工期と金額はリフォームの程度により異なる

 リフォームで気になるのは、やはりお値段です。フルリフォームの場合、新築住宅を建てる場合とどれくらい異なるのかといえば、建物の上屋にかかる経費は「新築よりやや安い」程度です。だいたい建築費の8割くらいだとお考えください。基礎と構造(土台、大引、柱、梁等)を残すので、そのぶんの経費と工費が引かれる形になります。
 ただし、新規の住宅取得の場合は土地からになるので、そこはだいぶ価格は変わりますし、土地を引き継いだとしても建物の解体には200万円程度の金額がかかりますので、それと基礎・構造の金額を差し引くと、もしフルリフォームが可能であれば私はそのようにおすすめします。
 フルリフォームの場合は住みながら工事を行うのは難しいので、工事中は仮住まいをご用意してそちらに引っ越していただくことになります。だいたい3-4カ月程度の時間がかかります。
 部分リフォームでも、例えばお風呂であれば10日から2週間必要で、その間は銭湯を利用していただく、キッチンも1週間程度は外食などをご利用いただくなど、お客様にご協力いただく場面があります。

大丸で対応するリフォームを分類すると

 一口でリフォームといっても、かかる金額も、工期も、程度によって様々です。大丸建設で手がけるリフォームを分けると、次のようになります。フルリフォーム以外はすべて「部分リフォーム」となります。
【大規模フルリフォーム】
 建物の基礎と構造のみを残し、間取りや内装、設備などはすべて新しくする、新築並みのリフォーム
【水回りリフォーム】
風呂、洗面所、トイレ、キッチンなど、一定期間でリフォームが必要になる設備リフォーム
【内装リフォーム】
壁のビニールクロスを漆喰にする、床を無垢材に張り替える、子どもの成長に合わせ部屋に仕切りを入れて個室を増やす(あるいは間仕切りを取り広いワンルームにする)など
【エコリフォーム】
窓をシングルガラスのアルミサッシから断熱サッシに替える(ペアガラスなど)、断熱材を強化する、高効率給湯器への買い替え、太陽光発電や家庭用燃料電池、蓄電池の導入など
【耐震リフォーム】
耐震基準に合致するよう筋交いや壁量を増やすなど
【営繕】
畳の貼り替え、雨樋の詰まりの改善、戸車の交換、カギの交換など

これからは、リフォームの時代

 大丸建設は木造の住宅をメインで運営している工務店です。新築で住まいを建てさせていただいたお宅が、経年変化でリフォームや修繕が必要になった時に「住まいの御用聞き」としてメンテナンスをしてきました。また、大丸建設で家を建てたお客様のみならず、中古の住宅を取得された方、既存の住宅やマンションのリフォームなど、様々なお問合せをいただいております。
 私は元々、「その住まいが頑健で、耐震性等に問題がなければ、建て替える必要はない」と感じています。誰もが長年住んだ住まいには愛着があり、家族の思い出も刻み込まれています。それを崩してゴミにするのではなく、できるだけ残し、生かしながら、使い勝手は現代風に、極力バリアフリーに、そして自然の素材を使っていく。そんなリフォームを心がけています。

和に限らないジャパニーズ・モダン。

 引き戸というと、和のイメージを強く抱く方も多いのではないでしょうか。
 芯と枠があって両面に襖紙を貼る「襖(ふすま)」は、花鳥風月などが描かれたものが多く、和の雰囲気を醸し出します。一方で、和風建築の粋を集めた桂離宮などでは、市松模様の襖や月など、今見てもモダンなデザインの襖も多く、やりようによっては、とてもスタイリッシュに表現できるのも襖の魅力です。
 障子も和風建築の美を競う「顔」的存在です。一般的には長方形の「荒間」が主流ですが、横桟に細い縦ラインが入った「引き寄せ」や、障子を上下に開閉できる「雪見」、「猫間」や、それらの合わせ技などで、通風や採光、そして庭を楽しむといった使い方ができます。
 日本の住宅は、雨戸、板戸など、昔はガラスで外と区切られていないことも多く、縁側や回り廊下をはさんで、障子や襖で仕切られる簡素なつくりでした。障子や襖で空気の層をつくり、それで断熱効果を得ていました。昔の住まいの知恵にはいまも驚かされ、学びになることが多いです。

引き戸が好きです。

 私は、日本で昔ながらに使われている「引き戸」が好きです。洋風のドアは、ドアノブがついてそれを押したり引いたりすることで、蝶番を軸に90度回転するのですが、引き戸は回転せず横に広がるように開きます。
 引き戸は、戸の幅と同じだけの収まる場が必要です。壁に収納する引き込み戸、左右どちらかに開く片引き戸、両方に引くことができる両引き戸などがあります。
 大丸建設のこれまでの歴史の中で、開き戸を使うこともありましたが、最近ではお客様から「引き戸にしてほしい」と要望をいただくことが増えています。引き戸のよさは、大きな開口がとれて、異なる部屋同士が一体化できること。障子や襖は引き違いにすることができますし、襖は外してそれこそ大きなワンルームにすることもできます。
 互い違いに開けることで、通風を確保することもできます。ドアと異なり、風でバタンと閉じたり、風圧がかかって大きな音がすることもありません。

大丸の建具は、すべて特注・手づくりです。

 住まいにとって、なくてはならない「建具」について。
 建具とは、建物の開口部や、部屋と部屋、部屋と物入れなどを仕切るもので、種類は多岐にわたります。
 一つは、玄関の扉や戸、さらに窓枠(サッシ、ガラス戸、網戸、シャッター、雨戸)など、住まいの外と内を隔てるもの。
 室内では、板戸、格子戸、障子、襖、欄間など。
 窓サッシや網戸などは、既成のもので省エネ性能の高いものを採用しています。一方、玄関扉や、住まいの中で使う木製建具は、すべて宮城県の建具屋さんに1本ずつ特注してつくってもらっています。
 特に、玄関扉や、部屋の入り口の引き戸は、住まいの「顔」にもなるので、柾目の美しい杉や、框をつくって格式を高めています。

自然循環の考えで住まいを設計する

 私たち大丸建設がお世話になっている、エコ住宅の設計で知られる野池政宏先生。野池先生は「自立循環型住宅研究会」など様々な団体・活動を主宰しており、私たちも勉強しているまっただ中です。
 自立循環型住宅では、住まいの省エネやCO2削減を考えるうえで、住まいの温熱環境やエネルギーに関する基礎的知識を学びます。できるだけエアコンなどの機械に頼らず、自然の恵みを活用した住まいづくりを考えています。 
 例えば、庭に落葉樹を植えます。夏は青々と葉が生い茂り、日陰をつくってくれます。日陰を通った風は涼しく住まいを流れ、また葉による水分の蒸散効果で周囲の温度も下がります。冬は落葉して日光を住まいの奥まで届けます。
 また、私の体感ですが、大丸の住まいはいわゆるハウスメーカーの住宅よりも格段に涼しく感じます。たとえ室温が同じであっても、湿度が低く抑えられているのは、調湿性のある材料(=無垢の杉材)を使っているからです。
 こうした、自然の恵みを活用することも、エネルギーデータとして的確にお答えできるよう、私たちは研究を重ねています。

住まいと自然環境を総合的にデザインする

 私は一級建築士で、住まいの設計をすることもあります。また、匠の会やチルチンびと地域主義工務店の会などでの学びの中から、環境と調和した住まいの設計のあり方について、よく考えます。
 家を設計する時に誰もが重視する「日当り」と「通風」。東京のような住宅密集地では、想い通りの採光と通風が確保できないこともありますが、それでも何とか効率よく光と風を取り込むために、住まいの近隣だけでなく、その地域全体の風況や日射時間などをデータからしぼりこみ、設計に活かします。
 風であれば、気象庁のホームページを見ると、その地域の風の抜け方がよく分かります。山の方から吹き下ろす風なのか、川下から吹き上げる風なのか。現場に立って風を感じる力と、地域の気候風土を読む目、どちらも必要です。

小さな単位での対策より、山、森、川を見よ

 家庭での温暖化対策として、特に新築住宅での高断熱化や、気密性の高い窓サッシの採用、太陽光発電システムや家庭用燃料電池などの創エネ設備の導入などが挙げられます。もちろん、これら一つひとつの方策は有効で大切なのは言うまでもありませんが、この夏を振り返ってもわかるように、地球温暖化に伴う気候変動はグローバルに進んでおり、もっと大きな視点での対策に市民が参加するのも大切だと思います。
 具体的には、山林や身近な里山、そして川など自然を大切にすること、都市に緑を増やすことです。森林はCO2の吸収源になりますし、適切に管理されれば大雨の時も水がめになり、河川の急激な増水を防ぎます。都市の中の緑は、葉による水分の蒸散効果でヒートアイランド現象をやわらげます。
「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、住まい単体ではなく、都市計画全体のなかで、温暖化対策、環境保全を考えていきたいと思います。

小さな単位での対策より、山、森、川を見よ

 台風一過でようやく秋らしい空気にほっと一息ついた方も多いのではないでしょうか。先月に引き続き、住まいの温暖化対策や猛暑対策について考えてみたいと思います。
 みなさん、この夏エアコンで冷房をつけた際、窓は閉めていましたか? ほとんどの方は「当然!窓を閉めました」とお答えになるかと思います。
 では、カーテンや閉めましたか? カーテンを閉めると部屋が暗くなる……とおもい増すが、実は、真夏の直射日光を室内に入れ放題で冷房をつけても、効果は半減してしまうのです。日中、家を留守にする時は、なるべくカーテンを閉めて暗くして、日射を入れず、帰宅後に窓を開けて風を通してから冷房をつけるだけで、冷房効率は10%以上あがるという実験結果もあるくらいです。
 実は、日本の昔ながらのすだれは夏の暑さ対策には大変効果的な素材です。細かい桟で日射と目線を防ぎ、風は通す。来年の暑さ対策には、早めにご用意するのがおすすめです。