酷暑と建築現場_4 屋根架構をつくる際のリスク

住宅の屋根材はガルバリウム鋼板やスレート材など金属であることが多く、猛暑の中でこれらの素材を扱うのには多くのリスクを伴います。

金属は太陽熱を保持する性質があります。金属屋根は直射日光を受けると非常に高温になり、表面温度が50〜60℃以上に達することもあります。このため、屋根職人さんが金属屋根の上で作業する際には、地面よりもはるかに高温の環境で働くことになり、熱中症の危険性が高まるばかりではなく、火傷を負うリスクもあります。

また、金属屋根材は、雨や汗、結露によって非常に滑りやすくなります。高温環境で汗をかくと、汗で滑りやすくなります。また、ゲリラ豪雨など急な雨や湿気が屋根材にかかると、表面が滑りやすくなり、墜落事故のリスクが高まります。

しかし、屋根がかからないと他の内装工事や電気工事を進められないため、最高気温によって作業を止めるわけにもいかず、現場監理としては非常に悩ましい局面です。

酷暑と建築現場_3 輻射熱や排熱の影響もある

夏場の建築現場が過酷なのは、アスファルトやコンクリートなどの地面や資材が多く使用されており、これらの表面は日光を吸収して高温になりやすいことも一因です。

コンクリートや鉄は熱を蓄え、その熱を輻射して周囲の空気をさらに温めます。実際、気温が高い日には、実際の気温よりも体感温度が高くなります。特に基礎コンクリートの打設作業では、これらの材料が高温になるため、職人さんたちにとって過酷な環境となります​。

さらに、機械や重機からの排熱も暑さを助長します。建築現場では、クレーンや重機、発電機などの機械が稼働しており、これらから放出される排熱が現場の気温をさらに上昇させます。エンジンや排気管から放出される熱風によって、職人さんたちは暑さを感じ、熱中症のリスクも高まります。

酷暑と建築現場_2 屋外での肉体労働

建築現場が特に暑く感じられる理由は、いくつかの要因が組み合わさっていますが、物理的、環境的、そして作業自体の性質によるものなどがあり、酷暑によって影響がさらに大きくなっていると思われます。

まず、直射日光と遮蔽物の少なさが挙げられます。建築現場では、工事が進むにつれて壁や屋根が完成するまでの期間、ほとんどの場合は、屋外での作業が中心となります。

上棟して屋根がかかるまでの間、職人さんたちは常に直射日光にさらされることになり、特に夏場は気温が急激に上昇するため、体力に負担を与えます。

また、建築現場は作業の性質上、広いオープンスペースであることが求められ、影になる部分が少ないため、日陰で休息を取る場所が限られます。太陽が高い時間帯には気温も上昇するため、特に熱中症のリスクが高まります。

酷暑と建築現場_1 真夏の建築現場の環境

2024年の異常な暑さは、建築現場での作業環境を一層厳しいものにしました。大丸建設の建築現場でも、最高気温が40度近くになった日に上棟が行われたのですが、あまりの暑さに作業が進まず、本来ならば1日で終えるべき作業を2日かけて行う事態になりました。レッカー車を2日頼むことになり、猛暑が工期に影響を及ぼすことがある時代になったのだと痛感しました。

真夏の建築現場はこれまでも過酷な環境でしたが、特に史上最大の猛暑となった2023年、2024年を経て、職人の健康や安全、お客さまへの工期を考えても、これまで通りの暑さ対策ではままならない状況です。特に真夏の現場作業は今後、命に関わってくる可能性があるので、本当に現場を動かせるのか、また働く職人さんたちへの工賃の課題など、社会全体で考えていく必要があります。

実際に猛暑によって、建築現場にどのような負担や危険があるのかについて、まとめてみたいと思います。

2024年の猛暑(8) 高齢者は熱中症対策をより万全に

高齢者が熱中症を発症しやすい理由は、年齢を重ねるごとに身体の機能が低下し、熱に対する適応力が弱まることに関係していると考えられます。

人間の体は、暑い環境に置かれると汗をかき、体表からの蒸発によって体温を下げる機能が備わっています。しかし、加齢に伴いこの機能が低下します。特に高齢者では汗をかく量が減少するため、体温を効果的に下げられなくなり、体内に熱がこもりやすくなります​。

また、高齢者は若年者に比べて体内の水分量が少なく、喉の渇きを感じにくくなるため、脱水状態になりやすいと考えられます。十分な水分補給ができないことで、体温調節機能がさらに低下し、熱中症のリスクが高まります。

さらに、高齢者はエアコンの使用を避ける傾向があるのも原因の一つと考えられます。経済的な理由や健康意識からエアコンの使用を控えることで、室内でも熱中症を発症するリスクが増します。実際、熱中症で搬送される高齢者の多くが自宅で発症しているというデータもあります。

特に、高齢者ほど、こまめな水分補給やエアコンの積極的な利用が必要になります。

2024年の猛暑_7 熱中症が顕著に増加

2024年の夏は、日本全国で熱中症による救急搬送者数が大幅に増加しました。特に7月下旬から8月にかけての酷暑の影響が顕著で、全国的に7月の1週間だけで1万人を超える搬送者がいたとされます。この時期に最も多かったのは東京都で、1週間で1,300人近くが搬送されたそうです​。東京だけを見ても、2024年の夏の救急搬送者数は前年よりも増加しており、特に猛暑日や湿度の高い日が続いたことで、例年以上に厳しい状況だったと言えます。また、熱中症搬送者に高齢者の割合が多いことから、高齢者は特に暑さには注意すべき状況にあることがわかります。

今後、夏の気温が下がっていくことは考えにくいため、熱中症のリスクはますます高まっていくことになるでしょう。「我慢の省エネ」は命の危険を伴います。建物の断熱性能の向上や省エネ家電の導入などは急務です。大丸建設では断熱・省エネ対策についてもご相談を承りますので、気軽にお問合せください。

2024年の猛暑_6 排ガスや排熱も暑さに提供

東京のヒートアイランド現象は、主に都市化の進行によって引き起こされますが、車やビル、マンションからの排熱も大きな要因となっています。

車の排気ガスには、ガソリンの燃焼によって発生する大量の熱が含まれており、特に交通量の多い東京のような都市では、その影響が顕著です。また、ビルやマンションの空調設備も室内の熱を外部に放出するため、外気温を上昇させる原因となります。夏場に冷房を多く使用することで、ビルからは大量の熱が排出され、都市全体の気温をさらに上昇させるという悪循環が生まれます。

さらに、東京のような高密度の都市では、アスファルトやコンクリートが熱を吸収し、日中に蓄えた熱を夜間に放出することで、夜間でも気温が下がりにくくなります。住宅が密集している地域では、夜間にも排ガスや排熱が排出され続けていますので、地方都市と比べて「夜に気温が下がりにくい」原因は都市化と住宅密集にあります。

2024年の猛暑_5 都心が暑く感じる理由

今年の暑さは東京に限ったことではありませんが、体感的にも東京は他都市に比べて暑く感じると言われています。実際に体感だけでなく、熱帯夜の多さなど、ヒートアイランド現象大きく関与していると考えられます。

ヒートアイランド現象とは、都市部が周囲の郊外や農村地帯に比べて、人工構造物が多く、熱を吸収しやすいため、気温が高くなる現象を指します。アスファルトやコンクリートの建物が多い東京では、昼間に蓄えた熱が夜間にも放出され、気温が下がりにくい状況です。

東京では特に夜間の気温が高くなりがちで、熱帯夜の頻度が他の都市と比較しても高い傾向があります。2024年も夜間の最低気温が25℃を下回らない日が増加しています。東京のように高密度の人口と建物が集中する都市部では、風通しが悪く、冷却効果が弱まるため、夜間でも涼しくならないことが多くあります​。

 

2024年の猛暑_4 気候変動とエルニーニョ現象

このような暑さの背景には、地球温暖化による気候変動の影響が大きく関わっているとされています。温暖化により、大気中の水蒸気量が増え、湿度も上昇する傾向が強まっており、蒸し暑さが増しています。さらに、都市部ではヒートアイランド現象が進行しており、アスファルトや建物からの熱の放出が夜間にも続くことで、気温が下がりにくい状況が続いています。

2024年は、エルニーニョ現象の影響も指摘されています。エルニーニョは、通常よりも太平洋の海水温が高くなる現象で、これにより日本周辺の気圧配置が変わり、太平洋高気圧が強く張り出すことがありました。この影響で、梅雨明けも早く、真夏日が続いたことで例年以上に暑い夏となりました。

夏が暑く、期間が長くなっているので、我々も暑さに適応していく必要に迫られています。