専門家による「応急危険度判定」を頼りに

 今月は、「大震災が起こった時にその家にとどまるか逃げるかの判断基準」についてお伝えしてきました。ただ、これについては、素人判断は危険ですので、建築のプロの判断を仰ぐのがよいでしょう。明らかに傾いているようなら「逃げる」ことをお勧めします。
 大震災が発生すると、発災後一週間以内に「応急危険度判定員」が派遣され、住める建物、そうでない建物の判断がおこなわれます。「赤」の紙が張られたら「危険」、「黄」の紙は「要注意」、「緑」なら「大丈夫」というのが大まかな目安です。
 大丸建設でも、私と社長が東京都の応急危険度判定員の資格を有しています。
 
 私たちは、住まいの専門家、ハウスドクターとして、少しでもお客様や地域の皆様のお役に立ちたいと思っています。特に首都圏では数年以内に大きな地震が起こると予想されていますので、不安や疑問がある方は、お気軽にご相談ください。

地震で床が抜ける心配はしなくてもいい。

 今月何度かお伝えしているように、建物は重力に耐えうるようにつくられているので、基本的に「床が抜ける」という心配はありません。
 時々、荷物の重量を心配される方もおられますが、私がこれまで建築士をしているなかで、床が抜けることによる損害例は聞いたことがありません。直接的原因は、床が抜けるのではなく、柱や梁が折れて(座屈)、壁や床が崩れ落ちるということです。
 ただし、1階の床が抜けることはあるかもしれません。シロアリや木材腐朽菌によって土台となる木が劣化している場合です。床下は湿気がこもりやすく、シロアリやカビ、木材腐朽菌の大好物なので、床下の通風や清潔を保てるような設計を最初からします。

外壁のクラックにも注意しよう

 外壁は屋根と同様に、住まいを雨や風から守る大切な役割を果たします。強い雨風にも耐えうるような素材が用いられており、大丸建設では火山灰シラスが主原料の「そとん壁」を採用することが多いです。
 近年は気候が激化していて、都内でも暴風雨にさらされることが増えています。そんななかで、大震災が起こったら、外壁モルタルにひび割れ(クラック)が生じることもあるかもしれません。外壁にクラックが生じても、ただちにその住まいに住めなくなるというわけではありませんが、余震などでモルタルの壁が崩れ落ちることもあり得ますので、あまりに大きなひび割れがある際は注意しましょう。
 外壁が崩れても、きちんと補修をすればそのまま住めることもありますので、専門家にきちんとご相談ください。

コンクリートも実は劣化する

 前項で「基礎も割れる」と書きましたが、「コンクリートって割れるの?」と、疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。一見強そうなコンクリートも、強力な力を受けると、実は割れるのです。
 コンクリートは水とセメントの量、空気の量、粗骨材(砂利など)、細骨材(砂など)の配合が細かく定められています。しかし、昔につくられたコンクリートはそこまで精度高く配合がなされていないものもあり、スカスカで密度の粗いコンクリートもあります。
 また、密度が高くてもコンクリートの打ち方が悪いと、空気が入り込んでいたり、発泡スチロールのようにもろいものもあります。密度が低くてスカスカだったりすると、水や雨の酸を受けてアルカリ性が中性化することがあります。
 空気と接する面から徐々にコンクリートが中性化して、鉄筋に雨の酸がふれることで、鉄筋がさびることがあります。そうすると、コンクリートがもろくなって、地震による大きな力がかかった時に、基礎が割れたりヒビが入ったりすることがあります。
 古いコンクリートは比較的質がよくないと言われており、また建物自体の耐震性能も心配なので、1981年以前の木造住宅にお住まいの方は、一度耐震検査を受けられることをお勧めします。

基礎も割れる

 住まいを支えるのは、基礎です。基礎は地震の際に最も大きな力を受けます。地震は、空気が揺れるわけではなく、地盤が揺れることによって起こります。地盤に接している基礎は、最も影響を受けやすい場所でもあります。
 地震の際、地盤は隆起したり沈下したりすることで、本来は設置面で耐圧盤の役割を果たす基礎が、割れることがあります。
 古い住宅であれば、基礎に鉄筋が入っていないこともあるので、より割れやすくなると言えます。
 ただし、基礎の割れなどについては、専門家が床下にもぐって確認をしないと発見できないこともあります。

家の傾きは、ヤバい。

 地震で柱や梁に損傷があったり、接合部にヒビが入っても、家が垂直かつ平行にバランスを保っていれば、家はすぐに崩れはしません。しかし、明らかに傾いているようでしたら、注意が必要です。
 本来、住まいは重力に耐えうるようにつくられていますが、傾斜ができることで常に横の力が働くので、構造体に負担がかかります。それが、いずれ住まいの倒壊につながってきます。
 構造体の損傷については、素人にはわかりにくいことも多いのですが、素人目に見て明らかに傾いているような住まいには、留まるべきではなりません。
 地震による死亡や大けがは、住まいや家具の倒壊によるところが大きいのです。すぐにその場から立ち去るようにしましょう。

接合部は要チェック!

 木造住宅の柱と梁をつなぐ「接合部」は、仕口で木と木を凹凸に組み合わせ、さらに金属のボルトで強固に留めます。
 通常、住まいは縦の力(重力)にはしっかりと耐えられるようにつくられていますが、横の力(地震や強風など)には弱いと言われています。横の力に耐えられるよう、耐力壁などを強くして住まいの耐震性を高めます。
 地震で横からの過重がかかると、縦の構造材(柱)と横の構造材(梁)の接合部に力がかかります。金属よりも木の方が単体では強度が弱いので、木部に損傷が加わり、木にヒビが入ったり、割れることがあります。
 そうすると、本来耐えうるはずの縦の力(重力)が正常に伝わりにくくなります。接合部から住まい全体の損傷につながることもあるので、接合部の確認は重要です。

大地震後、留まるor逃げるの判断基準

 先月から引き続き、地震からの身の守り方について、コラムを書きます。今月は、「大地震後、自分が住む木造住宅に残るか、逃げるか」の判断基準についてご紹介します。
先月のブログ記事 ▼
http://kkdaimaruy.blog101.fc2.com/blog-date-201303.html
 地震が起こった後、木造住宅の損壊度合いを判断するのは、以前ご紹介した耐震診断の要領とほぼ同じです。まずは目視で柱や梁などの構造体に損傷がないかを確認します。
 万が一、柱や梁に割れや折れがあると、余震が発生した際に、崩れ落ちて来る可能性があります。木構造のヒビに過重がかかりやすくなるためです。