木造住宅が斜めに崩れる理由

その後、東京に戻ってから、建築仲間や、被災地ボランティアに関わった方々に、東北内陸部での被災状況について話を聞く機会がありました。写真を見ると、 1階がゆがんで崩れている住宅、斜めに傾いている住宅などがありました。これらはほとんどが、1981年の建築基準法改正前、「旧耐震基準」の住宅であった思われます。

建築基準法は2000年にも改正され、住宅の耐力壁の配置バランスなども重視されるようになりました。それまでは、耐力壁の壁量があればよしとされていたのですが、南面に大きな開口部をもちそこに耐力壁が配置されていないと建物が均等に揺れの力を受けたり逃すことができず、一方に負荷がかかり、壁が弱い部分が崩れてしまうのです。

崩れている家で外観が比較的新しいと思われるものは、「新耐震基準」で壁量が足りていても、壁の配置バランスが悪い、いわゆる「グレーゾーン住宅」だと考えられます。耐震基準で1981年から2000年までに建てられた住宅は、グレーゾーンのものが多いので、「新耐震だから安心」とは思わず、不安になられたら耐震診断を受けられることをお勧めします。

東日本大震災後、現地へ行って。

2011年の東日本大震災後、連休を利用して、宮城県から岩手県にかけて、建築仲間と一緒にボランティアに行きました。私は一級建築士で東京都の耐震診断の登録事業者、応急危険度判定の資格保持者ということもあり、建築の視点から被災地のお役に立ちたいという気持ちでいました。

 

私は海岸線上を北上していったため、現地に行って、言葉を失いました。元の景色を知らないからなんとも言えませんが、「何もない」というのが第一印象。木造の戸建て住宅は津波に流され、かろうじて残っているのが鉄筋コンクリート造の学校や公共施設の、フレームだけが残っているという感じでした。

内陸部の被災状況を把握していませんでしたが、私が見たなかでは、木造住宅が残っているケースは見られませんでした。

「建ててからが本当のお付き合いの始まり」

大丸建設の現社長・安田昭は、いつも「建ててからが本当のお付き合いの始まり」 と言っています。工務店と言えば、家を建てるのが仕事、と思われがちですが、本当は家を建ててそこでの暮らしが始まったあと、使うなかで不具合が生じたり、ライフスタイルの変化による間取りの変更など、メンテナンスやリフォームが必ず必要になってきます。その時に、「あ、大丸さんに頼もう!」と思っていただけるような、お客様とのさりげないコミュニケーションを続けていく必要があります。

大丸建設が2カ月に1回発行している「大丸ニュース」は、お客様に大丸建設を思い出してもらうための大切なツールですが、それだけだと一方通行になりがちなので、年に一度は、OBのお客様のもとに直接出向いて、御用聞きをしたいと思っています。スタッフで手分けをしてOB客訪問をしていますが、お客様とのコミュニケーションは、私たちにとって、事業継続のための強い意志を与えてくれる経験です。

 

今月は大丸建設の「経営」についての考えをまとめました。

「お客様の夢」をつくる現場

現場監督から経営者の立ち位置に変わってなお、私が現場を大好きでたまらない理由は、「現場」がお客様の夢をつくる場所であるからにほかなりません。建築現場を通りすがるご近所の方が、「あ、この現場、何か違うな、いい感じだな」「いい仕事をしているな」と思ってもらえるくらいに、清々しい空気が醸し出されているような、そんな現場をつくっている自負があります。

 

それが、きっと口コミにつながっていくだろうし、何よりお客様の喜びになります。そして、私たち自身も、木の家づくりの現場が、本当に好きなのです。

大丸建設には、木造建築文化の担い手としての誇りをもっている、腕のいい大工と職人がそろっています。つくる側も、本当に楽しそうにうれしそうに、木に触れています。休憩中に飲む一杯のお茶。その時の職人さんのいい笑顔。いい現場がいつもそこにある、それが私の喜びなのです。

 

経営も現場も大切にする

大丸建設の社長交代・世代継承に向け、この数年間、いろいろ準備をしていますが、人材の安定と経営の安定、両方が成り立って、ようやく社長も安心して隠居できるのかな、と思います。

私は、バリバリの経営者タイプではありません。パソコンを前に図面を引いたり、パチパチと数字を打ったり、新しいビジネスモデルのスクールに嬉々として通うよりも、建築の現場が好きで好きでたまらず、木の香りのする空間にいるだけで落ち着きます。だけれども、5代続く家業を継承する運命を背負って生まれたからには、木が好きな大工さんや職人さん、木造建築が好きなスタッフ、そして木造建築の文化を次世代につないでいく責務があると思っています。

 

決して得意ではない経営にも真面目に向き合い、「現場」をよく知る経営者として、つくり手も住まい手も「心がつながる家づくり」を目指し、大丸建設を大切に育てていきたいと思っています。

銀行という頼りになるパートナーを得た

大丸建設の単年度決算が黒字に回復したのは、パートナーのメインバンクが変わったことが大きいです。融資の担当者が熱心に大丸建設に通ってくれて、経営についてのアドバイスをしてくれ、事業年度も変更して、「数字」がとてもクリアにわかるようになりました。

 

現場がわかると、その先にいつ、何を、どのように対策しなければいけないのかがわかります。新築を何件受注する、リフォームが大規模、中小規模何件で、それに軽微な営繕を加えていく。具体的な目標と期限を決めて、動き方が見えてくるようになりました。

まだ実際には思う通りにできていないのが現場ですが、会社として当たり前のことを、当たり前にできるようにして、急成長もしないけれども、コツコツと健全に事業を継承していけるよう、努力していきたいと思っています。

主婦パートを積極的に雇用したい

大丸建設は社長が70代、さらに定年後の田上にお願いして雇用延長をして、なんとか事業を回している感じです。とはいえ、この体制もあと2、3年のことと思います。ですので、次世代の求人を強化していくのが今年の大切なポイントです。

昨年、子育て中の坂本をパートに迎えたことで、雇用に関する私の考えが大きく変わりました。私の母が専業主婦だったこともありますが、子育て中の女性が専門職として働くイメージをあまり持てずにいたのです。坂本は以前、自然素材の建材会社で働いていたこともあり、大丸建設の大切にしているコンセプトに関して一定の理解があることも大きいですが、有能な女性が子育てを理由に社会に出られないのはもったいないなあ、と思うほどに優秀です。

 

思えば田上も子育てをしながら(現在は孫育ても!)大丸建設で長年働いてくれています。子育て中の方は時間に制限があるからこそ、時間の使い方を工夫しながら、効率的に働こうとします。ぜひ、こうした女性の力を借り、大丸建設で柔軟な働き方を実現したいと思っています。

現場監理の効率性をあげるには

現在、大丸建設の現場監督は、ベテランの雨宮和幸が担当しています。現場の効率をあげるには、材料の発注や職人の手配などの動きが見えやすい新築住宅の案件をコンスタントに受注していく営業力が求められます。雨宮の仕事が多忙になると、現場監理をできる私の仕事が増え、「営業をする・受注をする」という、仕事の入り口に注力することが難しくなってしまいます。コンスタントに受注を獲得していくには、営業力を強化していくことが大切だと思っています。

できれば現場監督がもう一人いればベスト。新築住宅を安定的に回すことと、突発的に入るリフォームや営繕などをもれなく受注するには、私自身がフリーで動けることが大切で、雨宮をサポートできる人材がもう一人いれば、と思います。

「次世代」に向けた引き継ぎをしっかりする

大丸建設では今、少数精鋭で仕事を回しています。社長は70代も半ばにさしかかり、まだ現役でがんばってはいますが、社長を楽にするためにも、私たちの世代がしっかりと事業を運営していきたいと思っています。

大丸建設に長年勤務してくれている設計・営業の田上純子が定年を迎え、現在では勤務日数を減らしながら、今でも会社を助けてもらっています。昨年、企画・営業サポートとして、坂本カオルがパートで入社してくれて、顧客情報の整理やポスティングなどの地域営業をがんばってくれているので、ずいぶん営業の戦略を立てやすくなってきました。坂本は子育て中ですが、時間をやりくりしながら的確に仕事をしてくれるので、子育て中の人であっても大きな戦力になることがわかりました。

 

田上が元気で働けるうちに、彼女の営業や接客を引き継いでくれるパートスタッフをもう一人入れて、次世代の大丸建設を担ってほしいと思っています。

経営を安定させるために。

昨年末に、決算が無事に終わりました。昨期もなんとか黒字で終わり、二期連続での黒字決算でした。

ただし、利益率が低いのが大きな課題です。大丸建設では国産の無垢材、自然素材を基本として家を建てています。素材のトレーサビリティ(生産や流通の履歴のこと。原材料にどのような素材が使われており、流通経路や業者の情報がわかる)をしっかりとっているため、原材料費はどうしても割高になってしまいます。また、大工や職人さんの技術を安く買いたたくようなことはしたくなく、技術に敬意を払ってきちんとお支払いしたいと考えています。

ですので、どうしても利益率は低くなってしまうのですが、それを上げていかなければ、会社としても未来に向けて投資をできなくなってしまうので、今年の課題は利益率を高めることです。