震災時、地元で私ができること

首都圏直下型地震が起こる時に、もし地元(稲城、調布などの多摩エリア)にいたら、パニックの程度も都心とは違うと思います。
会社近辺にいたら、まずは会社を起点に、自分がどのように動くか考えます。まず役所に行って(稲城市役所)、被害の状況を役所がどこまで把握しているのかを確認します。そのうえで、自分が何をできるのか、資格を提示して、自分ができることを提示します。例えば応急危険度判定に動くことができれば、会社のクルマで緊急対策車の許可を得ることができます。そうすると、工事や、緊急出動などで、クルマで動くことができます。緊急対策車の許可を得ると、ボランティアで動きやすい。
スタッフはお客さんのところを回るように指示します。今動いている現場、OBのお客さんとの連絡がつくようになれば、「大丈夫ですか? 」と声をかけていきます。それが、お客様の安心につながるのではないか、と思っています。

近くにいる人のパニックを緩和したい

私は、普段はたいてい、会社のある稲城市や営業エリアでもある調布市、府中市、多摩市近辺にいることが多いです。
都心にいるのは月に4-5回。そこで地震が起こったらまずは身の安全を確保します。続いて、携帯電話が通じればですが、家族の安全確認。続いて会社の安全確認をします。交通が動いているかどうかにもよりますが、おそらく、大震災では交通がストップしていることが考えられますので、その場にいる回りの人とどう動けるか、安全なところに避難することを考えるでしょう。
地震の直後はおそらく、まずは外に出て、どこにいるのが安全か確認します。都心の場合は、壁や看板などが上から落ちてくるのが怖いので、公園など崩落物の危険の少ないところに誘導します。
ケガ人がいたら救護して、直近のパニックを乗り切ったら、どうやって帰宅するか考えます。歩いて帰るか、自転車を購入できたら手に入れ、あるいは交通が回復するまでの宿を確保するなどします。
都心にいたとしても、私は一般の人よりは建築的知識があるため、近くにいる人のパニックを緩和したいと思っています。

長周期の振動に共振した高層ビル

3.11の時は、東京も大きく揺れ、かなりのパニック状態にありました。東日本大震災の時は、東京では木造の住宅が倒壊する揺れではありませんでした。地震の揺れには、P波とS波があって、後から来るS波の大きな周期の振動と建物が共振して、実際の震度以上に大きく揺れた建物がありました。共振の許容幅が倍になると、倒壊の恐れも出てきます。そこまでいく建物はありませんでしたが、次の地震に耐えられるか、どのようになるかは、想像もつきません。
東京は、都市づくりに無理があると私は思います。首都高速道路もビルディングも過密ですし、構造計算がきちんとなされている建物とはいえ、竣工時に比べると想定外のことも多く経験していますので。住宅密集地で言えば火災が心配です。臨海部も液状化の懸念があります。

首都圏での地震は直下型が予想される

3.11以降も、日本各地で大きな地震が起きています。記憶に新しいところでは、長野県や四国の地震で、そのどちらも活断層系の地震です。
東日本大震災はプレート型の地震でした。プレート型は地下深くにもぐるプレートの沈みや跳ね返りによって起きます。プレート型の方が、広範囲に被害が及びます。
活断層型の地震は直下型と言われるもので、地盤のずれによって生じます。直下型は阪神・淡路大震災のように、範囲は小さいものの規模が大きくなるのが特徴です。
首都圏で今後予想されている地震は直下型なので、活断層のずれによって生じます。東日本大震災はプレート型の地震だったので、おそらく今後起きる首都直下型地震は、揺れ方も、被害の出方も、変わってくるのではないかと思います。

応急危険度の判定基準

大災害の時に、木造建築物の損壊具合の判断基準として、赤、黄色、緑の3枚の札を貼ります。その判断基準は、どのくらい壁が壊れているのか、例えば壁が割れているのか、外壁が剥離している場合は落ちて通行者にも影響を及ぼす可能性があるのか、など。柱の倒れ方に関しては、1000分の6度以上など、危険と判断できる傾斜角度が決められています。
損壊した木造住宅の居住者はもちろん、ご近隣の方、通行人の方にも危険が及ぶ可能性があるため、赤い紙を貼った住宅をどのように扱うかは注意が必要です。
私が応急危険度判定員の資格を取得した理由は、大丸建設の専務として専門性を持って住宅を建てている以上、住宅と地震の関係をきちんと把握しておきたいと考えているからです。
「大丸の家は、地震では倒れません」とは、言いきれません。地震の規模、地盤、場所によって被害も変わるからです。専門家として状況を把握し、実際の結果をきちんと見届けたいと思っています。そして、後々もしっかりとお客様をサポートしていきたいのです。

住宅の応急危険度判定

私は、一級建築士や耐震診断の資格のほかに、東京都の応急危険度判定員の資格も持っています。大震災が起こった時に、住宅や建築物の損壊などが多く見受けられる場合に、有資格者が建物の診断をして、その建物への立ち入りの可否を判定するものです。私は木造建築の判定員です。
震災後直ちに私は担当エリアの木造建築物の調査をしに赴きます。そして、建物の損壊具合に応じて3種類の紙を張っていきます。
赤は「危険」で住めない。
黄色は「注意」で、余震で倒壊の恐れがあるが、現状では立ち入り可能。
緑は「安全」。
大震災時は、この紙を見て、住宅の所有者、ご近所を通行する人が、建物との距離を判断します。

大震災の時に思う、お客様の安否と建物の安全

毎年3月、または9月になると、防災のことが話題に上りますが、いざ地震が起こった時にどう行動するか? 具体的なところまではなかなかイメージしにくいのではないでしょうか。
まず、自分自身が被災しているケースが考えられます。何をもって被災というのかの定義はしにくいですが、例えば3.11の東京では、帰宅困難者になった、地震と建物の共振で高層マンションが揺れ家財一式が倒れて壊れた、災害時の要援護者を抱え計画停電で命の危機に陥った……などのケースがありました。
私はまず、家族の安否はもちろんですが、次に気になるのは大丸建設で建てさせていただいたお客様の命と、住宅の状況が心配になります。自分の命が助かったら、まず、お客様の住まいの安全を確かめにうかがいたいと考えています。

東日本大震災から4年、改めて防災について考える

2011年3月11日より丸4年が経ちました。東京で大きな揺れを体感した私は、施工現場の安全と会社や家族、お客様の無事を確認し、そのまま現場監督を続けました。その後、お引き渡しやOBのお客様とのご連絡を終えて、4月からは休みの合間を縫っては東北地方へ通い、建築士としてできる支援活動を続けてきました。今でも、現地の方々との縁は続いています。
 私は一級建築士で、生まれてこの方木造建築が身近にあり、仕事に従事して20年ほどになります。住宅の耐震性能や構造への知識と経験があるプロとして、災害時にこそ冷静かつ的確に判断と行動し、お客様、地域の皆様の役に立てる存在でありたいと願っています。