賃」となり、会社で抱える直接人件費ではありませんが、大工や左官、とび職、鉄筋コンクリートや基礎の型枠職人などの人的工数も職種によって異なれども、10〜30%ほどの幅で上昇しています。

人に関わるコストが2〜3割は上昇していることを考えると、建築に関わるコストもそれに追随していかざる得ないのは、致し方ないことなのです。

 

物価高騰_4 輸送コストの上昇

輸送コストも大幅上昇したうちの一つです。レギュラーガソリンの価格は現在、1リットル160円台だと安く感じるくらいで、一時期には180円台に突入したこともあります。

ガソリンの価格は国際情勢に大きく影響されるため、乱高下がありますが、10年前と比較すると上昇ケースにあると言えます。総務省の統計によると、レギュラーガソリン1リットルあたりの価格は1年間(12カ月)価格の平均で、2013年は153円だったのが2023年には170円となっています。ただし、この間、2016年は118円と大きく下がっている時期もあります。

ガソリン代が変動する原因は、原油価格や為替の動きなど、各国の税制や禁輸措置など国際情勢の変動要素が大きいことで、コロコロと値段が変わってしまいます。国内情勢では、需要と供給バランスの崩れ、平日とホリデーシーズンなどの利用シーンの変化なども原因の一つになります。

ただし、工務店経営の視点でいけば、日々の価格変動よりも、中長期的な変化を見て影響を予測する必要があります。

物価高騰_3 10年で2割ほどの物価上昇

実際に建築工事費の物価高騰はどのくらいの割合なのでしょうか。この10年ほど、東京オリンピックの影響で建築資材不足、人手不足などがささやかれていましたが、国交相の発表資料によると、建設工事費用は2013年以降の10年間で1.2倍ほどに膨れ上がっているとのことです。

コロナ禍が追い打ちをかけ、ウッドショックやアイアンショックなどが続いて建築資材費が高騰したのと同時に、建築にかかる人件費や輸送コストも大幅に上昇しています。

輸送コストの影響も大きいです。工務店の仕事は車がなければ成り立たないので、ガソリン価格の変動は、日々の営業や打ち合わせ、現場監督業務での移動コストに直結します。また、木材の配送や建材の配送にも影響は大きく、特に細々とした資材は宅配業者の価格設定の影響を受けるので、「運送業の2024年問題」の影響は深刻になるのではないかと今から心配しています。

2024年の抱負_8 会社の体制も持続可能に

大丸建設の家は、すべてオーダーメイドです。大工さんや職人さんの力を合わせて、お客様の理想を形にするコーディネーターが、現場監督です。

私自身、長く現場監督を務め、一級建築士として数多くの現場を見てきました。現場監督の仕事は、スケジュール管理や見積りの積算、材料の発注や職人の調整など、多岐にわたります。現在は私と山崎で監督を務めていますが、ありがたいことに近年、建築家との仕事や、お客さまからのお問い合わせが増えているため、それに応えていくにはもう一人、現場監督ができるスタッフが必要です。

「現場監督募集」の記事に、大丸建設で働くおもしろさや醍醐味について、私の思いを述べました。大丸建設に加わって、一緒に働いていただける人を募集しています。

木の家づくりはとても面白いです。そして大丸建設では素敵なお客様に出会えます。今年も、お客様や職人さんと一緒に、いい家づくりを進めていきます。

2024年の抱負_7 今後ますます価値が高まる職人の技術

大丸建設で使うのは、国産の無垢材と、自然素材です。これらを生かす家づくりは、設計段階からどのように使いこなすのかの詳細を詰め、現場で職人の知識や経験を活かしながら調整し、木の個性や表情を見極めておさめていく、高度な技術が求められます。

今の住まいは、新建材を組み合わせることでもできます。安く、早く、確実な施工ができますが、決まったモジュール、寸法通りのものしかできず、自由度がありません。決まったパターンの商品を選んで買う、という作り方なので、そこに職人の技術はあまり求められません。AIやロボットが発達した時代において、職人技術が生かされる現場の価値は、ますます高まっていくことでしょう。

お客様自身もますます目利きになり、ご自身でライフスタイルをデザインすることができる方が増えていきます。そんな時代だからこそ、自由度高く、経験を持ってお客様に最適な住まいを提案できる工務店でありたいと思います。

 

2024年の抱負_6 木を使える職人を育てる

大丸建設は国産無垢材の家づくりをしています。ここで何よりも大切なのは、地域の職人さんの技術を活かしていきたい、ということです。

木の家づくりには、特に大工さんの力量が大切です。木の家は、その木が森に立っていた時のように木を使うのがいいとされ、木の天地を知り、表裏を見て素直に立てるのが一番なのです。しかし、これも一朝一夕にできることではなく、また無垢材にふれる経験が少なければ、身につかないものです。木は切った後も生きていて、呼吸しています。木の経年変化や季節による変化を理解して、それでも住まいという形におさまるように、木と対話しながら家を建てていけるような大工を、仕事を通して育てていきたいと思っています。

仕事がなければ職人の技術を未来に受け継いでいくことはできません。大丸建設では、木の家を求めるお客さまと職人をつなぐ架け橋でありたいと願っています。

2024年の抱負_4 環境に配慮した住まいづくり

昨年、2023年は史上最も暑い夏と言われ、東京では最高気温が30度以上の日が90日以上、年間の4分の1が真夏日という、異常気象が日常的になってしまったことを実感せざるを得ない1年でした。

これまでは省エネのためにエアコンの温度設定について「夏は28度」「冬は22度」などと言われてきましたが、「我慢の省エネ」が命にかかわる事態になってきています。一方で、省エネをせずにエネルギーを使い放題のままでは、この異常気象はますます進んでしまう……という悪循環のなかで、一体どうしたらいいのでしょうか。

答えは一つではないものの、住まいにおいては断熱性を高めることによって、この難しい問題が大きく前進するはずです。断熱性の高い家では、夏の暑さや冬の寒さといった外的な温熱環境の影響を受けにくくなります。エアコンを使うにしても、エアコンが効きやすくなり、エネルギー効率を高めることができます。

異常気象時代に、こうした選択肢を提示していくのも、工務店の大切な務めです。

2024年の抱負_3 地域に根ざす

2020年以降、新型コロナウイルスが席巻したことにより、社会の仕組みや働き方が大きく変わりました。県域をまたぐ移動が制限され、リモートワークが当たり前になり、医療や介護、子育て支援などのエッセンシャルワーカーの仕事が注目されるようになりました。これまで都心まで働きに出ていた人たちは、在宅でも仕事ができるようになり、ますます住まいの環境のよさを重視していく傾向が見られるようになったと思います。

リモートワークが増えれば、住まいを選ぶ際に、利便性だけを重視することなく、住まい自体の環境をよくすることに注力できるようになります。例えば、駅近で利便性はいいけれども狭いマンションで暮らすのか、駅からは遠いけれども広々とした戸建て住宅に住むのかは、以前だったら通勤や通学を考慮して前者を選んだ人たちが、通勤にしばられないぶん暮らし自体に重きを置くようにすることができます。

こうしたニーズに応え、住まいのことを気軽に相談できる存在として、大丸建設のことを地域の方々に知っていただきたいと思います。

2024年の抱負_2 変わらぬ社是

2021年に私が先代社長から大丸建設を引き継ぎ3年、160年におよぶ会社の歴史の重みを感じながら、「木の家づくり」の伝統を途絶えさせまいと日々、邁進してきました。会社として変えてきたこともありますが、変わらぬことも多々あります。その中の一つが社是でもある「ハウスドクター」です。

ハウスドクターとは、「住まいの主治医」のことで、その家のことをよく知っているのは、住まい手であるお客さまとともに、住まいを建てた工務店である、ということを意味しています。

住まいを人の体に例えるならば、骨格(柱や梁、土台など)、筋肉(断熱材や窓など)、血液や内臓(電気配線や配管、空気層など)、皮膚(内装材、クロスなど)、そして髪型やお化粧やアクセサリー(インテリア、装飾など)。住まいも人と同じで、長年暮らしていれば老化することも、具合が悪くなることもあります。そんなときに、すぐに相談していただければ、適切に状態を診て、困ったところをメンテナンスし、ときにはお化粧直しもいたします。

困ったときには、すぐに相談! いつでも駆けつけますので、遠慮なくご連絡ください。