キツく苦しい耐震診断

 耐震診断は、専門性が求められるばかりでなく、小屋裏に上ったり、床下に潜ったり、耐力的にも衛生的にもなかなかキツい仕事です。夏場は暑いですし、埃や湿気にまみれます。また、狭いところで這いつくばりながらの作業なので、とても苦しい思いをするのですが……
 そんな中で、筋交いを見つけると、光明が差したようにうれしい気持ちになります! あ、ここで地震に対する耐力を上げる措置がとられていたんだなあ、とか、大工さんがいい仕事をしているなあ、とか、高い技術力を見られると、とても得した気持ちになります。これも一種の職業病みたいなものでしょうか(笑)。
 耐震診断は一日仕事です。外側からの目視と、家の内側に入っての検査を終えて、構造や壁の状態を確認し、それを図面に落とし込みます。最後に計算ソフトに入力して、耐震診断の結果が出ます。実際の耐震診断をしてから約2週間で、診断の結果が出ます。

耐震診断では床下にも潜ります。

 前回は、小屋裏から2階の下地材の確認についてお話しました。
 今回は、1階の状態のチェック。1階と2階の間の梁と柱がきちんと通っているか、筋交いがきちんと入っているかの状態を見ます。また、床材は何か、例えば合板で固められている床の場合は耐力があるので、それだけ地震に強いということができます。床梁の隅角部に斜めに架けられている材を火打と言いますが、床に火打が架かっていると揺れに耐える力も強くなります。
 耐震診断で大変なのが、最後に床下に潜ることです。湿気が強く汚れもたまりがちな場所だからです。まず床の外側から基礎コンクリートに割れがないかを確認し、その後中に入り、湿気の状態、土台の腐れやシロアリの被害がないか、根太の状態、根太がけが入っているかどうか、筋交いの確認、基礎コンクリートに内側からの割れがないかなどを確認します。

耐震診断スタート! まずは小屋裏に上ります。

 耐震診断のお問い合わせがあったお客様の家でまずは目視検査をし、実際に耐震診断を行うことが決まったら、日を改めて、診断を実施します。
 まずは、小屋裏に上ることからスタートします。小屋裏とは、上層階の天井と屋根の間の空間のことで、押し入れの天袋などから入ります。そこで、屋根の下地材の状況、雨漏りの状況、雲筋交い(小屋束が倒れることを防ぐために斜めに入った木材)の有無、羽子板や金物の状態、筋交いの状態等を確認します。
 その後、2階(上層階)の仕上げ材と下地材の状況をチェックします。具体的には、コンセントのボックスをはずし、下地材が2階の小屋梁まで届いているか、また素材が何であるかを調べます。素材は、石膏ボードよりもベニヤ板の方が耐力が高く、地震の揺れに耐える力が強くなります。下地材は、すなわち耐力壁のこと。2階も1階も全部屋確認をします。

まずは目視で耐震性をチェック!

 最初に耐震診断のご相談を受ける際は、まず外回りから目視して、屋根材の状態や傾きがないか、雨漏りがないか、壁や基礎にクラック(割れ)がないか、サッシがきちんと嵌っているかなどを確認します。その建物が大地震の際に倒壊する可能性があるかないか、数値としては明確に出せないけれども、目視である程度の予想はつきます。
 例えば、屋根が瓦材などの重い素材の場合は建物全体の重量が増すので、地震の際に重みでつぶれるなどの可能性は否定できません。ただ、瓦に応じた太い柱や梁で支えられており、壁の量が確保されているのであれば、その可能性は低くなります。
 壁の割れなどは判断材料の一つになりますが、その家が建てられた後もどれだけ細やかに手入れがなされているかどうかも判断の基準になります。また、そもそもの建築時の大工さんの技量や、木構造の組み方など、建築士と大工のレベルで耐震性能は変わってきます。耐震性能の判断基準になる耐力壁の量が同じでも、手の入れ方で耐震診断の結果には差が出てきます。

「この家、大丈夫なんですか?」

 耐震診断のお申し込みを受けたら、まず、お客様の家を訪ね、お話をうかがいます。その時、必ず聞かれるのが「この家は大丈夫なんですか?」「直すといくらかかるの?」ということ。そうしたら私は、「診断しないと回答は難しいですよ」とお返事します。
 大丸建設は「ハウスドクター」として、住まいの診断や細かいメンテナンスなどを手がけています。時に大きなリフォームに及ぶこともあります。お医者さんが「具合が悪いかもしれないからクスリをください」と言われても、診断をしないと処方箋を出せないように、私たちも「この家大丈夫なんですか?」と聞かれても、実際に診断しないと大丈夫なのか倒壊する危険性があるのかは判断できません。
 とはいえ、長年の経験とカンで、住宅の外観を目視するだけでも、ある程度の判断はできます。ただ、私のポリシーでは、きちんとしたことをお伝えするには、しっかりとした診断をして根拠となる数字を出してから、と考えておりますので、お客様にもそのようにお伝えしています。

住宅の耐震診断を申し込みたい時

「我が家の耐震性能、大丈夫?」
 1981年の新耐震基準以前に建てられた木造住宅の場合、地方自治体の耐震診断助成制度で、耐震診断にかかる金額の補助を受けられます。お気軽にお問い合わせください。
 耐震診断をご希望される方で、大丸建設をご存知の方は直接お問い合わせいただいても構いませんが、稲城市の助成を受けられるのは稲城市に木造住宅を所有されている方が対象となります。稲城市以外の方は、立地自治体に直接お問い合わせください。
 大丸建設にも直接お問い合わせをいただくこともあれば、稲城市の消防本部を介してご紹介いただくこともあります。1981年以前の木造建築物は、いわゆる「耐力壁」と呼ばれる耐震性能のある壁面や筋交いなどが少なく、また基礎に入る鉄筋の量も少ないことが多いので、大地震の際に住宅が「倒壊する危険性がある」とされています。
 ご不安な方は、一度ご相談ください。

住宅の耐震診断について

 9月は防災月間です。首都圏で直下型地震が起こる可能性が高いと言われており、昨年は東日本大震災を経験したことから、住宅の耐震診断に対する関心が高まっているのを感じます。
 各自治体では耐震診断に対する助成制度があります。大丸建設の所在する東京都稲城市では、「木造住宅耐震診断助成制度」があります。市内にある木造住宅で新耐震基準(昭和56年-1981年6月1日)以前に施工した個人が所有する住宅に対し、耐震診断費用が5万円まで助成されます。
 大丸建設は東京都木造住宅耐震診断事務所に登録してあり、実際に地震が起こった際の建築物の被災度区分判定実施事務所でもあります。私自身もこれまで、稲城市災害防止協会・稲城市消防本部の防災講演会で講師を務めさせていただくなど、建築物の防災と耐震診断に対して強い想いがあります。
 今月は、住宅の耐震診断について、いったいどんなことをするのか、新耐震基準以前の住宅でも大丈夫なのかなどについてお伝えします。

最後の仕上げは玄関、そして建具

 基礎、構造材、屋根材、窓枠、断熱材、内壁、外壁ときて、家の基本的な仕上げはこれでほとんど完成ですが、最後の仕上げとして、玄関の三和土(たたき)をつくります。
 三和土はモルタルの中に仕上げの石を混ぜて塗り、乾き出した時に水で流して磨くことで、とても美しく出来上がります。混ぜ込む石は、大磯、さび砂利、那智石などで、使う石によって和風にも洋風にも、古風にもモダンにもなります。ビー玉などを入れてカラフルに仕上げるのもいいですね。
 玄関の扉や間仕切りドア、押し入れのふすまなどの建具も最後です。建具はまた深い世界ですので、改めてご紹介する機会があればよいなと思っています。
 
 8月は大丸で使う建材をご紹介してきましたが、意外と多くなくて、シンプルで驚かれたことと思います。有害化学物質を含まないものを吟味していくと、使える建材は限られていて、自ずとシンプルに行き着くのだと思います。