室内に空気を対流させるのがポイント

 住まいのカビ対策として有効なのは、常に室内に空気が流れていること。空気の対流を発生させるには、必ず、風の入口と出口をつくることです。ジメジメした梅雨時に換気をしようとして窓を開けても、空気の出口がなければ、単に湿った空気を取り込むだけになってしまいます。できれば部屋の対角線上に空気の出口を設けると、スーッと風が流れます。
 部屋の形状によっては対角線上に空気の入口と出口をとれないこともあります。窓が1カ所しかない場合もあります。その場合もできるだけ、同じ方向であっても、2カ所開口をつくることです。たとえば窓が1カ所しかない場合、窓の右側と左側をちょっとずつ開けます。空気は自由に動くので、壁や天井にぶつかって、出口を見つけて出ていこうとします。「入り口をつくったら出口もつくる」を原則に、こまめに換気をしていきましょう。

夏型結露は用便器に発生しやすい!

 夏、トイレに入ると、便器に結露を発見することがあります。最近の用便器は防露型の陶器を採用しているので結露が発生しにくくはなっていますが、それでも、どうしても結露ができることがあります。一般住宅ではトイレにまで冷房をすることは少なく、一方で便器の中は常に冷たい水が蓄えられているので、結露が発生するのも無理ないことです。日々のこまめな水拭きしか対策はなさそうです。
 もう一カ所、押し入れもカビには気をつけたい場所です。特に和布団を使用している家の場合、睡眠中大人はコップ一杯分の汗をかくと言われていて、その布団を押し入れに入れてそのまま戸を閉めっ放しにすると、押し入れのなかがジメジメしてカビが発生しやすくなります。布団をあげたらできるだけ押し入れの戸は開けて、風を通すことで、カビ対策になります。
 大丸の家では押し入れの壁に無垢材を張るなどして、自然の調湿性を最大限発揮できるようにしています。

お風呂のカビ対策

 お風呂や洗面所は、夏冬関係なく、一年中カビ対策が必要な場所です。温かいお湯を使うことが多く温度差が発生し、常に水がかかる状態になっているからです。
 新築の家であればユニットバスであることが多いので、比較的カビは生えにくいです。木を張った壁やタイルの目地などがカビやすいですが、入浴後は必ず換気をして空気を入れ替えることで、カビの発生を防ぐことができます。水分が残っているとそれが蒸発してカビの原因になるので、入浴後はできるだけ水を抜き、可能であれば冷水のシャワーで壁や床の温度を下げて、換気で入る空気との温度差を減らすと結露しにくくなります。
 洗面所も洗顔などをして年中水がかかり、意外とカビが発生しやすい場所です。水がかりはなるべくタオルなどでこまめに拭くと、カビも出にくく、清潔感も保たれます。

家のあちこちに潜むカビに気をつけよう

 窓ガラスなどに発生する目に見える結露は、雑巾やタオルなどで拭き取ればよいので、その都度対策していくのが得策ですが、こわいのは目に見えない結露です。壁のなかで結露する「壁体内結露」は、壁の中で湿気を発生させ、カビや木材腐朽菌、シロアリの恰好の餌食になります。
 シロアリは湿気のあるところを好み、家を支える大切な構造材である土台や柱を食べます。木材腐朽菌やカビが発生する条件がそろっていると、シロアリ被害に遭いやすくなります。それを防ぐために、壁のなかはある程度の通気をとるのが理想的です。
 室内で気をつけたいのは、エアコンや加湿器などのフィルターに発生するカビ。カビが生えていることを知らずにエアコンの空気を室内に送ると、その空気を吸い込んで肺にカビの菌が入り病気の原因になることがあります。冷房等でエアコンを初めてつける前には、必ずフィルターの掃除をするようにしましょう。

目に見えない部分の結露がこわい

 家でいちばん結露しやすい場所は、窓ガラスです。ガラスやアルミなどの金属は熱を伝えやすいため、室内外の空気の温度差に敏感に反応します。寝室などで、冬の朝、窓がビッショリ濡れている……という経験は誰もがお持ちではないでしょうか。
 昔の住まいは隙間風などが入るほど気密性が低く、室内外の温度差はそれほどない「寒い」住まいでした。今は高気密高断熱が流行しており、窓の隙間もほとんどないため、結露しにくくなっています。しかし、外気と室内空間の温度差は必ず発生しています。発生した結露はどこに行くのか……実はいちばんこわいのが、目に見えない部分で結露が発生すること。壁の中の結露を「壁体内結露」と言いますが、木造住宅で壁体内結露が発生すると、断熱材や木構造がカビたり、木材腐朽菌が発生して、家を支える骨組みが弱ってしまうことがあります。
 大丸建設の家は、気密工法ではなく、木材や土壁などの自然の吸放湿性を生かす造りです。とはいえ断熱材はしっかり入れて、ペアガラスを用いているので、ある程度の気密性と断熱性は確保できています。

結露には「冬型」と「夏型」がある

 5月のさわやかな季節は、私も大好きです。しかしあと少しで梅雨入り。じめじめしてカビの発生しやすい季節で、住まいのメンテナンスが大切になってきます。
 カビの原因の一つに結露があります。梅雨時や夏が特にカビに対して敏感になりがちですが、実は夏よりも冬の結露の方が住まいのカビの発生源になりやすいのです。
 結語は外の気温と室内の気温の差が大きいと発生します。「夏型」の結露は、室内はエアコンで冷房し室内の空気の方が外気よりも冷たい時にその温度差で発生します。「冬型」の結露はその逆で、室内の暖房の熱と外気の冷たい空気の差により窓がビッショリ濡れる状態を指します。

つくり手も楽しめる、無垢材の家づくり

 木の家のおもしろさ。すでに住まわれているお客様は、香りのよさや、空気のやわらかさ、床の温もりなど、快適さを味わっておられると思います。特に杉はやわらかいので、傷つきやすかったり、外回りに使うと黒ずむことがありますが、適切にメンテナンスをすることで長持ちします。手をかけるほどに応えてくれて、長寿命なのが、木の家のよさです。
 そして、私たちつくり手も、木の家は大好きです。杉の木1つをとっても、1本1本違うので、かんながけ、刻み、そして木を張り合わせる際も、そのたびに発見があり、工夫しがいがあります。
 たとえば木目がきれいな板は、玄関周りに張ろう。木目の方向をこういう風に合わせるときれいだろうか……大工さんが現場で1枚1枚、1本1本の木と向き合いながら、美しく表現していきます。手間ひまと愛情こめられてつくられた木の家は、とても美しいです。
 私たち大丸建設は、これからも国産材を使い続けます。つくり手の技術の継承と、日本の森、環境を守るために……。