第4回 新築戸建て住宅のニーズと変化

新築戸建て住宅のニーズは、量だけで見れば総戸数の減少はすでに始まっていますが、全体需要が消えるわけではありません。
求められているのは、「より安心して暮らせる家」です。私たちの現場でも、断熱性能の高い住まい、耐震・耐久性を重視した設計、ひろがりと可変性のある間取りへのニーズが高まっています。

総じて見ると、新築ではあっても、単に新しいものを求めるわけではなく、暮らしの質を高めたいという価値観の変化を感じます。

新築を選ぶ理由には、長く住まううえで将来への安全性の担保や、光熱費の高騰に左右されず、温熱環境に優れた空間での健康で快適な暮らしへの切望があるのではないでしょうか。
着工棟数が減る時代だからこそ、家を一軒建てるごとに、お客さまが求めている本質的なニーズと、その背景をしっかり読み取りながら進める必要があります。

第3回 これからの住宅市場はどうなる?

国内の住宅市場全体を見渡すと、新築住宅着工数は長期的に減少傾向にあるという推計があります。これは人口減少や住宅ストック(中古住宅)の増加、ライフスタイルの変化など、さまざまな要因がありますが、一方で、住宅市場はまったく停滞しているわけではありません。

新築住宅の着工棟数の減少に比して、リノベーションや省エネ改修への関心や需要は高まっていると言えます。情報の流通が多様化したことで、リノベーションの可能性が広がり、「選択肢の多様化」の波も確実に訪れていると言えます。

これからは、新築偏重主義ではなく、比較的安価に既存住宅をアップデートして、そのぶん暮らしの質を高める価値観が広がっていくことと思います。
「家は暮らしを整え、人生を育む場所である」という視点を忘れずに、これからの市場の傾向を読み解き、お客さまのニーズに応えられるように準備を進めていきたいと考えます。

第2回 建築材料価格の変動と現場のリアル

先月は、大工不足に直面している問題についてふれましたが、建築材料の価格も、ここ数年で波が大きくなっています。
世界的な資源の価格が高騰し、サプライチェーンにも大きな影響が出ています。鉄鋼・セメント・木材・仕上げ材などの価格が大きく動いているなかで、この数年、特にコロナ禍を経て、建築の価格は大きく上昇したと言われています。

材料価格が変動すると、結果的に、お客さまの建築コストに跳ね返ってきてしまうため、その負担をおさえたいと思いつつも、赤字では工務店は続けられないので、見積の再検討や仕様の見直しが必要になります。
大丸建設は、国産材や、日本のメーカーの自然素材をメインで使っているので、世界的な価格の影響は比較的受けにくいのですが、一方で、資材不足に陥らないよう、産地やメーカーと強固な関係をつくる、といった努力を続けています。


「今だけの価格」でなく「長期的な価値」を見据えた家づくりに、産地やメーカーとの信頼関係を築くことは欠かせません。お客さまに対して誠実であるために、てねいな説明を尽くすことで、お客様からの信頼にもつながると考えています。

 

第1回 地域から選ばれる工務店として

三月は、年度の終わりであり、新しい年度を迎えるにあたっての総括の時期です。卒業や入学、仕事が変わったり、新生活が始まったりと、お客さまの暮らしも変化するシーズンで、私たち建築に携わる者にとっても、この時期は納期を意識することが多く、忙しい日々を送っています。

ここ数年、建築業界を取り巻く環境は大きく変化しています。大工不足、労務費の上昇、材料価格の変動など、ニュースや統計の数字だけでなく、現場の空気として、それを日々感じています。価格が上昇するのに伴って、建築価格をただ上げればいいわけではなく、本当に必要なものは何かを考えるきっかけになります。

また、大工や職人など、技術を持った人の確保が難しくなっています。だからこそ、技術をどう守り伝えるかを真剣に考えざるをえません。
市場が変わるからこそ、私たちはなぜ地域に根ざしていくのか、その意味を問い直さなければなりません。東京都の郊外部、多摩地域という環境は、都心とは違う強みを持っています。土地のゆとり、自然との距離感、そして地域のつながり。その中で、大丸建設はいかに地域から選ばれる存在になっていくのか、ていねいな情報発信がこれからも求められると感じています。

 

第4回 大工不足の行く末

技術を持つ大工を確保していくうえで、今後については、かなり厳しい見通しも出ています。国土交通省が2025年10月に発表した「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会とりまとめ」の資料によると、大工就業者数が2035年に約15万人(2020年の約30万人から半減)という見込みが示されています。建設技能者数が今後減少し、「不足が深刻化する」という状況が目前に迫っています。
この、恒久的な大工不足に打つ手はないのでしょうか。

私たち大丸建設では、高い大工技術に評価を受け、ニーズが高まっている一方で、慢性的な人手不足に困っている状態が続いていますが、それでも常用大工がいて、長く働き続けてくれているのは、大工自身が「本物の木にふれる経験」を大切にしてくれているからです。

技術者の働き方を整え、段取りと生産性を上げ、育成を仕組みにし、地域の現場を守る。これは工務店の努力だけでなく、社会全体で取り組むべきテーマだと思います。
家は暮らしの土台です。その土台をつくる人がいなくなる未来だけは、なんとしても避けたい。そう思いながら、私たちは今日も現場に立っています。

第3回 なぜ大工が足りなくなるのか

大工は、ただ人がいれば成り立つ仕事ではありません。木の性質を読み、納まりを考え、現場で判断し、仕上げに責任を持つ。現場での経験がそのまま品質になる世界です。
だからこそ「技術力のある大工」を確保するのは、さらに難しいと言えます。住宅業界では、一人親方の年齢構成は60歳以上が約半数ということで、若手の確保が困難な状況です。同時に「技術が継承されなくなっている」「教育する余裕がない」といった声が年代を問わず多いとされています。

若い大工を育てるには時間が必要です。しかし現場が忙しいほど、育成に割ける時間は十分にとれず、現場教育だけでは限界が出やすいのが実態です。また、社員大工の数が少なく、個人事業主として直接工務店等と契約を結ぶため、教育の仕組みを持ちにくいという課題も見えています。

 

技術者の不足は、単なる人数不足よりも、家づくりの根幹に響く問題だと感じています。

 

第2回 なぜ大工が足りなくなるのか

大工不足の背景には、いくつもの要因が重なっています。いちばん大きいのは高齢化です。建設業は55歳以上の比率が高く、若い担い手が薄い構造が続いています。


もう一つは、「入り口」と「定着」です。若い人が入ってこない、入っても続かない。仕事の大変さだけでなく、現場の不規則さ、将来像の描きにくさも影響します。若い世代ほど「休みが少ない」「賃金が低い」といった就労環境の課題を挙げ、離職率が高いのが現状です。私のブログでも再三記載していますが、夏場の暑さも大きな要因ではないかと私は考えています。
加えて、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が本格適用されました。 これは労働環境を改善するうえでは必要なことと考えられますが、一方で、短期的には「限られた人手で段取りをより厳密にする」ことが求められます。
人が減る、若手が続かない、働き方は変わる。三つが同時に進むからこそ、現場はじわじわ厳しい環境になり、経営側としても打撃を受けています。

 

第1回 建築業界全体が大工不足に直面

ここ数年、現場でいちばん実感するのが「大工が足りない」という事実です。大丸建設では幸い、常用の大工がいて、技術が受け継がれていますが、それにしても絶対数が足りません。これは大丸建設だけの話ではなく、全国の工務店が同じ悩みを抱えています。


数字で見ても状況ははっきりしています。住宅分野の資料では、大工は長期的に減少し、2020年時点で約20万人と“20年で半減”してしまいました。 さらに、大工の高齢化が進んでいます。建設業全体を見ても、就業者は1997年をピークに減り続け、2024年は477万人まで減少したというデータがあります。

 

つまり、現場が忙しいから足りないのではなく、働く人の“母数”が減り、ベテランが多く、若手が薄い。こうした社会的な構造のなかで、私たちは家を建てています。今の大工不足は「景気の波」ではなく、社会のかたちそのものが生んでいる問題だと感じます。

第8回 地域を知り尽くした工務店がつくる安心感

家づくりは、デザインや性能だけで完結するものではありません。どんな街に、どんな環境で、どんな暮らしを重ねていくのか。それを理解したうえで初めて、「その場所に合った家」になるのだと、私は考えています。

 

私たち大丸建設は、稲城市を拠点に、160年以上にわたって家づくりを続けてきました。

この街の気候、地形、風の通り、そして時代ごとに変わってきた暮らし方を、現場の積み重ねとして見てきました。同じ稲城市内でも、丘陵地と平地では家のつくり方は変わります。

 

また、街は少しずつ変化しています。開発が進み、利便性が高まる一方で、交通量や人の流れ、音の感じ方も変わっていく。そうした変化を前提に、「これから先の暮らし」を見据えた住まいを考えることが、地域に根ざした工務店の役割だと思っています。

家は、建てた瞬間が完成ではありません。10年後、20年後、子育ての時期、そして年を重ねたあとの暮らしまで含めて、本当の意味での“住まい”になります。その長い時間を想像しながら設計し、素材を選び、工事を進める。それは、地域を知らなければできない仕事です。

 

私たちが大切にしているのは、「お客様との顔が見える距離感」です。建てて終わりではなく、暮らしが続く限り、相談できる存在であること。困ったときに、「あそこに聞いてみよう」と思い出してもらえること。それが、地域工務店としての価値だと考えています。

 

第7回 年を重ねても安心して暮らせる街、稲城市

私は昨年末に50歳という年齢になり、父である先代社長も80代半ばになり、最近は「老後」という言葉が、以前よりもずっと現実味をもって感じられるようになりました。

 

家づくりの仕事をしていると、若いご家族だけでなく、「この家で最後まで暮らしたい」とおっしゃる方の相談も増えてきます。そのとき必ず考えるのが、お客さまがこの街で年を重ねていけるかどうかという点です。

 

稲城市は福祉に対する行政の姿勢がとても堅実だと評判です。たとえば親の介護が必要となった時に行政が親身になって対応していただけると聞いています。これは、実際に暮らすうえで、思っている以上に大きな安心材料になるはずです。

高齢になると、身体のこと、家のこと、家族のことなど、悩みは一つでは済まなくなります。

そんなときに、「まずはここに聞いてみよう」と思える窓口があるかどうかは、とても大切なポイントではないでしょうか。

住まいの面でも、老後の安心は家そのものに大きく左右されます。段差の少なさ、室内の温熱環境、将来の生活の変化に対応できる間取りなど、「元気なうち」に整えておくことで、暮らしの安心感は担保されていくはずです。

 

家は、人生のどこか一時期のためのものではありません。住み慣れた街で、安心して年を重ねていけること。その当たり前を支えてくれる場所として、稲城市はよい選択肢だと、私は感じています。