建築家インタビュー 第1回(前編 #01)
建築家 松本直子さん
[ 松本直子建築設計事務所 ]
大丸建設では近年、建築家がデザインを手がける住宅の施工を多く担当しています。確かな技術力、お客様への誠実な対応で、建築家の方々からも信頼をいただいております。
今回は『チルチンびと』ほか数々の建築雑誌でその洗練されたデザインが取り上げられている、松本直子建築設計事務所の松本直子さんをお招きして、弊社代表の安田佳正がお話をお伺いしました。

建築家プロフィール
松本 直子|MATSUMOTO NAOKO
「”楽に楽しく気持ち良く”をコンセプトとしています。時とともに家族の暮らしに馴染んでゆく住まい、自然の材料を使った心地良い居場所、毎日の暮らしが楽しく気持ちが豊かになるような心配り、さらにできれば美しく存在感のある家であること。これらのことを大切に考えて設計しています。」
- 1969年12月
- 東京都生まれ
- 1992年3月
- 日本女子大学住居学科 卒業
- 1997年2月
- 松本直子建築設計事務所 設立
- 2017年3月
- 株式会社松本直子建築設計事務所に法人化
自然素材へのこだわりが強いお客様への対応
安田
松本さんとのお仕事が始まったのは、大丸建設で2019年に実施した「住まいの相談会」がきっかけです。雑誌『チルチンびと』が提唱する地域主義建築家連合合(URA=Union of Regionalism Architects)の建築家の方々とリレー方式で毎月イベントをしていました。特に松本先生のご活躍はいつも『チルチンびと』で拝見しており、きれいですっきりした住まいづくりに憧れがあったので、ご一緒できたときはうれしかったですね。
松本直子さん(以下、敬称略)
住まいの相談会でお会いした際に、せっかく地域に根ざして活動していくのであれば、もう少し会社の雰囲気を出して街にアピールしてみてはと、ちょっとした本社社屋のリノベーションを話しかけました。
この出会いがきっかけで、一件施工をお願いすることになりました。その建主さまはケミカルな素材は絶対にNGな自然素材志向の方で、ご自身でもかなり勉強をされていました。安田社長はさまざまな分野への見識が深い方だったので、お手合わせをお願いしました。施工中も材料の選定について建主さまが相当迷われる場面がありましたが、最後まで粘り強くご対応いただき、最終的には建主さまもとても喜んでくださいました。

自然素材に限らず、免震、耐力壁、電磁波のことや、木材の産地傾向や、構造材の乾燥の仕方、仕入れなど、多岐にわたるリクエストについても、知識が豊富で、建主さんのオーダーにきめ細やかに一生懸命対応してくださる安田社長の姿勢が、とても頼もしいと感じました。
しかも、大工さんがたいへん丁寧に仕事をされ、現場がとてもきれいです。よくある現場では端材や木端はそのままバラバラと置いてあるのに、大丸さんの現場では端材でもサイズに応じてきれいに整理整頓してあります。他の職種の職人さんたちも、一緒になっていいものをつくろうという雰囲気があります。そこから2件目、3件目……とつながっていったという感じでした。
安田
大丸建設ではずっと自然素材でやってきているので、化学物質過敏症やシックハウスのお客さまも、それなりに多いんです。気持ち的に敏感な方とは結構おつきあいしてきましたが、どのようなお客さまでも、普段とあまり変わらず接しています。ただ聞かれたことにはきちんと答え、自分の意見はしっかり伝えるようにしています。
最新の技術や知識を学び続ける理由
安田
私はそんなに勉強が好きなわけではないのですが(笑)、大学では土木専攻だったので、卒業後は建築を学ぶために専門学校に行き、会社に入りました。一級建築士を取るために真剣に勉強し、その後、そのまま専門学校の講師になりました。生徒から聞かれたことに答えるためには、自分が勉強していないとできません。大丸建設は木造建築の工務店で、RCをやっていないので、一級建築士試験ではそこが苦労したところですね。だからなのか、常に新しいこと、自分の足りない知識を入れていこうというのがあり、勉強を続けているのかもしれません。

大丸建設は長年、自社設計で施工まで一貫して行っていましたが、2020年ごろから建築家の先生との仕事も積極的に受けるようになりました。建築家と一緒に仕事をするようになっての変化は、自分たちだけでやる時とは違い、施工に専念できること。設計や営業的なことをしなくていいので、その分現場に力を注ぐことができるのは新たな発見でした。
現場に集中できる良さは、やはり現場に行く回数が多くなる点です。自社設計の時とは違う角度で現場を見られて、時間の取り方が変わるので、大工さんとの打ち合わせが密になります。普段の自社設計の場合は「いつもの通りで」と、阿吽の呼吸で進むところがありますが、建築家の先生の設計は全く違うので、常に一つひとつ丁寧に確認を進めていきます。

安田
松本先生の設計は、窓の際、壁との際といった細部の納め方など、デザイン面での美しさの追求度合いや、細かい気遣いが違うなあ、と思います。窓一つとっても、枠をまわさず巻き込みできれいに見せる。木製建具の枠も細く見せるので、重くない。だけどのっぺりしないように、区切りがつくのがすごいなあ、と思います。大丸建設が元々木を多く使っているせいか、どうしても木材を太く、どーんと見せたくなっちゃうんです(笑)。もちろん、そういうのが好きな人が多いので、それはそれでいいと思っているのですが。
松本
住まいはあくまでも人間が主役なので、必要以上に空間や材料が主張しすぎるのではなく、余白である白い壁と、光の入り方や動き、人間の目や肌に馴染む木の用い方のバランスに気をつけるようにしています。
安田さんには現場に入るときに、建具の枠、サッシと壁の取り合いをどうするか、詳細図をお渡しして見ていただいています。空間がシンプルに見えるよう主張させるものと主張させないもののメリハリをつけるようにしています。
風通しを考えた窓の配置にも気を配り、建具もほとんどが引き戸で回遊性を高め、動きやすい動線にしています。すっきりしたインテリアはもちろん、動線のよさや家事のしやすさ、目線の高さを変えて気分転換できるような空間づくりなど、小さい気づきの積み重ねから、住みやすいだけでなく、暮らしを楽しめる住まいになってほしいと考えています。

