伝統的建築物の美 (6)伝統建築のおさまりに注目

私自身、伝統建築物を見る時に最も注目するのは、柱や梁の接合部やおさまりといった、構造的な部分です。現代の住宅では耐震性や合理性のために釘や金物で接合部を固定することがほとんどです(これは現代の構造計算上は致し方ないことで、金物を使うことを否定しているわけではありません)。

伝統建築物では金物は使わず、貫(ぬき)や「ほぞ」といった、金物を使わず凹凸を組み合わせる、木の板をかませることで木を接合する、といった構法が用いられます。

伝統構法では、木目の流れや季節によって収縮と拡張を繰り返す木の持つ性質を最大限に生かし、木を組み合わせることによって釘や金物を使わずに済みます。金物は湿気によって錆びたり劣化するため、貴重な木材を再利用していくためにも使用しないという選択をしていたのかもしれません。耐震性においても、木組の家は地震の衝撃をやわらかく受け止めて分散させることができ、高級な社寺建築が今も残るのはこのような木の性質を最大限に生かした技術によるものだとうかがえます。

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