02 松本直子さんインタビュー後編

建築家インタビュー 第1回(後編 #02)
建築家 松本直子さん
[ 松本直子建築設計事務所 ]

大丸建設では近年、建築家がデザインを手がける住宅の施工を多く担当しています。確かな技術力、お客様への誠実な対応で、建築家の方々からも信頼をいただいております。
今回は『チルチンびと』ほか数々の建築雑誌でその洗練されたデザインが取り上げられている、松本直子建築設計事務所の松本直子さんをお招きして、弊社代表の安田佳正がお話をお伺いしました。

写真1

建築家プロフィール
松本 直子|MATSUMOTO NAOKO

株式会社 松本直子建築設計事務所

「”楽に楽しく気持ち良く”をコンセプトとしています。時とともに家族の暮らしに馴染んでゆく住まい、自然の材料を使った心地良い居場所、毎日の暮らしが楽しく気持ちが豊かになるような心配り、さらにできれば美しく存在感のある家であること。これらのことを大切に考えて設計しています。」

1969年12月
東京都生まれ
1992年3月
日本女子大学住居学科 卒業
1997年2月
松本直子建築設計事務所 設立
2017年3月
株式会社松本直子建築設計事務所に法人化

松本直子さん 写真

求められている以上の「いいもの」をつくりたい

松本
最近、施工力のある工務店さんの数が減りましたね。リーマンショックの前くらいからですが、私どもの描いた図面を読み込み、建主さまも含めて会話をしながら施工できる工務店さんに出会えること自体が、我々にとってみれば宝物と感じます。よくなった点はそれぞれの工務店さんが個性をのばし、考えていること、強みを明確にしてきていることでしょうか。

大丸建設さんが施工される際は、我々が指定していない下地材まで自然の素材を使ってくださることもあり、それにも驚きました。そもそも家1軒建てるのに、何千という部材があるので、それを全ては指定しきれないものですし、指定を増やすごとに当然コストにも影響してきます。

写真2
構造材についても、指定がなければブランド産地の材木を使わなくてもよいことになりますが、大丸さんの場合は、お金だけではないところで、それ以上に気持ちのよい家をつくろうという気概がある。限られた条件の中でベストな回答を出してくれる、単なる受け身ではないところが素晴らしいと思います。

安田
私は特別にいい材料を使おうと意識しているわけではありませんが、下地材のように「隠れるところだからこの材でいいや」ということはしたくないんです。壁の素材などにしても、より安くよりいいものにできるのであれば、元々の設計と違う材料を提案させてもらうこともあります。松本先生はそれにいつも明確に答えていただけるし、私としてはスムーズにコミュニケーションさせていただいています。

松本
職人さん方も、大工さんはじめ、電気屋さん、給排水屋さんなど、いつも同じ方々が来られていて、みなさんが「いいものをつくりましょう」いう気持ちで同じ方向を向いて自立的に仕事に向き合ってくださっているのを感じます。

時代が変化するなかでも、愚直に、真摯に

松本
去年一昨年と、世情的にも、ものの値段や人件費が高騰し、建築費も信じられないくらい値上がりしました。こうなるとコストを抑えるためにどうしても既製品の建材など、ありもので組み合わせた住宅に集約していく流れが出がちです。とはいえ、本物を求めるならば、やはり私は、人の手でつくった建物、空間がいい。人の手がかかったものは温かみがあり、気持ちがよく、心が和むと感じます。

写真3
大丸さんは、たとえば塗壁材について左官屋さんが扱い慣れている材で、かつ我々が求めている材をご提案くださいます。建主さまには結果的にいいものが得られ、かつコストが抑えられるという、三者がWIN-WIN-WINの状態をつくることができたりしています。

安田社長を一言で表すならば、「愚直にブレない」ですかね。建築業界はコスト面で厳しい思いをしていますが、まず「自然素材で気持ちよい家をつくりたい」という信念がある。建築に一生懸命向き合っておられる姿勢が、私はすごく良いなあ、といつも思っています。建主さまに対しても、大丸さんが施工に来てくれそうなエリアの時には、最初に大丸建設さんをご紹介することが多いです。

安田
お客さまがいかに気持ちよく、満足してもらえる家をつくるのか、それが私の求めていることです。お客さまの笑顔っていいですよね。家に入ってきた時の「ああ!」という表情。たとえ苦労しても喜んでもらえるのが何よりうれしいです。

素材は、木に関しては一番構造材が大事なところなので、自分が現地で見てきたところの材料を使いたいというのがあります。紀州の山長商店をはじめ、四国、静岡、東北と、自分で歩いて、技術も見て、これはいいなという技術や材木を使っています。耐震に関しては、新築、リフォーム問わず、地震の多い日本なので、少しでも安心して暮らせるようにと思っています。

自然素材と良質な温熱環境、耐震性を備えた

大丸建設モデルをつくってほしい

松本
ところで、安田社長は将来、会社をどのようにしたいと思われているのかを聞いてみたかったんです。

安田
もともと大丸建設は自社設計施工でやってきていました。しかし最近、松本先生はじめ建築家の先生方とのお仕事をするなかで、デザイン面で譲れないところとのバランスが大事だなと気づきました。今後も、自社設計と建築家設計の両方やっていけたらいいなと思っています。予算の現実で省いたりするデザイン面の意識を正すことにもつながりますし、自分たちだけでは気づけない場所の気遣いを学ばせてもらっています。

私は会社を大きくしたいとかいう野望はあまりなくて……。なかなか人材確保が難しい世の中で、もう1~2名社員がほしいのはありますが。少しでも多く家を手がけたいとは思っていても、まずは自分の目の届く範囲でしっかりやりたいというのが本音ですね。

写真4

松本
私は、大丸建設さんに何件か施工いただくなかで、お互いに共有化した標準仕様みたいなものをつくったらいいのでは、と思っています。もちろん建主さまのオーダーにもよりますが、基本的な構造や温熱環境を確保したうえで、時間もコストも抑えてつくれる仕様があると、建築費が今後ますます厳しくなっていくなかでもお客様がよりよいものを得られる選択肢が広がると思います。

建築業界の人手が足りない、建築材料費が高いというのは、もはや我々ではコントロールできないものです。それでも人の手がかかった気持ちのよいものをつくるには、みんなが共有している技術や知見をうまく組みあわせて標準化できると、建主さまにもメリットがあるのではないかと思います。

写真5
自然素材系でそういうものができる工務店さんは実は少ない。自然素材で、構造や温熱環境に優れていて、坪単価が明示された仕様ができれば、世の中にもアピールしやすいモデルになると思います。

施工力の高さで生き残りをかける方向性もありますが、自分たちの強みを打ち出して新しいモデルをつくれるといいのではないかと、いつもやんわりと安田社長に投げかけているんですけどね(笑)。ぜひ、やっていきましょうよ。

安田
本当に、できたらいいですよね。宿題をいただいちゃいました(笑)。