ぜひ読んで欲しい「東京防災」

東京都総務局総合防災部が2016年3月に発行した、東京都民向けの防災ブックレット『東京防災』。東京都民に無料で配布されたのですが、防災に関するあらゆる知恵が網羅され、イラストをふんだんに使用してあるのでわかりやすく、とても評判がよいため、首都圏のほかのエリアにも広まり、電子ブックなどでも無料でダウンロードできるようになりました。

 

東京都防災部の情報は、日々アップデートされており、女性視点での防災や、防災アプリの開発など、多岐にわたって防災の普及・啓発をしています。

http://www.bousai.metro.tokyo.jp

防災は日頃からの心がけが何より大切です。大震災に見舞われた時、人はパニックになってしまいがち。だからこそ、冷静に状況を分析して、まずは命を守る、それからどのように生き延びるか考えて行動する、人を助ける、などに移れるように、普段から準備をしておいて、まさに「備えあれば憂いなし」で、動いていくことをお勧めします。

首都圏で30年以内に70%の確率で大地震が起こる

国の有識者で構成される中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループが2013年12月に発表した資料によると、今後30年以内に70%の確率で起こるとされるマグニチュード7クラスの地震では、死者が最大で2万3000人にのぼると想定されています。直下型の地震の場合、断層があるエリアと、直下型地震の震源域になるエリアなど、全部で19のケースが想定されています。発生時間や状況で、被害の程度は異なると思いますが、大丸建設の近くでは、立川市直下地震、立川断層帯の地震に注目をしていきたいと思います。

http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/taisaku_wg/pdf/syuto_wg_report.pdf

こうした防災シナリオは専門用語が難しく、読み進めるのが大変な向きもありますが、むやみやたらに怖がらず、冷静に対策するためにも、専門家による評価はきちんと押さえておく方がよいと思います。

直下型地震は局地的な揺れ

東日本大震災はプレート型地震であるのに対し、阪神・淡路大震災は直下型地震です。直下型地震はプレート型地震に対して地震の規模そのものは小さく、被害範囲も半径30km程度ではありますが、震源が浅いと大きな被害をもたらします。阪神・淡路大震災がその例です。神戸は壊滅的な被害を受けたものの、電車で30分程度の大阪は日常生活を送っている、そのギャップが話題になりました。死者数は6,435名。そのうち約6000名は圧死とされます。地震発生が早朝で就寝中に建物や家具等の倒壊による圧死がほとんどと思われます。倒壊した建物の多くは古い木造家屋で、「建物によって亡くなった」震災として、私たち建築士には大きなインパクトを与えました。

一方で、冬季の早朝という発生要件から、多くが自宅で被災し、安否確認がしやすい状況であったこと、外出者が少なく市街地や道路等での被害が少なかったことなど、地震の規模からすると被害は軽減されたという見方もあります。

多摩エリアには立川断層がある

阪神・淡路大震災は直下型地震で、直下型地震は活断層のずれなどによって発生するため、活断層が走っている地域では、慎重かつ厳重な防災対策と、耐震対策が必要です。

 

東京都内では、奥多摩地域から立川を経て、国立から多摩川までのびる「立川断層」が存在します。立川断層の活動周期は5000年程度と予想されており、近未来に断層のズレが起こる可能性は少ないと言われています。大丸建設のある稲城市や、多摩市、調布市、府中市、日野市も立川断層から近いため、私たちの建てたお客様に対して、きめ細やかなフォローが必要だと思っています。

ただ、必要以上に住民の不安をあおらず、断層の存在は認めつつも活動周期からは直近での大地震につながる可能性は決して高くないとも言われているので、備えあれば憂いなしと準備をしつつ、日頃からの防災意識を呼びかけたいと思います。

東日本大震災で直接死は少ない

東日本大震災で最も大きな震度7を観測したのは、宮城県栗原市、木材産地でもある「くりこま高原」のエリアです。くりこまは近年、度々大地震に見舞われていますが、その経験もあったのか、東日本大震災の時には人的被害(死者)はなく、大きな施設被害もありませんでした。

東日本大震災は、何と言っても、津波の被害が大きかったのです。死者数は現時点でわかっている方で15,893名(さらに行方不明者が2.553名います)、東北3県以外でも、東京・神奈川を含む関東地方で61名の死者となりました。死因の90%は溺死で、残り10%の圧死・損傷死・焼死も、ほとんどが津波による瓦礫が原因とされています。地震の揺れによる建造物の倒壊や落下などによる直接死は100人以下と推計されています。東日本大震災はプレート境界型の地震です。

 

同じく最大震度7を記録した熊本地震は、内陸型地震と呼ばれ、大陸プレート内の断層ズレによるものです。震災での直接死は50人、車中泊などによるエコノミークラス症候群といった震災関連死が102人です。

木造住宅が斜めに崩れる理由

その後、東京に戻ってから、建築仲間や、被災地ボランティアに関わった方々に、東北内陸部での被災状況について話を聞く機会がありました。写真を見ると、 1階がゆがんで崩れている住宅、斜めに傾いている住宅などがありました。これらはほとんどが、1981年の建築基準法改正前、「旧耐震基準」の住宅であった思われます。

建築基準法は2000年にも改正され、住宅の耐力壁の配置バランスなども重視されるようになりました。それまでは、耐力壁の壁量があればよしとされていたのですが、南面に大きな開口部をもちそこに耐力壁が配置されていないと建物が均等に揺れの力を受けたり逃すことができず、一方に負荷がかかり、壁が弱い部分が崩れてしまうのです。

崩れている家で外観が比較的新しいと思われるものは、「新耐震基準」で壁量が足りていても、壁の配置バランスが悪い、いわゆる「グレーゾーン住宅」だと考えられます。耐震基準で1981年から2000年までに建てられた住宅は、グレーゾーンのものが多いので、「新耐震だから安心」とは思わず、不安になられたら耐震診断を受けられることをお勧めします。

東日本大震災後、現地へ行って。

2011年の東日本大震災後、連休を利用して、宮城県から岩手県にかけて、建築仲間と一緒にボランティアに行きました。私は一級建築士で東京都の耐震診断の登録事業者、応急危険度判定の資格保持者ということもあり、建築の視点から被災地のお役に立ちたいという気持ちでいました。

 

私は海岸線上を北上していったため、現地に行って、言葉を失いました。元の景色を知らないからなんとも言えませんが、「何もない」というのが第一印象。木造の戸建て住宅は津波に流され、かろうじて残っているのが鉄筋コンクリート造の学校や公共施設の、フレームだけが残っているという感じでした。

内陸部の被災状況を把握していませんでしたが、私が見たなかでは、木造住宅が残っているケースは見られませんでした。

東日本大震災から7年、あの時のこと。

もう少しで、東日本大震災のメモリアルデーがやってきます。毎年この時期になると、耐震のこと、防災のこと、そして人の命を守る住まいをつくる責任を思い起こします。

東日本大震災の時、私はちょうど、建築現場にいました。ものすごい揺れを感じたものの、建設中の家はしなやかに強靭に耐え、私は「大丸建設の建てる住宅は、強い」と手応えを感じました。それから、職人と社員、ほかの建設中の住まいの無事を確認し、仕事を続けて、帰宅しました。

 

その後、テレビやインターネットで、東北地方が壊滅的な被害を受けていることを知りました。目の前で、なすすべなく津波に押し流される東北の街並みに、胸が痛みました。今は目の前の仕事を精一杯やり、お客様にきちんとお引渡しをしてから、いつか東北に渡り、被災地の方々の役に立ちたい、との思いを強くしました。