長く過ごす部屋から断熱改修していこう

近年ではリビング・ダイニング・キッチンがひとつながりになった、大きなLDKが戸建て、集合住宅に関わらず主流です。家族が過ごす時間が長く、かつ暖房エリアが広い場所ほど、断熱性能を改善した時の効果は大きいです。
 また、高齢者が過ごす部屋ほど暖房エネルギーが大きくなる傾向にあるので、そこを重点的に対策していく必要があります。特に高齢者の住まいでは、洗面脱衣所など寒暖の差が激しい場所があるほど、ヒートショックによる事故も起こりやすくなるので、断熱重点エリアでなくとも、暖房器具をつけるなどの対策が必要です。
 寝室は基本的に寝る時に過ごし、布団をかぶるので暖房のことはあまり考えなくてもよいでしょう。重点を置く部屋を決めて、徹底的に対策をする方が効率がよいと言えます。

暖房のエネルギーを減らすには、断熱が基本

住まいの断熱を考えるのであれば、今、最も効果が高いのは窓の断熱改修です。住まいにおいては窓からの熱損失が最も高く70%以上とも言われています。シングルガラスのアルミサッシは結露しやすく、断熱性能も低いので、ペアガラス(複層ガラス)やLow-Eガラスといった特殊金属膜を挟んだ遮熱性もあるガラス、熱を伝えにくい樹脂や木製のサッシに変更することで、家庭の年間消費電力量はぐっと減ります。
 基本的な体力がある住まいならば、エネルギーも生活も、とてもラクで快適に過ごせます。理想的には朝起きた時に15℃を下回らない性能があれば完璧です。しかし、ほとんどの家では難しいと思います。
 暖房をする時のポイントは、いかに「保温」するか、つまり温めた熱を逃がさない工夫が大切です。

省エネルギーに向かう要素の全体像を把握する

1985リノベ学校2014」では、まず地域ごとのエネルギー消費量の傾向を把握したうえで、省エネルギーに向かう要素の全体像を確認します。工夫の種類は大きく分けて二つ。
「住まいの工夫」では、快適性と健康を向上させます。同時に、「機器・設備の工夫」もおこなっていきます。
要素としては、「暖房」「冷房」「給湯」「照明」「換気」「発電」の5つ。
暖房では断熱性能や機密性能を向上させ、適切な暖房機器を選ぶ。
冷房では日射を遮り、風通しをよくし、適切なエアコンを選ぶ。
給湯では設備機器を効率のよいものにしたり、太陽熱給湯器などを利用する。
照明では太陽の光を採り入れ、LEDなど高効率照明を導入したり、調光機器や人感センサーを設置するなど運用面でも工夫します。
24時間換気扇の使い方に注意し、太陽光発電や家庭用燃料電池の導入を検討します。

家庭の消費エネルギーを半減するために

大丸建設では、兄である常務の安田博昭と私の二人で、野池政宏さんが主宰する「1985リノベ学校2014」に通っています。1985リノベとは、家庭の年間ベースの一次エネルギー消費量と電力消費量をそれぞれ半分にすること」を目標にしています。そのため、住まいの断熱性能を向上する断熱改修や、設備機器の更新、住まい方の提案を含め総合的に学習します。
 東日本大震災以降、節電への意識は向上したと考えられがちですが、野池さんのデータによると、2011年、2012年、2013年の消費電力量はほとんど変わっていないことがわかります。「真夏の節電呼びかけは何だったんだ……」と思いますが、確かに1年中で最も電力需要の高い「ピーク時」の消費量を下げることには成功しています。ただ、年間トータルで見ると削減量はわずかに過ぎませんでした。
 家庭の電力消費量を減らしていくには、普段の生活から変えていかなければ難しいと言えます。今月は私たちの学びをお伝えします。